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第十四話 従姉妹と連休 後編

綺麗な旅館に温泉を満喫し、紅愛との仲がまた深まる。 

――水族館を後にした私と紅愛は、三時のおやつにカフェでお茶をすることにした。少し昔懐かしの喫茶店をイメージしたカフェで二人でケーキとパフェを注文し、紅茶を飲みながら優雅なティータイムを過ごした。


「そういえば紅愛ちゃんって、ちゃんと学校にお友達はいる?」

「……は? 何その私が友達いないみたいな言い方は」

「だって……紅愛ちゃんあまり大人数でわいわいやるの好きそうじゃないから、ちゃんと仲が良い友達がいるのかな? と思って……」

「さすがに話が出来る人くらいはいるよ」

「そっか……なら良かった」


 紅愛に初めて学校生活の話を聞いてみたが、意外と大丈夫そうだ。せっかくだから学校でどんな風にしているか聞いてみよう。


「学校は楽しい?」

「別に楽しくはないよ……」

「でもお友達とおしゃべりするときは楽しかったりしないの?」

「……まぁそれは嫌いじゃないけど……」

「そっか、紅愛ちゃんはお友達との過ごすのが好きなんだね」

「まあね、それがないなら行く意味ないし」

「紅愛ちゃんのお友達ってどんな子?」


 紅愛と仲良くしている子が気になって、どんな子なのか聞いてみる。やっぱりその子も紅愛同様猫が好きだったりするのかな?


「……えっと……頭が良くて、そんなにがつがつ来るタイプじゃなくて……なんて言えばいいかな……説明するのが難しい」

「好きな事とかが一緒だったりするの?」

「お互いあまり人と関わるの苦手なのは一緒かも」

「じゃあ二人で仲良くお昼ご飯食べたりしてる?」

「うん、いつも一緒に食べてる」

「そっか……良い友達だね」


 とりあえず紅愛に仲が良い友達がいる事に一安心だ。学校生活も楽しそうでなによりだ。


「そういう奏は友達いるの?」


 今度は紅愛が話を持ち掛けてきた。


「私? 私も友達はそこそこいたよ」

「仲が良い友達も?」

「うん、私幼馴染が二人居るんだ。もう一人は中学の時に引っ越しちゃって居ないけど、もう一人の子は小学校から中学校まで一緒だったよ」


 幼馴染は男女一人づつ居て、男の子の方は中学に上がってすぐに親の都合で引っ越してしまって、連絡先は知っているけど特に用事があるわけでも無いので連絡を取っていない。もう一人の女の子の方は、中学を卒業するまでずっと一緒だったけど、高校は違うところに行ってしまったのでそれからはたまに電話したり、一緒に遊んだりする仲だ。


「……幼馴染ねぇ……」

「紅愛ちゃんは幼馴染は居ないの?」

「いや居ないけど、今時幼馴染とか居るんだなと思って」

「……私そんなに友好関係低そうに見える?」

「いや、コミュニケーション能力は結構あると思う」

「そうかな? 別に普通だと思うけど……」


 そんなこんなでしばらくの間紅愛の学校の事や、私の昔話をしたりして時間は過ぎてった。










 気づいたら時間は四時前になろうとしたところで、私と紅愛はカフェを出た。そろそろ旅館にチェックインして荷物を置いて、旅館でゆっくりしようと思い旅館に向けて車を走らせる。紅愛は相変わらず外の景色を眺めているだけだ。カフェで話したい話題は話しつくしたし、何か新しい話題を考えながら運転席から見える景色を見ながら考えていた。


「……あんたさ、彼氏欲しいとか思ったことある?」

「え?」


 いきなり話しかけてきた紅愛の内容にびっくりして、思わず後ろにいる紅愛を振り返った。


「危ないから前見て」

「あ、ごめんね……話の内容がちょっと……いきなり過ぎてびっくりしちゃった……」


 まさか紅愛の口から彼氏の単語が出るとは思わなくて振り返ってしまった。それにしてもいきなりどうして彼氏の話?


