【5話】生還の成果
ウルフを倒した後、2人だとウルフの死体は持って来られないから、その場に放置してダンジョンまで戻り、エンギと一緒に休憩をする事にした。
地面に仰向けに寝転がり、右腕をまぶたの上に置きながら考える。
今回はウルフが一頭だったから運良く生き残れたが、基本狼っていうのは群で行動するはずだ。
ウルフが同じ習性を持つかまでは分からないが、少なくとも一頭しかいないなんて考えるのは楽観的過ぎる。
だから、今後は群れにも勝てるようにならないとな。
それに、ダンジョンを守るモンスターもいないと話にならない。
今回は出来るだけ早く外の情報が欲しかったから危険覚悟で飛び出したが、近辺には村や町、他のダンジョンなどはない事が分かった。
今後はもう少し腰を据えて戦力の拡充をしていきたいところだ。
って事で、まずは今回の成果をまとめるか。
今回の遠征で、エンギがレベル4に、ダンジョンのレベルも5になっていた。
知識によると、ダンジョンのレベルは、ダンジョンマスターとそれに連なるモンスターが倒した外敵の経験値が蓄積され上がるらしい。
それも、モンスターが外敵を倒すとモンスターとダンジョンの2つに経験値が分散されるところを、ダンジョンマスターである俺がウルフを倒したため、ウルフの経験値は全てダンジョンのものになったから、ダンジョンのレベルが5になったみたいだ。
それと、保有ポイントも確認してみたところ、ウルフやホーンラビット達を倒したからか、66Dポイントになっていた。
これだけあれば、十分戦力が増やせる。それに、また時間が経てばダンジョンのレベルが上がった分、ログインボーナスとして50Dポイントが手に入る。
両方を合わせると116Dポイントになる。
問題はこのポイントをどう使うかだな。
現状、脅威は森のモンスターだけだ。となると、100Dポイントもコストが掛かるような強いモンスターは、ロマンはあるが今は要らないかもしれないな。
それよりも、ダンジョンの防衛と森へDポイントを稼ぎに行く部隊のために、ある程度まとまった数のモンスターと交換した方が良いように思える。
その後もしばらく悩んだが、取り敢えず今持ってるポイントを防衛用として使う事に決めた。
コストもあまり高くなく、最低限ウルフからダンジョンを守れるくらいの奴となるとここら辺か。
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15→スケルトンウォリアー、スケルトンアーチャー、ファンガス
20→ゴブリンウォリアー、ゴブリンアーチャー、ポイズンフロッグ
30→スケルトンウィザード、スケルトンプリースト、ダークバット
40→ゴブリンウィザード、ゴブリンプリースト、グレムリン
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恐らくこいつらは、スケルトンやゴブリンの上位種と、搦手が使えるモンスターってところか。
ウルフは純粋に強いから、どちらかというとまずは、搦手よりも純粋な戦力が欲しいところだ。
なら、ゴブリンかスケルトンかって話だが………………。
よし、スケルトンにしよう。
実際どの程度命令を守ってくれるのか分からないが、難しい事をさせる訳でもないし、寝ずに働いてくれそうなスケルトンの方が防衛には向いている気がする。
それに、単純にコストがゴブリンよりも低いのも悪くない。
どの程度の強さか分からないから、取り敢えずスケルトンウォリアーを二体と、スケルトンウィザードを一体交換する事にした。
ダンジョンコアを操作してDポイントと交換する。すると、ダンジョンコアが3回強く光った。
光がおさまると、ダンジョンコアの前に、見知らぬ三体の骸骨が立っていた。
種族 スケルトンウォリアー
レベル 1/15
特技 剣術
種族 スケルトンウォリアー
レベル 1/15
特技 盾術
種族 スケルトンウィザード
レベル 1/20
特技 魔法
「ほぇー、同じ種族でも特技が違う事もあるんだな」
スケルトン達の持っている物に注目すると、2体は骨の剣と盾を右手と左手に持ち、1体は骨の杖を右手に握っていた。
「スケルトンだからか骨の武具を持っているってわけか」
エンギも新入りの様子が気になったのか、はたまた光が物珍しかったのか、そこら辺でごろついていたのに、わざわざダンジョンコアの前までやってくる。
「取り敢えず、初めまして。 俺がダンジョンマスターの九条誠だ。 よろしくな」
「ゴブゴブ」
エンギと一緒に挨拶をかましてやるとスケルトン共は骨をカタカタと鳴らして返事のようなものを返してくれる。
そうだよな、こいつら骨だから喋れないよな……。
まあ、話は通じてるみたいだし問題ないだろう。
そう思ってると、エンギは笑われたと思い怒ったのか、拳を握りしめスケルトンウォリアーに殴りかかる。
スケルトンウォリアーは、拳に合わせるようにしっかりと盾を構える。
バシッ!
「グギャ!?」
骨と拳がぶつかる音が響くが、やられたのはエンギの方だった。
手が痛かったのか、殴りつけた方の手を反対の手で押さえて蹲っている。
恐らく、レベルも上がった今のエンギの方が、レベル1のスケルトンウォリアーよりも素の攻撃力も防御力も上だと思うが、やっぱり武具を持っている分、それが覆る事もあるっていう事だな。
「良い勉強になったな、エンギ」
どこのヤンキーだよってくらいすぐに暴力に頼ろうとするからな。
これで少しは懲りただろ。
エンギはスケルトンウォリアーを、覚えてろとでも言うかのようにひと睨みすると、俺の方を向いてさっき殴った方とは反対の手で拳を握る。
やばい、ニヤついてたのがバレたのかもしれない…………。
すると、いつもならここで1発かまして来るところだが、握った拳を解いてしまった。
なんかあれなんだよな。
森から戻ってからやけに俺の言葉を聞くようになったんだよな。
暴力を振るう回数も何となく減った気もするし。
もしかしたら、森で変なキノコでも拾い食いしたのかもしれない。
どんまい、エンギ。
そんな事を考えていたせいか
「ゴブ」
パシッ!
「痛っ!」
殴られはしなかったがビンタされたんだが……。
その様子を見てか、カタカタカタとスケルトン達が音を立てる。
まあそれでも、痛い程度で済んでるんだから、多少手加減はしてくれてるみたいだけどな。
その後は、機嫌を損ねたエンギの機嫌を取ったり、スケルトン達やエンギに計算を教えたりした。
とはいえ、スケルトン三人衆はあまり物覚えが良く無いみたいだった。
もしかしたら、脳味噌を使う事は得意じゃないのかもしれない。スケルトンだし。
それと、念のため、スケルトン達にいくつか命令もしてみたが、問題なく言う事を聞いてくれるようだったから、ダンジョンの防衛を任せる事にした。
本当に、どこかの誰かさんと違ってしっかり言う事を聞いてくれる分、手間が掛からなくて助かる。
まあ、エンギじゃないが、なんだかカタカタ鳴るたびに小馬鹿にされてるんじゃないかって気がして来たが。
何故か言葉を噛んだタイミングに合わせてカタカタ音を立てたり、エンギに馬鹿にされたタイミングでカタカタ言ったりするんだよな、あいつら。
絶対確信犯だろ。
まあ、スケルトンズみたいに夜も一緒にいてくれる仲間が出来たのは嬉しいけどな。
1人でいるってのも寂しいもんだし。
さて、エンギも探検で疲れてたのかもう寝ちまったし、スケルトン三人衆の相手でもして来るかな。
あいつらにボディーパーカッションでも教えて、音楽をやらせてみるのも面白そうだ。