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第三十四話 従姉妹とバレンタイン

紅愛にチョコを作ることにした奏。そこに白羽と有紗がやってきて……。

「う~ん……」


 スマホを片手に私は悩んでいた。その悩みは、『バレンタインデー』の事だ。毎年cielの皆に世話チョコを作ってるけど、今年は紅愛も居るからどうしようか悩んでいるのだ。紅愛のチョコは凝ったものを作りたいけど、なかなか紅愛が喜ぶチョコのイメージが全然思いつかない。前にチョコケーキを食べた時は喜んで食べていたけど、流石にチョコケーキを作るのは紅愛に予想されてそうだしなぁ……。もっとこう……紅愛がびっくりするようなチョコってないかな? そんな事を考えながら、ずっとスマホでバレンタインの記事を調べていた。するとその様子を見ていた橋元さんが声をかけてきた。


「何か悩み事ですか?」

「あー……。ちょっとバレンタインの事で」

「そういえばもうすぐでバレンタインでしたね」

「そうなんです。今年は大事な人にあげるんですけど、その人が喜ぶチョコが分からなくて」

「そうですね……」

 

 橋元さんは顎に手を当てて考える仕草をした。そして思いついたように口を開いた。


「それならその人が好きなものとチョコを合わせてみるのはどうでしょうか」

「好きなものですか……」



 そう言われて紅愛の好きなものを考えてみた。紅愛が好きなもの……基本的に私の手料理はいつも美味しいって言ってくれるけど、一番好きと言ってくれたものは何だろう?


