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魔法少女タイラントシルフ  作者: ペンギンフレーム
最終章 立ち塞がるもの全て、蹴散らせ
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episode5-8 世界の滅び⑨

 最高位妖精ロウに言われるがまま瞼を閉じたエレファントは、その直後見知らぬ広間に立っていた。

 学校の教室よりも広いその部屋には、高い天井にまで届くほど大きな本棚が壁一面に設置されており、ロウと似たような見た目の分厚いハードカバーの本がぎっしりと敷き詰められている。背表紙には何かの文字が書いてあり、どこかで見たことがあるような気はするがエレファントには読めない文字だった。


 四方の壁の内二か所にはエレファントの身長の二倍はあろうかと言うほど大きな門が対面するように設置されていて、片方は開きっぱなしになっておりもう片方は閉ざされている。そしてその2つの門を結ぶ直線上には大きな台座が置かれており、その上にはエレファントの専用武器、象をモチーフにした厚底のブーツが鎮座していた。


 他にも床や天井には札のようなものがびっしりと張り付けられていたり、部屋のあちこちに本棚に入りきらなかったと思われる本が積み上げられていたり、見たこともないガラクタのようなものが無造作に放置されていたりと、何も知らない者には一見して曰く付きの部屋にも見えそうな奇妙な部屋だが、エレファントはすぐに理解した。


 瞳に映っていないのに、瞼を閉じているはずなのに、そこに何があるのかが鮮明にわかる。見えないはずなのに見える。きっとそれは視覚ではなく、魂が感じ取っているから。


 つまりここが宝物庫、恐らく第二の門の先にある専用武器の広間なのだと。


 ならばやることは決まっている。


 これまでも、魔法少女に変身する度、魔法を使う度にその存在を感じていた、けれどまだずっと遠くにあるはずだった、第三の門。それが今、エレファントの目の前に、少し手を伸ばせば届くほどの距離にある。


