第41話 生徒会室での攻防戦
「レイ様、判をお願いします♪」
放課後、生徒会室では楽しそうな少女の声が響いていた。
「ああ、そこに置いておいてくれ。」
にこにこと満面の笑顔で書類を渡してくるエミリアに、レイモンドは視線を上げることなく素っ気なく言い放つ。
そんな塩対応にもめげず、エミリアは笑顔でレイモンドを見つめていた。
「会長、こちらの書類に判を……」
そこへ、他の部員が書類を持って現れた。
するとエミリアが、すかさずその書類を部員から取り上げてしまう。
「はい!書類は私が責任を持ってレイ様に渡しておきますね♪」
そう言って、に~っこりと笑顔を部員に向けてくるのだ。
書類を持ってきた部員は、若干頬を引き攣らせながら、小さな声で「お願いします。」と言うと、すごすごと引き下がっていった。
そして、鬼の首を取ったとばかりに得意な顔をしながら、レイモンドの方をくるりと向くと、満面の笑顔で書類を渡してきたのだった。
その遣り取りに、レイモンドは内心で溜息を吐く。
――いちいちこの子が取り上げるから、効率が悪いったらありゃしないわぁ……。
エミリアが来てからというもの、仕事の進みが遅くて敵わなかった。
それというのも、先程のように部員たちが持ってきた書類を、エミリアが全て受け取ってからレイモンドに渡すという、謎の流れが出来てしまっているのが原因だ。
何度か注意しているのだが、その度にエミリアから
「レイ様の補佐役の私の努めですから!」
と、謎理論をかまされるのだ。
効率が悪いと何度訴えても、気が付くとレイモンドの執務机の前を陣取り、部員たちから書類を奪っては、満面の笑みでこちらに寄こしてくるという行動を改めようとはしなかったのである。
――何度、摘まみだそうと思ったかしら……。
レイモンドはその時の状況を思い出し、はぁ、と溜息を吐いた。
その度に、ポンコツコンビの邪魔が入るのだ。
それは誰かと言われれば、もちろんサイモンとエルリックである。
こういう時ばかりは何処からか湧いて出てきては、エミリアを庇い邪魔をしてくる。
その行動力を、もっとまともな事に使え!と毎回胸中で罵っているのだが、彼らは一向に気づく様子はない。
そろそろ本気で切り捨てるべきかと頭を悩ませながら、レイモンドは今日も今日とて鉄壁の防御力で彼らをあしらうのであった。