「例えばフルーツと合わせると、さっぱり食べれて甘いのが苦手な人でも美味しく食べられますよ」


 悩んでいる私を見て橋元さんが例を挙げた。紅愛の好きなフルーツも考えてみたけどまったく思いつかない。どのフルーツも美味しいって言ってたしなぁ……。


「あとはその人をイメージして作ってみるとか」


 イメージして作る……。確かに今まで誰かをイメージして作ったことないけどやってみたい気持ちに駆られた。


「橋元さん、ありがとうございます。参考になりました!」

「いえいえ。お役に立てたようで良かったです」


 早速家に帰ったら試作をしよう。すると奈美さんがスタッフルームに入ってきた。


「園原さん。貴女に用事があるって人が来てるんだけど」

「えっ? 私に? 誰だろ……」

「怜悧高校の女の子よ」


 そう言われて店内に戻ると、そこには白羽ちゃんと有紗ちゃんが居た。白羽ちゃんはこちらに気づくと大きく手を振った。


「奏お姉さん! こんにちは!」

「こんにちは。二人とも今日はどうしたの?」

「あのね! もうすぐでバレンタインでしょ? だから有紗ちゃんとバレンタインのチョコを作るの!」

「そうなんだ。でも、どうしてうちに?」


 私が疑問を口に出すと白羽ちゃんは笑みを浮かべた。


「それでね、奏お姉さんはチョコ作るの上手そうだから、作り方教えてもらおうと思って来たの!」

「なるほどね。じゃあ、私もバレンタインのチョコを作る予定だったし、今度一緒に作ろっか」

「やったー!!」


 白羽ちゃんが喜んでいる横で、有紗ちゃんは少し不安げな表情をしていた。


「有紗ちゃんどうかした?」

「いえ……その、白雪さんって料理出来るのかなって」

「学校で調理実習とかあるんじゃないの?」

「いや……その時の白雪さんの行動が凄かったというか……」

「行動がすごい? どういう事?」

「実は……」


 有紗ちゃんの話によると、どうやら白羽ちゃんは今まで料理をしたことがないらしい。そのせいか、白羽ちゃんの班だけとんでもない料理が出来たそうだ。


「それは大変だったね……」

「はい……。なので、本当に大丈夫なのか心配で……」

「大丈夫だよ。出来る限り私が白羽ちゃんの傍で見とくよ」

「ありがとうございます」


 有紗ちゃんはとりあえず安心した様子を見せた。すると白羽ちゃんが私の肩をぽんぽんと叩いた。


「何? 白羽ちゃん」

「あのね、この事は紅愛ちゃんには内緒ね?」

「え? 紅愛ちゃんは参加しないの?」

「うん! だって、紅愛ちゃんにあげるチョコを作るんだもん!」

「そ、そうなんだ」


 てっきり紅愛ちゃんも入れて四人で作ると思ったがどうやら違ったようだ。


「じゃあ、今度の土曜日とか奏お姉さん空いてる?」

「うん。大丈夫だよ」

「それじゃあ、チョコ作りは土曜日に決まりね! 有紗ちゃんもそれでいいよね?」

「うん。じゃあ、土曜日に奏さんの家集合?」

「あ……でも、私の家で作ると紅愛ちゃんが居るからバレちゃうね……」

「あ~……そっか。じゃあ、有紗ちゃんの家は?」

「えっ? 何で私?」

「だって、有紗ちゃんのお父さんとお母さんは仕事で居ないんでしょ? だったら、有紗ちゃんの家で作ればいいじゃん!」

「まぁ、そうだけど……。でも、それなら白雪さんの家は?」

「ちょっと……土曜日はお父さんのお客さんとかが来るからダメなんだ……」

「そっか」


 白羽ちゃんの提案に有紗ちゃんが納得すると、白羽ちゃんは嬉しそうに笑った。


「じゃあ、有紗ちゃんの家に決定だね! 時間はどうしよっか?」

「そうだね……十四時とかどうかな?」

「オッケー! じゃあ、十四時に有紗ちゃん家に集合ね!」

「分かった、材料はどうしよっか? 各々準備するとかにする?」


 私がそう言うと有紗ちゃんが首を勢いよく横に振った。そして私の耳元に口を寄せた。


「白雪さんに用意させたらやばいものを持ってくるかもしれないので止めといた方がいいと思います……」

「わ、わかった……」


 私は苦笑いしながら答えると、有紗ちゃんは白羽ちゃんに話し始めた。


「材料は各々準備するのは大変だから、奏さんが持って来てくれるって」

「えっ、いいの? やった! 奏お姉さんありがとう!」

「ど、どういたしまして」


 白羽ちゃんは私に抱き着くと笑顔でお礼を言った。


「あっ! そろそろ帰らなきゃ! じゃあ、今度の土曜日ね!」

「うん。またね」


 そう言って白羽ちゃんは笑顔で両手を大きく振りながらお店を出て行った。


「それじゃあ、私も帰りますね」」

「うん。有紗ちゃんも土曜日はよろしくね」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 有紗ちゃんは丁寧に頭を下げてお店を後にした。その様子を見ていた奈美さんが声をかけてきた。


「さっきの子たちは知り合い?」

「はい。従姉妹の友達で」

「従姉妹の友達なのに仲いいのね」

「何故か気に入られちゃって」

「そう。おしゃべりはこの辺にして、仕事に戻りましょうか」

「そうですね」


 それから私は閉店時間まで働いた。やはりバレンタインが近いからか、チョコを使った商品が多く売れた。帰りにチョコの材料を買って帰ろう。そうして私はスーパーで買い物をしてから家に帰った。




――




 土曜日。お昼をぱぱっと作って食べ終わると、スーパーで買っておいた材料を紙袋に入れて玄関に置いておく。するとその様子を見ていた紅愛が不思議そうな顔をした。


「今日どこか行くの?」

「実はいきなり仕事が入っちゃって……」


 本当は休みだけど紅愛に怪しまれないで長時間外出する為には嘘をつくしかない。


「そっか」

「ごめんね」

「ううん、気にしないで」


 紅愛は寂しそうな表情を見せた後、すぐに笑顔になった。


「奏も大変だね」

「う、うん」

「仕事頑張ってね」

「うん。ありがとう」


 私はそう言うと、靴を履いて扉を開ける前に振り返った。


「それじゃあ行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


 紅愛に軽く手を振って私は外に出た。そして、有紗ちゃんに教えてもらった住所をカーナビに入力して車を走らせた。十五分ほど車で走ると、有紗ちゃんの家に着いた。インターホンを押して待っていると、有紗ちゃんが家から出てきた。