「えっと……いきなりどうしたの? もしかしてからかってる?」

「いや、別に……なんとなくだけど……」

「なんとなくって言われてもなぁ……」

「欲しいと欲しくないだったらどっち」

「う~ん……どっちと言われても……まぁ、欲しくないって言ったら嘘になるかな……」


 そりゃあ私だっていつかはかっこいい彼氏と運命の出会いとかして、結婚して子供を産んで平和に暮らしたい願望にくらいあるけど……それを紅愛に言うのはなんか恥ずかしいし……絶対このことでからかわれるに決まってるし……このことは紅愛には隠しておこう。


「そういう紅愛ちゃんは、彼氏欲しかったりするの?」

「私? 私は……別に興味ないし……」

「もしかして学校で好きな人がいるとか!?」

「まぁ、私に好意はあるだろうなって奴は何人か居るけど……」

「え」


 まさかの結構モテるタイプだったのか……まぁ、紅愛は一見クールに見えるけど、見た目は可愛いし仲良くなりたい男子の気持ちも分からなくはない。だって紅愛可愛いし。


「……そうだったんだ……紅愛ちゃんモテそうだし、逆にモテない方がおかしいよね……」


 ……別に紅愛がモテてるのに嫉妬しているわけでない。ただ、私が高校時代の時にモテなかったとかそういうわけじゃないからね!! 私が一人でぶつぶつと呟いていると、その様子を見ていた紅愛が不思議そうに首を傾げた。


「なにをぶつぶつ言ってるの」

「……いや……何でもない」

「?」


 私も高校時代に好きだった人とか居たなぁ……結局告白もしないで卒業したけど。


「やっぱりこの話はなかった事にしといて」


 私の反応を見てめんどくさいとでも思ったのか、紅愛は彼氏の話題を取り消した。


「う、うん」


 私も特にこれ以上話すつもりもなかったので、彼氏の話はここで止める事にした。再び車内に沈黙が漂う。何故かさっきより空気が気まずい気がする。ただでさえ紅愛と一緒に居ても話す事が無いのに、彼氏とか恋愛の話の後の沈黙はいつもより重い雰囲気が漂っていた。その空気を誤魔化すため、私は宿泊先の旅館の事とか旅館に着いたら何をしようか考えることにした。美味しいご飯、温泉、綺麗な景色を思い浮かべながら車を更に旅館に向けて走らせた。







 車を走らせる事一時間ちょい。やっとお目当ての旅館が見えてきた。旅館は海の近くの山の中にあって、ちょうど旅館付近は綺麗に山が開けていて、駐車場の時点で景色がとても良かった。駐車場に車を停めてエンジンを止める。車から出て後ろを開けて私と紅愛のキャリーバッグを下す。紅愛も車から降りて自分の荷物をさっと持った。私も同じようにキャリーバッグを持って車に鍵をかけて旅館の入り口に歩いていく。その間も特に紅愛と話す訳でも無く、ひたすら無言で歩いた。旅館の中に入って受付でチェックインをして、今回泊まる部屋の鍵を貰って部屋に向かう。エレベーターに乗って今回泊まる部屋が七階にあるので七階のボタンを押す。七階に着いて鍵に書かれた番号の部屋を探す。鍵と同じ番号の部屋を見つけ、鍵を使ってドアを開ける。開けて靴を脱いで玄関を上がると、広い畳と奥にある窓から見える景色に目を奪われた。ちょうど今夕方で赤い夕陽が海の向こうに落ちていくところだった。だんだんと暗くなっていく空と沈む夕焼けを前に、私はキャリーバッグを持ったまま窓の前で立ち止まって見とれていた。


「ボケっと見てないで荷物置けば」


 荷物を置いてキャリーバッグの中を整理しながら紅愛が声をかけた。


「でも景色凄い綺麗だよ。紅愛ちゃんも見てみて」


 荷物整理をしていた紅愛が、「しょうがないなぁ」と言わんばかりの表情をしながらゆっくりと立ち上がり、私の隣に並んで一緒に窓の外に広がる景色を見る。しばらく紅愛も無言で景色を見ていた。


