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第七話 私の仕事

私の仕事風景

家から車で二十分のところにある、仕事場のケーキショップciel。 いつもは混んでいないのに何故か道路が混んでいた。青信号になっても前の車は全然前に進まない。急いで行かないと仕込みの時間が遅れて開店時間に間に合わない!! 「早く進め!」と思いながら私は車の中で祈った。



 ――私がcielに着いたのは、奈美さんの電話から四十分後だった。


「遅い!! 一時間以上来なくて、連絡して「今から行きます」って言って、さらに四十分遅刻ってどういうこと!?」

「す、すみませんでしたっ!!」


 店内に入った瞬間に奈美さんからの怒濤のお説教が静かな店内に響き渡った。


「園原さんは遅刻をあまりしないと思っていたのに、よりにもよって一番遅刻されたらまずいときに遅刻なのよ!?」

「本当にすみません……」


 しばらくの間奈美さんのお説教を聞きながら、二人だけで二十以上はあるケーキを作っていく。まず、使う材料を倉庫から取り出してこのお店の一番人気のイチゴのショートケーキを作り始める。その間に奈美さんもガトーショコラを作っている。材料をボウルの中に入れてまぜる。まぜ終わったら、型に生地を移して空気を抜く為に上から落とす。空気が抜けたら、予熱した百八十度のオーブンで25分焼いていく。焼いている間に他のケーキの生地を作る。これを、開店時間まで繰り返す。最初は私に説教をしながら仕込みをしていた奈美さんは、ケーキ作りになった途端一切しゃべらなくなった。お互いにお客さんに満足してもらえるようなケーキを作って、提供したいのは私も奈美さんも、そしてうちの従業員全員のモットーなのだ。私と奈美さんは開店時間の十時まで良いケーキが作れるように、ひたすらケーキを作りまくった。



「そろそろ開店時間ね、園原さんこれ店頭に並べてきて」

「分かりました」


 なんとか二人だけでケーキを作り終えたところで、出来たケーキを店頭のショーウインドウに並べていく。今日は十五種類ものケーキを作った。本当はまだまだ種類はあるけど二人で作るにはこの数が限界だった。


「今日は予約とかは無いんですか?」

「そうねぇ、確か一件誕生日ケーキの予約が入ってるわ」

「じゃあ、私作りましょうか?」

「いいわよ、それより園原さんには店頭に立って接客をお願いできる?」

「……はい、分かりました……」


 本当は誕生日ケーキ作りの担当をしたかったなぁ……誕生日ケーキの注文は作っているこっちもわくわくするのだ。どんな誕生日会にするのかなとか、ケーキを美味しく食べてくれるかなとか、作っている私も楽しい気分になる。でも、最近は予約注文の担当を任されないな……私の担当は接客と足りなくなった商品の補充だし……他の従業員の人達も、「園原さんって接客が丁寧だよね」とか「園原さん、子どもからお年寄りまで接客出来るから凄い」とかで完璧にここの接客担当になってしまった。本当は新しい商品を考えたりとかしたいなぁ。でも、ほとんどの商品は店長と奈美さんが考えているし、私の出番は無いかも。


「園原さん、開店するわよ」

「はい」


 奈美さんが店の前に「営業中」と書かれた看板を外に出す。あとはお客さんが来るのを待つだけだ。


「午前中は私も接客するから、午後からは園原さん一人でお願いできる?」

「分かりました。ところで奈美さん、沙樹ちゃんは午後からですか?」


 広川沙樹(ひろかわさき製菓学校に通いながらうちでアルバイトをしている。午前中は製菓学校で勉強をして、午後から実習も兼ねてアルバイトに来ている。従業員の中で最年少の十九歳なので、私はちゃん付けで呼んでいる。彼女も一人前のパティシエール目指して頑張っている彼女を見ていると、私も頑張ろうと思える。


「そうよ、沙樹ちゃんはいつも通り午後から来るから。沙樹ちゃんには今日は何してもらおうかしら」


 基本的に沙樹ちゃんはまだアルバイトなので、店内の掃除とかお皿洗いとか簡単なものをやってもらっている。彼女的にはもっとケーキ作りをやりたいらしいが、まだそこまでではないらしい。


