第十五話 紅愛のテスト勉強会
テストに向けての勉強会。
「はぁ……」
「ん? どうしたの紅愛ちゃん、ため息なんて吐いて」
「あぁ、別に大したことじゃないけどさ……」
その理由は数時間前の放課後に遡る。
「勉強会? また勉強すんの?」
「気が付いたらもう六月だろ? 六月が終わったらすぐに期末考査がある。だから、その予習も兼ねて勉強会をやろうってわけ」
「いいじゃんまだ期末まで結構あるんだし、そんなに早くから勉強しなくてもいいじゃん」
「早めにやらないと、紅愛勉強やらないだろ!」
「だって……めんどいし」
「もし期末で赤点だったら、夏休みも補講を受けに行かないだろ? そうしたらせっかくの夏休みが勿体無いだろ?」
「そりゃそうだけど……」
「いいから勉強するぞ! 明日の何時がいい?」
「……後で連絡する」
「分かった。紅愛約束忘れるなよ?」
「分かってるって……」
「二人でなんの話~?」
私と有紗が話していると一番クラスの中で関わりたくない、白雪白羽がいきなり声をかけてきた。
「……なんであんたがいんの」
「いや~有紗ちゃんと紅愛ちゃんが話してたから何の話かなぁ~と思って」
「別に何でもない」
「え~? ほんと~? それでなんの話?」
そう言うと白羽は私に聞くのは諦めたのか、有紗から話を聞こうと私から有紗の方を見た。
「えっと、今度の期末考査に向けて紅愛とテスト勉強するって話だけど……」
「そうなの? いいなぁ……私も勉強得意じゃないから、有紗ちゃんに教えてほしいなぁ~」
「そ、そうか? それなら白雪さんも一緒にやる?」
「え? いいの?」
「ちょっと……」
まずい……このままだとただでさえめんどくさい勉強会が、白羽が来ることで更にめんどくさくなる。さすがに白羽が来るのだけは阻止する為に会話に入ろうとすると。
「まぁ待てって」
と言ってきた有紗に手で制されてしまう。有紗にも何か考えている事でもあるのか? とりあえず有紗と白羽の会話を黙って聞く。
「それでいつするの?」
「明日にやろうと思うんだけど白雪さんはそれでいい?」
「うん! いいよ! じゃあ明日ね!」
「時間はあとで決めるから、白雪さんの連絡先交換してもいい?」
「うん! じゃあ、私のLIMEのID教えとくね!」
有紗と白羽がLIMEを交換するのを私は黙ってみる。
「じゃあ、詳しい事はあとで連絡するから」
「うん、分かった! じゃあまた明日ね!」
そう言って白羽は手をぶんぶん振りながらカバンを持って教室から出て行った。
「なんで白羽を勉強会に誘ったの……」
「だって、あの白雪家の子じゃん? 関係が悪くなるとなんか怖いじゃん……」
「だからって誘わなくても……」
「いいだろ別に、後で白雪さんをいじめたとか思われるの嫌だろ」
「いじめてはないよ、ただ私が苦手なだけ」
「とにかく! 明日は白雪さんもいるけど目的は勉強だからな? 一緒に遊ぶ訳じゃないし良いだろ?」
「参加したくねぇ……」
「ぐちぐち言ってもしょうがないだろ……とにかく詳しいことはあとでLIMEで話すから、私はもう帰るからな?」
「うん……」
そして有紗もカバンを持って教室から出て行った。
「………………嫌だな、明日あいつと勉強するの……」
かと言ってここでうじうじしててもしょうがないし、とりあえず家に帰ろ。
――ということがあって、私は今スマホを片手にこのため息の原因をどうしようか考えていた。せっかく土日ゆっくりしようと思ってたのに、なんでわざわざ休みの日に勉強しなくちゃいけないの……
「もしかして学校で何かあった?」
奏が少し心配そうな顔で私の顔を覗き込む。
「別に何でもない……ただあまり関わりたくない奴と一緒に過ごすことになって不安なだけ」
「そうなの? 紅愛ちゃんが関わりたくない人かぁ……クラスの男子とか?」
「いや、男子よりもめんどくさいかもしれない」
「そんな人が学校にいるの? どんな人なんだろ……」
