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第十二話 従姉妹と雨の休日

紅愛とお花見に行ってからしばらく経ったある雨の休日。

紅愛とお花見に行ってからしばらく経って、気がついたら四月もあと少ししかない。紅愛と二人でお花見に行ってから一週間後、ここ最近は雨の日が続いている。雨が降ると洗濯物は乾かないし、気分もなんとなくどんよりとしてしまう。それでも仕事はあるし、紅愛にも学校がある。そんなある日の日曜日の事。紅愛と私は普通にリビングでくつろいでいた。天気は雨だし外に出かける気も起きず、二人で家でのんびりと過ごしていた。私はダイニングテーブルでこの間新しく買ったスイーツのレシピ本を読んで、なにか新しい商品のアイデアがないか探している。紅愛は相変わらずテレビを見る訳もなく点けて、そのまえのソファに寝転がってスマホをいじっている。特に会話をする訳でもなくリビングにはテレビの音だけが響いていた。時刻は午後二時を過ぎた位だった。


「……ねぇ」


 するとスマホをいじっていた紅愛が声をかけてきた。


「何?」


 レシピ本から目を上げて紅愛の方を向いて返事をした。


「暇じゃない?」

「……確かに暇じゃないって言ったら嘘になるね」

「なんかやろうよ」

「何かと言っても……例えばで何かあるの?」

「ない」

「う~ん……なにしようか……」


 暇だと言われてもなにをしよう……紅愛が喜びそうな事なにかあるかな……


「……一緒に猫の可愛い動画を一緒に見るとか……?」

「猫を出せば私が喜ぶと思ってない?」

「……お、思ってないよ……?」


 やっぱりすぐに猫の話題を出して、なんとか乗り切ろうとするのは良くないか……猫以外で紅愛が喜びそうなもの……なにかあるかな?


「私がやりたい事じゃなくて、あんたが私としたい事とかないの?」

「え? 紅愛ちゃんと一緒にしたい事?」

「うん」

「……そうだなぁ……」


 レシピ本をテーブルの上に置いて、腕を組んで考える。私が良くても紅愛が楽しめるかどうか分からないけど、ある一つの案があるのでそれを紅愛に聞いてみることにした。


「……映画鑑賞とかどう……?」

「……映画? なんか見たいものでもあんの?」

「映画館に見に行くんじゃなくて、お母さんがおすすめしてた映画のDVDをこの間レンタルしてたんだ。それを一緒に見るとかどうかな?」

「あんたの母親がおすすめした映画が面白いなら見る。ジャンルは?」

「…………えっと……それが……」

「……? 何もじもじしてんの?」

「…………恋愛映画なんだ……」


 お母さんがおすすめして来た映画は去年に流行った恋愛映画で、その時人気だったイケメン俳優が主演でヒロイン役の女優も可愛くて物凄く人気だった。そんな二人が主演の映画で、ストーリーはよくある恋愛物で普通の日常を過ごしていたヒロインが突然隣に引っ越して来たイケメンと段々仲良くなって、恋人になるという話だ。話的には恋愛物にはよくある展開で、映画を見てきたという友人何人かの感想を聞いたが、ストーリーはよくある恋愛物であまり面白くはなかったらしい。あとはイケメン俳優がかっこよかった位だったらしい。私もイケメン俳優が気になったが別にどうしても見に行くほど興味が無かった為、DVDが出たら借りて見よう位だった。だがお母さんはこの作品を見たかったらしく、DVDが出たその日にすぐにレンタルショップで借りてきた。お母さんはもうすでに何回かこのDVDを見ていて「奏もこの俳優が好きだったでしょ? かっこよかったから見たほうがいいわよ!」と言って私に勧めて来たのだ。私もいつかは見たいと思っていたから良いんだけど、紅愛は恋愛物とか見るイメージがあまりないけど紅愛もひょっとしたら恋愛物が好きかもしれない。


「……一緒に見てみない?」

「……………………」


 ダメだ……もしかしてと思ったけどやっぱり紅愛は恋愛物はあんまり好きではないようだ。まだ本人の口から「好きじゃない」という単語こそ出ていないものの、紅愛の絶妙な表情と沈黙が全てを物語っていた。映画観賞がダメなら何かいい案を考えなければ……


