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第52話 断罪開始

「……そうか。」


その時、レイモンドの低く耳に心地良い声が響いてきた。

思わずそちらを向くと、目を閉じて嘆息する彼の姿があった。

その姿に何故だか胸の辺りが、凍えそうな程冷たくなっていく。

喉の奥で「ひゅっ」と音が鳴った。


――ああ、終わってしまう何もできないまま……。


理解が追い付かないまま、心の中でそう呟いた時――


「アレをここへ。」


突然、レイモンドが顔を上げ声をあげてきた。

「は!」という肯定の声と共に、近くに居た従者がレイモンドの所に紙の束を持ってやってきた。

レイモンドは従者から紙の束を受け取ると、そこへ視線を落とした。

周りに居た野次馬たちも、自然とその紙へと視線が移る。


「これには、ここ最近の我が婚約者と、エミリア嬢達・の行動の記録が記されている。」


レイモンドの言葉に、周りからどよめきが走った。


「ど、どういうことですか?」


エミリアが目を丸くしながら、レイモンドに訊ねてきた。

すると、レイモンドはそんなエミリアの問いかけに答えることなく言葉を続けた。


「この報告によると、エリアーナの行動記録と先程聞いたエミリア嬢達の話に大分差異があるようだが?」


レイモンドの言葉に、エミリアとクリスティーナの顔色がさっと変わっていった。


「ふむ、順を追って説明していこうか。まず裏庭の件だが、エリアーナがエミリア嬢を裏庭に呼んだのは”貴族のマナー”について話し合いの場を設けた、とあるが。これはどういうことだい?エミリア嬢。」


「そ、それは……エ、エリアーナ様がそう言って私を人気のない所に呼び寄せて、平民出の田舎娘だと乏してきたんです!」


「ほお、これにはその時の会話が全て記録されているが……なんなら記録用の魔道具もあるから、それで確認してみるかい?」


「な、なんでそんなものが……。」


突き付けられた事実に、エミリアは慌てて言い訳を言うが、魔道具云々の話になると青褪めて一歩後退った。

そんなエミリアを気にすることなくレイモンドは更に続ける。


「廊下で転ばされたというのも、エミリア嬢が勝手に転んだという目撃情報が多々あったよ。他にも色々されたと言っていたけど、他の御令嬢たちからの苛めも実際には無いみたいだね。というか接触すらしていないと報告にはあるけど、どういうことかな?」


と、レイモンドはにっこりと微笑みながらエミリアに聞いてきた。

その言葉に、エミリアは真っ青になってガタガタ震えだす。

そして、遠巻きに様子を見守っていた令嬢たちから怒りの籠った視線を向けられ、エミリアはその場にぺたんと腰を抜かしてしまった。

レイモンドは、放心状態になってしまったエミリアから、今度はクリスティーナへと視線を移してきた。


「ひっ。」


それまで顔を青くしながらも、なんとか平静を装っていたクリスティーナだったが、凍えるようなレイモンドの視線に射貫かれ思わず悲鳴を上げてしまった。


「そういえば君は、エリィが他の男たちを誑かしていたと言っていたね?」


「…………。」


レイモンドの問いかけに、クリスティーナは答えずその代わりに青い顔で小刻みに震えていた。

そんなクリスティーナの様子を気にするでもなく、レイモンドはすらすらと言葉を続けていく。


「それでなんだっけ?ああ、そうそう。エリィに騙されてエミリアを襲ったっていう男子生徒がいたんだよね?でもおかしいな、この報告書によれば、その生徒はエミリア嬢に頼まれたって言っているみたいだよ?それに元々彼は、エミリア嬢の崇拝者で取り巻きの1人だったようだ。エミリア嬢と一緒にいる姿を何人もの生徒達が目撃している。それが何故、エリアーナに誑かされたって思ったのかな?クリスティーナ嬢。」


そこまで一息で説明されたクリスティーナは、エミリア同様面白い位にがくがくと震えて声にならない声を上げ始めた。


「な、なぜ?なぜ?何故?」


震える声で同じ言葉を何度も繰り返す。

計画は完ぺきだったはずだと、クリスティーナが混乱する頭で呟いていると、ふいにレイモンドが動いた。

コツコツと優雅に靴音を響かせて、エミリア達が居た場所から離れていく。

そして辿り着いた場所に居た人物の腰を抱き寄せると、こう言ってきた。


「僕の大事な婚約者に、護衛をつけない訳が無いだろう?」


と――


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