「まぁ、あんたには関係ないから気にしないでいいから」
「そう? ならいいけど……」
奏がまだ心配そうな目で私を見るけど、奏に話てもしょうがないので詳しく事は話さない事にした。するとスマホからぴこんとメッセージが来た通知音が鳴った。多分有紗からのメッセージだろう。LIMEを開いて有紗からのメッセージを確認する。
『明日の勉強会をする時間、結局どうする?』
『お昼食べてからにしといて』
『了解。もしあれだったら、お昼うちで食べるか?』
『いやいい。家で食べてからにする。場所はどこでするの? 有紗の家?』
『私の家でもいいけど? 他には図書館か、それとも紅愛の家?』
『有紗の家でいいよ、家にあいつ呼ぶの私は嫌だし』
『それ、私の家なら呼んでもいいみたいに言うな』
『とにかく私の家は無し。有紗の家が無理そうなら図書館でもいいよ』
『別に私の家でいいけどさ、じゃあ時間は二時とかでいいか?』
『うん、それでいいよ』
『分かった。明日の二時に私の家な?』
『うん』
『じゃあ、この事を白雪さんに言っとくよ』
『うん』
『紅愛、ちゃんと明日来いよ?』
『分かってる』
メッセージをいくつか書いて、LIMEを閉じた。
「はぁ……」
明日の事を考えたらなんだか頭が痛くなってきた。大丈夫かな明日……不安しかないけどしょうがない。適当に勉強すればあいつも大人しくするでしょ。とにかく明日、無事にやり過ごせればいいや……とにかく明日は昼前まで寝てるわけにはいかないし、今日は早めに寝よう。大人しく部屋に戻って私は布団に入った。
「紅愛ちゃん、私仕事に行くから家の事よろしくね。お昼ご飯はチャーハンを作ってあるから、お昼はそれを食べといてね?」
「……うん」
仕事用のカバンを持った奏が私の部屋のドアを開けて私に声をかける。奏の声で起こされた私は適当に奏に返事をした。
「もし、外に出かけるなら鍵をポストに入れといてね。それじゃあ、行って来るから」
奏はそう言って私の部屋のドアを閉めた。そして玄関のドアが開く音がした。奏は土曜日でも相変わらず仕事があるみたいだし、家の中には私一人だけだ。気持ちよく寝ていたところを奏に起こされたけど、ちらりと窓を見てみると、外は少し薄暗く雨が降っているみたいだ。ちょうど今は六月で梅雨の季節だからしょうがないけど、わざわざ出かける休日に雨が降っていると少しテンションが下がる。とりあえず二度寝をしようと思ったところで、昨日の事を思い出した。そうだ、今日は有紗の家で、有紗と白羽の二人と一緒に勉強するんだった……
「めんどくさ……」
ぽつりと呟いて、まだ寝たい気持ちを抑えてのそのそと布団から起き上がる。クローゼットから適当に服を選んで着替える。脱いだパジャマを脱衣所にある洗濯機の中に入れて、洗剤も入れて洗濯を始める。洗面台で洗顔も軽く済ませて、とりあえずスマホを持ってリビングに行くと、ダイニングテーブルの上に、奏が言っていたチャーハンがラップをかけられて置いてあった。昼はこれを食べるとして、スマホで時間を確認すると現在の時刻は七時過ぎだった。有紗の家は学校の近くで十分くらい歩けば着く。だから遅くても一時五十分に出て行っても間に合う。まぁ、少し余裕をもって一時四十五分くらいに出ようかな。それまで何しよう? 適当にお昼までスマホかテレビを見とけばいいか……私はいつもの席のテレビ前のソファに腰かけて適当にテレビを付けてスマホをいじる。とにかくお昼までここで過ごす事にした。
――しばらく適当に時間を潰していると、気が付いたら昼の十二時半になっていた。そろそろお昼ご飯を食べようと思って、スマホを閉じてダイニングテーブルに置いてあるチャーハンを電子レンジで温める。チンと電子レンジが鳴って、中からチャーハンを取り出す。食器棚からスプーンを取り出して、ダイニングテーブルにチャーハンと一緒に置いておく。冷蔵庫から麦茶も取り出して、食器棚から取り出したコップに注ぐ。チャーハンにかけられたラップを外して手を合わせる。
