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第十三話 従姉妹と連休 前編

紅愛と楽しい連休旅行?

――ゴールデンウィーク。それは四月の終わりから五月の初めにかけての休日が多い期間の事。春の大型連休、又は黄金週間とも言われている。四月の後半はほぼ雨が降っていてどこにも出かけられなったが、今回のゴールデンウィークで私は紅愛との旅行を計画していた。








「……ゴールデンウィーク? 特に予定はないけど……」


 来週に迫っている大型連休に予定はないか紅愛に聞く。来週とは言っても、もしかしたら紅愛が友達と遊ぶ約束をしているかもしれないと思って聞いてみたが、特に予定は入ってないらしい。


「ゴールデンウィークに何かするの?」

「せっかくのゴールデンウィークだからどこかに行こうかなと思って」


 ここ最近は私も仕事尽くしだったし、紅愛もテスト対策に勉強を頑張っていたので、お互いにご褒美としてこの連休を利用してどこかに出かけようと思ったのだ。


「どこに行くの?」

「実はこの間、テレビでやっていた水族館に行こうと思ってるんだ」

「水族館? ああ……最近人気の?」


 イルカのショーやペンギンのショーで最近人気の水族館だ。その人気さはどのくらいかと言うと、水族館の駐車場は第三駐車場まであるのだが、休日になると第三駐車場まで埋まってしまう程だ。つまり連休の水族館はとても混むのだ。


「……でも連休だから人多いんじゃないの?」


 やはり人混みが多そうな場所には行きたくないのか、紅愛は少しだるそうに聞いてきた。


「そのことなら大丈夫! この間テレビを見ていたら優先して入れるチケットがあるみたいだから、それを買えば列に並ばなくていいらしいよ」

「ふうん……」


 紅愛は別に興味が無いのかスマホを見ながら返事をした。


「……もしかして紅愛ちゃん、やっぱり人混みが多い所苦手?」


「まぁ……好きではない」


 屋外ではないからあまり外に出るのが好きそうじゃない紅愛でも、水族館なら行けるかなと思ったけどもしかしてあまり行く気がしないのだろうか。


「……奏は私と出かけたい?」

「もちろん! 紅愛ちゃんといろんな場所に行きたいし、楽しい思い出をいっぱいつくりたいし」

「……あんたがそこまで言うなら行く」


 しばらく紅愛は考える素振りを見せると、私の方を見て返事をした。


「ありがとう紅愛ちゃん!」

「ただ行くって言っただけなのに、わざわざありがとうって言わなくていいよ」

「ごめん、でもしばらく紅愛ちゃんとなかなかお出かけが出来なかったから嬉しいんだ」

「……あんたってほんと単純だよね、喜び方とか子供みたい」

「私は子供って言われる年じゃないよ!」

「でもすぐいじったら怒るし、もしかして子供の頃とかいじられるタイプだったでしょ」 

「く~れ~あ~ちゃ~ん?」

「そんなに圧をかけてきても全然怖くない」


 私が出せる圧を全力で出してみたが、紅愛には効果はなかったようだ。


「そんなことより、出かけるんでしょ? 私準備してくるから」

「あ、待って紅愛ちゃん」


 私の圧をひらりと躱して、部屋に戻ろうとする紅愛を呼び止める。紅愛は私の声に反応して廊下でぴたりと止まり、私の方に振り返りながら「何?」と言っている様な表情で私の言葉を待っている。


「えっとね……今日は旅館に泊まるから、着替えとかの準備もしといてね?」

「…………それはいいけど、なんで泊まり?」

 

 紅愛が少し戸惑い気味に疑問を投げかけてきた。


「ほら、水族館から家まで、そこそこあるでしょ? だから水族館を見てまわって疲れた状態で運転したら危ないかなと思って予約しといたんだ」


 水族館は私が住んでいる場所から二つ隣の街にある。距離もそこそこあるため、疲れ切った状態で運転するのは少し怖いので、無理せず旅館を予約したのだ。 ……ほんとは温泉でゆっくりしたかった事は紅愛には内緒だ。


