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081. 王都への旅2

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



 ガンツを出発して二十六日が経った。今日、逗留する街に到着する。


 ふぅ、やっとだ。今日は一日走り通しだったので、さすがに疲れた。

 そう、俺達は馬車から降りて走っていた。何故そんな事をしているかといえば、もちろん鍛錬のためだ。


 ガンツを出発してから三日目の朝、ダルシム副官から鍛錬のために馬、馬車を降りて走ることを許可して欲しいとの要望があった。

 ガンツから離れるにつれ魔物の出現頻度は落ちるし、探知魔法もあるので問題ないと判断したようだ。

 疲れたら馬車に飛び乗ればいいので、各個人の能力に合った鍛錬ができるいい機会だとのことだった。


 さすがに全員で走るというのも無警戒すぎるような気がしたので、全体の半数ずつ交代で走ること、翌日に残らない程度の鍛錬にするという条件で許可した。

 当然、皆が走っているのに俺も馬車にのんきに乗っている訳もいかず、一緒に走ることにした。まぁ、馬車にただ乗っていても暇なだけなので、特に不満はない。


 街を守る外壁と門が見えてきた。比較的小さな街だが、王都から馬車で一日の距離にあることを考えると、恐らく商人や旅人のための宿場街なのだろう。

 門付近には守備兵が二人、立っている。俺達に気づくと慌てたように槍を構えた。


「どうした!? 何があったんだ!?」


 街の守備兵が緊迫した感じで声をかけてきた。あぁ、そうか。集団の半数近くが、馬車にも乗らず走って近づいてきたので、何かから逃げていると思われたようだ。


「お騒がせして申し訳ない。走って鍛錬していただけです」


「なんだ、驚かせるなよ。しかし、この人数はいったい?」


「私はシャイニングスターのアランと申します。フォルカー・ヘリング士爵一行の護衛をしております。後ろにいるのはクランのメンバーですね」


「シャイニングスター!? って、あの盗賊狩りの!?」


「まぁ、そうです」


 そう言いながら守備兵にギルド証を提示すると守備兵は素早く確認した。


「これは失礼しました! 念の為、士爵の紋章も確認させていただきます」


 そう言われるのを見越してか、士爵の従者が士爵の紋章を持ち、前に出てきていた。


「こちらになります」


 紋章とは十五センチ四方ほどの大きさのミスリル製のプレートで、その貴族家固有のエンブレムが彫り込まれていた。見事な細工で、王都一の細工職人の手によるものらしい。士爵のエンブレムは、一対のユリのような花をモチーフとしていた。

 守備兵は差し出された紋章を食い入るように確認している。


 この紋章を見せてもらった時には、守備兵は全ての貴族家のエンブレムを覚えているのかと感心したが、実際のところはそうでもないらしい。

 主要な貴族の紋章は覚えているかもしれないが、士爵のような位の低い貴族の紋章を覚えているはずがないと、士爵は笑いながら話していた。

 主に紋章の隅に刻印されている王家公認の刻印で本物かどうかを確認しているそうだ。


「確かに。お通りください」


 貴族一行と確認されれば、俺達も検査なしで門を素通りすることができる。門を入った所にある広場のような所で一行は止まった。


 すぐに五人程の街の少年達が近寄ってくる。彼らは街のガイド役で、街に来た旅人の要望を聞き、案内して僅かな駄賃をもらう。大抵の街にはこういった少年達がいて、街門近くにたむろしていた。

