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088. 王都掃討作戦

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。




「…… いったいどうなっている?」


「申し訳ありません。失敗した理由は判りません。毒入りのワインは間違いなくコリント卿の杯に入り、飲み干したことはこの目で確認しています」


「ではなぜ奴は生きている?」


「…… ひょっとすると解毒薬のようなものを事前に飲んでいたのかもしれません」


「私の知らぬそのような薬があるというのか?」


「コリント卿は万能薬を売りに出しております。恐らくは手元にも数多く確保しているでしょう。事前に万能薬を飲んでいたのかもしれません」


「………… 万能薬か。くッ、こんなことならば、護国卿などに推したりはしなかったものを! 抜かったわ!」


「今となっては、毒が効かなくて幸いだったのかもしれません」


「……ドラゴンか。またドラゴンが姿を現すと?」


「判りません。それがはっきりするまでは、生かしておいたほうが良いかと考えます」


「しかし、奴も言っていたがドラゴンが言うことをきくかわからんのだぞ? 奴が生きていても状況は変わらぬかもしれん」


「しかし、コリント卿はドラゴンに複数回遭遇し、命を長らえているのです。そういう意味では実績があります。万が一を考えて王都にいる間だけでも生かしておいてはいかがでしょうか?

 …… あのような命知らずの馬鹿げた行いが出来るのは恐らくコリント卿だけです」


「くッ、忌々しい!」


「それよりも、賊討伐のほうを責めたらいかがでしょう? 恐れ多くも陛下の御前で賊を五百以上も捕らえるなどと大言壮語したのです。一向に進捗しない王命の責任を問うてはいかがでしょう?」(「たら」では敬語として不適切)


「…… ふむ。あれだけ持ち上げた手前、私から問うのは難しいが別の者にやらせても良いか。悪くない」



 ◆◆◆◆◆



 救出した者達とサテライト十班は、予め決めていた通りに何人かグループに別れて王都の門をくぐり、全員が王都からの脱出に成功した。


 あとは万が一の追手に備えてガンツまで逃げるだけだ。念のためドローンを一機、警護につけるようにした。


 宿に戻るともう夕食の時間で、既にその準備が出来ていた。当然のことながら、皆は今日の出来事を聞きたがったので、夕食を摂りながら報告をすることにした。

 精々四十名程のキャパの食堂に九十名以上が詰めかけているため、ほとんどの者は食事どころでは無く話を聞くだけだ。


 まずはセリーナ達、救出班の話だ。作戦は開始当初からさしたる問題もなく、順調に推移していったらしい。

 問題が起きたのは地下牢から馬車に向かう時で、運悪く予想外の衛兵の移動があり、通路の前後を挟まれてしまったようだ。


 セリーナ達は、衛兵達とすれ違い正体がバレる危険を冒すよりは、とルートGに移行する事にしたようだ。その判断で正解だろう。俺でもそうしたはずだ。


 クレリア達の話では、グローリアが現れた時、王城周辺では大変な騒ぎだったらしい。


「…… アラン、グローリアは偶然に来たわけではないのでしょう?」


 うーん、やっぱりそういう話になるよな。絶妙のタイミングでグローリアが俺達のいる城に訪ねてくるなんて偶然ではあり得ない。


「そうだな。どうやらグローリアは、俺の呼びかけが聞こえるみたいなんだ。何でも伝わるわけじゃなくて、繰り返し懸命に念じると、って感じなんだが」


「………… やはりそういうことだったのね。城に現れたグローリアは何かを探しているようだったわ。アランの呼びかけに応じてやってきたのね。アランにもグローリアの声が聞こえるの?」


