第44話 生徒会の仮眠室で・・・・・
さて悪い事は続くもので、レイモンドは今窮地に陥っていた。
「あ、あの……エミリア嬢、離れてくれないかな?」
何故かレイモンドは生徒会の休憩室のベッドに縫い付けられるような形で、エミリアに押し倒されていた。
数か月後に予定されている行事の準備で、また激務に負われていたレイモンドは、少しの間休憩すると部員たちに断って生徒会室にある仮眠室に一人で向かった筈だった。
倒れるようにベッドに横になった所までは記憶にあったのだが……。
そして、僅かな重みと寝苦しさに目を開けたらこんな状態だったのである。
レイモンドは混乱する頭の中で、男女真逆じゃ無いの?と今の現状に疑問を浮かべながら、目の前の盛った女を見遣る。
「ああレイ様、我慢することはありませんわ。本当の貴方を解き放ってください。」
すると、エミリアは目元を赤く染め熱い吐息を吐きながら、そんなことをのたまってきた。
何を解き放てというのだ、何を!?
うっとりとこちらを見上げながら意味不明な事を呟くエミリアに、レイモンドは内心で突込みを入れる。
――己を解き放つなら、あんたじゃなくてエリィに解き放ちたいわよ!!
王子とは思えないような下世話な発言を、レイモンドは胸中で絶叫する。
エリアーナ不足で欲求不満が爆発しそうなレイモンドは、目の前のエミリアを忌々しそうに睨み付けた。
「レイ様、そんなに熱い眼差しで見つめられたら恥ずかしいですわ(ハート)。」
――くぅ~……相手は女の子だけど、殴っていいかしら?
勘違いして頬を染めるエミリアに、レイモンドは胸中で物騒な事を呟く。
そんなことを思っていると、反応が無いのを了承と取ったのか、エミリアはレイモンドの体を弄ってきた。
ぎょっとするレイモンド。
大胆な行動をするエミリアに、レイモンドは慌てて彼女の体を引き剥がすと、驚くべき身体能力でベッドから飛び起きた。
「な、何するのよ!」
思わず地が出てしまったが、構ってはいられない。
「ああん、レイ様……。」
「と、とにかく、そんな気は無いから!」
レイモンドは、残念そうにこちらを見上げるエミリアを睨み付けながら叫ぶように言うと、一目散に仮眠室から出て行ってしまったのだった。
「ああ、レイ様……もう!あと少しだったのに……。」
脱兎の如く逃げ出したレイモンドに、エミリアの声が追い縋るが、彼は一度も振り返ることなく出て行ってしまった。
そんな彼を恨めしそうに見つめながらエミリアは残念そうに呟く。
「まあ、でもいいわ。あっちでは私が頼んでおいたモブ達が、あの女をどうにかしてるでしょうから。」
エミリアはそう言いながら、仄暗い笑みを零していた。