「……いただきます」
一人でぽつりと呟いて、スプーンでチャーハンを掬って口に運ぶ。味はよくある普通のチャーハンだ。たまに食べたくなるような癖になる味だった。一人で寂しくスマホで動画を見ながらチャーハンを黙々と食べた。
「……ごちそうさま」
食べ終わった食器を洗い場に持っていってささっと食器を洗う。一人分の食器しかないから皿洗いはあっという間に終わった。時計を見ると時間は十二時四十五分。私が出るまであと一時間だ。歯磨きをして出かける準備でもしとこ。皿洗いを終えて、スマホを持って自分の部屋に戻る。いつも学校に行くときのカバンじゃなくて、教科書やノートが入りそうな手提げの中に勉強する予定の教科書やノートと筆箱を入れる。全部は入りきらないので苦手な英語と数学を持っていく事にした。それ以外は有紗が解説しながら教えてくれそうだし、とりあえずこれだけにしておこう。あっという間に準備が終わったので、有紗にLIMEで話でもしておこうかな。スマホからLIMEを開いて有紗のトーク画面を開いた。
『一応、英語と数学のノートと教科書持っていくけど他に持っていくものある?』
『数学と英語なら問題集持って行った方がいいかもな』
『分かった、じゃあそれも持っていく』
『とりあえずそのくらいかな』
『分かった』
……別に聞かなくてもいいけど一応有紗に聞いておこう
『白羽からなにか連絡とかあったりした?』
『あぁ、紅愛と一緒で「何を持って行けばいい?」って聞いてきたかな』
『それだけ?』
『うん、それだけ』
『ならいいけど』
そう言えば白羽の家ってどこにあるんだろう? そもそも有紗の家がどこにあるのか知ってるのか? まぁ、あとで有紗にLIMEで聞くんだろうけど。
『紅愛はもう出かける準備出来たのか?』
『うん。いつでも出れるけど」
『なら、白雪さんより先に来るか?』
『特にやることもないし、そうしようかな』
『分かった。待っとく』
有紗とのLIMEを閉じて、スマホを手提げの中に入れて、洗面台で歯を磨く。水を含んで口の中の歯磨き粉を流す。歯磨きを終えて、手提げを持って玄関で靴を履く。玄関に置いてある棚の上にある家の鍵も持って家を出る。鍵をかけてエレベーターで下に降りる。エントランスにあるポストの中に家の鍵を入れて、私は有紗の家に向けて歩き出した。
しばらく歩くと見慣れた家。有紗の家が見えてきた。家の玄関前に立ってチャイムを鳴らす。少し待っているとドアが開いた。
「来たな。先に部屋に行ってていいぞ、私は飲み物持ってくるから」
「うん、分かった」
有紗は私を出迎えるとキッチンがある方に歩いて行った。私も有紗の家には何回も来ているのでもう家の構造は覚えている。一人で先に有紗の部屋に向かう為玄関を上がってすぐ右横にある階段を上る。上がってすぐにあるドアの扉を開けて有紗の部屋に入る。可愛い小物も置いてってなおかつシンプルな部屋だ。適当に手提げを置いてベットに座る。スマホを見ていると時間は一時十分だった。しばらくしてから有紗がおぼんを持ってきた。
「おまたせ、お母さんが買ってきたクッキーがあるから食べないか?」
「貰う」
有紗が持ってきたおぼんの上のお皿に盛り付けられたクッキーを一つ取って食べる。少し卵感が強いクッキーで美味しい。
「飲み物は紅茶とかお茶もあるけど、ジュースの方がいいか?」
「喉乾いてるからジュースがいい」
「分かった、ジュースな」
有紗はお皿を机の上に置くと、一旦の下に降りて行った。私は一人でクッキーをぽりぽりと食べる。そしてすぐにジュースが注がれたコップを二つ持ってきた。
「はい、ジュース。りんごジュースで良かったか?」
「うん」
クッキーでぱさぱさになった口の中にジュースで水分補給をする。歩いてきたこともあって喉が渇いていた。渇いた身体にジュースが染み渡る。