「なんとなく考えが伝わってくる、といった感じかな。絶対に判るというわけじゃないんだが……」


 ここら辺の設定は、フワっとしたものにしておいたほうがいいような気がする。


「ひょっとすると精霊様が、アランとグローリアの仲立ちをしているのかもしれないわね」


 言い得て妙な言い方だ。クレリアはナノムの存在を忘れてはいないようだな。周りの者もクレリアの言うことに納得したように頷いている。


 ん? これで終わりなのか? もっとこの事に対する追求があっても良さそうなもんだが、クレリアの言った精霊という言葉で、皆はあっさりと納得したようだ。


 うーん、つじつまの合わない無茶苦茶な事を言い出しても、あっさりと納得してくれるのは楽でいいんだけど、なんだかモヤモヤするな。


 セリーナ達の話が終わると今度は俺の話で、礼儀作法や領地の税制の話を簡単にしていく。


「その主任主計官の話では、俺の叙勲の話は王都でも広まり初めていて、通常の領地であれば、今に仕官志願者が殺到するだろうと言っていたんだが、皆はどう思う?」


「その可能性は高いと思われます。新たな貴族家の立ち上げなど、そうそうあることではありません。問題はやはり通常の領地ではなく、魔の樹海の開拓地というところでしょう」


 ダルシムも主任主計官と同じ意見のようだ。確かに魔の大樹海で暮らすという発想はこの国の者にはないだろうな。せめて冒険者の類いが集まってくれるといいけど。


「俺としては、人材はできるだけ多いに越したことはないと思っているんだけど……」


「もちろん優秀な人材であれば積極的に採用していくべきでしょう。もしよろしければ我らがある程度選別し、問題がなければアラン様、リア様に御覧頂くというのがよろしいかと考えます」


 それもそうだな。どんな人材が必要になるかは皆のほうが詳しいだろうし、俺としても皆が納得できるような人材でないと困る。新たに採用した人達が元で不和が起こるのはごめんだ。


「それは助かる。では、もし仕官希望者が来たらダルシムが中心となって対応してくれ」


「了解しました」


 話は叙勲式の話へと進んだ。問題なく男爵として叙勲されたこと、王より賊討伐を依頼された事を話していった。


「どうやら王は、王都周辺に賊が多い事を憂いているらしい。俺達が盗賊狩りと呼ばれていることを知って賊討伐を依頼してきたんだ。

 俺も調子に乗って賊を一掃してみせる、なんて言ってしまったんだよ」


「王より依頼されれば、そう返答するしかないでしょう。しかし一掃するというのは……」


「あぁ、そこら辺は確認しておいた。とりあえず賊を五百名以上の賊を捕らえられれば依頼達成だ」


「「五百名!」」

「五百名というのは些か多いように思われますが……」


「大丈夫だ。賊が居そうな場所には心当たりがある。あぁ、そう言えば護国卿という役職につけてもらったな」


「「護国卿!?」」


「リア様、こちらを御覧ください」


 エルナが、小脇に抱えていた護国卿の盾をテーブルに載せた。どうやらずっと持ち歩いていたようだ。


「…… アラン、本当に護国卿に任命されたというの?」


「あぁ、そうだ。もっとも賊討伐をおこなっている間だけ、という話で、その権限は賊の捕縛に関することに限定するって言っていたな。

 護国卿というものがよく判らないんだが、どういう役職なんだ?」


「護国卿は国防に関する事柄であれば、国の宰相にも匹敵する権能です。通常、国境付近の貴族が任命されることが多く、王の指示を待たずに越境してきた敵に対応するために、周辺の貴族家の兵を動員することが出来ます」


「ほう、それは凄いな! じゃあ、俺は守備兵を動かすこともできるのか?」


「当然、可能なはずです。しかし、護国卿は王家に近しい上級貴族でもなければ任命されることはないはずなのですが……」


 酒に毒を盛られた事、恐らくは宰相が関わっている事、宰相が暗殺の疑いを誤魔化すために俺を気に入っているふりをしているのではないか、という俺なりの予想を話していった。


