079. 王都へ
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厨房にいくと料理長のロータルさんを始め、三人の料理人、それに従業員を総動員して料理していた。エラとテオも忙しそうに手伝っている。
「おぉ、アラン様。このマヨネーズの味見をお願いします!」
「こちらもお願いします!」
あらかじめメニューを決めて試作をしていたので料理自体は問題ないはずだが、初めて作る料理ばかりなので心配なのだろう。
マヨネーズやデミグラスソース、ケチャップなどを味見していくが、どれも問題なかった。料理長のロータルさんはレシピを忠実に守る人なので当然といえば当然だ。
「よし、俺も手伝うぞ。残り一時間半だ。頑張っていこう!」
「「はい!」」
一番火加減が難しいハンバーグを担当して次々と焼いていく。出来れば熱々の料理を出したいが百二十人分の料理では無理だ。せめてトンカツを最後に作るようにしようかな。
あっという間に時間が過ぎていき、宴会の開始時間となった。まだ全ての料理は完成していないが、引き続き作り続けてもらう事にした。作り終わったら従業員だけで、自由に宴会をしてもらうように伝えてある。
食堂にいくと既に全員が集まっていて、その各テーブルに次々と料理が運ばれてくる。
いつもの夕食の時のようにビュッフェ形式ではなく、大皿に載せた料理を各テーブルに置くようにした。これであれば落ち着いて食べられるだろう。このために大皿を新たに購入する必要があったが、それだけの価値はある。
美味そうな料理に食堂中がざわつきだした。
「みんな聞いてくれ! まずは報告がある」
何処に座っていいのか迷い立っていたカトルとウィリー、ペーターを手招きする。
「聞いている者もいるかもしれないが、この三名が新たにクランに加わる事になった。主に物資の調達などを担当してもらう。では、三人とも自己紹介してくれ」
「カトルといいます! 今日からシャイニングスターに加えて頂ける事になりました。私は商人ですので共に戦う事は出来ませんが、金銭面でこのクランの役に立ってみせます。よろしくお願いします!」
「ウィリーです! カトル様の補佐をします。よろしくお願いします!」
「ペーターです! カトル様の補佐をします。よろしくお願いします!」
皆から歓迎の大きな拍手がおこると三人は照れたように笑った。
「見ての通り今日の料理は俺の国の料理なんだ。国でも人気の料理ばかりだから楽しんでもらえると思う」
「おぉ! アラン様の国の料理だったのか!」
「これは美味そうだ!」
料理やそれにかけるソース、サイラスさんから差し入れられた酒の飲み方、果汁割りの作り方を簡単に説明していく。
酒は他にも白ワイン、赤ワイン、エールなど何でもある。自分の飲みたい酒を用意するように促すとみんな思い思いに好きな酒を注ぎにいった。
「今日の宴会は無礼講で、堅苦しい話もなし。楽しくいこう! じゃ乾杯だ! 俺達のクラン、シャイニングスターに!」
「「シャイニングスターに!」」
最初の一杯はやっぱりエールだ。冷えたエールを一気に流し込む。ふぅ、暑い厨房にいたからか特に美味く感じるな。
カトル達、三人は俺達のテーブルにスペースを作って席に着かせた。
早速、みんなが料理を自分の取り皿に取り始めた。
今日のメニューは、デミグラスソースのハンバーグ、ブラックバードの唐揚げ、ビッグブルーフロッグの唐揚げ、トンカツ、野菜サラダ、卵たっぷりのポテトサラダ、コーンスープだ。
肉料理ばかりだが、ツマミになるようなチーズやナッツ、乾物なども用意してあるので問題ないだろう。
手の届かない皿の料理は、皿を廻しながら和気藹々とした雰囲気で宴会は始まった。
