082. 使徒
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いざ出発しようとした時にカトルから声をかけられた。
「アラン様、この時間から出発すると王都に着くのは夕方になると思います。よろしければ私が先行して、宿などを手配しておきますがどうでしょう?」
「おぉ、そうか。それは助かるなぁ。賊の引き渡しに時間が掛かりそうだから、俺も心配していたんだよ。じゃあ警護の班と一緒に先行してくれるか?」
「わかりました」
ダルシム達に事情を話して、サテライト八班とカトル達商人組は、騎馬にて先行してもらうことになった。さいわい盗賊から分捕った馬が余っていたため、行軍に支障はない。
怪我人の盗賊たちのほとんどを馬車に乗せているとはいえ、スピードを無理に上げるわけにはいかず、このままのペースでは王都に到着するのは十七時ぐらいになりそうだ。
「アラン、見えてきました。あれが王都では?」
緩やかな丘を登りきった所で、御者台の隣に座るエルナが指をさした。
「おぉ、そうだな。やはり王都というだけあって大きいな」
ズームして確認すると、都市全体が十メートル程の高さの壁に囲まれており、壁より高い大きな建造物が数多く見える。
遠くに見える一際高い建造物が王城だろう。この惑星に来て初めて見る装飾的な建造物だ。これは雰囲気があるな。
王都の門に着く頃には、日が沈みかけ薄暗くなっていた。門は扉の開閉に十人がかりでも苦労しそうなほど大きなもので、六名の守備兵が守りについている。
さすが王都の守備兵というべきだろうか、俺達の人数を見ても驚いた素振りはない。
「止まれ。何者だ?」
「冒険者クラン、シャイニングスターのアランと申します。フォルカー・ヘリング士爵一行の護衛をしております」
いつもの通りにギルド証を提示した。守備兵はギルド証を手に取り確認している。
「シャイニングスター? Aランク!? …… シャ、シャイニングスターって、ドラゴンスレイヤーの!?」
「えー、まぁ、そうです」
「失礼しましたッ! おい、隊長を呼んでこい!」
守備兵の一人が詰所に向かって駆けていった。やはり王都でもシャイニングスターの噂は広まっているようだ。
程なく隊長と思われる恰幅のいい男がやってきた。
「シャイニングスター、リーダーのアランです。フォルカー・ヘリング士爵一行の護衛をしております」
「これはこれは。まさかドラゴンスレイヤーのリーダーがこのようにお若い方だとは思いませんでした。王都正門守備隊のラルフです。よろしくお願いします」
「こちらこそ。実は昼間に盗賊に襲われましてね。捕らえてきたので引き渡したいのですが……」
「なんと! シャイニングスターを襲うとは、随分と間抜けな賊ですな。もちろん引き取らせていただきましょう」
合図をするとロープに縛られた盗賊たちを皆が引き連れて前に出てくる。
「あの……。あれが全部、賊なのですか?」
「そうです。他にも重傷者を馬車に乗せています。歩けないので、よろしければ指定の場所まで運びましょう」
「…… 全部で何人ぐらいいるのでしょう?」
「えー、百四十七人ですね」
「百四十七人! なんてことだ……。申し訳ないが暫くお待ちいただきたい。おい! 至急応援を呼べ」
やはり時間が掛かりそうだ。ところで士爵の従者が隣で紋章を持って待っているんだが、ほっといていいのだろうか。
待っている間に先行していたカトル達がやってきた。無事、宿が取れたとのことだった。
士爵とこれからの予定について話し合うと、士爵は王都に屋敷があるとのことなので、先に帰ってもらうことにした。
士爵は明日、登城し上司に報告をしてくるという。早ければ明後日には俺も呼び出されるとのことで、予定が決まり次第、宿に連絡をくれることになった。
結局、盗賊を引き渡し終わるのに一時間ぐらい時間がかかってしまった。
もうすっかり日は暮れ、暗くなっている。
守備隊隊長と報奨金の事などを打ち合わせると、王都の門をくぐった。
さすが王都だな。道の幅も人の数も今までの街とは比べ物にならない。通り掛かった繁華街は、喧騒に包まれていてやかましい。この雰囲気は帝国にいた頃以来だ。