「なるほど……、十分あり得そうな話ですな」


「いずれにしろ、この護国卿という身分を大いに活用しようと思う。

 俺は、皆で宿の警備をしている現在の状況が気に入らない。この状況を打壊するために、まずは王都の賊を一掃しようと思う。

 俺達に手を出そうと考える者がいなくなるぐらいの厳しい取り締まりをおこなう」


 そう言うと皆は気合いの入った顔で頷いた。

 王都に着いてから常に四十人体制で宿を警備している。勿論警備は必要だとは思うが四十名は多すぎる。

 それどころか俺は一人で街に出ることも許してもらえなくなった。貴族になった今、一人で出歩くのは難しいのかもしれないが、もう少し自由は欲しい。


 イーリスが掴んでいる情報の多くは酒場で仕入れたものだ。把握している犯罪者の情報は氷山の一角だろう。

 しかし、判っているだけでも数百人の犯罪者と思われる者がいる。これらを捕らえればそれなりに効果があるに違いない。


「明日から狩りを始めよう。効率を考えてサテライトの三つの班を一隊として三つの討伐隊に分ける。A隊はセリーナ、B隊はシャロン、C隊は俺が率いる事にしよう」


 この後、皆で話し合いながら各隊の班分けをおこなった。

 完全に宿を無人にするわけにはいかないため各隊は各二十五名で、A隊のセリーナの補佐にクレリアとダルシム、B隊のシャロンの補佐にエルナとヴァルターが付くことになった。宿は十五人の者で警備する。


 賊の捕縛は、出来れば守備隊との合同作戦のような形にしたい。セリーナやシャロン、エルナやクレリアが目立つのは得策ではないため、表向きの隊長はダルシムとヴァルターということになった。


 その他にも今後の事を打ち合わせて、この臨時の会議はお開きとなった。

 部屋に戻りセリーナとシャロンと賊討伐についての簡単な打ち合わせもおこない、準備は万端だ。



[艦長、脱走が発覚しました]


(やっとか。結局、交代するまで気付かなかったんだな)



 仮想ウィンドウ上に城の透視イメージが表示され、そのイメージの地下牢付近では慌ただしい人の動きがある。ちょうど衛兵の交代時間二十分前の深夜十二時四十分だ。


 城の地下牢へと続く通路は行き先が地下牢だけだ。用がある者しか通ることがないためバレにくいとは思っていたが、交代の時間までもつとは思わなかったな。

 叙勲式があったり、ドラゴンが来たりと色々なことがあったからなのだろうか。余計な世話だが、もっとセキュリティーを強化したほうがいいと思う。


 さて、いったいどういう事になるかな? 女官に扮装した者が脱獄させたのだから、やはり女従者を連れていった俺が疑われることになるのか。


 いずれにしてもこれからはドローンによる警戒を厳にする必要があるだろう。



(兵の監視を頼む。何か動きがあったらすぐに知らせてくれ)


[了解しました]



 心配していても仕方がないので、寝てしまうことにした。


 翌朝、皆と一緒に朝食を摂っているとイーリスから通信が入った。



[艦長、兵に動きがあります]


(なに!?)



 仮想ウィンドウ上に映像が表示され、城門から出てくる衛兵の様子が映し出された。人数は三十名程で、馬に乗っている者も数名いる。

 兵達が向かっているのはこの宿の方向だ。…… どうやらこの宿に向かっているようだな。


 何か決定的な証拠が見つかって俺達の捕縛に動いたのかと一瞬焦ったが、恐らく俺達の捕縛に来たのではないはずだ。

 人数が三十名というのは余りに少なすぎる。冒険者として名が知られている俺達を捕らえるつもりなら、少なくとも百五十名は用意するはずだ。


「皆、警戒体制をとってくれ。三十名程の兵がこの宿に向かっているようだ」


 俺がそう言うと、分散して泊まっている他の宿に知らせようと二人の者が駆け出していき、さらに部屋の奥から用意していた大きな木箱が四つ、引き出された。中には予備の剣や盾、弓矢などが大量に入っている。