 カトル達、商人組と調達班の者達が宿の手配をするために、少年達に案内されて街へ散っていった。


 さすがにこの人数では一つの宿に泊まるわけにはいかず、いくつかの宿に分散する必要がある。


 馬車から出てきたフォルカー士爵と雑談をして待つことにした。士爵はこの近辺の出身らしく、この辺りの名物料理などを教えてくれる。


 これまでの旅の間に、フォルカー士爵とはかなり仲良くなっていた。士爵は貴族といっても、その態度は限りなく平民に近く、気さくに貴族になった経緯なども教えてくれた。


 士爵はAランクの冒険者で、十人程のパーティーを率いるリーダーをしていたそうだ。

 ある時、馬車が二十匹のオークに襲われていたところに偶然遭遇し、助けに駆けつけたらしい。


 当然、馬車には護衛がついていて、二十匹のうち十五匹のオークを倒していたが、フォルカー士爵が助けに入った頃には、ほぼ全ての護衛が倒されていた。

 オークが馬車を壊しているところにタイミングよく駆けつけ、正に間一髪のところで乗客を救ったとのことだった。


 馬車の持ち主、乗客は貴族である男爵一家で、男爵は士爵達の救出にいたく感動し、できうる限りの報酬を約束した。

 男爵は、さる高貴な上級貴族の分家筋にあたり、そのこともあってかパーティーリーダーだった者が士爵に迎えられたとのことだった。

 普通は幾ら貴族を救ったとはいえ、五匹のオークを倒したぐらいでは士爵にはなれないとのことだ。


 その後、士爵は助けた男爵に半ば雇われるような形で、男爵の屋敷で護衛騎士のような仕事をしているうちに、男爵の長女である今の奥さんに見初められ、結婚することになったとのことだった。

 色々な話を聞いていると、奥さんはオークに襲われた時に馬車に乗っており、オークを次々と倒していく士爵の姿に惚れたようだった。


 ちなみに今、士爵に付いている二人の従者も、冒険者時代のパーティーメンバーだ。そのせいもあってか、従者がうっかり士爵のことを呼び捨てに呼ぶことが何回かあった。俺達の前だと気づくと慌てて言い直していた。完全に主従の関係にあるというわけではなさそうだ。


 戻ってきた調達班に案内されて宿に向かった。街一番の高級宿らしい。別に街一番の高級宿である必要もないが、士爵の護衛なのだから仕方がない。


 フォルカー士爵も、士爵になった当初は無理をして高級宿に泊まる必要もないと考えていたそうだが、雇い主でもある男爵に、街に、民に金を落とすことも貴族の嗜みだと諭されたそうだ。

 不思議とその言葉には、なるほどと思わせる説得力があった。


 宿は、こぢんまりとはしているが、さすが街一番の高級宿といわれるだけあって清潔で良い所のようだ。これは風呂も期待できるだろう。他に宿泊客はいなかったので、俺達で貸し切る形になった。ちなみに宿泊料金は一人部屋で六百ギニーだ。


 宿の風呂は素晴らしく、食事も美味い。宿には珍しく酒も飲み放題で、これにはみんな大喜びで頼んでいた。

 また、町長や街の有力者と思われる商人達が、差し入れと称して酒や街の名産品などを持ってきてくれた。これもすっかり恒例のことで、士爵と俺はそれらしく対応しなければいけないので面倒だ。

 今日の客は挨拶だけで引き上げてくれた。食堂の席が一杯だったこともあったんだろう。

 皆で食事と酒を堪能したあと、早めに休むことにした。

 いよいよ、明日は王都だ。


 翌朝も門近くの広場に集結し、朝七時には出発した。

 街を出発して四時間程経った頃、イーリスから通信が入った。


[艦長、こちらを御覧ください。この先、五キロ程先の映像です]


 仮想ウィンドウ上に、ドローン視点と思われる上空からの映像が映し出された。街道の両脇にかなりの人数の人が隠れているようだ。その中の一団がズームされる。


(これは!? 盗賊かな?)


[服装や装備からすると盗賊でしょう。総勢百五十二名です]


(ほう、なかなかの人数だな。…… こいつらの標的はやはり俺達かな?)


[間違いないでしょう。それ以外にこの街道にこれだけの人数を集める理由がありません。恐らくシャイニングスターの人数に対抗するために幾つかの盗賊団が集結したのではないでしょうか?]


(なるほど。盗賊同士がそこまで仲がいいとは思わなかったな。あぁ、王都も近いことだし街のゴロツキ共を集めたのかもしれないな)


[どうしましょう? ドローンで排除することもできますが?]


