表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/36

第四話 従姉妹との一日

初めてのお出かけ。

 チュンチュンと鳴るスズメの鳴き声と八時半にセットしていたスマホのアラームの音で私は目を覚ます。まだ眠たい目をこすりながら、スマホのアラームを止めて二度寝をしようと思って、目を閉じたところで昨日の事を思い出す。ーーそうだ、今は私一人じゃなかったんだ。昨日から従姉妹の紅愛と暮らす事になったのだ。二度寝をしようと思っていたけど、もし紅愛がお腹を空かしていたりしたら大変だ。急いで朝ご飯を作ってあげなければ......!! 私はベッドから起き上がり、急いでパジャマから服に着替え、顔を洗いに洗面台に行く。顔の洗顔をして、寝癖を直して、うがいをする。朝の身だしなみが終わったところでリビングに向かう。紅愛はもうおきているだろうか? もし、おきていたらお腹が空いていないだろうか? と色々な心配事をしながらリビングの扉を開けた。


 扉を開けると紅愛がテレビの前のソファでテレビを見ながらスマホをいじっていた。


「......おはよう」

 

 私に気づいた紅愛が私の方に顔を向けて朝の挨拶をした。


「おはよう紅愛ちゃん、昨日はよく寝られた?」


 紅愛にちゃんと朝の挨拶を返す。それと紅愛もしっかり寝られたかも聞いてみる。紅愛が使っているのは客人用の布団だからあまり使われていないのだ。使ったとしても友人が家に泊まりに来るときぐらいか、音色か詩織のどちらかが泊まりに来るときだけだ。泊まりに来る頻度も高くはないため久しぶりに物置から引っ張り出したが、寝心地は紅愛に合っていただろうか。


「......うん」


 と短く紅愛が返事をする。紅愛がよく寝られたなら良かった。これで悪かったらわざわざベッドを買いに行かなければならないところだった。


「紅愛ちゃん、お腹空いてない? 朝ご飯今から作るから待っててね」


 そう言って私はエプロンを付けてキッチンに向かう。冷蔵庫を開けて材料を確認する。パンも卵もあるし朝ご飯はオムレツとパンにしよう。粉末のコーンスープもあったので、箱から二人分のコーンスープの粉末を取り出しておく。鍋の棚からフライパンを取り出して油を少し引いてコンロの火を付けて、フライパンを温める。その間に、ボウルに卵を割って塩コショウを入れて混ぜる。フライパンが温まってきたら混ぜた卵をフライパンに入れて軽く混ぜながら形を整えていく。卵の先端が固くなってきたらひっくり返して反対側も軽く焼いていく。火が通ったらお皿に映して、ケチャップを上からかけて、皿の端にレタスを盛り付けて完成だ。これで一人前のオムレツが出来たので、紅愛の分のオムレツも同じ手順で作る。ぱぱっと作り二分もしないくらいで紅愛の分のオムレツが完成した。お皿にのったオムレツをダイニングテーブルに運び、冷蔵庫から食パンを二枚取り出してトースターで三分焼く。その間に粉末のコーンスープの袋を開けて、自分のマグカップに入れ、お湯を入れる。ほくほくと湯気が上がり、暖かいコーンスープが出来た。続いて紅愛の分も作ってテーブルの上に置く。パンが焼けるまでに少しだけ時間があるので、私は紅愛がつけっ放しにしていたテレビに目を向けた。


 テレビは朝のニュース番組をやっていた。今の時期は桜が見ごろで、おすすめのお花見スポットの特集をしていた。そろそろお花見の季節だなぁと思っていたら、チンッとパンの焼きあがる音がしたのでキッチンに向かう。


 トースターからパンを取り出しお皿に移すとパンにバターを塗って、ダイニングテーブルに置いた。今日の朝ご飯は半熟オムレツとパンだ。


「紅愛ちゃん、朝ご飯出来たよ」

「……うん」


 紅愛はテレビ前のソファから移動して、昨日と同じ席に座った。紅愛の前にオムレツとパンがのっている皿と、コーンスープが入っているマグカップを置いて。私も昨日と同じ紅愛の向かい側の席に座った。


