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僕と彼女の物語

作者: 真宵 小晴

どこに行くの?

置いていかないで。

僕を置いていかないで・・・。



目が覚める。

また同じ夢か・・・。

最近よく同じ夢を見るようになった。

それはいつも誰かに置いて行かれそうになる夢。

不思議に思いつつ寝床から這い出てリビングへ向かう。

リビングには同居人がすでに居て、朝食の用意をしていた。

僕はそばに寄りその光景を眺める。


「はい、ご飯できたよ」

同居人がくれるご飯はいつも絶品だ。

僕が朝食を食べる横で同居人も食事を始める。



朝食を終えたあと僕がダラダラしていると同居人は出かける用意を始める。

彼女は今日は予定があるようだ。

それなら部屋に1人も寂しいから出かけようかな。

僕も身支度を整える。



彼女の用意が終わるのを待ち、彼女が部屋を出るタイミングで彼女の脇をするりと抜けて外に出る。

「出かけるの?気を付けてね」

言葉に答えるように彼女を一瞥して僕は歩き出した。



今日はどこに行こうかな。

彼女が出かけるから僕も家を出たということもあり、目的などない。

のんびり気ままに散歩でもしようかな。

住宅街を散歩していると登校時間ということもあってか、たくさんの小学生が歩いている。

その横を歩いていると小学生が寄ってくる。

僕は適当にあしらいながらスルスルと小学生の間をすり抜け、通学路から外れる。

すると野原に出る。

ちょっとお昼寝しようかな。

野原に腰を下ろす。

風が草花を揺らす音が心地よく僕は気付くと眠りに落ちていた。



待って!

僕を置いていかないで・・・。

彼女が僕に微笑みかけながら消えていく。

なんで!一緒にいるって言ったのに・・・。



ハッと目が覚める。

体中に汗をかいていた。

またこの夢・・・。

でも今回は誰に置いて行かれるのかはっきりわかった。

それは僕の同居人であり大切な人・・・彼女だった。

彼女が僕を置いていくはずがない。



気が付くとあたりは夕暮れ色に染まっていた。

もう帰らないと彼女が心配してしまう。

僕は急ぎ足で家に向かう。



家の前に着いたが部屋の明かりは消えている。

物音もしない。

彼女はまだ帰ってきていないのだろう。

僕は家の前で待つ。

彼女が居ないと僕は家に入ることができない。




遠くで救急車の音が聞こえてきて不安になる。

それは徐々に近づいてきており、不安が増していく。

・・・もしかして、彼女に何かあった?

いや、それはない。彼女なら大丈夫だ。

そう自分に言い聞かせるが不安はどんどん大きくなる。

悪い予感がした。

彼女がこの時間まで家に帰らないことはないからだ。

僕は救急車の音がするほうへ駆け出した。



しばらく走ると道路に人だかりができていた。

「大丈夫」自分に言い聞かせながら人々の間をぬって進んで行く。



しかしそこには血だまりができていた。

嫌な予感がする。

「大丈夫、大丈夫」そう言い聞かせながら顔を上げる。

僕は目の前の光景に言葉を失った。



そこには僕の大切な彼女が倒れていた。

彼女のまわりは真っ赤に染まっている。

救急隊がせわしなく動きまわっている。


・・・どうして。


僕は彼女に駆け寄ろうとしたところで宙に浮く。

「隊長、どうしたんですか?」

「いや、黒猫が寄ってきたからさ」

「縁起悪いっすね」

そう言いながら僕を抱えた人間は僕と彼女を引き裂く。

彼女は救急車に乗せられて運ばれていった。

僕を置いて・・・。


どこに行くの?

僕を置いていかないで・・・。

一緒にいるって言ったじゃないか。

「ニャー・・・」




それから僕は家の前で彼女を待ち続けた。

きっと帰ってくる、そう信じて。











「あの黒猫まだいるのね」

「あの家のお嬢さんに飼われていたのよね。可哀そうに。」

「彼女・・・もう亡くなったのにね」


読んでくださりありがとうございます。


黒猫はいつまでも彼女のことを待っているのでしょうね。

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