カトルの案内で宿に向かい十五分ほどで宿に着いた。栄えている繁華街から少し離れているが不自由な程ではなく、カトルによると宿が密集している地区とのことだった。
「こちらが宿になります。この宿と隣の宿、道を挟んだあの宿をシャイニングスターで貸し切りました」
「おぉ、それはいいな。でも、宿泊客がいたんじゃないか?」
「いましたけど迷惑料を払って宿を移ってもらいました。無駄使いしちゃいましたか?」
「いや、そんなことないさ。できればそうしたいと考えていたんだ。しかし、この短時間でよくそれだけの事ができたな」
「実は、王都には商人をやっている叔父がいるんです。そこの従業員を貸してもらって手配しました」
「へぇ、そうなのか。じゃあ一度、叔父さんに挨拶にいかなきゃな」
「そんな! 叔父にこちらに来させますから」
「いいさ。世話になったんだし、カトルの叔父さんなら挨拶しにいくべきだろう。明日にでも行こうぜ」
「…… ありがとうございます」
宿は風呂付きならどこでも良いといっておいたので、高級宿には違いないが最高級というわけでもないようだ。
王都だから競争が激しいのか、一人部屋で一泊三百ギニーと今までになく安い。長期滞在するには丁度いいな。
カトルに聞くと三軒とも叔父さんお薦めの宿らしい。やはり王都のことは王都の者に聞くのが一番だな。
部屋や風呂は申し分なく、食事も合格点だ。いきなり押し掛けたこの人数にも対応できるのだから良い宿なんだろう。
今日は戦闘もあったし、旅の疲れもあるようなので早めに休むことにして、各自の部屋に引き上げた。
(イーリス)
[はい、艦長]
(宗教関係をなんとかするために関係者と接触したい。何か情報はあるかな?)
[そうおっしゃると思いましたので、接触すべき人物を選んでおきました]
仮想ウィンドウ上に、四十代ぐらいの男の画像がいくつか表示された。
[アトラス教会のゲルトナー司教です]
(ほう、司教というのは確か、かなり高い位じゃなかったか?)
[その通りです。普通であればこの若さで司教になることはありません]
(宗教のことはよく分からないが、それだけ徳が高いということかな?)
[それは分かりませんが、酒場では金の亡者とか、賄賂を使って位階を上げていると噂される事が多いですね]
(おいおい、そんな人物で大丈夫なのか? それとも噂だけで実際には違うとか?)
[いえ、実際に寄付金の額によっては、かなり強引な便宜を図ったり、高額な寄付金を強要したりしているようです]
(うーん、なるほど。金で動く人物か。しかしなぁ……)
[しかし、司教にごく近い人間からは高潔な聖職者として尊敬されているようです]
(どうしてなんだ?)
[教会の資金や、集めた金をほとんど孤児達のために使っているのです。この王都に点在する孤児院や近隣の都市の孤児院の実質的な経営者です]
(ほう、そういうことか)
金には汚いが、集めた金を孤児に使っているとなれば話は変わってくるな。確かに宗教に疎い俺からすると、こちらのほうが高潔な人物に思えてくる。
うーん、しかし敬虔な教会の信徒ならば、このように教会を利用するような事はできないのでは? という気もしてくる。
ひょっとしたら教会のシステムを利用しているだけで敬虔な信徒ではないという可能性もあるだろう。
目的のためなら手段を選ばないという意味では話が合いそうだ。
(わかった。この人物に接触してみよう)
決まったな。明日の予定は王都散策だ。
◇◇◇◇◇◇
朝十時ちょうどに登城し、宰相バールケ侯爵に面会を求めるとすぐに通された。どうやら既に話が通っていたようだ。侍従に侯爵の執務室へと案内される。
侯爵は見かけない二人の男と打ち合わせの途中だったようだ。私が姿を現すと二人はそそくさと退室していった。
侯爵の前に跪き、頭を垂れる。
「フォルカーか。昨夜戻ったそうだな」
「はい。無事、シャイニングスターのアラン殿を王都までお連れしました」
「らしいな。それで首尾は?」
「残念ながらドラゴンの魔石での交渉は失敗しました。申し訳ありません」
「ふん、冒険者風情が調子に乗っているようだな。それでどこの領地になった?」
「アラン殿は、魔の大樹海がお気に入りとのことでしたので、それでは魔の大樹海はどうかとお薦めしました。