「……確かに綺麗」

「良い景色だよねぇ……本当に今日はここの旅館にしといて良かった」

「……そうだね……とりあえず荷物置けば」

「……あ、それもそうだね……」


 紅愛に言われて荷物を部屋の端っこの方に置いた。荷物から着替えとタオルを取り出しといて、畳の上にある大きめのテーブルの横にある座椅子に座る。紅愛は窓際にある椅子に腰かけて、スマホをいじっていた。何をしようかしばらく考えて、とりあえず部屋の中を探索してみることにした。玄関から順番に見ていくことにした。まず玄関を上がってすぐに右側に洗面台があってその奥にトイレがある。洗面台がある通路の左に畳がたくさんあり広いワンルームが広がっている。左側にテレビが置いてあり、右側は押し入れとその奥には掛け軸と高そうなツボが置かれていた。畳の真ん中には大きめのテーブルに座椅子が四つ置かれていた。部屋の中央奥に景色を見渡せる大きい窓とその下には少し低い机と椅子が二つあった。紅愛は窓際の椅子でもなく、真ん中の座椅子に座る訳でも無く部屋の隅っこに座っていた。


「紅愛ちゃん椅子に座らない? テーブルの上にお菓子とかあるよ」

「今は別にいらない。それより、晩御飯はどうするの?」

「晩御飯はここに料理を運んでくれるみたいだから、それまでゆっくりしといていいよ」

「じゃあお風呂とかどうする?」

「それなら下の大浴場があるから、どうする? ご飯が来る前に温泉済ませとく?」

「温泉先に入らない? 今日歩き回って疲れた……」

「そうだね……そうしよっか」


 晩御飯が部屋に運ばれて来るのは何時か知らないけど、多分七時くらいには運ばれてくるだろうし先にお風呂も済ませたら、あとは寝るだけだし早めに温泉に入っておこう。私と紅愛は着替えとタオルを荷物から取り出す。ふと、着替えの準備をしていた時に旅館の受付の隣に浴衣が置かれていたのを思い出した。


「せっかく旅館に来たから、浴衣とか着てみない?」


 私の後ろで着替えとタオルの準備をしていた紅愛に思い切って声をかける。


「浴衣? そんなものあった?」

「ほら、旅館の受付の隣に浴衣が入った籠が置かれてて、他のお客さんも取って温泉に行ってたよ? だから浴衣来てみない?」


 紅愛の様子をちらりと窺う。紅愛は少し考え込んでから。


「分かった。じゃあ下に浴衣取りに行こ」


 と返事をした。やった!! 紅愛の浴衣姿が見れるとは!! もしかしたら断られるかも……と思ったけど大丈夫だったみたいだ。しかも紅愛と一緒に温泉に入ることもできるのだ!! 紅愛と暮らす事になってから数か月経つけど、一生懸命お風呂に入ろうとはさすがに思わないし。もし、私が一緒にお風呂に入ろうと誘っても紅愛は絶対断るだろう。本当に今回の小旅行に来てよかった!!


「ほら、ぼさっとしてないで下に行くよ」


 一人で舞い喜んでいる私を無視して、紅愛が小さいカバンを一つ持って玄関で待っていた。紅愛に急かされながら私もタオルをカバンの中に入れて、紅愛の後を追うように玄関に向かう。ちゃんと部屋の鍵とお財布を持って二人で部屋を出た。旅館の廊下を歩いてエレベーターの場所まで歩き、ボタンを押してエレベーター乗り。温泉がある一階に降りた。



 一階に到着し、まずは浴衣を手に入れるため受付の隣にある籠から浴衣を取る。浴衣に種類は無いらしく、サイズが書かれた籠の中に各サイズの浴衣が畳まれていた。私と紅愛は「女性用」と書かれた籠から浴衣を取る。浴衣を手に入れたら一階の奥にある温泉に向かう。「女湯」と書かれた暖簾をくぐって扉を開ける。扉を開けるとそこを脱衣所で、荷物を入れるロッカーと左端の方にトイレと、右側にドライヤーが置かれた洗面台があった。ロッカーが並んでいる正面奥に温泉に続く扉があった。まず靴を脱いで脱衣所の端の方に靴を置く。脱衣所に上がって、とりあえず一番壁側のロッカーを開けてタオルと浴衣を入れる。紅愛も私の隣のロッカーを開けてタオルと浴衣を入れていた。


