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第二話 従姉妹との再会

あの頃はあんなに小さかったのにな……

 実家から出発して一時間半と数十分。娘さんが通っている、怜悧高校の前を通り。そのまま車を走らせ続け一軒のアパートに到着した。アパートは二階建てで、上と下に四部屋ずつあり、合わせて八部屋あった。人のアパートに自分の車を停めても良いのか私は一瞬迷ったが、紗英さんの車があるはずの八番と書かれた駐車場には車が無かった。紗英さんは今は居ないのかな? いや、紗英さんは仕事に行ってて、娘さんが留守番して待っているのか。それとも、二人共家に居ない?お母さんから一応鍵は貰っているから部屋の中には入れるけど、人の家に勝手に入って待っているのも失礼だし。 とにかく、誰かいるかをまずは確認しなければ。紗英さん少しの間駐車させてもらいます。そう思いながら八番の駐車場に私の車を停めて、車から降りる。階段を登り、二階の通路の一番奥の部屋に向かう。


 部屋の前に到着し、少し緊張しながらチャイムのボタンを押した。

 ピンポーン


 .........チャイムが鳴ってから十秒位が経っても、人が出てくる気配が無い。二人共留守にしてるようだ。このまま扉の前で待っているのも、不審者と間違われそうなので、あまりしたくなかったけど、仕方なく最終手段の鍵を使って先に部屋の中で待つ事にした。鍵をカバンから取り出し鍵穴に差し込む。扉はガチャッと音をたて、私は扉を開けた。


「おじゃましま〜す……」

 

 誰も居ない部屋の中に私の申し訳程度の声だけが部屋の中に消えていった。とりあえず靴を脱いで、廊下を歩く。廊下左右に扉が二つずつあって、廊下の突き当たりに、多分、リビングと廊下を繋いでいるであろう扉があった。とりあえずリビングで待っていれば良いかな? 娘さんからしたら自分の母親のお姉さんの子が、自分より先に家にあがっているという状況だ。私が同じ状況にあったら、困惑と驚きで頭が混乱するだろう。紗英さんの娘さん、先に家に上がらせて頂きます。


 廊下の突き当たりの扉はやはり、リビングを繋ぐ扉だった。そこそこ広い。入って右手の方にはダイニングテーブルがあり、更に右側の奥にはキッチンがあった。左手は和室になっていて、前方右手には、少し低いテーブルとソファがあって。前方左手にはテレビと観葉植物、四段のタンスがあった。勝手にテレビを観るのもあれだし、ソファにでも座って待っていようかな。現在の時刻はもうすぐで三時になるところだった。私はスマホをカバンから取り出し、スマホを弄りながら紗英さんの娘さんが帰って来るのを待つ事にした。




 私が紗英さんの家に着いてから三十分くらい経った時だった。玄関のドアがガチャッと開く音がした。私はスマホをカバンの中にしまい、ソファに座ったまま玄関の廊下とリビングを繋ぐ扉をじっと見つめた。紗英さんの娘さんに会ったのは結構前だったし、今、どんな姿なのかも私は知らない。どんな娘なのかドキドキしながら、扉が開かれるのを待っていた。


 ガチャッ

 とリビングと玄関の廊下を繋ぐ扉が開いた。私は扉から入って来た娘に、目を奪われた。

髪は綺麗な黒髪でサラサラとして、長さは背中の真ん中位だ。その綺麗な黒髪を高く一つにまとめてポニーテールにしていた。睫毛も長くて、目もぱっちりしている。今は高校二年生だと聞いていたが、こんなに可愛いくなっていたとは思わなかった。昔会った時にも可愛い子だったけど、数年でこうなるとは。街中で、高校生達をよく見掛けるが、他の高校生達と比べても、ダントツで可愛かった。紗英さんの娘さんは扉を開けて一、二歩。歩いた所でソファに座っているこちらに気付き、ピタリとその場で止まり、何かを思い出したかのように、ソファの前に置かれている少し低いテーブルにチラっと目線をやると、ソファに座ったままの私に再び視線を戻した。


「……あんたが、例の人?」

 

 その娘は高くも低くもない、透き通るような声で喋った。


「……あ、えっと……」

 

 彼女に見とれていた私は、いきなり声を掛けられ。さっきまで会ったら何を話すか考えていたが、それが全て頭の中から吹っ飛び、返事をしなければと思ったが、声を出すのがやっとでそこから先の言葉は出てこなかった。


「……今から準備して来るから、ちょっと待ってて」

 

 まともな返事を返さない私に痺れを切らしたのか、彼女はそういうと、さっき開けて入ってきた扉を振り返り、引き返そうと私に背を向けた。


「……あ、あの!」

 

 私は聞きたい事がある訳でも無いのに、咄嗟に彼女に声を掛けた。

彼女は私に背を向けたまま、顔だけをこちらに向け、私の方を見た。


「……何」

 

 まずい…… 特に何を話すか考えてなかった。何か、何か話す話題を探さなければ。私は頭を回転させ、話す話題を考えた。


「……えっと、私、園原奏って言うの。ほら、小さい頃何回かおばあちゃん家で会わなかった?」

 

 まずは彼女が私の事を覚えているかどうかを聞いてみる事にした。


「......知ってる、正月の時に姉妹揃って騒ぎながら遊んでたの見てたから」

 この娘からすると私の印象があまり良くない感じになってしまっている......まぁ、とりあえず私の事を覚えていた事が分かったのはいいんだけど......


