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第27話 それぞれの思惑

舞踏会から数日経った、とある休日。

美しい薔薇が咲き誇る庭園で、令嬢たちがお茶会をしていた。

そこにはなんと、男爵令嬢であるエミリアもいた。


「今日はお招きくださり、ありがとうございます。」


「いいのよ、わたくしも貴女と話がしたかったの。今日は有意義な時間にしましょうね。」


エミリアが主催者と挨拶を交わしていると、他にも招待されていた令嬢たちが、彼女を囲みながら皆くすくすと笑っていた。

それに釣られてエミリアも笑っていると、茶会の主催者である令嬢が話しかけてきた。


「そういえば、王子様との仲は進展しまして?」


「ええ、もう順調ですわ。でも何故クリスティーナ様は私を応援してくださるのですか?」


王子との仲を聞いてきた令嬢の名前を呼びながら、エミリアは不思議そうな顔をしながら訊ねる。


「それは、エミリア様の一途な愛に心を打たれたからですわ。」


すると、クリスティーナと呼ばれた令嬢は、扇で口元を隠して優雅に笑いながら答えてきた。


「ええ、私たちもエミリア様には、ぜひ頑張ってもらいたいと思っていますのよ。」


「本当に、王子様との一途な愛を応援しておりますわ。」


周りにいた令嬢たちも、声を揃えて口々にエミリアを激励してくる。

その言葉にエミリアは、「ありがとうございます。」といって涙ぐんだ。


美しい庭園で、美しい友情が固く結ばれた瞬間だった。






なーんてことはなく……。


「な~にが、応援してますわ~よ!こっちはあんたの魂胆知ってるんだからね!」


エミリアは茶会から帰ると、自室のソファにぼふんと乱暴に座りながら愚痴を零していた。


「まさか、ここへ来てあの女が出てくるなんてね~、忘れてたわ。」


エミリアはそういうと、ソファへと沈み込んだ。

少々予定は狂ったが、舞踏会イベントで王子とも踊れたし、あとは卒業式までエリアーナに苛められた証拠をでっちあげれば終わりかと思っていたら、思わぬところからサブキャラが出てきて驚いていた。


今回エミリアをお茶会へ誘ってきたのは、クリスティーナ・ファウゼンという、エリアーナと肩を並べる名門侯爵家のご令嬢だった。

彼女もまた第一王子レイモンドの婚約者候補の一人であり、そしてゲームではエリアーナの親友だった。

しかし終盤では、実は親友とは名ばかりで、悪役令嬢であるエリアーナに虐げられていた事を打ち明け、エミリアと協力し苛めの証拠を付きつけるという、重要な役目を持っているキャラだった。

しかも、王子ルートではなく他の攻略対象とヒロインが結ばれると、クリスティーナは自動的に王子の婚約者に格上げされるという、何ともおいしい役どころのキャラなのだ。


「ゲームでは詳細はわからなかったけど、結構あの女も腹黒いみたいねぇ。」


ゲーム内では、か弱く儚げな印象だったクリスティーナだったが、実物を見てみるとイメージは全然違っていた。


「な~んか目がギラギラしてて、食虫植物って感じ……やっぱり女って怖いわぁ~。」


と、エミリアは苦笑も露わに感想を漏らす。


「まあでも、私の逆ハーコンプリートに大いに役立って貰うつもりだから、どうでもいいんだけどね♪」


逆ハーエンディングの時は、確かクリスティーナはエミリア達を祝福し、親が用意したどこかの令息と結婚したという描写があったなと思い出しながら、エミリアは余裕の笑みを浮かべるのであった。





一方その頃、ファウゼン侯爵家では――。


「うふふ、あのエミリアって方、クリスティーナ様が協力してくださると、本気で思っているようでしたわね。」


「ええ、本当に……哀れな方でしたわ。」


「わたくしたちが、あんな女を認める筈がありませんのにね。わたくしたちが王子様にふさわしいと思っているのは、クリスティーナ様だけですのに。」


そう言って、令嬢たちは窓辺に佇むクリスティーナを崇拝するように見上げる。


「本当、可哀想な方……。」


窓の外を見ていたクリスティーナは、令嬢たちの視線を受けながら、勝ち誇ったような微笑みを浮かべていた。


レイモンドとエリアーナの知らない所で、女たちの化かし合いが繰り広げられていたのであった。


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