 開店して五分位で最初のお客さんがやって来た。うちのお店にも何人かはお得意様もいて、お得意様の中の一人の若い女性OLさんが今日の一番最初のお客さんとなった。


「いらっしゃいませ! 今日もおやつ用に買いに来たんですか~?」

「今日は客人用に買いに来ただけですよー」


 奈美さんがお客さんと気さくに話している。このOLさんは、食後のデザートにとか、三時のおやつにうちのケーキを買ってくれるのだ。今日も自分用に買いに来たのかと思ってけど、今日は違ったらしい。


「今日は何にします? またイチゴショートですか?」

「……そうですね、イチゴのショートケーキと……あとモンブラン下さい!」

「はーい、ありがとうございます」


 奈美さんがお客さんをテキパキと対応し、開店から五分で早速売上を上げた。


「ありがとうございましたー」

「ありがとうございました」


 奈美さんに少し遅れて私も挨拶をした。奈美さんは接客も上手くて凄いなぁ。私よりも上手いんじゃないだろうか? 奈美さんはあまり接客はしないで、基本的には予約客の受付をやったり、梱包作業や材料の調達などの作業をやっている傾向にある。


「……さてと、午前中はお客さんはあまり来ないとは思うけど、お昼前位まではお客さんが来る可能性があるから、なんとか二人だけだけど持ちこたえましょう」

「……はい!」


 奈美さんはここで働いてそこそこ長い。私はここで働いて二年経つが、奈美さんは私が働きだした時にはすでにここで働いていたし、たぶん三年か四年はここで働いている。私が来た時には従業員は奈美さんと店長の二人だけだった。そこから数か月で従業員が二人増えて、去年の夏位から沙樹ちゃんが入ってきて、今に至る。


「……あっ、あのお客さん入ってきそうね」

「え?」


 奈美さんはお店の入り口で喋っている若い女性二人組を見て呟いた。すると、奈美さんが言ったとおりに若い女性二人組は店内に入ってきた。


「……ほんとに来た……」

「ほら、ぼーっとしてないで接客!」

「は、はい!」

 

 奈美さんに言われて私はお客さんの注文を聞く。


「いらっしゃいませ」

「すみません、イチゴのショートケーキとチーズケーキ下さい」

「かしこまりました。お持ち帰りにどのくらいお時間かかるでしょうか?」

「三十分です」

「かしこまりました」


 私がケーキを詰めている間に、奈美さんが保冷剤を準備して箱の中に入れる。その中に注文されたケーキを入れる。


「お会計六百円になります」

 

 私がケーキを箱の中に詰めている間に奈美さんがレジ打ちをする。お客さんの会計が終わったところでケーキを入れた箱を差し出す。


「ありがとうございました」


 二人でお客さんに挨拶をする。お客さんは満足そうに帰っていった。


「この調子でお昼まで頑張るわよ」

「はい」


 私と奈美さんはお昼過ぎまでお客さんの対応をしたり在庫が切れそうな商品を追加で作ったりと二人だけで作業をした。




「もうこんな時間ね……園原さん先にぱぱっとお昼食べちゃいなさい、その間は私がお店見といてあげるから」

「いえいえ、私より先に奈美さん食べてていいですよ? 私が店番しますから」

「でも、貴女午後からも接客じゃない? だから食べれるうちに食べた方がいいわよ? 特に午後は人が多いのに」

「大丈夫です! 朝ごはんちゃんと食べてきましたからお腹空いてないですし、私今日遅刻して、奈美さんに迷惑かけたので先に食べててください!」

「……それなら、先に食べとくわね。食べ終わったらすぐに交代するからそれまでお店は任せたわよ?」


 そう言って奈美さんは奥に入っていった。お昼にお客さんが来ることはほとんどない為、ただお店の前を通る人をぼーっと眺めるだけだ。


 今紅愛はなにをしているだろうか。私が作ったお弁当たべているのかな。口に合ったお弁当作れたかな。そもそも紅愛は友達とかいるんだろうか? 教室で孤立してないといいけど。私の頭の中は紅愛の事でいっぱいだった。紅愛は学校でどんな風に過ごしているのだろう。帰ったら学校の事聞いてみようかな。