すると、その考えが大層気に入ったようで、開拓した土地は無制限に領地としてよいという条件で話がまとまりました。
無制限に、という条件と引き換えにドラゴンの両方の牙を納めていただけるとのことです」
「………… 樹海だと!? これは傑作だ! まさか樹海とはな! やはり学のない平民よの、他愛のない。くッ、樹海! ふははは!」
アラン殿に学がないなどと侮っていると、いつか足を掬われるぞ。
あのような屈強な精鋭達をまとめるリーダーが愚か者のはずがない。
あの者たちのアラン殿への心酔ぶりは相当なものだ。もっとも、アラン殿に関する噂が本当のことであれば、それも当然のことだろう。
今、話した内容はアラン殿が考えた内容で、是非こう報告するといいと強く薦めてくれたものだ。
正直、アラン殿が何を考えているのかは分からない。なぜ、自分を貶めるようなことをするのか……。
単に私に恩を売っているのかもしれないが、自分を貶めてまで恩を売る理由は、アラン殿にはない。
いくら考えても理由は分からなかったが、リーナのために有り難くその言葉に従うことにした。
「しかし、フォルカー。そなたがそこまで出来る男だとは思っていなかった。誤解していたようだな。でかした」
「は、ありがとうございます」
「約束通り、リーナとのことは水に流してやろう。しかし、これで我が一族に連なる者になったなどと、ゆめゆめ考えるなよ。リーナの伴侶というだけだ」
「はッ、心得ております」
「よかろう。そのアランという男に会ってみたくなった。明日の朝にでも連れてこい。さきほどの条件で契約書を用意しておくので、ドラゴンの牙を持ってこさせるのだぞ」
「畏まりました。…… あの、アラン殿がドラゴンを従えたとの話は?」
「あぁ、聞き及んでおる。しかし、まだ単なる噂の域をでないな」
「私がガンツで調べたところでは、非常に多くの者が、ドラゴンがドラゴンを運ぶ姿を目撃しています」
「らしいな。しかし平民のいうことなど信用できん。既に私の手の者を送ってあり、もうすぐ戻るはずだ。他に報告は?」
「ありません」
「では、下がれ。あぁ、これを」
引き出しから革袋を取り出すと投げてよこした。この重さだと、かなりの金貨が入っているようだ。侯爵にしては破格の計らいだ。
「御厚情、感謝いたします! では失礼いたします」
失礼のないように執務室から退出した。
あぁ、やっと終わった。リーナはきっと喜んでくれるだろう。そうだ、リーナの好きなユリの花を買って帰ろうか。
◇◇◇◇◇◇
昨夜、決めたとおり今日は王都散策だ。暫く滞在するのだから土地勘はあったほうがいい。
クレリア達は買い物にいくというので別行動をとることにした。まずはカトル達商人組と一緒に、カトルの叔父という人に会いに行くことにした。
カトルは王都には三回、来たことがあるらしく、ある程度の土地勘はあるようだ。叔父というのはタルスさんの五歳年下の弟らしい。
「こちらが叔父の店です」
「ほう、随分と大きな店じゃないか。小さくはないと思っていたがここまでとは」
「主に穀物を扱っている専門店です。穀物だけに限っていえば王都でも一、二を争う取引量ですよ」
「ほう、それは凄いな」
さっそく店の中に入り、カトルが用件を伝えるとすぐに商談室のような所に案内された。従業員はカトルの事を知っており、身内のような扱いだ。
タルスさんによく似た四十代の男が商談室に入ってきた。
「カトル、どうしたんだ? …… こちらの方は?」
「こちらはシャイニングスター、リーダーのアラン様です」
「おぉ、この方が! カトルの叔父のターナーといいます。よろしくお願いします」
「アランです。こちらこそ宜しく。昨日はお世話になりました」
「なんのあれしき。いつでも、何でも、おっしゃってください。カトルも世話になっていることですし、盗賊狩りのアラン様のためなら、多少の無理はさせていただきます」
すぐにお茶が出され、話をすることにした。気になっていた王都でのシャイニングスターの噂を聞いてみた。
やはり凄く話題になっているようだ。しかし話を聞いているとシャイニングスターの話というより、俺達が手にした金の話がメインのようだ。
確かに競売に参加した商人であれば、俺達がどれほどの金を手にしたか、大体の金額は算出することはできるな。