 ロウは言った。愛する彼女のことを強く想えと。


 そんなこと、今更言われるまでもなかった。シルフに危機が迫っていることを知ったその時からずっと、表面上は冷静に見えていても、心は炎のように熱く燃えていた。


 怒りはある。

 許せないという気持ちもある。

 けれど何より、シルフの無事を祈っている。

 必ず自分が助けてみせると、守って見せると誓っている。

 他の誰でもない、自分自身に。


「本当に、私の中にそんな力があるんなら……!」


 エレファントは弱い。

 シルフと比べれば足元にも及ばないほど。

 けれどそんなことはエレファント自身わかっている。

 わかったうえで、いつかはシルフと肩を並べて戦えるくらい強くなりたいと努力している。

 魔女と呼ばれる魔法少女に比べれば亀のような歩みかもしれないが、それでも少しずつ強くなれている。

 だから自分のことを卑下しない、頑張っている自分を軽んじない、弱い自分を否定しない。


「お願い、力を貸して!!」


 だけど今だけは

 今だけはいつもの自分のままじゃ駄目なのだ

 いつか掴めるかもしれないその強さが、絶対に今必要なのだ


白心炉ポジティブエモーションドライブ!!」


 強い願いを込めた叫びと共にエレファントが大きな門に手を添えると、まるで機械仕掛けのようにあっさりと、一人でに、扉は開け放たれた。


 今までは開くことなど想像も出来なかったはずの第三の門が、本当にあっけなく、そうなることが当然のように。


「っ、早く最後の門を!」


 エレファントは目の前の光景を信じられないとでも言うように一瞬呆然としてしまったが、すぐに気を取り直して走り出した。


 初めて目の当たりにする自分の秘められた力に、エレファントは凄いと思うのと同時に僅かな恐怖を感じていた。

 力が湧いてくるような感覚や、元気が漲るような感覚、そんな好調を示すわかりやすい感覚など一つもなく、本当にそっと撫でるように触れただけで第三の門は開いてしまった。

 白心炉は持ち主である自分ですら把握出来ないほどの力を持っている。果たして、そんなものを捧げて得られるはずの更に大きな力を、自分は制御することが出来るのかと。


「ううん、絶対成功させるんだ!」


 弱気な自分を振り払うように、エレファントは第三の間に積み上げられた本や奇妙な道具には脇目も振らず一直線に駆け抜ける。

 自分がやらなければ誰が世界を救うのか。そんなの決まっている。シルフが、これまでずっと苦しんで、傷ついてきたはずのタイラントシルフが、自分を犠牲にすることを強いられて世界を救うのだ。それを思えば、白心炉への恐怖なんて簡単になくなってしまった。

 そうしてエレファントは、第三の門よりも更に巨大な、とても人間が開くことを想定して設計されたとは思えないほどに大きな最後の門にたどり着いた。


「お、重っ」


 さきほどの第三の門のように触れただけで勝手に開門されることはなく、それどころか白心炉で強化されたはずのエレファントの渾身の力で押しても僅かに開きかけるだけで、それすらも少し力が抜けると押し返されてしまう。ただ重たいだけではなく、まるで反対側から押し返されているような奇妙な感覚。


 エレファントは知る由もないが、これは万が一にも邪魔されることのないようにアースが講じた措置の一つだった。神格魔法に到達している魔法少女は現時点でシルフ以外にも二人、モナークスプライトとフレイムフレームが存在している。ロウが言っていたように最後の門を開いただけではシルフの連れ去られた場所へは辿りつけないが、それでも万が一があってはいけないと念には念を入れて全ての魔法少女の最後の門にロックをかけているのだ。


「ひ、ら、け~~~~!!」


 けれどたとえそれを知っていたとしても、知らなかったとしても、その程度の障害で諦めるはずがない。

 強い気持ちが力になるというのなら、諦めない限り、心が折れない限り、不可能なんて存在しない。


 必ず助けだすという強い覚悟が、

 何があっても側にいるという固い決意が、

 神にさえ抗い立ち向かう輝くほどの勇気が、

 そしてシルフを想うあふれるほどの愛が、


 エレファントに力をくれる。


「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 白く眩い光がエレファントの身体からあふれ出し、声が枯れそうなほどの雄叫びに呼応するように力が増していく。

 それと同時に、いつの間にかエレファントの衣装に変化が起き始めていた。


(シルフちゃんの記憶を消させたりしない!)


 ようやく、ようやくシルフは誰かに愛されていることを知れた。誰かを愛することを思い出せた。幸せを望んで良いのだと、普通にこだわる必要なんてないのだと気が付けた。


(シルフちゃんを犠牲になんて絶対させない!)


 世界を救うためなんて大義名分を背負わされて、シルフの、水上良一の人生は徹底的に踏み荒らされた。そのうえなぜ、犠牲になれと言えるのか。 


(これ以上シルフちゃんを傷つけるのなんて、そんなの絶対、私が許さない!!)


 もう十分傷ついた。十分苦しんだ。だからここからは


「私が背負う!!」


 次々と供給される燃料を糧にして白心炉は輝きを増していく。


 本来第三の門を開き魔女と呼ばれる強化フォームに変身するためには、その鍵を解除する合言葉が必要となる。

 しかしエレファントは合言葉を使わず白心炉の生み出す力で強引に扉を開いたことで、魔女の力を十全に引き出せていなかった。


 それはつまり、エレファントは魔女の力を有していないにもかかわらず最後の門を開きかけているということを意味する。

 だとすれば、象の魔女としての力を全て引き出した時、果たして最後の門は無事でいられるだろうか。


 強化変身のキーワードを、エレファントはすでに知っている。


 シルフを助ける。もしもそれを邪魔しようと言うのなら


「立ち塞がる障害もの全て!!」


 叫びと共にエレファントは大きく足を振りかぶり、


「蹴ぇちらせえええぇぇぇ!!」

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[一言] 魔法少女名までください ああぁ気になるう
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