表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/40

人間関係

 

 次の日、すぐミアに謝りにいったが「いいわよ。学会発表がんばって」としか言われなかった。

 取り付く島もないといった感じで、これ以上の謝罪はむしろ逆効果にも思えた。

 しかたない、今は学会準備に集中しよう。

 そう気持ちを切り替えようとしたが、もやもやした気持ちは晴れることがない。

 気が付いたら、学会の準備ではなく、またオムリィとの連絡に逃げてしまっていた。


「同僚と喧嘩をしてしまいました」

「何があったの?」

「約束を破ってしまった」

「心から謝ればきっと許してくれるよ」

「許してくれるかな」

「ダメだったらプレゼントを上げよう」

「それで大丈夫?」

「ワタシなら許しちゃう」


 ついミアとのことを話してしまった。

 どこの誰だかわからないことが、弱音を吐く対象としてちょうどよかったようだ。

 オムリィも優しく話を聞いてくれた。

 ミアとの喧嘩のことだけじゃなく、研究報告で厳しい質問攻めにあったこと、学会発表にも気が乗らないことなど、どんどん相談してしまった。

 自分のことばかり話していると、今度はオムリィがどんな人なのか気になってきた。

 話している雰囲気から察すると女性のようだが、母のような優しさを感じることもあれば、少女のような無邪気さを感じることもある。


「どこまで私生活のこと聞いていいのか距離感がわからんなー」


 理系特有のコミュニケーション能力の欠如から、オムリィ自身のことはあまり聞き出せていなかった。

 何か私生活のことを聞ける良いきっかけがあればいいのだが。

 俺がうじうじ悩んでいると、先にオムリィから問いかけがあった。


「もう仲直りした?」

「いや、まだ……」

「今なら許してくれるよ」

「何でわかるのさ」

「なんとなく」


 オムリィに背中を押されて、俺はまたミアのもとへ謝りに行った。

 初めはギクシャクした会話だったが、学会が開催される場所がフランス特別自治区だと知ると、風向きが変わった。

 どうやらそこにもネズミーのテーマパークがあるようだ。

 働いていると気軽に行ける場所ではないため、代わりに限定のグッズを買ってきてほしいと頼まれた。

「会社のお金で行けるなんて羨ましいわ」などという憎まれ口も復活し、ひとまずの終止符をうつことができただろう。


「仲直りできたよ」

「ほら! ワタシの言った通り!」

「ありがとう。助かったよ」

「なんでお礼?」

「オムリィのおかげで、もう一度謝りに行けたから」

「ワタシが言わなくても、きっと仲直りできてたよ」


 オムリィはそう言ってくれたが、それには長い時間が必要になっただろう。

 気まずい関係を修復するのは苦手だ。

 おかげで、他に気を取られることなく、学会発表の準備に打ち込めるようになった。

 そして、あっという間に学会に参加する日がやってきた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