「まぁ……それもそうか。分かった、ちゃんと泊まる準備もしとく」


 そう言って紅愛は自分の部屋に戻っていった。――これで良し、あとは準備をして一緒に出掛けるだけだ。私も紅愛の後に続いて出かける準備をしに部屋に直行した。





 四十分後。キャリーバッグを持って部屋を出て玄関に置いておく。紅愛はまだ部屋から出てきていないが、様子を見るため紅愛の部屋をノックする。


「紅愛ちゃん、準備出来た?」


 部屋をノックして扉を開ける。紅愛は部屋の中央で立ったままスマホをいじっていた。


「もう出れるの?」

「うん、私は準備出来たよ」

「分かった」


 そう言うと紅愛は部屋の奥に置いてあるキャリーバッグを持って部屋から出た。


「じゃあ行こうか!」


 家の中の戸締りを確認して玄関に置いてあるキャリーバッグを持って外に出る。紅愛も私の後に続いて外に出た。家に鍵をかけて鍵をカバンの中に仕舞って、エレベーターのボタンを押し下に降りる。駐車場に着き、車の後ろに私と紅愛のキャリーバッグを乗せる。紅愛はいつもの後部座席に座り、私はカバンを助手席に置いて運転席に乗り込んだ。車に付属のカーナビに目的地の水族館の住所を入力してナビの設定をした。カーナビの聴きながら車は出発した。






 私と紅愛が出発したのはちょうど午前十時を過ぎた時だった。お昼は水族館の中にあるレストランで食べようと思っていたが、値段が少し割高で連休の為に混んでいそうなので、水族館に向かう道中のコンビニでおにぎりやサンドイッチ等を買ってお昼を過ごした。――しばらく飲み物やお菓子をつまみながら二時間。目的地の水族館が見えてきた。駐車場に入って空いてる場所を探すが、中々空いている場所が見つからない。どこの駐車場もいっぱいでしばらく第一から第三駐車場をぐるぐる周って空いている場所を探す。


「う~ん……やっぱり連休だから多いね……車停められるといいけど……」

「あそこ空いたよ」

「え? あ、ほんとだ」


 ちょうど右に曲がろうと思ったときに、手前の一台の車が駐車場から出た。やっと空いた場所に車を停める。これでなんとか水族館に入れそうだ。


「それにしても、本当に今日は人が多いね……」

「連休だししかたないでしょ。というか、あんたが行くって言ったんでしょ」

「それはそうだけど……今日を逃したら行く機会しばらくなさそうだったから……」


 私は今回の連休の為に、仕事の時間を増やしてもらい。こつこつとお金を貯めて、忙しいであろう連休に二日もお休みを取れるように店長と奈美さんにお願いをして、なんとか取れた休日なのだ。だからこの連休二日間は思いっきり楽しむと決めたのだ!! 


「今日はいっぱい楽しもうね! 紅愛ちゃん!」

「……う、うん」


 紅愛は何故か表情が少し引きつり気味で、戸惑っているように見えた。何かおかしなことでも言ったかな? まぁそれは置いておいて、さっそく私と紅愛は水族館の入口に向けて歩き出しだ。





 なんとか二人分のチケットを購入して水族館の中に入った。エスカレーターで下の階に行くと、照明が少し薄暗くなり、綺麗なライトアップされている水槽がいくつも並んでいた。水槽の中で気持ちよさそうに泳いでいる色んな魚を、通路に沿って観ていく。


「綺麗だね~」

「まあね」


 色とりどりの魚たちを観ていると、ストレスが解消されていく。今まで頑張った甲斐があった。しばらく紅愛と一緒に歩いていると、今度はクラゲの水槽ゾーンに着いた。色んな色に変わるクラゲはとても綺麗だった。


「クラゲって気持ちよさそうにプカプカしてるよね~」

「じゃあ、奏もプカプカしたいの?」

「でも私、泳ぐのは苦手だからなぁ」

「ならプカプカできないじゃん」

「例えばだよ! 例えばの話!」

「はいはい」


 二人で雑談をしながら、クラゲのゾーンを抜けていった。すると今度は広い所に出て、大きな大水槽に小さい魚から、大きな魚がたくさん泳いでいた。その水槽の大きさについ無言で見てしまう。その大きさは圧巻だった。