「それで白羽からなにか連絡とかあったりした?」
ジュースを半分くらい飲んで有紗に白羽の事を聞いてみる。
「いや、まだ何も連絡はきてないけど……」
「あいつ有紗の家知ってるの?」
「いいや、多分LIMEで聞いてくるんじゃねえの?」
「あっそう」
まぁ、あいつが居ない方が平和なんだけどさ。私的には約束を当日キャンセルしても全然いいんだけど。逆にそっちのほうがありがたいし。
「それでどうする? 先に勉強始めとくか?」
「いやいいよ、白羽が来てからで。あいつが居ない間にゆっくりしとこ」
「ちゃんと白雪さんが来たら勉強しろよ?」
「分かってる、分かってる」
有紗もコップを机に置くと、クッキーに手を伸ばしてぽりぽりと食べ始めた。
「というか、なんで昨日白羽と話してた時猫被ってたの?」」
「べ、別に猫被ってたわけじゃねえけど……」
「いつもと話方違ったじゃん」
「まぁ一応クラスメイトだし、白雪さん周りに言いそうじゃん」
「そんなに気を遣わなくていいと思うけど」
有紗も有紗なりに白羽のやつを警戒してるって事か。まぁ、あいつを警戒しないのは白羽の事を可愛いって言ってる男子くらいか。
「あ、白雪さんからLIME来た」
「なんてきたの?」
「そろそろこっち来るから、私の家がどのへんか教えてだって」
「じゃあ、あいつ来るのか……」
「だから今、私の家の住所送ってる」
有紗がLIMEで白羽に返事を返す。
「今からこっち来るって」
「あっそう」
「そんなに白雪さん苦手か?」
「ああいうぐいぐい来るやつ苦手だし」
「私もそういうタイプの人苦手だけどさぁ……」
とにかく白羽の居ない間にゆっくりしておくことにした。有紗のベットに横になってスマホを適当にいじる。この後勉強尽くしになるんだし、今のうちにだらだらしておこう。
――それから数十分後、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。多分白羽が来たんだろう。
「多分白雪さんだ、ちょっと出てくる」
有紗が部屋を出て行った。はぁ……ついにあいつが来ちゃったか……面倒だなぁあいつの相手するの。諦めてベットのから起き上がって低めのテーブルの近くに座る。すると段々と勢いよく階段を上ってくる音がする。そして、有紗の部屋のドアが勢いよく開いた。
「紅愛ちゃ~ん!! 来たよ!!」
「いきなりうるさい」
「だって、ずっと前から紅愛ちゃんと遊びたかったんだもん!!」
「今日は遊ぶんじゃなくて勉強でしょ」
「そうだけど、私は勉強でも嬉しいよ!!」
「あっそう」
「ほら、白雪さんも来たんだし勉強会始めるぞー」
白羽が来てから少し遅れて、有紗がコップを持って部屋に来た。
「はい、白雪さん飲み物。りんごジュースでいい?」
「うん! ありがとう有紗ちゃん!」
白羽は有紗からコップを受けとってジュースを飲む。
「じゃあまず、紅愛は英語と数学で、白雪さんは何勉強する?」
「うーん……じゃあ紅愛ちゃんと同じのやる!!」
「分かった、じゃあ白雪さんも英語と数学な」
そう言って有紗も自分のカバンから、勉強する教科書とノートを取り出した。
「有紗は何勉強するの?」
「私は暗記をしたいから理科とか社会かな」
「流石優等生だねぇ」
「周りが言うほど優等生じゃねえよ……」
「そう? でも頭いいじゃん」
「だよね! 有紗ちゃん頭いいよね~」
「まぁ、私的には普通だと思うけど……」
「有紗のレベルで普通なら、私底辺レベルだけど」
「じゃあ私もその辺だ!」
「そういうのいいから! 早く始めるぞ!」
――そうして私達三人の勉強会が始まった。私と白羽は英語の方が先にあるので、まず英語の方から先に勉強することにした。
「じゃあまず、テスト範囲の問題集は二人共やったのか?」
「やってない」
「やってないよ~」
「……じゃあ最初はテスト範囲までの問題種をやっていくか」
「は~い」
「分かった」