酒場に行けば、誰か一人は必ずこの話をしているほど話題になっているらしい。
一時間程、雑談をした後、商売の邪魔をしてはと店を後にすることにした。
俺が教会に行くと告げると、カトル達は微妙な顔をして、それであれば店で王都の情報を仕入れると言って店に残った。どうやらカトル達は、それほど敬虔な信徒ではないようだ。
イーリスの案内で教会に向かう。そういえば、教会にいくのは初めてだ。
教会の礼拝堂は全ての者にひらかれていて、誰でも祈りを捧げることができるらしい。まずは有名な女神ルミナス像を観にいこう。
教会は他の建造物に比べ一際大きく、二つの塔のようなものがそびえ立っている。壁にも装飾的な飾りが施されており、教会っぽいデザインになっていた。
他の人類世界で見られる教会とよく似ている。人間は本能的にこういうデザインに厳粛なものを感じるのだろうか。興味深いな。
礼拝堂の中に入るとまず目についたのは女神像だ。非常に大きく大体八メートルぐらいだろうか。祈るように手を組んだ二十歳ぐらいの女性の姿で、とても美しい容姿をしていた。
肩には大きな鷲のような鳥がとまっている。あれが使徒イザークだろう。
ドローンはこの鳥と勘違いされているようだ。
沢山の信者が真摯に祈っている中、教会関係者を探した。お、あれかな。黒の同じデザインの衣装を纏った二人の女性が何やら話し込んでいる。
(イーリス、あれは教会関係者かな?)
[そうです。シスターと呼ばれる女性聖職者ですね]
さっそく用件を伝えにいこう。
「失礼します。ゲルトナー司教にお会いして相談したいことがあるのですが、いらっしゃるでしょうか?」
「ゲルトナー司教ですか……」
シスターは二人とも司教の名前を聞くと目を伏せた。おっと、忘れていた。
「相談と合わせて寄付もおこないたいと思っているのです」
そう言いながら、昨夜用意していた金貨十枚を取り出して見せた。この国では普通なら小さな革袋に入れるのが慣例だが、ここはあえてむき出しだ。
会うためだけに十万ギニーの支出は法外な金額だが、これだけ出せばさすがに会ってくれるだろう。
「す、少しお待ちください。確認してまいります」
第一次審査は問題ないようだ。しばらくしてシスターが戻ってきた。
「ゲルトナー司教が特別にお会いしてくださるそうです。こちらにどうぞ」
広い教会の奥深くまで案内されると、大きな扉の前でシスターは止まり、ノックをして扉を開けた。
「相談したい信徒の方がいらっしゃいました」
「入りなさい」
部屋は広く、大きな本棚や豪華な応接セットがあるが、それでいて上品な趣があり高位の聖職者の部屋にふさわしいように思えた。
「私は冒険者クラン、シャイニングスターのリーダーをしているアランといいます」
そう言いながらギルド証を出してみせた。
「…… ほう、ドラゴンを討伐したという冒険者の方ですか?」
「そうです」
気のせいか司教の目の輝きが変わったように見える。忘れないうちに寄付金を渡しておこう。
「まずはこちらをお納めください。最近、思うことがあり王都に着き次第、寄付をしたいと考えていたのです」
そう言うとシスターが小さなトレーのようなものを差し出してきたので、金貨十枚をその上に載せた。
「その真摯な姿勢に、神はきっと手を差し伸べてくれるでしょう」
司教は聖職者っぽいセリフをいうと、シスターに小さく頷いた。
「おかけなさい」
司教に促されてソファーのようなものに座ると、別のシスターがお茶をいれてくれた。寄付金の効果だろう。
司教が向き合うようにソファーに座るとシスター達は部屋を出ていった。
「それで何か相談があるとか?」
「そうなのです。実は最近、ある同じ夢を見ることがあるのです」
「ほう、どのような?」
「使徒イザーク様の夢です」
「あぁ、そういった方は多いのですよ。我らの祈りが通じたのか、イザーク様が恩寵を示されることが多くなっています。その影響かもしれません」
「私も最初は、そのように考えていました。しかし不思議なことが起き始めたのです」
「ほう、どのようなことが?」
「使徒様が姿を現す夢を見るのですが、後日その夢とそっくり同じ状況で使徒様が姿を現すのです」
司祭の顔つきが微妙に変わる。気のせいかもしれないが、心配そうな顔つきだ。
あぁ、俺の正気を疑っているのかな?