「……凄い大きいね。これは人気出るのも分かるなぁ」

「あんた大きいの好きだね」

「だって、こんな大きい水槽あまり見ないからちょっと感動しちゃった」

「まぁ、私でも凄いとは思う……」

「でしょ? 凄いなぁ」


 私と紅愛は五分位ずっとお互い特に喋ることもなく、ただ静かに大水槽を眺めていた。





 ――しばらくしてまた順路通りに歩いて、小さな水槽がいくつも並んだ場所に出た。そこにはタツノオトシゴや、チンアナゴなどの小さめの魚が泳いでいた。その水槽を眺めながら歩く。紅愛は黙って水槽を見てまわり、私より先にささっと通路の先に行ってしまう。


「紅愛ちゃん……もう少しゆっくり見ようよ……」


 そろそろ魚を見るのに飽きてきたのかな? 水槽の横にある解説や説明を見ていたら、あっという間に紅愛は先に行ってしまった。魚の説明を見るのを諦めて、紅愛の後を追う。しばらく真っ直ぐ歩くと、この水族館の目玉のイルカの大水槽が見えてきた。そこに紅愛は居た。


「やっと追いつけた……紅愛ちゃん、もう少しゆっくり見ていかない?」


 そう言いながら紅愛の隣に立つ。しかし紅愛の返事はなかった。


「……紅愛ちゃん?」


 紅愛の様子が少しおかしい事に気づき、もう一度声をかけ紅愛の顔を見る。紅愛はぼんやりと目の前にある水槽を見ていた。確かここには四匹のイルカでショーをやっているとテレビで言っていた。イルカがどうかしたのかな?


「紅愛ちゃん、イルカ好きなの?」

「…………いや、好きとかではないけど……」

「けど?」

「……このイルカ達は家族なんだって」

「へぇ、そうなんだ……紅愛ちゃん詳しいね」

「そこに書いてあること言っただけだよ」

「このイルカさん達は仲良しらしいよ、あそこの説明に書いてある」

「…………」


 イルカの説明を読んでいたら、紅愛は黙り込んでしまった。もしかして……家族の事でなにか悩んでいる事とかあるのかな? 今思えば私は紅愛の事をまだ何も知らない。段々仲良くはなってきたけど、紅愛の家庭状況とか普段家でどんな風に過ごしているのかも知らない。それに紅愛のお父さんの話も一回も聞いたこともない。もし紅愛が家族の事で悩んでいるのなら、紅愛の力になりたいけど紅愛から話すことはなさそうだしなぁ……今回の旅行中に聞いてみようかな。


「…………ここはもういいから早く行こ」


 紅愛はそう言ってイルカの水槽から離れた。私も紅愛の後を追って、少し小走りで紅愛の隣に並ぶ。何か声をかけようと思ったが、言葉が見つからない。とりあえ今の気まずい空気を変えるためになんとかしなければ。


「えっと……紅愛ちゃんあっちの方にアザラシとかアシカがいるみたいだよ? 行ってみない」

「……うん」


 とぼとぼと歩く紅愛の手を繋いで一緒に歩く。紅愛も特になにかを言う訳でも無く、手を繋いだまま水族館を見てまわった。









 ――数十分経って水族館のほとんどを見終わり、イルカのショーも無事に見れて最後にショップを見ることにした。ショップには海の生き物の可愛いぬいぐるみや、ここでしか売っていないお菓子やグッズがたくさん売ってあった。


「せっかくだし何か買って帰ろうよ」

「何かって例えば?」

「例えば……えっと……お揃いで何か買うとか……?」

「……お揃いにするならこれとかじゃない」


 紅愛が指さしたものは、貝殻とアクセサリーが付いているブレスレットだった。明るい色できらきらしていて綺麗だった。値段もそんなに高くはなかった。


「ほんとだ、これとかお揃いで付けたら可愛いかも」

「……まさかほんとにこれにするの?