(いや、待て。まだ盗賊と確定したわけじゃないからな。皆と相談してみよう)


 恐らく盗賊達の狙いは俺達の持つ金とドラゴンの魔石だろう。念のために一億ギニー程の金を預けずに持ち歩いているし、ドラゴンの魔石が競売に出品されていないことは商人なら誰でも知っていることだ。

 ドラゴンの魔石の価値は計り知れないとのことなので、危険を犯しても手に入れようという動機は理解できるな。


 これまでの旅の途中でも二組の盗賊団を捕らえていたが、王都に到着する日にこんな待ち伏せがあるとは思ってもいなかった。


 指笛を吹いて隊列を止めた。この指笛はヴァルターに教わったものでなかなか便利だ。

馬車から降りるとすぐに主だったメンバーが駆け寄ってくる。クレリア達も何事かと馬車から降りてきた。

 士爵達の馬車は俺達の馬車の後方十メートルについていたが、士爵が降りてくるようなこともなく待機していた。士爵は旅のことはすっかり俺達に任せていて干渉することはなかった。


「さて、少し困ったことになった。この先、五キロ先で百五十人程の集団が待ち伏せしていることがわかった」


「…… 何者でしょう?」


「まず盗賊で間違いないだろうな。俺達が王都に向かっているのを聞きつけたんだろう。これは推測だが、俺達が持つ金や、ドラゴンの魔石が目当てで幾つかの盗賊団が集まったって感じだと思う」


「盗賊ですか……」


「どうしたものかな? 最悪、街まで戻って別の街道で大きく迂回すれば、王都に行くことはできるが……」


「…… アラン様は我らが盗賊に敵わないとお考えなのでしょうか?」


「いや、勿論そうは思わないが、こんな所で怪我してもつまらないだろう? さすがに百五十人もの人数を相手にして無傷というわけにはいかないだろう」


「…… アラン様。我らを気遣ってそう言っていただけるのは大変嬉しく思います。

 しかし、我らの目標は建国、そして大陸統一です。

 それを思えばこれしきの相手、何ということもありません。日頃の鍛錬の成果を確認するのに丁度良い相手といえるでしょう」


 確かにダルシムの言う通りだ。今後の事を考えれば、盗賊ごとき蹴散らすべきだな。盗賊相手に引いたとなれば士気にもかかわる。

 クランの者達と盗賊では実力が違う。盗賊で魔法を使えるものは稀にしかいないし、剣の腕も段違いだ。気をつけなければいけないのは、弓矢などの飛び道具だろう。それは俺達帝国組がサポートすれば何とかなる。


「いいだろう。ダルシム、俺達がなぜ盗賊狩りと呼ばれているのか、奴らに教えてやろう」


「は、感謝いたします」


 まだ距離があるので、盗賊達から一キロの距離まで進むことにした。盗賊達も見張りを、本体から五百メートルの位置に配置している。一キロの距離が気づかれないギリギリの距離だろう。

 盗賊から一キロの地点で馬車を止め、一応、士爵にお伺いを立てる。


「士爵、我らの斥候が盗賊に気づきました。問題なければ我らで排除しますが?」


「全てアラン殿にお任せします」


「わかりました。お任せください」


 士爵には馬車に留まってもらい、作戦会議を行うことにした。俺の周りをぐるりと円陣を組むように集まった。


「アラン様、できれば我らのみに任せていただけませんか?」


 我らだけというのは、パーティーメンバーの五人を除いた者達という意味だろうな。クレリアが心配なんだろう。

 元々、クレリア達には、盗賊と剣を切り交わす距離で戦わせるつもりはない。


「いや、全員でとりかかろう。とはいえ、皆が日頃の鍛錬の成果を確認したいというのであれば、俺達シャイニングスターは前に出ないようにしよう。後方から魔法で援護する」


「は、感謝致します。では、いつものように迂回班に分けますか?」


「いや、今回はやめておこう。正面から盗賊にあたり、魔法攻撃で蹴散らしてやろう。魔法が使えないものは弓を使え。今回は盗賊を生け捕ることは考えなくていい」


「よろしいのですか?」


「あぁ、構わない。まぁ、守備隊に生首を持っていくことを考えると、生け捕ったほうがいいけどな」


「ふむ、確かにそうですな」


 ここで笑い声が上がった。皆に緊張はないようだ。


「盗賊共を魔法で蹴散らした後、追撃の合図で各個撃破にかかる。騎馬隊も用意したほうがいいだろう。奴らも馬を二十頭ほど連れてきているが、鳴き声を心配しているのか、かなり離れた所に繋いでいるので、無視していいだろう。悪いがサテライト八班は士爵の警護についてくれ」