あちこちから美味いとの声が聞こえてくるので、評判は上々のようだ。
「アラン! このカラアゲはいったい!?」
クレリアが食べているのはビッグブルーフロッグの唐揚げだ。唐揚げに合いそうだと思って試しに唐揚げにしてみたが、ブラックバードの肉より遙かに柔らかく肉汁たっぷりで旨い。
「あぁ、それはいつも食べる屋台の串焼きと同じ肉で唐揚げを作ってみたんだよ。予想以上に美味い唐揚げに仕上がったよ」
「本当に美味しいわ! 勿論、普通のカラアゲも美味しいけれど」
そう言うと立て続けに唐揚げを食べ始めた。
他の皆も結構な勢いで食べていた。カトル達三人も育ち盛りらしく貪るように食べているし、エルナとシャロン、セリーナは、やはりポテトサラダが好みのようで、皿に山盛りにしている。
「これは!? こんなに美味い酒を味わったのは初めてです」
ダルシム副官がコップを片手に驚愕の表情だ。そういえば、ダルシムは、結構イケる口なんだよな。酒飲みに気に入ってもらえると嬉しいもんだな。
「アラン様、これは本当に美味しいですね。こんな酒を飲んだのは私も初めてです。産地は何処なんだろう?」
カトルは商人らしく酒の産地が気になるようだ。
「あぁ、それはここガンツの酒だよ。俺がサイラス商会に製造方法を教えて造っている酒なんだ」
「えぇ!? ガンツ? アラン様がサイラス商会に!? どうしてサイラス商会なんかに?」
「どうしてって、面白そうだったからさ。ちゃんと指導料ももらったし」
「…… ちなみにそれは幾らなんでしょう?」
「百五十万ギニーだったかな?」
「アラン様! たったの百五十万ギニーで酒の製法を教えてしまったのですか!?」
「まぁ、時間でいえば正味三、四日しか掛かってないから十分だろう?」
「そんな!? この酒の製造方法が独占出来れば、何千万でも儲けられたのに!」
「あぁ、そういう意味か。しかし、俺はこれより遙かに美味い酒の造り方を幾らでも知ってるんだよ。拠点が完成したら作ってみようかな」
イーリスのデータバンクには二百七十七の人類世界の酒の製造方法が入っている。この惑星のテクノロジーでも製造可能な酒造方法は幾らでもある。
「えぇ!? これより美味い酒を造れるのですか!?」
「もちろんだよ。それも一つや二つじゃないぞ、何十もだ。大したもんだろ?」
「すごいっ! 私にも手伝わせてください!」
「いいとも! っていうか造り方を教えるからカトルに全部任せるよ」
俺は金儲けが出来て美味い酒が飲めればそれでいい。
カトルは身震いすると弾かれたように立ち上がった。みんな何事かと注目している。
「分かりました! 私の生涯をかけても、これより美味い酒を作ってみせましょう!」
大声で皆の前でそう宣言すると酒好きの者達から大きな拍手が送られた。
「いや、酒造りごときに生涯をかけてもらっちゃ困るんだ。もっと金になりそうな話は幾らでもあるからな」
「きっ、聞かせてください!」
「えぇー? 今は宴会中だからまた今度な」
「そんなぁー……」
宴会が始まって二時間もすると酒がまわり騒がしくなり、あちこちから乾杯の声が聞こえてくる。俺も次々と酒を注がれ、飲まないわけにもいかないのでかなり酔ってきた。
「これだけの短い期間で貴族になるなんて、アランじゃなければ誰にも出来ない事だわ」
「本当にそうですね。大したものです」
既にもう二回ぐらい同じような話をしている。クレリアもエルナもかなり酔っているようだ。
「いや、皆の協力のおかげさ。それにまだ貴族になれたわけじゃないし、俺達の目標はまだまだ遥か先だろう? やっと入り口に辿り着いたって感じかな」
「…… そうね。でも私、皆の夢の実現が近づいていると思うと何だかとても嬉しいの」