「それ以外でなんか無いの?」


 ようやく紅愛が口を開いたが表情はあまり変わっていなかった。


「えーっと……ちょっと待ってね!」


 何か他に借りていたDVDはないだろうか? レンタルショップの袋の中を漁る。他の借りたDVDは恋愛ドラマとサスペンスドラマ、ホラー映画のDVDがあった。恋愛ドラマは選択肢の中から外してサスペンスドラマはどうだろうか? これなら紅愛でも楽しめるはずだ。そう思ってDVDを袋から取り出したところで気づいた。このドラマは二作品目で前回の作品の続きになっていて前作を見ていないと話が分かりづらい。説明しながら見てもいいけど前作のネタバレをしないと面白くなくなっちゃうし、初見の人にはあまりおすすめ出来ない作品だ。……となると消去法でホラー映画になるが、このホラー映画はなんで借りたのか自分でもよく分からない。確かこの映画も気になっていて、映画館で見る勇気が無くて、DVDになったら見ようかなとは思っていて。いざ借りてみたはいいものの一人で見る勇気が湧かなくてずっと放置していたのだ。でもさすがに紅愛でもホラー映画は怖いだろう。これも紅愛の好みに合わなそうだから仕方なく録画していたアニメ映画を見るのがいいだろう。そう思ってホラー映画のDVDを袋の中に戻す。すると紅愛が私の隣まで来ていて袋の中を覗き込んできた。


「何があるか見せて」

「……いや、紅愛ちゃんが好きそうなDVDがなさそうだから録画したものでも見ない?」

 

 そう言っても紅愛は私から袋を取ると中を漁りだした。


「恋愛物ばっかりとかじゃないよね……」


 そう言いながら袋をガサガサと漁る。


「本当にあまりいいものは無いから……」

「……! これ前にめちゃくちゃCMでやってたホラー映画じゃん」


 紅愛は袋の中からホラー映画を取り出した。


「……もしかして紅愛ちゃんってホラーとか好きなタイプ……?」


 恐る恐る紅愛に聞いてみる。


「好きかと聞かれたら普通だけど、これは少し見たかった」

「……まさか紅愛ちゃんこれを一緒に見ようとか言わないよね……」

「だって、他のと比べるとこれしか面白そうなの無いじゃん」

「でも……」

「……もしかしてホラー苦手とか?」


 紅愛が少しにやにやしながら私を見る。


「べ、別に! 苦手じゃないけど……」

「ふうん……? 苦手じゃないなら一緒に見れるよね……?」

「そ、それは……」

「まさか怖いとか言わないよね?」

「ううっ……」


 完璧に紅愛は私がホラーが苦手なのを分かっている……!! 紅愛の意地悪モードにスイッチが入ってしまった……この状態になった紅愛を止められた事は無い。こうなったらビビらないでホラー映画を見終わってやる!!


「分かった、じゃあこれを一緒に見よう」

「映画を見るなら飲み物とお菓子がないと……なんかない?」

「あ、それならいつか映画を見るとき用にポップコーンがあるよ」

「じゃあそれ作って。飲み物はある?」

「ごめん……今麦茶とお水しか無い……」

「じゃあ私が近くにコンビニで飲み物買ってくるから、その間にポップコーン作っておいて」

「それなら紅愛ちゃんにお金渡しとくね」


 紅愛に飲み物代に千円渡す。


「じゃ、買って来るからポップコーンの準備しといて」

「分かった、気を付けてね」


 紅愛は自分の部屋からカバンを持ってくるとそれを肩に掛けて外に出た。紅愛が買って来るのに十五分位だろうか。その間に私はポップコーンの準備をする。ポップコーンはガスコンロで火を点けてそのまましばらく左右に振りながら待つだけだ。しばらくするとポンポンとポップコーンが弾ける音がしだした、ポップコーンのいい匂いがキッチンに漂う。そのまま左右に振って段々弾ける音がしなくなったらお皿に移して完成だ。ポップコーンの味を確認するために一口食べてみる。味はかすかにあるがもう少しあった方がいいので塩を少しかける。塩をかけた状態でもう一度味見をする。うん、ちょうどいい味になった。ポップコーンを盛ったお皿をテレビの前のテーブルに置いて、二人分の氷が入ったコップを用意してお皿の隣に並べる。DVDも今のうちにDVDプレイヤーに入れておこう。プレイヤーの電源を入れてホラー映画のDVDを入れる。テレビもDVDを見るモードに切り替えて、あとは紅愛が帰ってくるのを待つだけだ。紅愛が帰るまでテレビ前のソファに一人で座る。そういえばこのホラー映画のストーリーってどんなのだっけ? 気になってスマホで映画のタイトルを入力して検索する。すると映画のサイトが出てきたのでタップする。サイトによると簡単なストーリーは引っ越しをしようと考えている主人公が事故物件の家に引っ越してしまい、その家の中で様々な怪奇現象が起こるという話らしい。サイトを見るだけでもいかにも怖そうだが今日はビビらないで映画を見ると決めたのだ。これを機にホラー苦手を解消してやる!! そう思っていると玄関のドアが開く音がして、その音にびっくりした私は玄関の方を慌てて振り向く。玄関を見るとコンビニの袋を持った紅愛が居た。どうやらコンビニから帰って来たらしい。


