四枚の羽根。
四枚の羽根が、
道端に落ちていた。
その灰色は一月の空をうつしたかのようでいて、
くすむことなく、
昼下がりの陽光にきらりと輝いていた。
そして、かつて舞ったであろう大空に向かうように、
四枚ともが
並んですっくと立っていた。
明確に、死をイメージした。
そう、
この羽根の持ち主は、
もはやこの世には存在していない。
それほどまでに、
その四枚の羽根は、
--矛盾しているのだが--
路傍の草むらの中で存在感を放っていた。
一月の風が吹く、
草々は茶色にしわ枯れた身体を
カサカサと擦れ合う。
そして、
辛うじて残された数枚の葉は
命そのものの、
鮮やかな緑を映し出す。
冬が明け、
春を過ぎ、
夏を経て、
秋に傾き、
冬を迎えた、
陽の光を、
その身に受けて。
遠くで貨物列車が動き出し、
ごたりと、
重低音が響く。
一月の、
十と六日の、
冷たく乾いた風が背中から吹き付ける。
四枚の羽根からのびた、鉛色の
大きな、
とても大きな雲と雲が空に浮かび、
それらの間には、
これまた大きな空間が生みだされ、
青空と、太陽が輝いていた。
そして、
温かかった。
書くべきことは、ない、と思っていた。
けれど、
それが間違いであることを、
四枚の羽根が教えてくれた。
一月の太陽は、
残酷なまでに、命そのものを
照らし出す。
目を閉じてはいけない。
耳を塞いではいけない。
もっとよく見よう。
耳を済ませよう。
そして、
だから、
私は静かに筆をとった。
祈りの日、
一月十七日の午前五時。