 確か順番ではケニー達の班が後方待機だったはずだ。


「…… 了解です」


 ケニーはとても残念そうに頷いた。

 ダルシムの指示で魔法隊、弓隊、騎馬隊が即席で作られていく。全員の経歴、能力を把握しているダルシムならではの芸当だ。


「アラン、私達は前には出られないの?」


「あぁ、今回はダルシム達に任せよう。といってもリアもエルナも魔法の射程は皆より長いだろう? 俺、セリーナ、シャロンがまずは一斉射するから、その後に魔法を撃ってくれ」


「了解」


 クレリアもエルナもやる気十分だ。

 程なくして隊列が整えられた。最前部は近衛騎士を中心とした魔法隊、次は弓隊、騎乗した俺達シャイニングスターの五人、最後部は騎馬隊だ。隊列は街道一杯に広がっている。


「では、行こうか。俺が魔法を放つまで攻撃は待ってくれ。一斉射の後、各自攻撃開始。追撃の合図まで陣形を崩すな。では、出発!」


 そういえばセリーナとシャロンと盗賊狩りをするのは初めてだな。それにこれほどの大人数での戦闘も初めてだ。


(イーリス、バトルフィールドマップを作成してくれ。パワードスーツ戦ではないが、俺はあれのほうが見やすい。もちろん、俺が指揮官(コマンダー)だ)


[作成しました]


 仮想ウィンドウ上に見慣れた戦闘用マップが表示される。敵戦力がアイコンで表示され兵種により色が分けられている。セリーナとシャロンにも同じものが見えているはずだ。


 盗賊達はやはり弓を使うものが多いようだ。最初にこいつらを叩こう。直撃はしないようにしよう。近くに着弾するだけでも十分なはずだ。


(ナノム、弓兵から五メートルの位置にマーキングしろ)


[完了]


 弓を持った盗賊達の近くに小さな赤い点が表示される。盗賊達が仮に位置を変えても自動的に位置補正されるので問題ない。


(セリーナ、シャロン。ファイヤー・グレネードを使う。一発当たりファイヤーボール三発の魔力を込めたグレネードでいいだろう。魔石は持っているな?)


(グレイハウンドを十個)

(同じく)


(よし、初弾発射後十秒後に一斉に着弾するように弾道を変えて発射する。シミュレーションしておいてくれ)


((了解))



(ディー・ワン、ツー、スリー。盗賊が放った弓、槍は、可能なかぎり撃ち落せ)


[[了解]]


 上空にはイーリスが呼び寄せたディー・ツー、ディー・スリーが直掩機として加わっていた。


 やりすぎだろうか? 日頃の鍛錬の成果を確認したいという皆には、物足りないものになってしまうかもしれない。しかし、下手に犠牲者がでるより皆に恨まれたほうがマシだ。


 盗賊達にはもう気づかれている。バラバラだった配置が街道の両側にきちんと並び始めた。勿論それに合わせてマップも更新されている。


「あと百五十! 俺の魔法の弾着後、各自攻撃開始。追撃の合図まで陣形を崩すな!」


「「了解!」」


 一番近くの盗賊まで八十メートルを切ったところで、弾着マークをターゲティングした。


(ターゲティングしろ)


 マップ上の赤い弾着マークをセリーナとシャロンがターゲティングしていき、次々と黄色く変わっていく。共通のマップを見ているため、同じ目標を狙うことはない。


((完了))


 上空からの映像で盗賊の弓持ち達が矢をつがえ、引き始めたのを確認した。


(十秒後に着弾。射撃開始!)