 万が一の襲撃に備えて用意していた武装だが、恐らく使うことはないだろう。


 数分後、一行は宿の前に到着し、整列し始めた。やはり捕縛に来たのではないようだ。何かの連絡だろうか。


「アラン様、王都守備隊の方々がお目にかかりたいとのことです」


「よし、会おう」


 宿から出ると通りに三十名程の兵が整列し跪いており、兵達の前には五人の隊長格と思われる男達が跪いていた。


 真ん中の男は、昨日の叙勲式と祝賀会で会ったな。本人から自己紹介をされたし、ヘルマン・バール士爵と名前タグが仮想表示されている。

 軍人っぽい服を着た五十代の精悍な顔つきをした男だ。


 士爵の隣には、先日王都の正門で会った王都正門守備隊のラルフも跪いていた。


「閣下、朝早くに申し訳ありません。王都守備軍、軍団長をしております。ヘルマン・バールです」


「おはようございます、士爵。貴方は軍の方だったのですね」


「閣下。私にそのように丁寧に話しかける必要はありません。護国卿閣下にそのような丁寧な話し方をされますと部下が混乱してしまいます」


「…… それはすまなかったな、ヘルマン。それで何の用だ?」


「国王陛下より、閣下のお手伝いをしろとの命を受けました。朝早くに失礼かと思いましたが、此度の王命には全力を尽くす所存です。できるだけ早いほうが良いと思い御挨拶に参りました」


