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第一話 二人暮し!?

これは私とあの娘が出会うきっかけの話

四月といえば新社会人、新入生等。始まりの季節。新しい職場、新しい学校にワクワクと同時に少し不安な気持ちを抱きながら新しい環境に慣れていく。そんな新社会人達とは裏腹に。私、園原奏そのはらかなではそうでは無かった。


 私は一人暮らしを始めて今年で四年目だ。高校を卒業してから一人暮しを始めて。製菓の専門学校に二年間通い。専門学校を卒業してからは、小さいケーキ屋さんで働いている。有名店という訳では無いが、この辺りで美味しいケーキ屋さんは?と聞かれたら三本指に入る位のお店だ。給料は決して高くはないけど昔からお菓子を作るのは好きだったし、一人暮らしをしていく分には十分にあるし、やっぱり自分の好きな事が仕事だとやりがいもあるし、私としては今の生活に不満は無かった。


 新生活が始まるこの季節で私に変化がある訳でもないし、あると言っても仕事先に新しい子が来るかどうかぐらいだ。そんないつもと変わらないとある四月の土曜日。お母さんから連絡があった。


「もう少しでおばあちゃんの命日でしょ? だから線香あげに行くついでに帰ってらっしゃい」との事だった。


「確かにこのくらいの時期だったなぁ」


 自分しかいない部屋でぽつりと呟く。母方の祖母が亡くなったのはちょうど桜が綺麗なこの時期だった。確か私が高校生位の時に亡くなったのだ。優しくてとても可愛がってくれてた事をよく覚えてる。おばあちゃんの墓参りをしないという選択肢はおばあちゃん子だった私にはもちろん無いので、仕事も休み母親が待つ実家に向かう事にした。


 カバンの中に財布とハンカチとかポケットティッシュ。若者にとっては必需品であるスマホとモバイルバッテリーを入れて部屋の戸締りをして車の鍵を手にして駐車場に向かう。車の運転免許は高校を卒業して程なくして取りに行き、中古の軽自動車を父親からプレゼントとして購入してもらったものだ。

 

 お母さんが住む実家は私が住んでいる街の隣街の郊外の住宅街に住んでいる。車で一時間半位の実家に帰る為、私は愛車に乗り込み車のエンジンを入れてお気に入りのCDを聴きながら車を走らせた。






 車を走らせて一時間数十分。実家に寄る前にまずは実家から数十分の所にある、おばあちゃんのお墓に行かなきゃ。街から少し離れた、山側の方におばあちゃんのお墓があった。私は、駐車スペースに車を停めて、おばあちゃんのお墓の前に向かう。おばあちゃんのお墓の前で手を合わせ、目を閉じる。


 おばあちゃん、これからも私達を天国から見守っていてね。これで、おばあちゃんのお墓参りも終わり次の目的地である実家に向かう為に、私はまた、自分の車に乗り込み、おばあちゃんのお墓を後にした。






 車の窓から見えてくる景色が段々と建物やお店から住宅街が見え始め、見慣れた実家が見えてきた。いつもはお母さんとお父さんの車が駐車されているがこの時間はお父さんが仕事で居ないのでお父さんの車は無かった。空いているお母さんの車の隣に私の車を停め。自分のカバンを持ちながら車を降りる。


 久しぶりに帰ってきたが、前に実家に帰ってきたのはお正月に新年の挨拶をしに帰った時以来だったけど、お母さんは定期的に連絡してくるし私の家に遊びに来る事も多かったからお母さんに会うのが久しぶりという訳でもなかった。......また世間話とかを聞かされるんだろうなぁ……と思いながら私は、少し久しぶりな実家の扉を開けた。



「ただいまぁ」


 そう言いながら扉を開け、靴を脱いで廊下を歩く。廊下の右側には二階に続く階段があり、廊下の突き当たりにリビングと廊下を繋ぐ扉がある。リビングに向かう為に私は扉を開けた。