「こんにちは、有紗ちゃん。白羽ちゃんはもう来てる?」

「はい。白雪さんもさっき来たところで、めちゃくちゃテンションを高くしながらキッチンで待ってます……」

「そうなんだ……」

「とりあえず、中に入ってください」


 有紗ちゃんに案内されて私は白羽ちゃんが待っているキッチンに向かった。するとエプロンを着けた白羽ちゃんがルンルンしながら待っていた。


「あっ! 奏お姉さん!」

「こんにちは、白羽ちゃん。今日はいつもより元気だね」

「うん! だって奏お姉さんと一緒にチョコ作るんだもん!」

「そっか」


 白羽ちゃんは満面の笑みを浮かべた。その様子を見ていて有紗ちゃんが私に話しかけてきた。


「白雪さんは、奏さんが来る前からこんな感じで」

「そ、そっか」

「はい」

「ねぇねぇ、奏お姉さん! 早くチョコ作ろうよ!」

「そうだね。じゃあ、早速作ろうか」

「うん!」


 白羽ちゃんは嬉しそうに大きく首を縦に振ると、私達はチョコレート作りを始めた。まずは板チョコを細かく刻んでボウルに入れる。……のだが、早速白羽ちゃんの包丁の持ち方が怖い。


「白羽ちゃん、大丈夫? できる?」

「任せて! これくらいなら私でも出来るよ!」

 

 そう言って白羽ちゃんは鼻歌を歌いながら刻み始めた。その姿を見た有紗ちゃんは心配そうな目をしながら私に声をかけてきた。


「本当に大丈夫かな……」

「大丈夫だよ。私がちゃんと見ておくから、有紗ちゃんは自分の作業を進めて」

「はい。分かりました」


 それから私と有紗ちゃんでお菓子を作り続けた。有紗ちゃんが作っている間に、私はガトーショコラを作る事にした。オーブンを温めている間、有紗ちゃんが私の横に立って作業を眺めていた。