「そうだ。紅愛ちゃん、身体を洗う用のタオルいる?」


 いつもホテルとか旅館に泊まるときに持っている、身体を洗う時にごしごしするタオルの一つを紅愛に見せる。


「私いつも二つ持ってるから、一つ紅愛ちゃんが使っていいよ?」


 紅愛は私が持っている身体用のタオルをじっと見てから、私の方を見た。


「じゃあ、借りる」

「良いよ。じゃあ、はい」


 紅愛にタオルを手渡す。


「……じゃあ、脱ごうか……」


 温泉に入るには服を脱いで、裸にならないといけない訳で。いざ、紅愛の裸を見る事になるわけだけど、なんだか私が恥ずかしくなってきた。私の裸が紅愛に見られるのも恥ずかしいけどそれより、紅愛の裸を見るのが何故だか緊張してしまう。一方紅愛は、別にそんなことはないのか服を一枚づつ脱ぎだしていた。脱いだ服を綺麗に畳んでロッカーの中に入れていく。靴下、スカートを脱いで上を脱ごうとしたところで、ロッカーの前で立ったままの私を見て紅愛の手がぴたっと止まる。


「……あんた脱がないの?」

「い、今から脱ぐから……!」


 まだ恥ずかしい気持ちもあるけど、ここでうじうじしててもしょうがないので思い切って服を脱いでいく。ロッカーの中に脱ぎ終わった服を畳んで置く。身体を洗うタオルと拭く用のタオルを取り出して、ロッカーを閉めて鍵をかける。鍵は腕に通して、髪を高めにまとめておく。紅愛も同じようにロッカーに鍵をかけて、私と同じように腕に通して綺麗な黒髪を高めに結んだ。


「私は準備出来たけど、奏は出来た?」

「うん、私も準備出来たから入ろうか」


 タオルを持って一緒に大浴槽の扉を開ける。扉を開けると湯気がもわっと入ってきた。いくつかある温泉から湯気が出ていて、その浴槽にお年寄りから子供まで気持ちよさそうに浸かっていた。まずは、かけ湯を身体にかけて身体の汚れを軽く流す。それからどの温泉に入ろうか悩んだが、紅愛は特に悩む訳でも無く一番近くにあって一番大きい浴槽の温泉に入った。私も紅愛と同じ温泉に入る。少し熱めのお湯に浸かると、ほっと自然と息が出てくる。今日の疲れがじわじわとお湯に溶けていくように取れていく。色々各浴槽の壁際に温泉の効用が書かれている。この温泉には疲労回復の効能があるようだ。


「気持ちいいね、紅愛ちゃん」

「まあ、温泉だからね」


 紅愛は私の隣で大人しく温泉に浸かっていた。


「紅愛ちゃんは温泉とか家族で行った事とかはある?」

「ないかな。そもそもあまり家族で出かけるとかはあんまりしなかったし」

「そっか……てっきり紗英さんの事だから結構出かけるのかと思った」

「別にそうでもないよ……ただ仕事が忙しいから、休日の日は大体昼まで寝てるから出かける暇なんてないし」

「そうなんだ……紅愛ちゃんはいつも家で一人なの?」

「うん、学校から帰ったら一人だよ」

「……寂しくない?」

「……どうだろ……私からしたら一人なのは慣れたつもりだけど、ほんとは寂しかったのかもしれない……あんたと一緒になるまでは」

「え?」

「……なんでもない、ほら他にも温泉あるから入ろ」


 紅愛はそう言って、浴槽から上がって他の温泉に行ってしまった。私も慌てて紅愛の後を追いかけた。――それからジャグジーが付いた温泉や、香りが良い温泉などいろいろな温泉に浸かったが、紅愛がそれ以上何かを話すことは無く、ただひたすら黙って温泉に浸かっていた。大体の温泉に浸かってところで、身体と髪を洗って温泉から出る前に露天風呂に浸かることにした。少し肌寒い外に出て紅愛と一緒に夜空が綺麗な露天風呂に浸かる。ちょうど露天風呂に浸かっているのは私と紅愛の二人だけだった。夜空を眺めながら温かい温泉に浸かる。


「……奏はさ、私と一緒に暮らすって聞いたときどう思ったの?」

「え? う~ん……最初は何で私なの? って思ったけど今は思ってないよ。紅愛ちゃんはいい子だし、私も一人暮らしをしてそこそこ経つけど、やっぱり心のどこかで寂しいって思ってたのかも。だから今、紅愛ちゃんと一緒に過ごせて凄く楽しいんだ」