「おかえりなさい。お昼ご飯はもう食べた?」


 扉を開けたと同時に私の母親、園原美空そのはらみそらが声をかけた。実家に到着した時にはもうお昼の十二時を過ぎていた。


「まだだけど、お母さんは?」


 実家に着いたら実家にある残り物とかを適当に料理して食べるつもりだったんだけど、お母さんもまだお昼を食べていないのかな。


「今から作るところなの、良かったら食べない? 奏の大好きなオムライスよ」

「もちろん食べる!!」


 小さい頃からの大好物を食べられると聞いて、私は子供の時みたいな大きな声で返事をする。


「ふふっ、奏は本当にオムライスが好きね。分かったわ、今から作るからくつろぎながら待ってて」

「はーい」


 お母さんがオムライスを作ってる間二階にある自分の部屋でのんびりしようかと思ったけど、オムライスが出来上がるのにそんなに時間がかからないし、リビングでのんびりする事にした。



「奏は一人暮らしをしてて寂しいなぁって思った事ある?」


 リビングで適当にスマホをいじっていると、キッチンからオムライスを作りながら、お母さんが少し大きめの声で話しかけてきた。


「え? まぁ、全然寂しくない訳じゃないけど…… どうしたの? 急に」

「ほら、帰ってきた時に真っ暗な部屋に一人なのは寂しくないのかなぁって」


 確かに仕事で疲れ果てて帰宅した時に、誰の出迎えも無いのは寂しいなぁと思った事は何回かあったが、それは仕方ない事だと割り切っている。


「そうよねぇ、やっぱり一人暮らしは寂しいわよねぇ」

「......??」

 

 お母さんは私が一人暮らしで寂しい事を強調するように呟いた。


「もう出来るから食器出しといてくれる?」

「......分かった」


 そんな何か考えていそうなお母さんと会話をしていたら、いつの間にかキッチンからチキンライスと卵のいい匂いが漂ってきた。お母さんに言われた通りに二人分のお皿とスプーンを食器棚から取り出し、私の大好物が待っているキッチンに持っていった。




 お母さんが作ってくれたオムライスはとても美味しかった。自分でも何回かは作った事があるのだが、やっぱりお母さんと同じ味を作るのは無理だった、この味はお母さんだから出せるのだ。自分で作ったオムライスも好きだけど、お母さんのオムライスは格別に美味しかった。食べ終わって空になったお皿をキッチンの流し台に置き、空になったコップに麦茶を注いだ。麦茶が入ったコップを持ってリビングに戻る。ダイニングテーブルにコップを置き、椅子に座る。それと同時にお母さんが食べ終わったお皿を片付けにキッチンに行った。そして戻ってきて私の座っている椅子の向かいにお母さんが座った。


「ねぇ奏、頼みたい事があるんだけど良い?」


 するとお母さんが私の方をしっかりと見ながら話してきた。

「え? 何? 頼み事って 」

「私の妹居るじゃない? ほら、お正月にも居たでしょ? 今、学校の先生をやってて色々忙しいみたいなのよ」


 お母さんは二人姉妹でお母さんには三歳下の妹が居る。南野紗英みなみのさえ、今は結婚して苗字が変わったがお母さんの妹だ。確かに前に会ったのはお正月の時だった。高校の英語教師をやっている紗英さんはいつも会う度に忙しそうだったが、今が楽しいらしく、忙しくても全然楽しそうな人だった。


「紗英さんがどうかしたの?」

「紗英に女の子が居たの覚えてる? 奏達が小さかった頃によく一緒に遊んでたでしょう?」


 紗英さんには娘が一人居た、私より五歳下の子だった。確か私が十歳の頃に紗英さんがお母さんの所に遊びに来ていた時に、紗英さんの後ろによく隠れていた。その子と仲良くなろうとしたんだけど、恥ずかしがり屋だったのであまり仲良く出来なかった記憶がある。


「その子の面倒をみてくれない?」

「………………はい?」


 紗英さんの娘さんとの記憶を思い出していたら、お母さんがヤバイ言葉をサラッと言ってきた為、私から間抜けな返事が出た。

「......え? え? 私が!? 紗英さんの娘の面倒をみる?!」


 あまりにも衝撃的過ぎるお母さんの言葉に私は混乱した。


「ほら、さっき『一人暮らしは寂しい』って言ってたじゃない? だからちょうどいいじゃない」

「いや、言ったけど、お母さんが勝手に決め付けただけでしょ!?」


 さっきのお母さんとの会話はそういう事だったのか……。どうりでいきなり一人暮らしが寂しいかと聞いてきたのか。


「ね? お願い出来る? 奏しか面倒をみてくれそうな人が居ないのよ」

「っていうか、お母さんが面倒みればいいんじゃないの?」


 そうだ、うちの両親は共働きという訳ではなく、お父さんがサラリーマンをしていて、お母さんは専業主婦をしている。お母さんだったら面倒をみれるのでは無いのか。


「今ね、紗英の娘が高校二年生らしいのよ。今通っている高校も私の所からだと一時間半もかかるのよ。 でも奏の所からだと数十分で着くから、そっちの方がわざわざ早起きして朝早くから行かなくて済むでしょ? 」