「本当に大丈夫ですよね?」

「だ、大丈夫だよ。ほら、一応チョコは切れてるみたいだし」

「確かに……」


 そう言って白羽ちゃんの手元を覗いてみると、少し大きすぎる気がしなくもないけどチョコは切れていた。


「よしっ、次は湯煎だね」

「ゆせん?」

「チョコを溶かす事」

「へぇー」


 私はお鍋に水を入れて火にかける。その間にチョコの入ったボウルをお湯が入ったお鍋の中に入れて溶かしていく。すると、白羽ちゃんが覗き込んできた。


「私もやりたい!」

「いいよ」

「やったー!」


 白羽ちゃんと交代して、今度は白羽ちゃんにチョコを混ぜてもらう。チョコをかき回している時の白羽ちゃんは楽しそうだった。


「チョコ作るの楽しいね!」

「そっか。それは良かった」

「うん!」


 チョコを溶かし終わったので、それを好きな型に入れて冷蔵庫で冷やす。その間もずっと白羽ちゃんは楽しみなのか、ソワソワしていた。


「ねぇねぇ、まだ~?」

「もう少し待っててね」

「はーい。早く出来ないかな~」


 そうして三人でチョコが固まるのをキッチンの後片付けをしながら待った。そして、固まったチョコを取り出すと、ハートや星の形をしたチョコが出来上がっていた。


「わぁ! 可愛いね!」

「なんとか無事に作れて良かった……」

「二人共お疲れ様。後はラッピングだけだね」

「私ちゃんとチョコを入れる袋持ってきたよ!」


 そう言って白羽ちゃんは鞄の中から可愛らしいピンクの花柄が描かれた紙袋を取り出した。


「それじゃあ、白羽ちゃんはこれに詰めようか」


 私はその紙袋の中に出来上がったばかりのチョコを入れて白羽ちゃんに渡した。


「はい。白羽ちゃん」


 白羽ちゃんは嬉しそうな表情で自分の作ったチョコを大事そうに受け取った。すると隣で有紗ちゃんが安心したかのようにため息をついた。


「これでチョコは大丈夫そうですね」

「そうだね。二人共上手だったよ?」

「まぁ……私は作り方は知ってましたけど、白雪さんが作るのが怖くて……」

「でも無事に作れて良かったね」

「そうですね」

「ねぇねぇ! 奏お姉さん。奏お姉さんはチョコ以外にも何か作ってたよね? 何作ったの?」


 そう言われて二人の前に私が作ったガトーショコラを見せた。


「紅愛ちゃんにはチョコも渡すんだけど、もう一品作りたいなと思って作ったんだ」

「すご~い! 美味しそう!」

「ふふっ。ありがとう」


 それから私達は完成したチョコレートを箱に詰めてリボンを付けた。


「よしっと……こんな感じかな?」

「はい。良いと思います」

「うん! いい感じ!」

「じゃあ、今日はこれで解散かな」

「ありがとうございました。奏さんが手伝ってくれたおかげで、上手にチョコを作ることが出来ました」

「私も! ありがとね! 奏お姉さん!」

「どういたしまして」


 後片付けを終えて帰る準備をして白羽ちゃんと一緒に玄関に向かう。すると、有紗ちゃんが玄関まで見送りに来てくれた。


「帰り気を付けて」

「ありがとう。有紗ちゃん」

「じゃあ、有紗ちゃん! また学校でね!」

「うん」


 そうして私と白羽ちゃんは家を出た。そしてすぐに、見慣れた高級車が目の前で停まった。


「じゃあ、私も帰るね! 奏お姉さんまたね!」

「う、うん……。またね」


 白羽ちゃんに手を振ると、白羽ちゃんは車に乗り込んだ。車を見送って私も車に乗って帰宅した。




――




「ただいまー」


 家に帰ってリビングに入ると、そこにはソファーに座ってテレビを見る紅愛の姿があった。


「おかえりなさい」

「ただいま紅愛ちゃん」

「今日は早いね」


 そういえば紅愛には仕事って嘘をついていたんだった。時計を見ると時間は十六時。こんな時間に仕事が終わることはあまりないけど、本当の事を言うわけにもいかないので誤魔化すことにした。


「うん。早めに上がっていいって言われて」

「ふーん」


 興味なさげに紅愛は返事をした。紅愛がこちらを見ていない隙に、作ったチョコとガトーショコラを冷蔵庫に入れた。そして私は紅愛の隣に座った。すると紅愛が私の肩に頭を乗せてきた。


「ねぇ、奏」

「なぁに?」

「……なんでもない」


 最近紅愛は私の肩に頭を乗せてくるけどこれをするときは大体紅愛が私に甘えたい時や、かまって欲しいときにやることが多い。今もきっとそうなんだろうと思いながら、私は頭を撫でた。すると気持ちよさそうな表情を浮かべて目を細めた。

しばらくそのままでいると満足したのか、紅愛はゆっくりと立ち上がった。


「そろそろオセロにご飯あげなちゃ」

「うん。私も晩ご飯の準備をしようかな」


 そう言って私はキッチンに向かった。今日はナポリタンを作る。フライパンに油を敷いて、火をつけた。その間に玉ねぎをみじん切りにして炒めていく。すると紅愛がキッチンの入り口から何も言わずにただじっと私を見ていた。


「紅愛ちゃん……どうかした?」

「いいや。ただ奏が晩ご飯を作ってるのを見てるだけ」

「そうなの?」

「うん」


 そんな会話をしているうちに、玉ねぎが飴色になったらピーマンとソーセージを入れて軽く炒める。炒め終わったらパスタを茹でて、水でしめらせた後にケチャップと混ぜ合わせる。最後にバターを一かけ入れて味を調える。これで完成だ。