「私は良いと思うけど、紅愛ちゃんはやっぱりこういうの嫌だ?」

「……いや……別に嫌だとかじゃないけど……」


 紅愛は少しそっぽを向いて答えた。もしかして照れてるとか? それを言ったらまた紅愛に何か言われそうだしからかうのはやめておこう。


「じゃあ、このブレスレットを買わない? 紅愛ちゃんはどの色にする?」

「……私は、紫にする」


 紅愛は紫を選んだ。私は海の色の青を取った。


「じゃあこれと……紅愛ちゃん欲しいものとかない?」

「……私は別に……」


 しばらく店内を見てみると、ショップの入口近くに可愛いぬいぐるみがたくさん置いてあった。――そうだ、せっかくだからぬいぐるみも一つ買っていこう。ぬいぐるみを見てみるとアザラシの可愛いぬいぐるみがあった。


「このアザラシのぬいぐるみ可愛い……!」


 私は思わずそのぬいぐるみを手に取ってなでる。ふわふわしていて、目もくりくりしていてとても可愛い! 無言でぬいぐるみを手に取ってなでている私を紅愛が少し後ろから見ている。


「そんなに可愛い……?」

「可愛いよ! 目とかとっても可愛い!」

「あんたそんなにぬいぐるみ好きなの?」

「ぬいぐるみ嫌いな女子はいないでしょ? 紅愛ちゃんはぬいぐるみ好きじゃない?」

「……いや普通」

「紅愛ちゃんも撫でたら分かるよ、ほら!」


 そう言って紅愛の前にぬいぐるみをずいっと出す。紅愛は少し困惑気味にぬいぐるみを撫でた。


「ふわふわでしょ?」

「……うん、ふわふわしてる」

「これも買っちゃおうか」

「あんたがそんなに気に入ったのならいいよ」

「紅愛ちゃんにも撫でさせてあげるね」

「まぁ……いいよ」


 ショップのレジに商品を持って行って、会計を終えて紅愛の元に戻る。


「じゃあ、次どこ行こうか……カフェとかでお茶でもする?」

「うん、喉乾いた」

「じゃあカフェでお茶しようか」

「うん」


 ショップから出ると、左手に水族館の出口が見えてきた。水族館から出て駐車場に向かって歩く。


「紅愛ちゃん、水族館は楽しかった?」

「……まぁそれなりに楽しかった」

「紅愛ちゃんが楽しかったのならよかった」


 歩きながら紅愛と水族館の感想を話す。


「ぬいぐるみも可愛かったけど、本物のアザラシも可愛かったよね!」

「あんた……そんなにアザラシ好きだったっけ?」

「前までは普通だったんだけど、見てみたら思ったより可愛くて……」

「ふうん」

「紅愛ちゃんもアザラシ可愛いって思ったでしょ?」

「まぁ、可愛いとは思うけど猫には負けるね」

「紅愛ちゃんほんとに猫好きだね……」

「当たり前でしょ」


 紅愛と雑談をしているうちに車に着いた。荷物を車の後ろに乗せようと思ったけど、そんなに多くないしいつでもぬいぐるみを取り出せるように、紅愛の隣に置くことにした。


「じゃあカフェに行こうか」


 運転席に乗り、シートベルトを締めてカーナビで近くのカフェを探す。見つけたカフェにナビを設定して。ナビの指示に従って車を走らせた。カフェの到着時間は三十分。現在の時刻は午後の二時半。ちょうど三時のおやつにちょうどいい時間だ。ミラーで後部座席に座っている紅愛の様子を見てみると、少し疲れたのかうとうとしていた。紅愛の寝顔を見て少し微笑みながら、私はお気に入りの曲を流しながら車を走らせた。 

小説の更新が遅れてしまい、大変申し訳ございません!! 実はリアルの方で色々人間関係の事で色々あったり、二回目のワクチン接種でダウンしたりで小説を書くモチベがなくなってました……本当は書きたいなぁと思っていたのですが、人間関係で色々ありまして少し気が病んでました(~_~;)

ですがなんとか少しずつ少しずつ書いて、今回も更新することが出来ました!! それも読んでくれる皆さんのおかげです!! 本当にありがとうございます!!これからも更新が遅くなるかもしれませんが、リアルの方で大変なんだなぁと思ってくれると幸いです。次も更新できるように頑張るので、応援よろしくお願いします!!

続きが気になる方、おもしろかったという方は、ブックマーク登録、評価、感想コメントなどをよろしくお願いします!!それではまた次の話で!!

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