「......話はそれだけ? この後あんたの家に行くんでしょ? 私、荷物取ってくるから」

 

 そう言って彼女は廊下の方に向きを変え、私に背中を向けた。


「待って!! その前にもう一つだけ、聞きたいことがあるんだけど......」

 部屋に戻ろうとする彼女を引き止め、どうしても彼女に聞かなければならない事があったのだ。


「......今度は何?」

 

 彼女はめんどくさいと思ったのか又は、少しだけ不機嫌になったのか、彼女の透き通るような声が少しだけ低くなった。


「えっと......名前なんて言うの......?」

 

 私はこの娘の名前を知らない。というか、覚えていないのだ。小さい頃に紹介されていたが、紹介したのだってもう十年位前の事だったしもう覚えてはいなかった。


「…………はぁ? あんた…… 私の名前忘れたのに来たの?」

 

 彼女はかなりびっくりしたのか、ぱっちりしている目を大きく見開いていて、口も開くほどびっくりしたようだ。


「ご、ごめんなさい……」

 

 彼女の呆れた表情と声に何故か年上の私の方が申し訳なくなり、私の口から謝罪の言葉が出ていた。


「……名前なら、その辺とかに書いてるでしょ、適当に見といて」

「……え? 名前言ってくれないの……?」

 

 てっきり彼女の口から自己紹介も兼ねて、知らされると思ったのだが。


「……あんまり自分の名前好きじゃないし…… 勝手にその辺見れば分かるから、気になるんなら見とけば......」

 

 そう言って彼女はそのまま、リビングと玄関廊下を繋ぐ扉を閉めた。その扉の向こう側から、また扉がガチャッと開く音が聞こえた。多分、彼女が自分の部屋に入ったのだろう。


 彼女がリビングから出ていき、またリビングには私一人になった。確かに今思えば、あまりリビングを見てなかった。人のリビングを見て回るのは少し気が引けるが、彼女に言われた通りにリビングを少し見て回る事にした。確か彼女はその辺を見れば分かると言っていたが、その辺とはどこの事なのだろう。そういえば、彼女はリビングに入ってきた時に、ソファの前に置かれた低めのテーブルに目線を送っていた。そこに、彼女の名前が書いてある何か があるかもしれない。私はソファから低めのテーブルの前に移動し、テーブルの上を見てみた。


 見てみると、彼女から見て正面の所に小さいメモ用紙が一枚置いてあった。メモにはこう書いてあった。


『紅愛へ。今日、前から話していたお母さんの代わりに貴女の面倒を見てくれる人が来ます。あまり迷惑をかけちゃ駄目よ? お母さんより。』

 

 どうやらこれは、紗英さんが娘さん宛に書いたメモだったようだ。とにかくこれで娘さんの名前が分かった。『紅愛』これが娘さんの名前らしい。だが、名前が分かったのは良かったのだが、なんて読むのかが分からない…… どうしよう、本人に聞くのも失礼だろうか、しかし、自分でいくら考えても、読みは分からないままだった。


 そうこうしている内に、玄関廊下からガチャッと扉が開く音がした。彼女の準備が終わったらしい。ほどなくしてリビングとを繋ぐ扉が開いた。


「......準備出来たけど………………」

 

 私はテーブルの前で小さいメモを持ったままの状態で彼女と目が合った。目が合ったまま、沈黙した空気が五秒位続いた。


「……名前、分かったの?」

 

 彼女からしたら、自分の名前が書かれたメモを私が持っていたから、自分の名前はもう分かったと思ったのだろう。だが、私は、名前は分かったが読みは分からないままだった。


「……変な名前だと思ったでしょ……? 笑いたいなら笑いなよ」

 

 やっぱり私が彼女の名前を知っている前提で話が進んでいる。もう、こうなったらやっぱり本人に直接聞こう。精一杯考えたが、分からないものは分からない。私は勇気を出して彼女に聞いてみる事にした。


「……あの、名前…… なんて読むの……?」

 

 私がそう言うと、別の所を向いていた彼女がこちらを向いた。


「……え? 読めなかった……? ......まぁ、読み難しいからね。 でも、聞いたら変な名前だって思うでしょ……」

「大丈夫、大丈夫! 思わないから、名前教えてくれる……?」

 

 彼女は何故か名前を教えるのを、嫌がってる様に見える。だが、これからはしばらく一緒に暮らす事になるのだから、名前を知らないのはとても困る。なので、何とか彼女に教えてくれる様に頼んだ。