クレリアは勢い良く立ち上がると杯を掲げた。食堂にいる全員が注目する。
「みんなっ! シャイニングスターに!」
「「「シャイニングスターに!」」」
怒号にも似た皆の乾杯が響き渡った。
それから、何故かリーダー達がクレリアと同様に次々と乾杯の音頭をとるという混沌とした状態が続いた。
日付が変わる頃には、酔って潰れる者も出始めたので宴会の終了を宣言し、お開きとなった。
ただ美味いものを食べ、美味い酒を飲む。凄く楽しい宴会になったと思う。
当然のことながら明日は休みにしてあるので、片付けは明日だ。
翌日、朝風呂に入った後に食堂にいくとすっかり片付けてあった。どうやら従業員の人達が早起きをして片付けてくれたようだ。これは臨時手当を支給すべき案件だな。忘れないようにしよう。
軽めの朝食をとっているとクレリア達も食堂にやってきた。クレリアは、あの様子だと二日酔いのようだ。ナノムに命じてクレリアの二日酔いをなんとかしてもらおう。
「ふぅ、やっぱり二日酔いには熱いお茶がよく効くみたい。だいぶ治ってきたわ」
そんな訳ない。俺に感謝して欲しいものだ。
「エルナは、二日酔いは大丈夫なのか?」
「私は幾ら飲んでも二日酔いにはならないので大丈夫です」
ほう、それは羨ましいな。俺はナノムにアルコールを分解させなかったら酷い二日酔いになっただろう。シャロンとセリーナもナノムに頼んでいたようで、二日酔いにはなっていないようだった。
朝食が終わる頃にはクランのほぼ全員が集合していたので臨時会議だ。経理担当の者にクランの帳簿を持ってきてもらい内容を確認した。
「さて、ルドヴィークにいる仲間達にいくら送金するか決めなければならない。結局、今回の競売の合計は九億七百三十九万五千九百ギニーになった」
「「おぉ!」」
競売結果の明細と帳簿を見ながら説明していく。
「商業ギルドに払う競売の手数料は一割五分だから、差し引くと七億七千百二十八万六千五百十五ギニーになる。
さらに手持ちのクランの資金が大体三百万ギニーぐらいだから、合算して約七億七千四百万ギニー。
勿論、ここからドラゴンの解体にかかった費用も支払わなくてはならないが、概算で二千万ギニーもしないらしいから、まぁ、だいたい七億五千四百万ギニーってとこだな」
「すごい金額だ」
「七億……」
「アラン、皆に送金するのは単純に資金の半分でよいのでは?」
「うーん、そうだな。切りの良いところで四億ギニーかな? 皆に異論がなければそうしようと思うが、どうだろう?」
「アラン様がよろしければ我らに異論はありません」
「ではそうしよう。午後に商業ギルドにいって手続きをしてくるよ」
午前中にタルスさん達が馬車でやってきた。カトル達の荷物を持ってきたらしい。荷物を運び込み終わると食堂でゆっくりと話をしてもらう事にした。
しばらくは会えなくなるので色々と話すこともあるだろう。
「父さん、サイラス商会が造っている酒を知っていますか?」
「あぁ、あれか。昨日、見てきたよ。大した酒だったな。かなりふっかけられたが、何とか一樽だけ購入する事ができたよ」
「アラン様がサイラス商会に製法を教えて、あの酒を造っているそうですよ」
「なんと! 本当ですか!?」
「ええ、そうです」
「アラン様は、あの酒よりももっと美味い酒の作り方をいくつも知っているそうです。私はその酒を造る仕事を任されました」
「おぉ! それはすごい! …… いきなり大任を任されたな、カトル。頑張るのだぞ」
「もちろんです! ……でも、店に戻るのが少し遅れるかもしれません」
「最初から十年は戻って来ないと考えているよ。少しぐらい延びても構わない。私もまだまだ若いからな」
「そうですね! 父さんにはまだまだ頑張ってもらわないと。あぁ、良いことを思いつきました!