「いただきます」

「……いただきます」


 昨日と同じように挨拶して朝ご飯を食べる。まだ温かいコーンスープを一口飲む。コーンのぷちぷちする触感と、コーンのほのかな甘みにホッと息を入れたところで、半熟のオムレツをフォークで一口食べた。卵がとろとろで美味しい。塩加減もいい感じに味付け出来ている。オムレツを堪能したところで、パンも一口かじる。トースターでこんがりと焼けたパンはサクサクしていて、バターの味も効いていてとても美味しい。紅愛の方を見るとオムレツを一口食べたところだった。


「どう……? 私の好みで半熟オムレツにしたんだけど…美味しい……?」

「うん……美味しいよ」


 紅愛の口に合った食事を作れた事に安心した私は、朝の食事を再開した。




「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

 

 食べ終わりの挨拶も済ませて、皿を流し台に下げる。紅愛が持ってきた皿を受け取り、水に浸けて流し台に置いておく。紅愛は皿を私に渡すと、朝ご飯前にいたテレビ前のソファに再び座ってスマホをいじりだした。そうだ、今日は紅愛と色々な話をすると決めたのだ。そして、紅愛

ともっと仲良くするんだ……!!


「ねぇ紅愛ちゃん、今時間いいかな?」

「……何」


 紅愛はソファの後ろに立っている私の方に振り向いて返事をした。座ったまま返事をしたので紅愛が私を見上げるようにこちらを見る。よくにいう、『上目づかい』というやつだ。……か、可愛い……!! 少し大きいくりくりとした目で見られた私はその場に固まってしまった。


「……?」


 なかなか話を切り出さない私を不審に思ったのか、紅愛は少し疑問気味な表情で首をこてんと斜めに傾げた。……あまりにも可愛すぎる……しばらくこの状況を見ていたかったが、だんだん紅愛の表情が疑問から、不機嫌に変わりそうだったので何とか話を切り出す。


「……あ、えっと、紅愛ちゃんって休日とかどんな風に過ごしてるの?」


  まずは普段の過ごし方から聞いてみる。


「......スマホいじってお昼とか夜になったらご飯食べて、お風呂入って寝るだけだけど」 


 確かに紅愛はよくスマホをいじっていた。スマホで何をしているんだろう? やっぱりゲームとか? 私はスマホゲームには詳しくないけど有名なタイトルくらいなら知っているし、もしかしたら少しだけ話が出来るかも。思い切って聞いてみる。


「スマホでいつもは何やってるの? ゲームとか?」

「............なんであんたに言わなきゃならないの? 私がスマホで何やろうが私の自由でしょ、 それとも何? わざわざ報告しなきゃいけないわけ?」


 まずい...... 紅愛の機嫌が悪くなっている。なんとかして話を良い方に持っていかなければ......!


「い、いや、紅愛ちゃんは好きなように過ごしてくれれば私はそれで良いから。自由にしてて良いからね?」

「............ならいいけど」


 なんとか紅愛の機嫌は一旦は収まったようだ。でも、これ以上聞き出そうとしたらまた機嫌が悪くなりそうだし、かといって話をしないと紅愛の事は分からないし、困ったなぁと思っていたら。さっきまで私の方を向いていた紅愛が私から視線を外し、ソファの正面にあるテレビを見始めた。テレビは朝の情報番組をやっていて、今は最近駅前に出来た猫カフェの特集をやっていた。可愛い猫たちが映されているテレビを紅愛は真剣な目で見ていた。もしかして、紅愛は猫が好きなんだろうか? 私もソファの隣に腰を下ろし、一緒にテレビを見た。


「猫可愛いね」

「......うん」

「紅愛ちゃん猫好き?」

「......普通......」

 

 いや、普通ではない。そうでもなければ猫をあんなに真剣な目で見ないはずだ。なにより、紅愛は私が話しかけてる間もテレビから目を離していなかった。ようやく紅愛の好きそうなものが分かったところで。私はさっそく紅愛の機嫌が悪くないうちに、次の行動に移る。


