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あくやくれいじょうはやめられない

  空には、雲ひとつない晴天だった。

 だいぶ涼しくなってきた秋の陽気は、これから迎える豊かな収穫を保証しているようで、農民でなくとも受かれた気分にさせる。

 そんな気候にふさわしい熱狂が王国には満ちていた。


 人々が集まる広場の中心には、王国の最初の罪人にして謀反人、初代国王の弟であった、悪名高いジーロウの処刑に使われたと伝えられる、由緒正しい断首台が備えられている。

 人々は皆、餌を前に待てを命じられた犬のような、熱のこもった目でそれを見つめていた。


 処刑が始まるのだ。


 ただの処刑ではない。

 この由緒正しい断首台は、どれ程の大罪を犯したとしても、卑しい身分のものに使うことは許されていない。

 この栄光ある殺人道具の使用が許されているのは、貴人に対してのみである。

 それが広場に集まる人々の、熱い感心をかった。

 滅多に見られない人死にである。

 普段平民以下、大衆を顎で使い、時には汚れた布巾を捨てる程度の気安さで殺すこともある、いと貴き御方が死ぬのだ。

 老いも若いも、男も女も、身分の上下すら問わず誰もが醜悪さを隠さず断頭台にを見つめていた。


 そんなおぞましき舞台の、主役を任ぜられた者の名をキュリオン・ルシフェレイアという。


 ルシフェレイア家は王国における伯爵の地位を担っており、現当主のラシュヌ・ルシフェレイアは宰相として実質的な王国の運営を意のままにできる立場である。

 その権勢は大変なものであり、王国の物事全ては、ラシュヌがどちらの秤に重しをいれるか、それによって決まると噂されていた。


 キュリオンはラシュヌの一人娘である。

 それが、死ぬ。


 グウオオーンと、鐘がならされた。

 初代国王がこの地を征服した際に、敵対した原住民の装備と遺灰を混ぜ込んで作ったこの巨大な鐘は、一突きで王都の隅々まで響き渡り、その音の尾は、いつまでも重く長く残る。

 この鐘がならされた時には、例え産まれたばかりの赤子であっても静寂を保つのが王国のルールだ。


 広場に一人の男が進み出てきた。

 男の顔は興奮に紅く染まっている。

 男の一族は栄光の処刑台をのみ扱う特別な役人である。

 男にとっては一生に一度の晴れ舞台であった。


 男がよく響く声でキュリオンの罪状を読み上げる。

 曰く度を越した傲慢。

 罪の宣告がなされるともったいぶることなく処刑は執行された。

 吊り上げられた刃は落とされ、当然の帰着としてキュリオンの首は身体から切り離された。

 

 歓声

 津波が大地を洗い探すように、始めは静かに、しかし次第に大きく、圧倒的な重量を持った歓声が民衆から沸き上がった。

 

 誰も彼もが喜んでいる。

 老いも若いも、貴いも卑しいも、敵対した女も、元婚約者でさえも


 誰も彼もがキュリオンの死を喜んでいた。


 それをキュリオンは首だけを転がして見つめていた。



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