 私の家から数十分の所には県立怜悧(れいり)高校がある。つまり紗英さんの娘さんは怜悧高校に通ってるのか。


「じゃあ、音色と詩織は? あの二人も怜悧高校に近いし、面倒みてくれるんじゃないの?」


 音色と詩織は、私の姉と妹の名前だ。私の二歳上の園原音色そのはらねいろは、職業はOLをやっている。一言で彼女を表すと妹バカなのだ。小さい頃はちゃんと長女として、妹の面倒をみる妹想いのお姉ちゃんだったのだが。私達が中学生位の時にいきなり妹愛に目覚めたのか、ことある事に私や詩織を可愛い、可愛いと言いまくり。更に「お姉ちゃんって呼んでも良いのよ〜」と言うのが音色の口癖だった。気が付いた時には私も詩織も音色の事をお姉ちゃんと呼ぶ事が無くなっていた。恥ずかしくてやめたのか、音色の思い通りになりたくなかったのか、理由は忘れてしまった。


「ああ、音色は『私、家事苦手なのよねぇ。料理とかも数える位しかしないし、しかも紗英さんの子未成年でしょ? 私、結構晩酌とかするから未成年の子に酔ってるところ見られるの嫌なのよねぇ......、だから、奏か詩織に頼んだ方が良いと思うわよ〜』だそうよ」


 まぁ、確かにあの音色の事だ、この間も音色の家に遊びに行った時も、家の中が汚いという訳では無いが、ゴミの分別が雑だったり、皿洗いを後回しにし過ぎてお皿が流し台に溜まってたりする。音色は家事が苦手なのもあるけど、とにかく家事が雑過ぎる。最初から音色には期待はしていなかったけどなんとなく、あの人は面倒をみないだろうなぁとは思っていた。とすると最後の頼み綱は。


「じゃあ、詩織! 詩織は家事も苦手じゃないし、お酒もあんまり飲まないでしょ?」


 私の一歳下の園原詩織そのはらしおり。彼女は今は大学生で将来に向けて勉強を頑張っている。ただ何の仕事に就きたいのかはまだ決めてないらしいが、まぁなんとなく詩織の就きたい仕事は何となく想像は出来る。


「ああ、詩織なら『え!? 紗英さんの子を? いやいやいや、無理でしょ!! こっちは今年で大学を卒業する大事な時期なんだから、面倒をみる余裕なんてないよ!! いや、別に部屋が見せられないって訳じゃないからね!? 本当だよ!! だから、音色か奏のどっちか…………いや、音色は何かやらかしそうだから奏に頼んでみたら?』だって、詩織も貴女の方が良いって言ってたわよ」


 やっぱりか……詩織は勉強もそこそこ出来るし、音色と比べて料理や家事も出来る方で、性格も特に悪いところもなく、良い子なのだが、一つだけ言うとすると、彼女はオタクだ。アニメ、漫画、ゲーム、ラノベ等、彼女は結構なアニメグッズを持っていて、部屋の壁にはアニメのポスターやタペストリー、本棚には漫画とラノベ、本棚の隣の棚にはアニメのフィギュアやアニメのDVDが一面に並んでいた。


 多分紗英さんの娘の面倒をみない理由は、リビングとかにもアニメのグッズを置いてしまって人を呼ぶのがまずい状態なのだろう。あるいは趣味の深夜アニメが堂々と観れないとかだろうか。なんにせよ最後の頼み綱だった詩織すらもダメで、結局話は振り出しに戻った。


「ね? 奏にしかお願いできないの紗英の子の面倒みてくれない?」

 お母さんは両手を合わせて、お願い!!と言わんばかりの表情で私を見てくる。母親にそんな必死な表情で頼まれたら、もう、断るに断れない。


「はぁ…… 分かった、そこまで言うなら良いよ、紗英さんの娘の面倒みるよ」

「本当!? ありがとう! 奏!! やっぱり奏なら引き受けてくれると思ったのよ」


 私が引き受けた途端、さっきまでの必死そうな表情からケロッと一変してお母さんの表情は一気に笑顔になった。

もしかしてお母さん、最初からこの話が目当てで私の事呼んだ? おばあちゃんの墓参りに帰って来ないかと言ったのはこの話をする為だったのか!! 上手くお母さんにしてやられたと思いながら、意外とお母さんも策士だなと思った。