「どういうことでしょう?」
「十日前にも夕刻に使徒様が現れる夢をみたのです。夢の中では、ちょうど日が沈み始めた時でした。すると翌日の夕刻、正に日が沈み始めたときに使徒様が現れたのです」
「…… なるほど。ひょっとすると使徒様は、あなたに特別な加護を与えているのかもしれませんね。これからも信心を忘れずに努力なされるのがいいでしょう。さて、私はそろそろ、」
「昨夜も夢を見ました」
司教は俺をやばい奴だと判断したようだ。話を切り上げようとしたので、慌てて話を続ける。
「十二時の鐘が鳴り終わった時に、使徒様が姿を現す夢をみたのです」
遠くで十二時を知らせる鐘が鳴り始めた。タイミングはピッタリだ。
(ディー・ワン、ステルスモードを解除しろ)
[了解しました]
「では、この鐘が鳴り終わる頃に使徒様が姿を現すと?」
「私はそう思っています」
無言の時間が続く。
「…… そういう事もあるかもしれません。先程も言ったように信心を忘れずに、これからも、」
慌ただしいノックの音が聞こえ、シスターが姿を現した。
「司教様! お話し中すみません! 使徒様が! 使徒様が半年ぶりに御姿を現しました!」
「なんだと!? 本当か?」
司教が走りだしたので、俺もついていく。教会の外は空を見上げる人で一杯だった。中には跪いて祈っている人もいる。
あぁ、この人達の信仰心を踏みにじっているようで、とても申し訳ない気持ちになった。
しかし、俺はどんな手を使っても有力な教会関係者と友好的な関係を築かなければならない。
(ディー・ワン、高度を上げ、三十秒後にステルスモードに移行しろ)
[了解しました]
「なんて速さだ!」
「おぉ! もうあんなに高く!」
しばらくして使徒は姿を消した。司教は空を見上げるのをやめると、驚愕の表情で俺を見ている。俺は黙って頷いた。
「…… アラン殿。部屋に戻って話を続けましょう」
「わかりました」
部屋に戻ると、さっきとは、まるで違う態度で夢の事を詳しく知りたがり、質問攻めにされた。夢をみる頻度、内容、回数、必ず前日なのか等、司教は似たような質問を何回も繰り返した。
「先程も言った通り、いつ夢をみるのかは分かりません。明日の夢を見る時もありますし、五日先の夢という時もありました。本当に分からないのです。…… 次に夢を見た際には、また相談にのっていただけますか?」
「もちろんです! いつでもいらしてください。係の者にもよく言っておきます。あぁ、今日、多額の寄付を頂いたので、暫く寄付は必要ありません。ルミナス様もあまりに大きな負担を強いるのは好まれないでしょう」
「そうですか。わかりました」
「アラン殿。くれぐれも夢を見た時には、必ず訪ねてきてくださいね」
「はい、必ず来ます」
最初はこんな感じだろう。やりすぎてはいけない。
司教に見送られながら教会をあとにした。さて、どこかで昼食をとってから宿に戻ろう。
宿に戻るとダルシムに声を掛けられた。士爵が午前中に訪ねてきたらしく、伝言を頼まれたようだ。
明日、一緒に登城するので、ドラゴンの牙を用意して準備をして待っていてほしい。
十時に到着するように登城するが、少し話があるので九時に宿に来るとのことだった。
いよいよだ。どのような話になるのだろうか。
本日、『航宙軍士官、冒険者になる』が発売されました!
この日を迎えたのも皆様の応援のおかげと思っています。
皆様、ありがとうございました。
このコメントを書きたいがために急いで書きましたw
あと4分しかありませんが、今日は発売日ですww
活動報告にも書きましたが、なんと! 京王線全線の車内ドアに『航宙軍士官、冒険者になる』の広告が掲示されます。
ブックマークと評価を入れてくださった方、ありがとうございます!
これからも宜しくお願いします!