「園原さん! お疲れ様です! 店番変わりますのでお昼食べてきて下さい!」


 私が色々考えていると、午後から来る予定の沙樹ちゃんが奥からやって来た。


「あ、沙樹ちゃん来てたんだ。いつもより早いけど学校は大丈夫なの?」


 沙樹ちゃんはいつも一時過ぎ位にcielにやって来るのだが、今日はまだ一時にもなっていない十二時半に彼女はやって来た。


「福田さんから今日は午前中は二人だけって聞いて、園原さんと福田さんが大変そうなので早めに来ました!」


 沙樹ちゃんは私たちの為に早めに手伝いに来てくれたようだ。その優しさが心に染みる……


「ありがとう沙樹ちゃん。それじゃあお店は任せてもいいかな?」

「はい! ゆっくりしててください!」


 私はお店を沙樹ちゃんに任せて、お弁当を取りにお店の奥のロッカールームに向かう。こういう時に沙樹ちゃんみたいな子が居てくれて本当に助かる。彼女もお店を一時的に任せられて嬉しいのか顔がにこにこしていたし、見ていて「可愛い後輩だな」と思う。私の後輩が沙樹ちゃんで良かった。ロッカーからお弁当箱を取り出して奈美さんが居るであろう、隣のスタッフルームに入る。ドアの開けると食後のコーヒーを飲んでいる奈美さんが居た。


「あら、園原さんお疲れ様」

「お疲れ様です。奈美さんは午後から何をするんですか?」

「私? 私は新しい商品が思いつきそうだからそれの試作をするの」

「新しい商品出来そうですか?」

「まあね、多分出来ると思うけど最終的には店長からOKサインをもらわないと出せないし、今度こそはちゃんと新しい商品を作って見せるわ」


 最近奈美さんは新しい商品を考えて出しては、店長からなかなかOKサインが出ず、スランプ状態に陥っている。前まではうちの店の商品を考えるのは店長と奈美さんがやっていたのだが、ここ最近は、なかなか新商品が作れないでいる。


「私は、奈美さんが作った商品好きですよ」

「私も、この間のタルトはいけると思ったんだけどねぇ……」


 奈美さんが一つ前に作った桃のタルトの事だ。あれは見た目も可愛かったし、味も美味しく私と沙樹ちゃん、奈美さんも絶賛していた商品だったのだが……店長の「これはだめ」という一言で没商品になったのだ。奈美さんが理由を聞くと、「タルトの生地と桃が合っていない、クリームも甘すぎてこれではお客さんが食べていて飽きてしまう」と言われたのだ。よく考えたら分かる理由に奈美さんはショックを受けて、しばらくお店を休んだ事もあった。そのリベンジを果たす為、奈美さんは試作しては、レシピを変えたりを繰り返している。その頑張りが今回は報われる事を私は祈る事しか出来ない。


「今度こそ店長に認められると良いですね。私、奈美さんの事応援してますから!」

「ありがとう園原さん……今度こそ店長に「美味しい」って言わせてみせるわ!」


 奈美さんに元気が戻って良かった。お店としてもそろそろ新しい商品を作らないといけない時期なので、奈美さんも焦っているのだろう。だからといって半端な商品は許さないのがうちの店長なのだ。前よりもっと厳しい審査になると思うけど奈美さんには頑張って欲しい。


「今、お店は沙樹ちゃんに任せているんでしょ? 私ちょっと心配だから見てくるわ」

「了解です」

「貴女も食べ終わったら早く来てよ?」

「……分かりました」


 奈美さんはそう言ってお店に戻っていった。私も早く食べて頑張ろう! 私は今日自分で作ったお弁当を食べ始めた。冷凍食品をおかずにご飯をパクパクと食べた。



私はお弁当を二十分で完食した。お弁当箱をロッカーに戻して、水筒で水分補給を済ませると、私も午後の仕事に向けて店内に戻っていった。

前回が短かったのでその分早めの更新をしました! 前回より長く書けて良かったです(*^_^*)

また、早めに更新出来るように頑張りますので応援よろしくお願いしますm(_ _)m

続きが気になる方、おもしろかったという方は、ブックマーク登録、評価、感想コメントなどをよろしくお願いします!!それではまた次の話で!!

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