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第2話 王子様の秘密


「はぁ~疲れたぁ~。もう、本当にいやんなっちゃう!」


放課後、学園にある王族専用のプライベートルームで、盛大に愚痴を零す第一王子の姿があった。

温室も兼ねたそこは、座り心地の良いソファでゆっくり寛ぎながら、色とりどりの草花がいつでも見れる、王子のお気に入りの場所であった。

そこに婚約者であるエリアーナを誘い、お茶会をしている最中だった。


彼はお気に入りのカップに紅茶を注ぐと、優雅に小指を立てて乾いた喉を潤すように一気に飲み干す。


「そんなに文句言うんだったら、離れてりゃいいじゃない?」


その向かい側で、同じく紅茶を飲んでいたエリアーナが、呆れた声で言ってきた。


「だぁって~、お父様から転入生の面倒見ろって、しつこく言われてるんだもん。」


無理に決まってるでしょう、と言いながら二杯目を飲むのは第一王子であるレイモンドであった。

彼は大好きな紅茶を堪能した後、ほお、と一つ息を吐くとカップをテーブルへと置き、エリアーナをじっと見つめてきた。


「何よ?」


その視線に、エリアーナは不機嫌も露わに聞き返す。


「それより、貴女は大丈夫なの?だいぶ取り巻き達にせっつかれてたみたいだけど?」


そう言って、じとっと見てきた。


「ああ、あれ、あの位どうって事無いわ。」


そう言ってエリアーナは優雅にお茶を飲む。


「さっすがエリィ!相変わらず男らしくて素敵ねぇ!!」


「男らしいは余計でしょ!」


「あら、ごめんなさい。」


エリアーナの愛称を呼びながら、レイモンドはそう言って、ウインクしながら謝ってきた。

その相変わらずな姿に、エリアーナはやれやれと嘆息する。


既にお気づきとは思うが、この第一王子ことレイモンドは、いわゆるオネエである。

体は高身長でイケメンというれっきとした男だが、心は乙女という残念な生き物であった。

それ故エリアーナは、男爵令嬢がいくらレイモンドに言い寄ろうとも平気だったのである。


――だって……心が乙女じゃ、ねえ。


どんなに王子のハートを射止めようとしても、女性に興味が無いのでは努力するだけ無駄だ。

それを知っているが故に、男爵令嬢の事はお気の毒とは思いこそすれ、邪魔だ憎らしいなどとは思えなかった。

というか、めっちゃ可哀想……お疲れ様です!と労ってあげたいほどだった。

しかし、この王子の本性は極秘事項なため、知っているのはエリアーナと、王子の世話係と、あとエリアーナの侍女だけであった。

王子の世話係はわかるが、エリアーナの侍女が何故?と聞かれたら、まあ都合がよかったからである。

ついでに言えばレイモンドの両親は、このことを知らない。

レイモンドの話だと国王夫妻は彼の事を、ちょっとなよなよしている頼りない息子だと思っているらしい。

そして何故、両親も知らない王子の正体をエリアーナが知っているのかというと。

話せば長くなるのだが、それは遡る事11年前のことであった――


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