「おかえり、紅愛ちゃん」

「ただいま……もしかしてびっくりした?」

「べ、別に? びっくりなんてしてないよ……?」

「ふうん……」

「そ、それよりポップコーンの準備出来てるから、飲み物コップについで早く見よ?」

「……そうだね」


 そう言って紅愛はコンビニの袋から飲み物を取り出してテーブルの上に置いた。一リットルのコーラとサイダーをテーブルに置くと紅愛はまだ袋をゴソゴソと漁っていた。


「……? 飲み物以外にも何か買ったの?」

「ポップコーン食べてると甘いもの食べたくなるでしょ? だから甘いものもいくつか買ってきた」


 コンビニの袋からチョコレートやクッキーを取り出して、それもテーブルの上に置いた。


「奏はどっち飲む?」

「私はサイダーにしようかな」

「じゃあ私コーラ」


 紅愛はコーラの蓋を開けてコップに注いだ。私もサイダーを開けて自分のコップに注ぐ。


「じゃあ再生するね」

「うん」


 すでにコーラを飲みながらポップコーンを口にしている紅愛を横目に見ながら、リモコンを操作して再生ボタンを押した。映画のCMがいくつか流れるなか、隣でポップコーンを食べていた紅愛が突然立ち上がりどうしたのかと思っていると、いきなりカーテンを閉めだしてリビングの明かりを消した。外は雨が降っていて空は薄暗かった。電気を消しただけでも暗いのにカーテンを閉めているので更に部屋は夜と同じ位暗くなった。


「なんで電気消すの?」

「ホラー見るなら暗くして見た方が面白いじゃん」

「でも、暗い中でテレビを見るのはあまり良くないよ?」

「いいじゃん別に……それとも……怖いとか?」

「べ、別に怖くないし!!」

「じゃあ大人しく見ようよ」

 

 そうこう言っているとCMが終わり本編が始まった。映画の序盤は特に怖いところがある訳でも無く、偶にポップコーンを食べながら映画を二人で無言で見る。





 しばらくして映画は中盤になり段々と怖い雰囲気が出てきた。少し怖くなってテレビから視線を逸らす。すると隣でコーラを飲んでいた紅愛が私を見て少しにやりとしながら私の反応を楽しんでいる様に見える。このままビビッているとまた紅愛にいじられてしまう。またいじられるのが嫌で私は、意地を張ってテレビの画面に目線を戻した。映画はどんどん怖い雰囲気になっていく。怖さに思わず目を瞑りそうになるがなんとかテレビを直視し続けた。




 そして映画は終盤のクライマックスになり。主人公の周りで怪奇現象が起こりだし、カメラワークが怖いアングルになり少し目を閉じながらテレビを見る。主人公が後ろを振り返ったところで女の霊が主人公の後ろに立っていた。私は悲鳴こそ出さなかったが身体をびくっとさせてしまった。その反応を見た紅愛は隣で少しにやにやしながら面白そうにポップコーンを頬張っていた。紅愛は怖い場面になっても全然驚く事もなく、ノーリアクションで見ていた。そのまま怖い場面がいくつか続き映画は終わった。映画が終わってもしばらく放心状態でぼーっとしていた。すると紅愛が立ち上がってDVDプレイヤーを操作してDVDを取り出してケースの中に仕舞った。


「どうだった?」

「べ、別に思ったよりは怖くなかったよ……?」

「……本当は?」

「うっ……」


 紅愛はずいっと私の顔の前に近づいてにやにや顔で私の顔をじっと見てくる。


「……怖かったです」

「やっぱりね」


 紅愛の圧に負けて正直に映画の感想を言った。素直に言うと紅愛はポップコーンを一口食べた。


「ずっと隣で反応見てたけど、中盤辺りから段々テレビを見るの怖くなってたでしょ? 実は怖かったのバレバレ」


 意地を張って怖くないと言ったがやはり紅愛にはバレバレだったらしい。


「ううっ……だって怖かったんだもん……」

「まぁ怖さは別にそこまでではなかったかな」

「紅愛ちゃんは怖くなかったの?」

「普通だと思ってたけど、私意外と強いのかもね」

「すごいね……」

「別に大した事でもないでしょ」


 堂々と怖くないと言える紅愛が少し羨ましい。私も「怖いの平気」とか言ってみたいものだ。


「奏はホラー克服したいの?」

「え?まぁ……克服はしたいと言ったらしたいかなぁ……」

「ふうん……それならさ……」


 紅愛がまた少しにやにや顔で私を見る。


「この映画の続編があるらしいんだけど、今度は映画館で見る?」

「絶対に行かない!!」

  

 今度から紅愛と一緒にホラー映画を見るのは絶対にしないと私は心の底から思った。そうして休日は終わっていった。

今回も二人が仲良くしているだけです! 日常シーンはすぐに思いつくので書きやすいです。シリアスも書きたいですが書けるかどうか分からないですがいつか書こうと思います!!続きが気になる方、おもしろかったという方は、ブックマーク登録、評価、感想コメントなどをよろしくお願いします!!それではまた次の話で!!

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