「それで? 面倒をみるって言ってもいつから?」

引き受けたものは仕方ない、もうこうなったら腹を括るしかない。私は詳しい日程を聞こうとした。

「今日からよ」

「…………………………え?」

「……? だから、今日からだけど?」

「えええっ!?!?」

 

 いや、本当に、嘘なら嘘って言って欲しかった。お母さんは行動に移すのがなぜ他の人よりこんなにも早いのだろうか…… それ自体はとてもいい事なんだけど、今回に関してはもう有言実行じゃないか。


「何? そんなに驚かなくても良いじゃない」


 またもや私を混乱の渦の中に叩き落とした当の本人は、なぜ私がそんなに驚いたのか分からないと言わんばかりの表情をしていた。


「いやいや、驚くよ!? 普通は一週間後とか、早くても明日とか明後日でしょ!!」

「まぁ、良いじゃない早い方が」

「お母さんは良くても私は良くない!! っていうか、紗英さんにはこの事言ったの?」


 そうだ、普通に考えて今から自分の娘を姉の娘に預けるなんて、いきなり出来る事では無いはずだ。ほら、やっぱり紗英さんの娘さんにも準備とか、説明とかしなくちゃならないし。


「あぁ、その事なら大丈夫よ! 紗英には前から話し合ってて、今からでも大丈夫よ!」


 何故そうなる。やはり紗英さんも行動力があるのは姉のお母さん譲りらしい。


「はぁ…… で? 今日から面倒をみるとして、私は今から何すれば良いの?」


 もう、私はやけくそになって、やれるものならやってやる!! 精神でいく事にした。そうでもしないとやってられない。私が一人で悶々と悩んでいた間にお母さんは、ある物を手に持っていた。


「じゃあ、はい、これ 紗英から預かってた物ね」


 そう言ってお母さんは私の前に、鍵を渡してきた。


「……ん? これ何の鍵?」

「紗英の家の鍵。これが無いと家の中に入れないでしょ?」

「いや、それは分かるけど何でお母さんが紗英さんの家の鍵貰ってんの!? あと、紗英さんも身内とはいえ、自分の家の鍵渡す!? 」

「ちゃんとこの間に合鍵作っといてもらったのよ。紗英からもちゃんと『これを奏ちゃんに渡しといて』って頼まれてたんだから。 じゃあこれで鍵もあげたし、紗英の娘迎えに行ってあげたら?」


 えぇ、お母さんの切り替え早すぎじゃない? まぁ、とにかく私が今からやらないと行けない事は、まずは紗英さんの娘さんを迎えに行くことらしい。まさかおばあちゃんの墓参りをしたついでにこんな事になるとは思ってもいなかった。


「……分かった、じゃあ今から紗英さんの家に行ってくる」

 

 ここでうじうじ言ってても仕方ない。お母さんや紗英さんにならって私も、すぐ行動してみる事にした。


「行ってらっしゃーい、二人暮らし楽しんでね〜」


 お母さんはニコニコしながら私にヒラヒラと手を振った。本当に人使いが荒い、いや、娘使いが荒いというか。そんなお母さんに見送られた私は紗英さんの家に向かう為、車に乗り込み、散々な目にあった実家から出発した。

初めまして!! 葉月朋と言います。今回初の小説投稿をやってみることにしました。まだ、文章が雑だったり、誤字ってたり、表現が分かりずらい所もあったと思いますが、初投稿なので、暖かい目で見守ってくれると幸いです(*ˊ˘ˋ*) さて、この話を書こうと思ったきっかけは、頭の中でこの話がだいぶ前から浮かんでいて。こういう話を私が読んでみたいなと思い、思い切って自分で書いてる事にしました。完全に私得ですいません。あともう一人の主人公でもある従姉妹ちゃんが出て来てなくてすいません!! 次の話から出てくるのでご心配なく。次の話もなるべく早めに更新出来るよう目指してますので、これから応援してくれると嬉しいです!! それではまた、次の話でお会いしましょう!! では*-ω-)ノ"

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