「私も猫好きなんだ。......そうだ、紅愛ちゃんが良ければで良いんだけど、今からここの猫カフェに行ってみない?」

「......え?」


 ずっとテレビで猫を見ていた紅愛が、ようやく私の方を見た。


「猫カフェをずっと前から行ってみたかったし、今日は日曜日だからせっかくならどこかに出かけようと思って」


 私も猫は好きだし、猫カフェには前から行ってみたいとは思っていた。それに、明日からは私も仕事があるし、紅愛にも学校があるので一緒に過ごす時間が減るだろうから今のうちに仲良くなっといたほうが良い。


「まぁでも、紅愛ちゃんが家で過ごしたいんだったら家で過ごしていい」

「行く」


 私が喋っているのを遮って、食い気味に紅愛が私をまっすぐに見つめて言った。やっぱり、紅愛は猫が好きみたいだ。


「じゃあ、出かける準備をしよっか」

「分かった」


 そう言うと、紅愛は早歩きで自分の部屋に戻っていった。猫カフェに行くのが楽しみなのか、紅愛は一分もしないで部屋から出てきた。ショルダーバックを肩にかけた紅愛はそのまま私の方に目線を向けた。


「ほら、さっさと準備してよ。遅れるでしょ」


 そう言って紅愛は玄関の前で立っており、いつでも出かけるように準備万端だった。


「準備するの早くない!?」

「普通でしょ、カバン持ってきただけだし。それより早く準備して、私待ってるんだけど」

「ちょ、ちょっと待ってて!!」


 紅愛に急かされながら私も出かける準備をする。歯を磨いて、軽く化粧をする。窓にも鍵をかけて戸締まりを済ませ、部屋からカバンを持ってきて、スマホとモバイルバッテリー、財布を入れてカバンを肩にかけた。


「おまたせ! じゃあ行こうか」

「......遅い、今度からちゃんとすぐ出れるようにしといて」

「......ご、ごめん」


 紅愛から軽い説教をされながら玄関のドアを開けて、鍵をかける。マンションの廊下を歩きエレベーターのボタンを押して、一階に降りる。駐車場に駐めてある車のロックを解除して運転席に乗り込む。紅愛は後部座席に乗り込んだ。猫カフェに行くとは言っても、今の時間は九時四十分だった。猫カフェが何時に開くのかは知らないけど、この時間に行くのは少し早い気がして、どうしようかと運転席で私が一人で悩んでいると。


「......どうしたの?」


 紅愛が私に声をかけてきた。紅愛から声をかけてくるのは珍しいなと思いながら私は、紅愛の方に振り向いた。


「猫カフェに行くにはちょっと早すぎたかなぁと思って。まだ、こんな時間だし」

 

 と言って紅愛にスマホを見せて今の時間を見せる。時刻は九時四十分になったところだった。


「......? 別に待ってても良くない? 三十分もすれば入れるでしょ」

 

 待ってでも猫カフェに行きたいのか......


「でも、待ってる時間がもったいなくない? 良かったら別のお店とか見てから猫カフェに行かない?」


 せっかく紅愛と出かけられたんだし、もっと色々なお店を紅愛と見てまわってからでも遅くはないと思うけど。


「......まぁ、良いけどさ、ちゃんと猫カフェに行くんなら別のとこ見てからでも良いよ」

 

 なんとか紅愛の許しを得たところで。まずは、この時間でも開いているお店を探さなければ。


「そうだ、近くに大きいスーパーがあって、服とかも売ってるんだけど、Tシャツとか見ていかない?」


 紅愛にも持っている服には限りがあるだろうし、新しい服でも買ってあげよう。ちょうど私も新しい服を見たいところだった。


「......良いよ、あんたの服のセンス見てあげる」


 紅愛は服も好きなのか服を見に行く気満々だ。


「じゃあ、行こっか」


 そうして私達は目的の猫カフェではなく、大型スーパーに向けて車を走らせた。

なんやかんやで第四話です。この話を書いている途中で一回小説の下書きがパソコンのラグで消えるというハプニングに見舞われましたが、

なんとか書き切る事が出来ました(^_^;)

今度からは適度に保存をしながら書きたいと思います!! 以後気をつけます!

それではまた次のお話で!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