 俺、セリーナ、シャロンの頭上、一メートルの空間からファイヤー・グレネードが斜め上方に向けて次々と発射されていく。


「おぉっ」

「これは」


「五、四、三、二、一」


 ドーンッという音と共に盗賊達の悲鳴が聞こえてきた。グレネードで狙った弓兵は、ほぼ無力化できたようだ。

 グレネードに影響がなかった盗賊達がバラバラと街道に出てくる。


「第一列。放て!」


 ダルシムの号令で魔法隊の一番前の列が盗賊達に向けて魔法を放った。ファイヤーボールやエアバレットなど様々だ。魔法を放った者達は後列に下がっている。


 次々と盗賊たちが雄叫びを上げながら出てきた。敵の士気はまだ落ちていないようだ。


「第二列、三列。放て!」


 こちらの弓隊は魔法隊が撃ち漏らした盗賊に疎らに矢を放っていた。クレリアとエルナは、まだ魔法を温存しているようで様子を見ている。


 街道はうめき声を上げる盗賊たちで一杯になってきた。徐々に街道に躍り出てくる人数が少なくなってきている。


「第四列、五列。放て!」


 盗賊たちは次々と魔法に吹き飛ばされ、火傷の痛みに転げまわっている。

 そろそろ頃合いだろう。


「追撃しろ! 攻撃開始!」


「「おう!」」


 方陣を保っていた隊形が一斉にバラけると盗賊たちに襲いかかっていく。俺達の後ろにいた騎馬隊も隊列を保ちながら、林の中に飛び込んでいった。


 魔法を放とうと腕を上げていた一人の盗賊の右肩をライトアローで貫く。クレリア、エルナも疎らに街道に出てこようとしていた盗賊を吹き飛ばしていた。


 あちこちで怒号が飛び交い、切り結ぶ剣戟の音が聞こえてくるが、やはり実力の差は歴然だ。

 二、三合、打ち合うと、剣の平で頭を殴り気絶させていく。やはりみんな殺さないように意識しているようだ。


 周りの状況を見て、武器を捨て降伏する盗賊も続々と出始めていた。街道に蹴り出されてくると、街道にいた者に木刀で殴られ無力化されていく。なかなかいい連携だ。

 どうやら勝負はついたようだ。


「盗賊共の馬を捕まえにいこうか」


 馬上で周りを警戒しているクレリア達に声を掛けた。

 盗賊達の馬はここから五百メートル程離れた茂みに隠されていた。二名の見張りがついている。こちらの争う音は聞こえているはずだが、まだ逃げてはいなかった。


 通りがかった騎馬隊に声をかけた。


「五騎ついてきてくれ。賊の馬を取りにいこう」


「了解です」


 計十騎の人馬で盗賊達の馬が置いてある林に近づくと、二人の見張りはこちらに気づいたのか、慌てて馬に跨がり逃げようとしている。走り始める前にクレリアとセリーナのファイヤーアローに右肩を貫かれて馬から転げ落ちた。


「賊は我らにお任せください」


「わかった。では、馬を何頭か連れて帰るよ」


 馬たちはなかなか良い馬に見えた。今回の数少ない戦利品だ。一人三頭ずつの馬を連れて街道に戻ると、すっかり戦闘は終わり街道に盗賊たちが集められていた。

 重傷者も多いようで街道に無造作に並べられている。


「ダルシム、被害状況は?」


「死者なし、負傷者多数です」


「怪我をした者はこちらに集まれ!」


 二十名程の者達が走ってくる。大怪我をしている者はいないように見える。


「頭を打った者は? …… では骨を折った者、…… 腹は?」


 良かった。重傷者はいないようだ。一人ずつ症状を聞いて治癒魔法で治していく。殆どが打ち身や軽い刺し傷、切り傷だ。三分ほどで全員の治療を終えた。


 さて、次は盗賊達だな。こちらは酷い状況だ。息を引き取っている者はいないようだが、気を失っている者が三十名以上、痛みに呻いている者が二十名以上いる。あとの者は呆然として街道に座り込んでいた。


(イーリス、何名捕らえた?)


