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第六話 従姉妹と平日の朝

いつもと一緒だけどすこし違う朝のひととき。

――休日より一時間半早くアラームが鳴る。今日は月曜日。昨日とは違い今日は仕事があるのだ。「仕事に行くのやだなぁ」と思う気持ちを押し殺して、うるさく鳴り続けるアラームを止める。体を起こし、洗面台で顔を洗って、タンスから適当に服を選んでパジャマから着替える。ハンガーに掛けていたエプロンを取り。エプロンをかけながら部屋を出てキッチンに向かう。


 昨日の夜から仕込んでいたご飯を軽くまぜて、棚からお弁当箱を取り出す。そこで私はあることを思い出した。

「紅愛のお弁当箱無くない……?」と。すっかり忘れていたここには私が使っているお弁当箱しかなかったんだった!! たしかどこかに昔使っていたお弁当箱があるはず……! 私は慌てて棚の中を探しまくった。


――すると、棚の奥の方から、私が上京したての時に使っていたお弁当箱があった。よかった……とにかく今日はこれを紅愛のお弁当箱にしよう。今度出かけた時に紅愛と一緒にお弁当箱を見に行こう。とりあえずお弁当箱が見つかったところで、お弁当箱にご飯を詰めていく。お弁当箱の半分くらいご飯を入れると、冷蔵庫から冷凍食品を取り出して電子レンジで温める。温め終わったらお弁当箱の端っこの方に詰める。これだけでは物足りないので、ささっと卵焼きも作って入れる。おかずの隙間にプチトマトを入れたら簡単冷凍食品弁当の完成だ。冷凍食品は唐揚げとハンバーグ、普通の芋コロッケとコーンコロッケの二種類。物足りなくて入れた卵焼きと少し野菜がとれるようにプチトマトを入れたバランスは悪くはないお弁当だ。

 

 出来上がったら、風呂敷に包んで、紅愛の席の前に置いておく。私の弁当は保冷バッグの中に入れる。時計を見ると時刻は七時半。そういえば紅愛がなかなかリビングにやって来ない。もしかしてまだ寝ているのだろうか? 私の家から紅愛の通う怜悧高校までは徒歩で十分くらいかかる。八時過ぎに出て行くとちょうど良い時間に着く着くのだが、そろそろ紅愛を起こしに行った方が良さそうだ。私は紅愛の部屋に行きドアをノックした。


「紅愛ちゃん、起きてる? お弁当出来たよ。そろそろ起きないと間に合わなくなるよ?」


 紅愛からの返事は無い。これは相当深い眠りについているらしい。


「入るよ?」


 もう直接紅愛を起こすしかないと思った私は紅愛の部屋のドアを開けて、部屋の中に入る。部屋の真ん中に敷いてある布団ですやすや寝ている紅愛の寝顔に見とれている時間は無い。私は紅愛の布団を剥がした。すると紅愛が少し不機嫌そうな目で私の方を見た。


「……何」

「何じゃなくて、もうそろそろ起きないと遅刻するよ?」

「まだ眠い……」

「ちょっと! 二度寝しようとしないで!」


 紅愛は布団を剥がされても二度寝をしようと目を閉じて寝る気満々だ。寝ようとしている紅愛を布団の外に追い出して、ささっと布団をたたんで部屋の端に寄せた。


「とりあえず顔を洗って眠気がなくなったら、制服に着替えてね? 朝ご飯もあるから早く食べよう」

「うん……」


 紅愛は眠たい目をこすりながら洗面台に向かって行った。私ものんびりはしていられないので、まずは朝ご飯を食べることにした。朝に炊いたご飯が残っているので、ふりかけを適当にかけてお茶碗一杯分のふりかけご飯を完食すると、制服に着替えた紅愛がリビングにやって来た。紺のブレザーの上着に、下は黒と白のチェックのスカートにストッキングを穿いていた。可愛い……普段も可愛かったけど、制服もまた似合う…怜悧高校の生徒たちを仕事の行きと帰りで見かけるので、制服の事は知っていたけどこんなに似合うとは……紅愛の制服姿に口をぽかんと開けたまま立ち尽くす。


「……何ぼっーとしてんの?」

「……いや、紅愛ちゃんの制服姿が可愛くてつい……」

「ふうん……」

「……あ、白ご飯残ってるからお茶漬けかふりかけご飯でも食べる?」

「いい、いらない」

「え? でも朝ご飯食べないと元気出ないよ?」

「私、朝はあんまり食べないから」

「……そっか」


 紅愛はご飯には手をつけず水を一杯だけ飲むと洗面台で歯を磨きだした。私も歯磨きをするために洗面台に紅愛と二人並んで歯磨きをする。紅愛が先に歯磨きを終え、部屋から学校用のカバンを肩にかけた。


「……じゃ、行ってくるから」

「あ、ちょっとまって紅愛ちゃん。学校終わるのって何時?」

「……四時」

「分かった、部屋の鍵ポストの中に入れとくね」

「……うん」

「いってらっしゃい、紅愛ちゃん」

「……うん」


 紅愛は玄関のドアを開けて外に出て行った。私も最後の準備にとりかかる。軽く化粧を済ませて、いつものレシピを書き留めているノートに筆記用具、財布とスマホとモバイルバッテリーのいつものセットをカバンに仕舞ってカバンを玄関に置いておく。あとは出勤時間まではのんびり出来る。皿洗いはとっくに済ませたし、ついでに洗濯物も干しておこう。今日は天気も良いし、外に干しておけば夕方には乾くだろう。洗濯機から洗濯物を取り出し、ベランダに干しておく。これでやることは一通り終わったしテレビでも見ておこうと思ったところで、テーブルの上に置きっぱなしにしていたスマホが鳴っている事に気づいた。私は慌ててスマホの着信に出る。


「はい、園原です」

「ちょっと!! 園原さん!! あなた今何時だと思ってるの!?」


 通話越しに大きな声で怒鳴りあげるこの人は福田奈美ふくだなみさん。私の仕事先のケーキ屋cielしえるのリーダーみたいな人だ。今みたいに起こると恐いけど、周りのことをよく見ていて、店長からの信頼も厚い。パティシエ―ルとしても腕は確かで、cielの商品の三分の一は奈美さんが考えたものだ。


「えっ? 今ですか? 今は朝の八時十分ですけど……?」


 なぜ怒鳴られているか分からず、言われたとおりに今の時刻を伝えた。


「今日は人数が少ないから、仕込みをするの私と園原さんだけなのよ!? だから、七時位に来るってあなた先週言ってたでしょ!!」


 ......そうだった。今日は従業員六人中三人が休みで、一人が午後からしか来れないため、朝の仕込みを私と奈美さんだけでやらないといけないんだった……! 


「あ!? す、すみません!! 今から行きます!!」


私は電話を切ると慌てて荷物を持って家を飛び出して車を走らせた。


今回のお話はいつもより短くなってしまいましたが、次の話もなるべく早く更新する予定なのでしばらくお待ちくださいますと幸いです(*^_^*)

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