「…………『紅愛』って書いて、『くれあ』って読むの…… 変な名前だと思わない?」

「ううん、変な名前なんかじゃないよ、良い名前だと思うよ」

 

 散々渋っていた彼女が名乗った名前は、彼女が思うほど変な名前だとは私は思わなかった。あまり見かけない名前だが、私は良い名前だと思ったけど本人には何かしらの理由があるのだろう。とりあえず名前が分かって良かった。これで、名前が分からないと言う問題は解決した。


「……ほんとにそう思ってる……? まぁ、いいや、ところでもう出発は出来んの? 名前が分かったなら、もういいでしょ? それとも、まだその小さいメモを持ったまま立ってるつもり?」

「……あ、ごめんね、じゃあ出発しようか」

 

 彼女に言われて私は、ずっと紗英さんの書いたメモを持ったまま、立ち続けていた事に気づいた。紅愛はもう出発する準備が出来ていて、紅愛の肩には、黒と白を基調としたショルダーバッグが掛かっていた。彼女は私を急かすようにぱっちりしていた目を、少しジト目気味にして私を見ていた。これ以上彼女を待たせるのはまずいと思い、私は紗英さんの書いたメモをテーブルに置き、自分のカバンを持つと彼女が待っている玄関廊下の扉の方に向かう。玄関廊下は紅愛が立っていたのであまり見えなかったが、扉は開いており玄関の前には、一週間分の荷物が入りそうな程大きい黒のキャリーバッグと、こちらもそこそこな大きさの黒のボストンバッグが置いてあった。これが紅愛が持っていく荷物全部らしい。


「忘れ物とかない?」

「大丈夫、あったとしてもまた取りに帰りに来ればいいし」

 

 言われて見れば紗英さんの家から私の家までは三十分位で着く。その気になば徒歩でも行ける場所にあるのだ。なので忘れ物等の心配は無さそうだ。


「じゃあ、車に行こうか」

 

 私と紅愛は玄関で靴を履くと、玄関の扉を開けて外に出る。紅愛のキャリーバッグを玄関の外に出して、玄関の扉の鍵をかけた。そのままアパートの廊下を歩き、一階に続く階段の前まで来た。


「キャリーバッグ持ってあげよっか?」

 紅愛はショルダーバッグを肩に掛けていて、更に逆の肩にボストンバッグを掛けていた。多分そこそこ重いであろうキャリーバッグを、持ったまま降りるのは大変だろうと思い、私は自分の数歩後ろを歩いて来る紅愛に聞いてみた。


「……いや、いい、自分の荷物だから自分で持つ」

「……あ、そっか……」

 

 会ったばかりだからしょうがないかもしれないけど、紅愛の私に対する態度が少し、いや、かなり冷たい気がする。一応私の方が歳上なのだが…… だからと言って敬語を使って欲しいとかそういう訳じゃ無いけど、もうちょっと頼って欲しい気持ちが少しある。いつか紅愛が私を頼ってくれる日もいつか来るのだろうか。そうこう考えていたら私の車の前に到着した。


「じゃあ、荷物を車の後ろに乗せるね」

「うん……」

 

 紅愛からキャリーバッグとボストンバッグを受け取り、車の鍵を開けて、後ろを開け紅愛の荷物を乗せた。紅愛は私が荷物を全て車に乗せるのを確認すると、車の後部座席に乗り込んだ。それに続く様に私も運転席に乗り込んだ。


 後部座席に乗っている紅愛の様子を見るため、私は車のルームミラーで紅愛の方をチラリと見てみた。紅愛は、窓の外の景色をただ見ていてだけだった。これからどうしようかな、このまま私の家に帰っても良いけど、晩ご飯はどうしようかな。紅愛の好物とかも知らないし、何を作ろうかなぁ。


「紅愛ちゃんは、晩ご飯に何か食べたいものとかある?」

 とりあえず、紅愛に食べたい物があるか聞いてみた。

「……別にない」

「そっか、食べれない物とかあったりする?」

「ない」

 

 ……困った、食べたい物が無いとか、なんでも良いとかが一番困る。とりあえず一旦家に帰って、冷蔵庫の中を見てから決めようかな。本当は帰りにスーパーに寄って、紅愛と話し合いながら晩御飯を決めたかったけど、紅愛は食べたい物がないみたいだし、スーパーに行ったところで結局は私が一人で決める事になるんだろうし。冷蔵庫には確かまだ、材料がいくつか残っているだろうからとりあえず家に帰ろう。私は紅愛を乗せた車を私の家に向かって走らせた。

読んでくれてありがとうございます!!!! 作者の葉月朋です!空いた時間に少しずつですが書いていって、なんとか二話を書き終わることが出来ました!! これからもまったりカタツムリと同じ位の更新になるとおもいますが、

頑張りますのでこれからも応援をよろしくお願いします。それでは、いつになるのか分かりませんが次のお話で会いましょう!作者の葉月朋でした!!

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