これからアラン様が造る街に、父さん達が商会ごと引っ越してくるっていうのはどうですか?」
「はは! それは良いかもしれないな」
「いいですね! それ。タルス商会には、街の中心にある大広場に面した一等地に立つ大きな建物を用意しますよ。勿論、大きな屋敷も付けましょう」
「ははは! それはいいですな! アランさん、その際はよろしくお願いします」
「任されました」
一時間ほど雑談した後、タルスさん達は帰っていった。明日の朝、王都に出発する時に見送りにきてくれるそうだ。
昼食後、パーティーメンバーと商会ギルドに向かった。ギルド内は昨日ほどではないが混んでいて活気がある。恐らく競売の支払いや、荷の受け渡しがあるのだろう。
窓口でカリナさんを呼んでもらった。
「アラン様! ちょうど先程、ドラゴンの解体費用の算出と競売の明細が出来たところです。こちらにどうぞ」
そう言うと会議室のような所に案内された。ギルド職員二名が山のような紙の資料を抱えている。
「こちらが今回依頼されたドラゴンの解体にかかった費用の明細と、競売の明細です」
分厚い紙の資料の一つは、俺達にくれる控えのようだ。明細の内容について簡単に説明を受ける。
ドラゴンの解体にかかった費用は全部で、千九百四五万三千二百八十ギニーだった。一月前なら驚いて腰を抜かすような金額だが、七億超えの資金を得た今なら大した金額に思えないから不思議なものだ。
数百人もの人間を二十日以上も雇い、万能薬を作り、その他の素材の処理を任せたのだからこの金額になるのも納得できた。
「全て問題ありません。今回の商業ギルドの仕事には大満足ですよ」
「アラン様にそう言って頂けるととても嬉しいですね。では、こちらの費用と競売の手数料を引いた、この項目の金額をアラン様の口座に入れておきます」
「はい。しかし、また送金をお願いしたいんです。送金先はいつもの相手で、金額は四億ギニーです」
「四億ギニーもですか? …… いえ、判りました。では、こちらの用紙に記入をお願いします」
送金用の用紙に必要項目を記入していく。何回か書いた事があるから慣れたものだ。
「それと同じ相手に連絡文を送りたいのですが、どのようにすれば?」
「あぁ、ではその用紙の空いている部分に送る文章を書いていただけますか?」
ふーん、なるほどと思いながら先日、みんなで考えた文章を余白に書いていった。
『我、ドラゴンの討伐に成功せり。勲爵の可能性大。少しずつ準備を進められたし。続報を待て』
ちゃんと文字数の確認をしておこう。一文字いくらというサービスなのだから間違いがあってはいけない。
「あぁ、アラン様。文字数は気にしなくてもよろしいですよ。アラン様は、御得意様なのですから、多少文字が多くても問題ありません」
「そうなんですか? では付け足しても?」
「もちろんです。いくらでも付け足してください。どうせ私が送るのですから、いくら付け足して頂いてもかまいません」
ほう、カリナさんがアーティファクトを操作して通信するようだ。それは都合がいいな。内容がちょっと意味深だから変な人間にはあまり見られたくはない。
文章の最後に『我らこれより王都に向かう』を追加した。特に意味はないが、こちらの行動を伝えておいたほうがいいだろう。
『我、ドラゴンの討伐に成功せり。勲爵の可能性大。少しずつ準備を進められたし。続報を待て。我らこれより王都に向かう』
「では、これでお願いします」
用紙を渡すとカリナさんが軽く目を通す。
「問題ありません。ではお預かりします」
カリナさんはギルドで管理している俺の口座用の帳簿に、振込金額と送金の金額を書き込むと、俺に帳簿を渡した。俺も確認して承認のサインを書き込めば手続きは終了だ。
クレリア達は繁華街で買い物をしていくようだ。俺は特に必要な物はなかったので一人でホームへと向かった。
買い物に時間がかからないのであれば付き合うが、クレリア達の買い物は非常に時間がかかるので、できれば勘弁してほしい。
そうだ。ワインの小樽でも買いにいこう。昨日飲んだ白ワインはなかなか美味かった。
あぁ、やばい! カールに挨拶するのをすっかり忘れていた。いるかどうか判らないが宿を訪ねてみるか。
ここが宿[木漏れ日]だな。中に入ると女将のような人がいたので声をかける。