「パスタ出来たよ」

「じゃあ、お皿とか出しとくね」

「ありがとう」


 紅愛が持ってきたお皿にナポリタンを盛ってテーブルに運んだ。


「いただきます」


 紅愛と向かい合って一緒に食事をとる。いつものように美味しそうに食べる姿を見ながら私も食べ始めた。



 ナポリタンをぺろりと食べ終わって。食器を流しに置いて、お風呂に入る準備をする。


「奏、先に入っていいよ」

「ありがとう。じゃあ、先に入って来るね」


 部屋から着替えを持ってお風呂場に行って服を脱ぐ。シャワーを軽く浴びてから浴槽に浸かる。


「ふぅ……」


 少し熱めのお湯が心地よい。それから十分くらい浸かった後、身体と頭を洗ってお風呂を出た。体を拭いて髪を乾かす。そしてパジャマを着てリビングに戻った。ソファーに座ってテレビを見ている紅愛に声をかけて私は自分の部屋に戻った。ベッドの上で横になってスマホを手に取る。適当に動画を観たり、ネットサーフィンをしていると、お風呂を出た紅愛が部屋に入ってきた。


「奏、もう寝るの?」

「ううん。まだ起きてるけど」

「ならよかった。ちょっと奏に相談したいことがあるんだけど」

「相談? どうしたの?」

「うん……。なんか最近白羽の様子が変というか」

「変?」

「うん。いつもならしつこいくらい私に構って来るのに、最近は大人しいんだよね」

「そ、そうなんだ」

「それで、白羽が奏に何か言ってないかなと思って」

「えっと……特に何も聞いていないけど……」


 紅愛に嘘をつくことに罪悪感を覚えながらも、本当の事を言うわけにもいかないので私は首を横に振った。


「ふーん。ならいい。ありがと」


 そう言うと紅愛は私のベットに潜り込んだ。すっかり二人で寝るのが当たり前になったなと思いながら、私は電気を消して眠りについた。




――




そしてバレンタイン当日。仕事を終えた私はドキドキしながらマンションのエレベーターに乗っていた。紅愛にどういう風にチョコを渡そうか、どんな顔で渡すかなど色々と考え終わらないうちにエレベーターは五階に到着した。扉の前で一旦深呼吸をして、私は玄関の扉を開けた。


「ただいま」


 すると紅愛の部屋から紅愛が出てきた。すると手にはラッピングされた袋と箱を持っていた。


「おかえり」

「紅愛ちゃん、その手に持ってるのって……」

「ああ、これ? 今日バレンタインだからって、有紗と白羽がくれた」


 そう言いながら紅愛は私の手を握ってリビングに引っ張っていった。紅愛は二人が作ったチョコを開けて中身を確認した。


「有紗はともかく、白羽はどうやって作ったんだろ?」

「さぁ……」


 私は苦笑いをしながら答えた。すると紅愛は私を見て言った。


「ねぇ、奏」

「なに?」

「……奏はチョコ作ってないの?」

「えっ……」

「奏の事だから、もうチョコは作ってるんじゃない?」

「……」


 紅愛がにやにやしながら言ってきた。バレてる。完全に紅愛は私がチョコを用意した事を確信しているようだ。観念した私は鞄から綺麗に包装してある小さな小包を取り出して、紅愛に手渡した。


「はい……」

「やっぱりね」

「なんで分かったの?」

「なんとなく。それに奏が私の事が好きなら、絶対にチョコをくれると思ったから」


 紅愛は嬉しそうに笑って私からのチョコを受け取った。そして中に入っていたハート型のチョコレートを口に入れた後、「美味しい」と言って笑った。


「……なんか複雑な気分」

「なんで?」

「本当は、もうちょっといい感じに渡す予定だったのに……」

「いいじゃん別に。私は有紗と白羽から貰った時より、奏に貰えた方が嬉しいよ」


 紅愛がそう言って私の頭を撫でてきた。紅愛の言葉がとても嬉しくて、胸が温かくなった。


「ありがとう奏」


 そう言うと紅愛はぎゅうっ、と抱きついてきた。


「ホワイトデーはちゃんとお返ししないとね」

「うん……。でも無理しないでいいよ?」

「大丈夫。奏の為ならなんでもできる気がするから」


 紅愛が笑顔で言う。そんなこと言われたら期待してしまうじゃないか。私は心の中で呟いた。


「じゃあ、残りも美味しく食べるね」

「うん」


 そして私たちはソファーに座ってテレビを見ながら、一緒にチョコを食べた。

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