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第43話 王子と侯爵令嬢のすれ違い2

第一王子付きの従者が主人の落ち込みっぷりを分析していた傍で、当のレイモンドはと言うと内心激しく動揺していた。


――なんで、なんで、どうしてエリィは、あんなこと言ってきたの!?


そう心の中で叫びつつ、頭を抱える。


――そりゃあ、昔の事が原因で全然男として意識されていないことは気付いていたわよ、だからってこんな仕打ちないわぁ!!


放課後エリアーナに言われた言葉を思い出し、レイモンドは深く溜息を零した。

最近のレイモンドは、少しでもエリアーナに意識して貰いたいという一心で、婚約者や恋人たちがする様な事をリサーチして必死にやって来たというのに……。

それが全然、全くと言っていい程、相手に伝わっていなかったという事実に大分凹んだ。

しかも、あろうことかエリアーナは自分がケビンに想いを寄せていると思っているようなのだ。

はっきり断言しよう、自分はあの腹黒従者に懸想なんてしていない!!

というか、誰があんな主人を主人とも思わないような、ムッツリインテリ野郎なんて好きになんてなるか!とレイモンドは叫んだ。


「ほ~お、実に興味深いお話ですねぇ。その話、じっくり詳しく教えて頂きましょうか?」


その時、真横から身も凍えそうな声が響いてきた。

レイモンドはギギギギと、油の切れたブリキ人形のような動作で顔をそちらへ巡らすと……。


目の辺りに影を纏い、口元を引き攣らせるように弧を描いたケビンが仁王立ちしている姿があった。


「ひぃっ!!」


完全無欠の第一王子が悲鳴を上げる。

レイモンドは先程の独り言が、思わず声に出てしまっていたらしく、ケビンに駄々洩れだったらしい。

詳細を話せと詰め寄られた専属従者に、レイモンドはまたしても説教を喰らう羽目になってしまったのであった。









「今頃うまくいってるかしら。」


「何がですか?お嬢様。」


エリアーナの帰宅後、制服から室内用の服に着替える際、ぽつりと零された言葉に専属侍女であるメルが気軽に聞き返してきた。


「ん?今日レイに、ちゃんとケビンに想いを伝えなさいって言ってきたの。」


「はぁ?」


メルならいいわよね、とポツリと零しながら説明された内容に、メルは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


「お、お嬢様、ほ、本当にそれ言っちゃったんですか?」


「そうだけど?」


それがどうしたの?ときょとんと首を傾げて言ってくる主人に、メルは「あちゃ~。」と顔を片手で隠しながら大げさに嘆いてきた。


「そ、それでレイモンド様は、それについて何て言ってきたんですか?」


メルは恐る恐る聞き返す。


「え、何か私に言い当てられて驚いてたから、一応励まして帰って来たわ。」


レイモンドに対する雑な対応に、メルは再び頭を抱える。


――それだと、今頃ケビンさんは大変な事になってるかも~……。


ケビンの苦労が目に浮かぶようで、メルは冷や汗を流しながら「あはは」と乾いた笑いをする。


「と、とりあえずエリアーナ様は、もう少しレイモンド様と、じっくりお話しなさる方がいいと思いますよぉ~!」


と、苦し紛れにフォローを入れる。


――と、とりあえず、後でケビンさんに召集かけなきゃ!


まだ告ってなかったんかい!と、ヘタレ王子を呪いながら、メルは胸中で苦労人の第一王子専属世話係の顔を思い浮かべるのであった。


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