「こちらに[疾風]のカールはいますか? いたら呼んでもらいたいんですが」
「おりますが……。失礼ですけど貴方は?」
「あぁ、失礼しました。[シャイニングスター]のアランといいます」
「[シャイニングスター]のアランさん!? す、少しお待ちください!」
女将らしき人は慌てたように二階にかけ上がっていった。しばらくするとカールが一階に降りてきた。後ろに女将の姿も見える。
「よう、カール! いきなり訪ねて悪いな。ちょっと話があってきた」
「話? じゃ、そこで話そうぜ」
宿の一階は食堂のようになっていた。客は誰もいない。
「カール、これ白ワインだ。昨日飲んだら美味かったからまた買ってきたんだ。これはお裾分けだよ」
両手に持っていたワインの小樽の一つをカールに渡した。
「おぉ! そりゃ悪いな、有り難く頂くよ。リタ! エールを二つだ」
カールが女将にエールを頼む。
「で、なんだ? 話って」
「実は明日、王都に出発するんだ。俺を貴族にしてくれるっていうんでちょっと行ってくるよ」
「貴族だと!? 凄いじゃないか! そうか…… 当然のことかもな。しかし、お前が貴族ねぇ……」
「似合わないか? ま、俺もそう思ってるんだけどな」
女将がエールを運んできた。
「おい、リタ。アランは俺のダチだったろ? コイツ、いくら俺がアランのダチだって言っても信じなかったんだぜ? あぁ、リタは俺の女房だ」
「えぇ!? こんなに若い美人がカールの奥さん!?」
「まぁ、美人だなんて! ちょっと何かツマミを持ってきますね」
そういうと女将は戻っていった。やっぱりカールは結婚していたようだ。
「…… そうか、じゃあもうガンツには戻ってこないのか?」
「いや、戻ってくるよ。まだ確定じゃないが、大樹海を開拓して領地にしていいって話だからな」
「領地っていうと、お前、男爵になるのか!? しかも樹海だと?」
「あぁ、樹海を切り開いて領地にするのさ」
「おい、いくら何でもそりゃ無茶だ! お前だったらそれぐらい分かるだろ?」
「やるだけやってみるさ。当てはあるんだ」
「当てって……、そうか! ドラゴンに樹海を焼き払わせるのか。しかしなぁ、うーん、確かにドラゴンがいればなんとかなるのか?」
「そうだな。この間、グローリアと一緒にオークの集落を襲ったんだが、三十秒もかからずに皆殺しにしてたぜ」
「おい! その話、もっと詳しく聞かせてくれ!」
それから一時間ほどカールと色々な話をしてカールとは別れた。
俺がガンツにいない間に、ホームになにかあったら力になってくれるように頼むと、カールは快く引き受けてくれた。やはり持つべきものは友達だな。
ホームへ着き、ワインを自分の部屋へと運ぶと、お茶でも飲もうと食堂にむかった。
俺を見つけたエラが駆け寄ってくる。
「あにき! 旅に出るって本当!?」
あぁ、そういえば、従業員のまとめ役であるサリーさんには伝えてあったが、エラとテオには言ってなかったな。
「あぁ、本当だよ。みんなで王都に行くんだ」
「連れてって!」
「えぇ!? エラは別に王都に用はないだろう? それに俺達も用が済んだら帰ってくるからな」
「…… そうなの? どれくらいで?」
どれくらいかな? 王都までは馬車で一月ぐらいだ。往復で二ヶ月。王都で過ごすのは長くても一月程だろう。
「三ヶ月ぐらいかな。ちゃんといい子で待ってるんだぞ。そうしたら何か御土産買ってきてやるよ」
「………… わかった。待ってる」
トボトボと戻っていくエラに、熱いお茶を頼むと食堂の席に座った。
「アラン様、御出掛け中にフォルカー士爵の使者が来ました。明日の出発は朝七時、士爵がホームまで来るそうです。都合が悪ければ宿まで連絡を、とのことです」
「都合は悪くないな。丁度いい時間だ。皆にもその旨を知らせておいてくれ」
「了解です」
クランの皆は最近、了解という言葉をよく使うようになった。セリーナとシャロンがよく使うので真似をしているようだ。まぁ、こういう言葉は統一されていたほうがいいと思う。
エラがお茶を運んできてくれた。あぁ、そうだ。
「ありがとう、エラ。小遣いをやろう。これがエラの分、これはテオに渡しておいてくれ」
エラには銀貨一枚、テオには銀貨二枚だ。エラとテオは、タダ働きだからたぶん一文無しだ。俺がいない間に何か必要になるものがあるかもしれない。