「そうか、それは都合がいい。こちらからも連絡しようと思っていたし、早速今日から賊の取り締まりをやろうかと考えていた。ところで、一時間でどれ程の兵を集められる?」


「……… 三百名であれば何とか」


「いや、三百は必要ないな。では、早速だが四十名で構成された部隊を三隊、計百二十名を用意してくれないか? 捕縛用の鎖か綱も合わせて用意してもらえると助かる」


「は、承知しました」


 ヘルマンの隣に跪いていた隊長格の男が、ヘルマンの目配せを受けて馬に乗り駆けていった。


「茶でも飲みながら打ち合わせをしないか? 俺もウチの人間を紹介したい」


「は、承知しました」


 ヘルマンと隊長格の三人を宿の食堂に招き入れ、打ち合わせをすることになった。


「こちらが私の部下のラルフ、ベニート、カストです。先程御指示頂いた三隊の指揮は、私、ラルフ、ベニートが執ります」


 ほう、軍団長自ら討伐隊の指揮をとるつもりなのか。

 シャイニングスターも三隊に分ける事を説明し、ダルシムやヴァルターを隊長として紹介した。


「今日から王都に住まう賊を取り締まることにした。実はこんなこともあろうかと、ずっと賊と思われる者の所在を調べていたんだ。

 俺達シャイニングスターが賊のアジトへの案内と強襲を担当する。君達には賊の捕縛と取り調べや聞き取り調査をお願いしたい」


「まさかとは思いますが、閣下自らが陣頭に立たれるのですか?」


「当然だろう? 俺も今回の王命には本気で取り組む。半端なことはしないつもりだ」


「…… 判りました。しかし、シャイニングスターだけで強襲をおこなうというのは……」


「ヘルマンも叙勲式で陛下の御言葉を聞いただろう? 俺はあの御言葉をシャイニングスターへと御依頼と受け取った。悪いが俺達の手で強襲するという部分は譲れない」


「…… 承知しました。御指示に従います」


 ヘルマンに王都の治安の話など聞いていると、宿の外が俄に騒がしくなった。どうやら守備兵達が到着したようだ。まだ四十分も経っていないのによく揃えられたものだ。


「閣下、部下達が着いたようです。よろしければ、閲兵をお願いできないでしょうか?」


「…… 判った」


 宙軍での閲兵のやり方なら知っているが、この国の軍の閲兵はどうやるんだろう? まぁ、きっとどこの軍でも一緒だろう。訳知り顔で兵を見て回るだけだ。


「気をつけッ!」


 ヘルマンが号令をかけると、宿の入り口付近に方陣に整列していた三隊の兵士達が、一斉に身を正した。よく訓練されているようだ。


 兵達の前をゆっくりと歩き、身だしなみや装備をチェックしていく。ヘルマンは俺の後につき、同じくチェックしていた。ある兵士の前で立ち止まる。


「剣を抜いて見せろ」


 兵士は一瞬慌てたような仕草をみせたが、ゆっくりと剣を抜き俺に差し出してきた。

 受け取ると剣をじっくり検めるように見ていくが、俺に剣の善し悪しは全く判らない。しかし、錆なども無いし悪い状態でないのは見て取れた。

 兵士に頷きかけて剣を返し、閲兵を続ける。一通り、兵達を見て宿の入り口に戻った。


「士気も練度も高い。見事だ、ヘルマン」


 これは全員に聞こえるようにあえて大きな声で言った。これが閲兵の重要なポイントだ。

 …… 本当に高ければ良いんだけどな。


「はッ、ありがとうございます! 守備隊の中でも精鋭中の精鋭の者達です」


 ふぅ、良かった。閲兵を勧めてくるのだから悪くはないだろうとは思っていたが、恥をかかずに済んだな。とりあえず閲兵完了だ。


「では、さっそく賊の捕縛に向かおう。悪いがこの作戦の主導権は俺達シャイニングスターにある。皆も俺達の指示に従ってくれ」


「「はッ」」


 俺達も準備を終えると早速三隊に分かれて、宿を出発した。予めセリーナとシャロンと打ち合わせをして今日襲撃する賊のアジトは決めてある。時間の許すかぎり次々と襲っていこう。


 俺の隊に付くのはヘルマンの指揮する守備隊だった。二十六名のシャイニングスターの一隊の後ろに四十名の守備隊が付き従う光景は、異様に映るらしく王都の民は好奇の目で俺達を見ていた。


 十分程で賊のアジトのすぐ近くまでくることができた。

 筆記用具を取り出し簡単に打ち合わせをしていく。


「この角を曲がって四軒目の三階建ての建物だ。こんな感じになっている。裏口は此処だけだ。悪いが裏口は守備隊で固めてくれ。賊の数は二十一名、三分後に中に踏み込む」


 打ち合わせを終えるとヘルマンの指示で、十五名の兵士達が裏口を押さえに走っていった。よし、行くとしよう。


 アジトの入り口には見張りでもいるのかと思ったが特に見当たらなかった。


「では、ここで待っていてくれ」


 ヘルマン達にそう指示すると建物のドアを開けようとするが鍵が掛かっているようだ。

 魔法剣を抜き久しぶりにファイナル・ブレードを発動させると、ドアの蝶番と鍵を壊しドアを蹴り倒した。


「何だ! お前は!?」


 中にいた二十代の男をエア・バレットで吹き飛ばす。

 入り口付近にあった小さな部屋のドアは開いており四人の賊がいたが、部屋になだれ込んだ者達が木刀で袋叩きにしていた。これで五人。


「正面の奥の部屋に四人だ」


 その指示で七、八人の者達が奥の部屋に向かって駆けていく。一階はこれで制圧完了だ。二階に上がることにしよう。これで九人。


 二階はワンフロアの大きな広い部屋で様々な物資が置いてある倉庫のような所だった。三人の男達がいたが、不用心にも武器も持たずに様子を見に近づいてきたので、たちまち木刀で叩き伏せられていた。これで十二人、あと九人か。


 三階にいる者は、さすがにもう襲撃を受けていることに気付いているだろう。ここからは慎重にいこう。

 仮想ウィンドウ上には、建物の透過イメージが表示されていて、賊達の持っている武器も判っている。


「階段と廊下に四人。武器は剣だけだ」


 俺がそう言うと、それならば問題ないとばかりに十人以上の者達が一斉に剣を抜き、階段を駆け上がっていった。俺が三階に着いた頃にはすべての者が切り伏せられ、取り押さえられている。殺してはいないようだ。これで十六人。


