表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/62

第55話 侯爵と第一王子

「ウオッホン、お取込み中失礼するよ。」


気分が盛り上がってきた絶好のタイミングで、怒気を含んだ咳払いが聞こえてきた。

まだ前夜祭の最中だったことを思い出し、レイモンドとエリアーナは勢いよく離れる。

真っ赤な顔をしながら声の相手を見ると、なんとエリアーナの父親であるアーゼンベルク侯爵だった。


「お父様!」


エリアーナが驚いていると、侯爵はそんな娘に苦笑を零しながら話し出した。


「やれやれ、一時はどうなる事かと思ったよ」


「ご協力感謝いたします」


侯爵の言葉にレイモンドは感謝の言葉を述べる。

なにやら訳知り顔の二人に、エリアーナは不思議そうな顔をして見上げるが、二人は答えてくれる様子もなく苦笑しただけだった。


「王太子殿下、今回は協力させて頂きましたが、娘を悲しませるような真似は、これきりにして頂きたいですな。」


「重々承知しております。」


何故かご立腹の様子の侯爵の言葉に、レイモンドは深く頷く。

その様子を満足そうに見た後、侯爵はエリアーナに向き直った。


「そのドレス良く似合っているよ。」


「あ、ありがとうございます、お父様?」


突然、父に話を振られて、エリアーナは首を傾げる。

そんな娘を見ながら、アーゼンベルク侯爵は続けた。


「本当によく似合っている。私では、そこまでお前に似合うドレスは選ぶことが出来ないからねぇ。」


そう言ってウインクする父に、エリアーナは何かに気付き隣のレイモンドを振り仰いだ。


「うん、そのドレス良く似合っているよ。選んだ甲斐があったよ。」


「じゃ、じゃあこのドレスって……。」


己の考えが合っていたことを理解したエリアーナは、驚きすぎて呆然と呟いていた。

エリアーナの予想通り、このドレスはレイモンドが用意してくれたらしい。

しかも、父である侯爵も一枚噛んでいるようだ。

その事に気づき、エリアーナは恥ずかしさで、みるみるうちに顔を赤くしていった。

そんな娘を愛おしそうに見つめていた侯爵は一つ咳払いすると、くるりと背を向けてきた。


「ウホン、あー今日は卒業式の前祝の日だ。エリアーナももう少し楽しみたいだろうから、今日は門限は目を瞑ってあげよう。」


「お父様!?」


父親の突然の言葉に、エリアーナは信じられないといった顔で見返してきた。

そんな娘に侯爵は


「楽しんできなさい。」


そう言って微笑み返す。


「はい。」


「お心遣い感謝します。」


そんな気前の良いアーゼンベルク侯爵に、レイモンドも感謝の言葉を述べる。

すると、侯爵は少しの間考えたあと、こう付け足してきた。


「……まあ、あまり羽目を外さんようにな。」


と――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