「…………そっか」


 紅愛は少し微笑みながら私から目をそらした。


「そういう紅愛ちゃんは私と暮らす事になった時どう思ったの?」

「私? あの時はあんたの名前を出されても誰? って思ってたけど、いざ会ってみたら結構おせっかいだし、変なところで無理するし」

「ううっ……」


 紅愛が言う事がどれも図星過ぎて、思わず呻き声みたいなものが口から出てしまった。


「でも、あんたと一緒に過ごしてきてさ、段々とあんたの良さも分かって来たし、今はあんたの事そんな風には思ってない」

「ほんと?」

「うん、ほんと」

「紅愛ちゃんの口から、私を褒める言葉が出て嬉しい……」


 紅愛の言葉につい頬が緩んでしまう。


「でも、あんたの悪いところも分かったよ」

「え」

「すぐに無理するとこ」

「え、私そんなに無理してた?」

「してるよ。だって、風邪ひいたときも無理して動こうとしてたでしょ?」

「それは……紅愛ちゃんのご飯とか、家の家事とかしないとなって思って……」

「そういう時は素直に休めばいいの。今のあんたは一人暮らしじゃないんだから」

「でも、それだと紅愛ちゃんからしたら迷惑だったりしない?」

「迷惑も何も、私とあんたは今は一緒に暮らしてるんだから、私も少しは家の手伝い位出来るよ。だから、そういう時は素直に人に頼った方がいいと思う」

「でも……」

「でも……じゃない。これからは私や、他の人を頼ること。分かった?」

「はい……」

「それでよし」


 紅愛のお説教? アドバイス? が終わって、紅愛は満足したのか、それからしばらくの間、ゆっくり温泉に浸かっていた。私も紅愛が言っていた事を考えながら、夜空を見ながら温泉を満喫した。






 

 脱衣所の洗面台で髪を乾かして、荷物を持って温泉を後にした。部屋に戻る途中に、自販機が置いてあったので温泉上がりに何か飲むことにした。


「紅愛ちゃんはどれにする?」


 ジュースやお茶、お酒やアイスの自販機まであった。どの飲み物にしようか自販機を端から端までじっくりと見る。


「そういうあんたは何にすんの」

「う~ん、私も悩んでるんだよね」

 

 紅愛も悩んでいるのか、私と一緒に自販機をじっと見ていた。


「やっぱり温泉と言えば牛乳かなぁ」


 しばらく自販機を見ていて、温泉と言えばやはり牛乳でしょと思った私は、牛乳の自動販売機に目を向けた。牛乳に決めたとしても普通の牛乳、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳と三種類ある。更にそれで再び悩みだす。


「あんた牛乳にするの?」

「うん、紅愛ちゃんは?」

「私フルーツ牛乳にする」

「じゃあ私もフルーツ牛乳にしよっかな」


 牛乳の自販機にお金を入れて、フルーツ牛乳を二本買う。自販機の横に付いている蓋あけで蓋を取って、自販機の前にある椅子に二人で腰掛ける。


「乾杯でもする?」

「あんた歳いくつよ……」

「うっ、ごめん……」

「まぁいいや、ほら」


 そう言って紅愛は自分の牛乳の瓶を私に近づけた。


「乾杯するんでしょ?」

「……うん、ありがとう紅愛ちゃん」


 私の牛乳瓶も近づけ瓶同士を軽くぶつけると、かちんと音がなった。乾杯を終わらせるとごくごくと牛乳を飲む。色んなフルーツの味がして美味しい。少しバナナの味が強い気がした。牛乳の三分の一を飲んで、紅愛の方を見ると紅愛は半分くらいまで飲んでいた。