 残すは奥の部屋だけだ。五人の賊が立てこもっている。ドアの前に行き、声を掛けた。


「おい! こちらは六十人以上だ。命が欲しかったら武器を捨てて床に伏せろ」


「お前達はどこの者だ!? ここがファース一家のアジトだと知っての襲撃か!」


 一家というと家族経営の賊なのだろうか。そんな形態の賊がいるとは思わなかったな。


「俺達はシャイニングスターだ。諦めて武器を捨てろ」


「シャイニングスターだと!? 嘘をつくな、なんで冒険者が!?」


 もう面倒だな。こんな問答をしている時間はない。弓を持っている者もいないし、魔法発動の準備をして構えている者もいない。


 ドアを蹴破ると同時に扇型に広がる特大のエア・バレットを部屋の中に叩き込んだ。

 次弾を準備して身構えるが全員吹き飛ばされている。これで終わりのようだ。

 吹き飛ばされた賊達は次々と拘束されていった。


「お見事です。アラン様」


 今日の俺の副官役は近衛出身のサーシャのようだ。


「怪我人は …… いないようだな。みんな、よくやった」


 しばらくしてヘルマン達、守備兵が部屋にやってきた。


「さすがはシャイニングスターですな。まさかこれだけの短時間で終わらせてしまうとは…… 御見逸れしました」


「こいつらはただの賊だからな。樹海に出入りしている俺達にとっては何てこともない相手だ」


「さすがでございます」


「おい! 何の権利があってこんな事しやがったんだ! 俺達にこんな事をしてただじゃ済まないぞ!」


 そう言ってきたのは賊の一人で、声からするとさっきドア越しに話していた者のようだ。賊の首領だろうか。

 そういえば、イーリスが犯罪者だと判断していたから疑いもしなかったが、こいつらはどういう罪を犯したんだろう?



(イーリス、こいつらの罪は?)


 仮想ウィンドウ上に映像が表示された。映像は酒場のようで客は疏らだ。この男の顔がズームされる。


『おい、マレイン商会は上手くやったんだろうな?』


『へい、一家揃って間違いなく皆殺しにしやした。何の後腐れもありません』


『そうか、手間をかけたな。まぁ、飲め』


 映像が終わった。押し込み強盗だろうか、断罪するのに十分な罪状だな。



「俺が調べたところによると、この男達はマレイン商会の件に関わっているはずだ」


「ほう、あの事件に……」


「…… 証拠はあるんだろうな。あるなら見せてみろ」


「馬鹿者め。この御方がお前達は罪人だとおっしゃっているのだ。証拠も取り調べも必要ない。連れていけ!」


「そんな馬鹿な!」


 男達は騒ぎながらも、兵達に引きずられて連行されていった。


「ヘルマン、取り調べや周辺住民への聞き込み調査はやって欲しいんだがな。俺達の調査が間違っているという可能性もある」


「…… そうでした。申し訳ありません」


「手が足りなくなるようであれば人を雇ってもいい。そのための経費は出そう」


「いえ、そのようなお気遣いは無用です」


「…… そういえば、ここにある金や物はどうするんだ?」


「もちろん、全て閣下の戦利品です。我々は閣下のお手伝いをしているだけなのですから」


 冒険者の時とは立場が違うので、当局が押収するのかと思っていたが俺達の戦利品になるようだ。

 そうか、そういえば今は俺達が当局ということになるんだな。なんだか不思議な気分だ。


 マルチスキャナーの反応では、部屋の片隅の床に金の隠し場所があるようだ。

 剣を抜くとファイナル・ブレードを発動させ、床材を切っていった。板をどけていくといくつかの革袋と帳簿のようなものが出てきた。


 革袋には金が入っており硬貨の種類毎に分けられているようだ。金貨、銀貨共にずっしりと重く、かなりの金額だ。

 おや、この袋の中身は、大きな宝石や貴金属だらけだ。これは大収穫だぞ。


「おぉ、これは凄い……」


「ヘルマン、戦利品は俺達シャイニングスターと守備隊で折半にしよう。物品は全て商業ギルドに持ち込んで買い取ってもらう。取り調べに必要な資金もそこから捻出し、残った資金を折半する。どうだ? この話」


 周りにいる守備兵達が、身じろぎもせずに俺とヘルマンの会話に注目している。


「…… 前代未聞ですが、我らには願ってもない話です。よろしいのですか?」


「そのほうが兵達もやる気が出るだろう。そのかわり金の管理と罪状の調査は、責任をもってやってもらいたい」


「…… 判りました。別途特別手当が出るとなれば、王都中の兵が寝る間を惜しんででも取り調べをやりたがるでしょう。それは保証します。

 …… 資金に関しては、私の心の平安のために閣下の部下の方から監査役を出していただけると助かるのですが……」


「いいだろう。数名でよければ出せると思う」


 これはカトル達商人組にやらせればいいな。


 よし、これである程度の責任は、守備隊にも負わせることができたぞ。


「ちょっと商業ギルドに寄って戦利品の引き取りに関して話をつけてこよう。つきあってくれ」


「承知しました」


 先日会った商業ギルド長のヤンは、協力的な感じだった。きっと悪いようにはしないだろう。

 ヘルマンは十五名程の兵を残し賊の連行と物品の移送を指示すると、一緒に商業ギルドへと向かった。



(シャロン、セリーナ。そちらはどんな感じだ?)