有紗の指示に大人しく従って問題集を白羽と二人で解く事にした。
「私は日本史やっとくから分からないところがあったら、声かけて」
そう言って有紗は自分の机に広げてある日本史の教科書とノートに向き合った。私と白羽でローテーブルに向き合って勉強を始める。
「うわぁ~……私全然問題集やってないや~紅愛ちゃんはやってた~?」
「……少しだけ」
「へぇ~、紅愛ちゃんちゃんと問題集やってたんだ~。あんまり勉強するの好きじゃないと思ってた~」
「別に好きじゃないけど……」
隣で話を振ってくる白羽を軽く流しながら、問題集を解いていく。
しばらくお互い無言で勉強していると、白羽がちょんちょんと私の肩を突いてきた。
「何?」
「紅愛ちゃ~ん、ちょっとこの問題が分かんないから教えてほしいなぁ~って」
「それなら有紗に聞けばいいじゃん」
「有紗ちゃん、暗記系やってるから声かけづらくて。せっかく紅愛ちゃんと一緒に勉強してるから、紅愛ちゃんに教えてほしいなぁ~」
「なにそれ」
……こいつそんなに私と一緒に居たかったの? まぁそんなことどうでもいいけど。
「ね? 教えたら頭に入るかもしれないでしょ? 教えてよ~」
「……ああもう、分かったから。どこが分からないの?」
「えっとね~ここなんだけど~」
向かい側に座っている白羽の隣に座って、白羽の問題集のノートを見る。
「ここ。英文を日本語に翻訳する問題なんだけど……」
「ああ、ここなら授業の時に翻訳例を黒板に書いてたでしょ?」
「ああ、そっか! 分かったありがと!」
白羽は満面の笑顔でお礼を言った。ああ、男子はこの笑顔で惚れるんだろうなぁと思いながら自分の勉強に戻る。
――それから一時間後。
「ふう~、ちょっと休憩にしようか」
「はぁ~、疲れた~」
「あんた疲れるような事してないでしょ」
「そうだけど~、勉強するの疲れる~」
有紗の休憩の言葉で一旦手を止めて、休憩する。
「二人共、問題集どこまで出来た?」
「私は範囲のとこまで終わったよ」
「ええっ? そうなの? 紅愛ちゃん終わるの早すぎ~!」
「だって、ただ書くだけだし」
「いいなぁ~」
「それで、白雪さんは?」
「う~、あともう少し……」
「そっか、じゃあ紅愛はどうする? まだ英語やるか? それとも数学する?」
「面倒だけど数学やる。数学が一番終わってないし」
「分かった。白雪さん、よかったら隣で見ててあげようか?」
「本当!? ありがとう有紗ちゃん!」
そう言って白羽は有紗の両手を握った。
「べ、別にお礼を言われるほどでもないけど……」
「そういう有紗は、勉強の方はいいの?」
「ああ、それならさっき覚えないといけない事は頭に入れといたから大丈夫」
「あっそう」
「紅愛も分からないところあったら教えるよ」
「うん、あったら声かける」
「じゃあ、有紗ちゃん! さっそくなんだけど、ここの問題分からないんだけど、教えて!」
「うん、どの問題?」
有紗は白羽の隣に座って、白羽と一緒にノートを見始めた。私はとりあえず数学のノートと教科書に向き合うことにした。
――二時間後。
「あっ、もうこんな時間だ」
「あ~本当だね~」
「どうする? 今日はこれで終わり?」
「そうだな~、今日はこのくらいにしておくか」
部屋の時計を見てみると、時間は五時を過ぎたところだった。
「そういえば、白雪さんって歩いて来たの?」
「ううん、車で来た!」
「車で来たってことは、お母さんかお父さんの車で来たってこと?」
「ううん、じいやの車で来た!」
「ああ~、なるほど……?」
「流石金持ち」
これだから金持ちは……ということは学校の送り迎えも使用人がやっているのだろう。
「じゃあ、帰りもその、じいや? さんが迎えに来るの?」
「うん、電話したら迎えに来ると思うよ!」
「じゃあ、白雪さんは家に連絡して、紅愛は歩いて帰るか?」
「うん、歩いて帰る」