「やっぱり温泉上がりと言えばフルーツ牛乳だよね」

「うん、意外と美味しい」

「あれ、紅愛ちゃんってフルーツ牛乳飲んだこと無いの?」

「意外と飲んだこと無かったかも……」

「紅愛ちゃんのお口に合ったのなら良かった」


 紅愛ちゃんはそんなにフルーツ牛乳が気に入ったのか、そのままごくごくと飲んでいく。


「紅愛ちゃんそんなにフルーツ牛乳気に入ったんだ……」


 そうこうしていると、紅愛は私より先に飲み終わってしまった。


「飲み終わるの早いね……」

「喉乾いてたから……何? 要らないなら貰うけど……?」

「自分で飲むから!」


 紅愛と同じようにごくごくと身体にフルーツ牛乳を流し込む。空になった牛乳瓶は自販機の横にある牛乳瓶の箱に入れて、部屋へと戻った。







 それから部屋に戻ってしばらくして、料理が運ばれて来て二人で晩御飯を食べた。新鮮なお刺身や柔らかいお肉、天ぷら等の揚げ物もあってとても美味しかった。お腹がいっぱいになるまで食べて、私も紅愛も大満足の晩御飯だった。それからしばらくして歯磨きも終えて、二人でゆっくりと部屋でくつろいでいた。


「ここのご飯美味しかったね」

「うん、ここ最近で食べたものの中で一番美味しかった」

「本当に美味しかったねぇ」

「こんなに食べたら太るんじゃない?」

「だ、大丈夫だよ! 仕事でカロリー消費するし……それなら紅愛ちゃんはどうなの?」

「私は徒歩で学校通ってるし、体育の授業とかあるから大丈夫」

「だよねぇ……」


 まぁ、紅愛はなんとなくだけどいっぱい食べても太らない気がする。そういう体質なのかもしれないけど……温泉に入ってた時も思ったけど、紅愛のスタイルは本当に同じ女子から見ても羨ましいレベルなのだ。腰は細いし、足も綺麗だし、胸もそこそこあるし……いや、別に羨ましい訳では無いが。


「私眠いからもう寝てもいい?」

「ええ? まだ九時だよ?」

「今日は疲れたからもう寝る……」

「そっか……じゃあ私も寝ようかな。電気消さないと寝れないでしょ?」

「うん」


 紅愛は布団に入るとごそごそと頭まで布団を被った。


「じゃあ、電気消すね」


 ぱちりと部屋の電気が消えて、部屋は真っ暗になる。真っ暗の中を進んで自分の布団に入る。布団を被って横になるけど何故か疲れているはずなのに眠気が無かった。しばらく天井を見ていたがそれでも眠気がない。ふと横の布団で寝ている紅愛を見る。


「紅愛ちゃん、もう寝ちゃった?」

「…………何」

「まだ起きてたんだ……」

「流石にすぐには寝ないよ、いつも寝慣れている布団じゃないし」

「そっか、紅愛ちゃん今日は楽しかった?」

「うん、それなりに楽しかったよ」

「また来ようね」

「あんたまた来れる程稼げるの?」

「うっ……まぁ、また来れるように仕事頑張る……!」

「でも、頑張り過ぎてまた風邪引いたりしないでよ」

「そういう紅愛ちゃんこそ風邪引いたりしないようにね」

「はいはい」

「明日はどこに行こうかなぁ」

「考えてないの?」

「うん、明日になってから決めようかなと思って」

「ふうん、私は早く家に帰ってゆっくりしたいけどね」

「あ、それなら明日猫カフェに寄ってから帰るのはどう?」

「行く」

「そう言うと思った。じゃあ明日は猫カフェ巡りでもしようか」

「じゃあ明日の猫カフェの為に寝て力を貯めとく」

「そうだね、お休み紅愛ちゃん」

「うん、お休み」


 そうして私と紅愛は眠りについた。そして翌日二人で猫カフェを周って。私が計画した旅行は終了した。

これにて連休編終了です。これから季節が夏になるわけですが、各季節のお話を書くとこれが終わるのがいつになることやら(;^ω^) 

でも、季節のお話は最低でも一話は書きたいので、お話の進行が大分遅くなるかもしれません。まだ一応書きたいネタがいくつかあるので、思いつく限り書こうと思います!! あと、めちゃくちゃ更新遅いです。すみません<(_ _)> 月にお話を更新するのは二、三回が限界かもしれません。もし調子が良ければ上がるかもしれませんが……それまで待って下さると幸いです。

続きが気になる方、おもしろかったという方は、ブックマーク登録、評価、感想コメントなどをよろしくお願いします!!それではまた次の話で!!

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