(こちらは、たったいま制圧を完了しました。負傷者はいません)


(こちらも同じく)


(そうか。アジトにある戦利品は全て守備隊と折半することになった。押収した物は、金を含め全て商業ギルドに持ち込むよう守備隊に指示してくれ)


((了解しました))



 幸いなことに商業ギルドは歩いて十分ぐらいの距離にあった。さすがは王都の商業ギルドだけあって建物の大きさはガンツの倍以上だ。


 皆をギルドの外に待たせて数名の者だけで中に入ると、ギルド内は商人達でごった返していた。受付に行きギルド証を職員に見せる。


「ギルド長に会いたいのだが?」


「御約束はあるのでしょうか? 御約束がないとお会いすることはできません」


「ひかえよ。こちらはコリント卿閣下であらせられる」


 脇に控えていたサーシャが俺の紋章を職員に見せながらそう言った。

 あぁ、そういえば紋章はサーシャに持たせっきりですっかり忘れていたな。さすが元近衛だけあって紋章の使い方を心得ているようだ。


「も、申し訳ありません! すぐに呼んでまいります」


 職員は慌ててギルドの奥に駆け込んでいく。申し訳ない事をしたな。最初から貴族であることを名乗ればよかった。

 程なくしてギルド長ヤンと五人のギルド職員達がやってきた。


「これは、男爵閣下、並びに士爵閣下。わざわざお越し頂きありがとうございます。よろしければ会議室のほうへどうぞ」


 手際よく会議室のほうへ案内された。俺達シャイニングスターが三人、守備隊が三人、商業ギルドからは六名が会議室の席についた。


「時間をとらせてしまってすまないな。実は、守備隊と合同で王都周辺の賊共を取り締まることにした」


「伺っております。閣下には我ら民のために御尽力いただき、感謝致します」


「これは王命だ。ギルドからシャイニングスターに出している賊討伐の依頼は取り下げてもらう必要があるだろうな」


「承知しました」


「相談したいのは、その戦利品についてだ。賊共から回収した物品をギルドで買い取ってもらいたい。…… こういう場合は競売になるのかな?」


「競売がよろしいかと存じます。賊からの戦利品となれば、貴重な品、貴金属が多いでしょう。遺失した品を求める者もいるでしょうし、一番適正な価格となる可能性が高いと思われます」


「そうか。では競売でお願いしよう。この後すぐに守備隊の者が次々と物品を持ち込んでくるはずだ。それらを受け入れ、管理し、競売にかけ、結果をヘルマンに報告する。これらのことを頼めるかな?」


「もちろんです。我ら王都の民のためのおこないです。商業ギルドは全面的に協力させていただきます。競売の手数料は通常一割五分ですが、五分にてお引き受けいたしましょう」


「それは助かるな。協力に感謝する」


 やはりあっさりと決まってしまった。

 守備隊とギルドの連携に関して簡単に打ち合わせをおこない、ギルドに数名の者が常駐し金の管理をしていくことで話がまとまった。

 打ち合わせを終えて、ギルドを後にする。


「さて、ヘルマン。今日は少なくとも、あと二ヶ所は片付けたいところだな。どんどんいくぞ」


「…… 承知しました。気合いを入れましょう」



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これからもよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 後書きで、嬉しそうなんだけど、連載止まるんだよね。 自身の書籍宣伝してるのは嬉しくて、皆んなに買って欲しくてかと思ったてたが、もしかすると出版社から変な圧力をかけられてたのかしら? …
2022/11/14 07:01 退会済み
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