[百四十七名です。五人、取り逃がしました]


(重傷者の容態を知りたいんだが、何とかならないだろうか?)


[映像による診断と三機のドローンによる三方向からの精密スキャンなら、内臓の内出血ぐらいはわかりますが……]


(よし、それでいこう。医療用スキャナーが早急に必要だ。近々に用意してくれ。もちろん持ち運べる簡易的なものでいい)


[了解です]


 こんな簡単な事に気づかないなんて我ながら抜けているな。

 いい機会だからセリーナとシャロンの治癒魔法の練習台になってもらおう。


 映像によるイーリスの診断で意識のない者から順番に見ていった。驚いた事に意識のない者のほとんどは気を失っているだけだ。

 俺、セリーナ、シャロンによる三人がかりで治療し、一時間ほどの時間がかかった。治療だけでグレイハウンドの魔石を計十個も消費してしまった。

勿論、応急処置で重傷者が全快するわけもなかったが、なんとか命はとりとめたようだ。


 盗賊たちの中には治療に対して感謝する者もいたが、ほとんどの者は不貞腐れたような態度で少しイラッとした。


 治療を終えた者から簡単な取り調べと身体検査をして小銭を回収してもらった。

 回収できた金額は計四万ギニー程で、盗賊の正体は盗賊団というより、やはり王都のゴロツキのようだった。急遽集められた者達で襲う相手が誰かも分かっていない者がほとんどだった。まぁ、俺達にとっては盗賊でもゴロツキでも、どちらでも一緒だ。


 今日の朝早くに、この現場に到着して待ち構えていたとのことだった。この襲撃を計画した者は俺達の行動をよく把握していたようだ。生存者の中に首謀者がいるのかは分からないし、取り調べている時間もない。取り調べは守備隊に任せるしかないだろう。


 盗賊たちの荷物も発見したが、わずかばかりの粗末な食料で持っていく価値もないので放って置くことにした。


 後方に残してきた馬車を取りに行き、士爵の馬車と共に襲撃現場に戻った。現場を見た士爵が慌てて馬車から降りてくる。


「アラン殿! この有様は!?」


「いくつかの盗賊団が集まっていたようです。幸いこちらの損害はありませんでした」


「えぇ!? これだけの人数と戦って損害なし……。いや、さすがはシャイニングスターというべきですな。お見事です」


「は、恐れ入ります」


 盗賊達の武器も集められ、売れそうな物は馬車に積み込まれた。

 盗賊たちを縄でしばり、重傷者を馬車に乗せるのに、さらに一時間の時間を要した。


 面倒な作業だったが、皆の表情は明るくキビキビと行動している。日頃の鍛錬の成果を確認できたということだろう。

 程なくして出発する準備が完了した。


「みんな、よくやった! シャイニングスターらしい見事な戦いだったといっていいだろう。さて、すっかり遅れてしまった。では改めて王都に向けて出発しよう」


「「了解!」」



活動報告にも書きましたが、特設ページを作っていただきました!

http://fbonline.jp/02sp/02_1812Kochugun/index.html


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コミカライズは、たくま朋正先生の作品になります。とても凄い絵で引き込まれます!

是非、読んでみてください!


一番下には壁紙も!w


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詳しくは活動報告をご覧ください。


また、今なら「小説家になろう」トップページに宣伝バナーが表示されるようになっています。

何回か読み直すと表示されると思います。


ブックマークと評価を入れてくださった方、ありがとうございます!

これからも宜しくお願いします!


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[一言] 弓矢とファイアーボール、そして突撃かまして盗賊の半数位は死んでないとおかしいかと。 そして相当鍛えていて実戦経験豊富な騎士たちが20人もケガするってのも違和感がありますね。
[気になる点]  盗賊集団と手配した黒幕がごねて相手から襲われたと言い張られたら正当防衛かどうかわかりづらいので、襲撃時の指示を出していた中堅の集団のリーダーが複数の下っ端から、指示されて襲ったと証言…
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