たまに有紗のお母さんが家まで送ってくれる時もあるが、今日は歩いて帰ろう。有紗には奏の事はまだ言ってないし。
「有紗ちゃ~ん、電話したらじいやが迎えに来るって~」
「そうか、じゃあ白雪さんは迎えが来るまでは待機な?」
「は~い!」
二人が会話している間に、帰る準備をする。そういえば、今日は奏は何時に帰って来るんだろ? 従業員が少ないと閉店時間まで居ないといけないらしいから、晩御飯が無いんだけど。奏にLIMEしておこうかな。スマホでLIMEを開いて、奏のメッセージに何時に帰れそうなのか聞いてみる。
『今日は、何時に帰れそうなの?」
っとこれでよし。奏にLIMEを送ってスマホを仕舞う。
「じゃあ、私は帰るから」
「そうか、気をつけてなぁ」
「えっ~? 紅愛ちゃんもう帰っちゃうの? 私の迎えが来るまで居てよ~」
「いや、別に私待たなくてていいでしょ」
「だって~、紅愛ちゃんが私より先に帰るの嫌だもん」
「何その理由……」
「ね? あともう少しで着くだろうから、もうちょっとだけ居てよ~」
「こんなにお願いしてるから、待ってあげたらどうだ?」
「有紗までそう言う? ……はぁ、分かったいいよ、あんたが帰るまで待ってあげる」
「ありがとう!! 紅愛ちゃん!!」
「いちいち言わなくてもいいから」
「そうだ!!、せっかくだから紅愛ちゃんのLIMEも聞いてもいい?」
「……はぁ、いいよ」
「ありがと!」
ほんとは教えるの嫌だけど、嫌だって言ったらこいつうるさそうだし、しょうがなく教えてあげることにした。スマホを取り出してLIMEのIDを見せる。
「はいこれ、私のLIMEのID」
「ありがとう紅愛ちゃん!」
「はいはい」
「これからはLIMEで連絡とろうね!」
はぁ……面倒なやつと関係持っちゃったなぁ。そして私のLIMEの友達の欄に、白羽が追加された。
「あっ、あともうすぐで着くって、連絡来たから、そろそろ外で待とう!」
「じゃあ下に降りるか、二人共忘れ物しないようにな」
「は~い」
「分かってる」
手提げを持って、三人一緒に部屋を出て階段を下りる。靴を履いて玄関のドアを開けてちょうど外に出ると、黒い車が有紗の家の前に停まった。そして、運転席から黒い燕尾服を着たおじいさんが降りてきて、車の後部席の扉を開けた。
「あっ、ちょうど来た! それじゃあ二人共また学校でね!」
そう言って白羽は車の後部座席に乗り込んだ。燕尾服を着たおじいさんは後部座席の扉を閉めると、私達に礼をして運転席に乗った。そして、車の後ろの窓が開いた。
「ばいばーい!」
白羽が顔を出して手をぶんぶんと振って、車は遠ざかっていった。
「……なんかすごかったな」
「うん」
「流石白雪家だな……白雪さんの家とかも凄いんだろうなぁ……」
「そうだね。それじゃあ、私も帰るね」
「うん、また学校で。ちゃんと家でも勉強しろよ?」
「分かってる。また月曜日ね」
有紗と別れて家に向けて歩く。今日は白羽が居たからいつもの勉強会より疲れたなぁ……できればあいつとはあんまり勉強はしたくないな。そういえば、奏にLIME送ったけどなかなか既読が付かないな……もしかして仕事が忙しいのかな? 晩御飯までに帰って来るといいけど。まぁ、今日は疲れたから帰ったら少し寝よう。奏が何時帰って来るか分からないし、奏が帰って来るまではゆっくりしておこう。少し疲れた足取りで家目指してとぼとぼと歩く。ああ、やっぱり家で奏とゆっくりするのが一番楽しいな。また、奏が休みの日は何時になるんだろうか。奏とゆっくり出来る時間が出来ればいいけど。そうだ、帰って来た時に夏休みの時とかどうするのか聞いておこ。私は夏休みや、いろんなことを考えながら帰路についた。
あとがきが長すぎたので今回から、活動報告の方で書きたいと思います!
色々書こうと思っているのでそちらの方もよろしくお願いします。
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