サリーさんが上手く管理してくれると思うが、小遣いぐらいは持っていたほうがいいだろう。
「ありがとう、あにき!」
エラは、キラキラと光る銀貨を握りしめると嬉しそうに駆けていった。
外が騒がしいから調達に行っていた者達が帰ってきたのかもしれないな。外に出てみると、やはりそのようで馬車から荷を移していた。俺も手伝うとしよう。
「アラン様、このカトルは若いのにやり手の商人ですね。品物に対する知識も豊富だし、いつもの三割から四割は安く買うことができました」
物資調達班、班長のニルスに褒められてカトルは嬉しそうにしている。
「今回のように買う量が多ければ、値引交渉がやりやすいだけですよ」
「それでも助かるな。カトル、これからも頼むぞ」
「もちろんです! お任せください!」
購入してきた荷を整理すると、品毎に馬車に積み始めた。これは皆に任せていいだろう。俺も私物をまとめ始めるとするかな。
夕食時にクレリア達は今日の買い物の事を楽しそうに話していた。今のガンツはかなり物価が安く、大勢の商人達が荷を持ち込んだために予想以上に良い買い物ができたと、みんな大満足のようだ。
特にクレリアは王女時代には買い物などしたことがなかったので、買い物が楽しくて仕方がないようだな。
さて、いよいよ明日は王都に向けて出発だ。今日は早めに休むことにしよう。
夜明けと共に起きて朝風呂に入る。しばらく風呂には入れないだろうから、ゆっくりと堪能しよう。
食堂にいくとほとんどの者が席についていた。みんな気合が入っているようだ。
今日の朝食はいつもより豪華なラインナップだな。サリーさんが気を使ってくれたのかな。
従業員のまとめ役であるサリーさんには、当座の資金として五万ギニーを渡してあるし、ホームの家賃も半年分は前払いしてある。
何か困った事があったら、商業ギルドのカリナさんか、[疾風]のカールを頼るようにと言ってあるので問題ないだろう。
タルスさん達は、朝早くに来てカトルや、ウィリー、ペーターとの別れを惜しんでいた。
出発時間である七時の鐘が鳴る十分前には、全員、広場に整列し出発の準備が整っていた。
七時の鐘が鳴ると同時に一台の馬車がホーム入り口に止まった。
士爵達一行は、馬車一台だけのようだ。士爵と従者二人だけのようだ。普通の馬車で、とても貴族の乗る馬車には見えないな。俺達の馬車のほうがよっぽど上等だ。
士爵が馬車から降りてきたので、片膝をついて出迎える。
「おぉ! アラン殿、おはようございます。いい天気に恵まれましたな」
「おはようございます、フォルカー士爵。本当にいい天気です」
たしかに旅の門出にふさわしいいい天気だ。旅の途中も、なるべく雨が降らない事を祈ろう。
「では、さっそく出発しますかな?」
「そうしましょう。よろしければ我らが先導しますが?」
俺達シャイニングスターは、一応は士爵の護衛だ。士爵を先頭に立たせるわけにはいかない。
「おぉ! そうですか。では、我らはアラン殿の馬車の後ろにつきましょう」
こうして俺達はクランのホームを後にして、王都にむけて出発した。
更新が遅くなりまして申し訳ありません。
仕事がとても忙しく、それに書籍化の作業も加わり、なかなか更新できませんでした。
こんなにも遅くなった事を大変申し訳なく思っております。
やっと書籍化の作業が終わり、仕事も落ち着いてきました。(新たな仕事が入るかもしれませんがw)
これからはもっと更新をしていくつもりです!
活動報告にも書かせてもらいましたが、書籍の表紙デザインが公開されました!
himesuz先生による絵で、とても綺麗で素敵な絵です!
そしてなんと! 『航宙軍士官、冒険者になる』はコミカライズ企画も進行中です! 凄いっ!
詳細は活動報告に書かせてもらいました。
ブックマークと評価を入れてくださった方、ありがとうございます!
これからも宜しくお願いします!
11月13日 本文中の金額の修正をしました。
競売金額合計 約四億八千八百ギニー → 約九億ギニー。
ルドヴィークの仲間たちへの送金金額 三億ギニー → 四億ギニー。
クランの保有資金 約一億 → 三億五千四百万ギニー へと修正しました。
競売の合計金額がまたしても間違えておりました。前回間違えた際の修正していない資料を参考にしてしまい金額を間違えてしまいました。
大変申し訳ありません。




