065. クラン会議
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「今回も無事、帰って来れましたね。アラン様」
「あぁ、そうだな。戦利品は少なかったが全員が無事に帰ってこれたのが一番だ」
「戦利品も、まぁまぁ有りましたから」
ヴァルターは最近、まぁまぁ、という言葉をよく使うようになった。俺が戦利品が少ないのを気にしていると思って慰めてくれているようだ。別に俺はそれほど戦利品の量にこだわっているつもりはない。ただ皆が命をかけて戦っている以上は、その報いは大きいほうがいいと思っているだけだ。
盗賊狩りの遠征から戻りガンツの門の所に着いたところだ。入門の検査中の商人の後ろに並ぶと守備兵の一人が、またかという顔をして守備兵の詰所のほうに走っていった。
やがて商人達の検査が終わり俺達が前に進むと、守備兵のギード隊長達も詰所のほうからやってきた。
「今回も大漁だな。アラン」
「ええ、今回は盗賊二組を捕らえてきました。これとこの鎖で一組、あっちの二本で一組です」
「盗賊を掛け持ちで捕らえてくるとはな。まぁ、この人数がいればそれも可能か。おい、連れていけ」
「では、お願いします」
最近では守備兵達の俺達のクランメンバーに対する入門検査もおざなりだ。それでいいのか、とも思ってしまうが、これも積み上げてきた信用、信頼の証だと思っておくことにした。
あぁ、早く風呂に入りたいな。今回の遠征は行きと帰りで計八泊の行程だ。途中で水浴び出来るような所もなかったため、もう気分的には限界に近い。
街中を歩いていると俺達のほうを向いてヒソヒソと話をしている冒険者達がいた。気になったので聴覚を強化して聞いてみる。
「… あれがシャイニングスターだろ? また盗賊を捕らえてきたのかな?」
「きっとそうだろ? あいつら盗賊専門の冒険者って話だからな」
「しかし、盗賊なんてよく見つけられるよな。よっぽどいい情報源があるんだろう…」
恐らく皆が左腕に付けている記章を見たのだろう。クランの知名度も段々と上がってきたようだ。別に盗賊専門という訳ではないが、クランではまだ盗賊狩りしかしていないので、こう思われても仕方ないな。
クランのホームに着くと、A隊の皆が建物前の広場で鍛錬に励んでいた。コリント流剣術の講習のようで、セリーナとシャロンが教官のようだ。A隊の皆は、昨日遠征から戻っていて怪我人無しとの報告を既にセリーナから受け取っていた。
俺達が帰ってきたのに気づき、皆が出迎えてくれた。
「「おかえりなさい! アラン」」
「ただいま、みんな。何も問題は無いかな?」
「ええ。ただ、今回の遠征の戦利品はあまり無かったの」
クレリアは戦利品の少なさが気になるようだ。
「そうか、こっちも同じだ。やっぱり人数が少ない盗賊は駄目だな。まぁ、しょうがないさ。そんなに金持ちの盗賊はそういないだろうからな」
今回、二組の盗賊を襲って捕らえた人数は、計二十五人。ギニーが合わせて約四万ギニー。売れそうな荷もあまり無かった。人数が少ない盗賊は襲える商隊が限られているのか戦利品は少ない傾向にあった。
皆は稽古を続けるらしく、俺達B隊の皆は、当然のように風呂へと急いだ。
風呂から上がると従業員のまとめ役であるサリーさんに声を掛けられた。
「五日前に冒険者ギルドの方がみえて、ギルドに一度来てくださいとのことでした」
「そうですか、分かりました。明日にでも行ってみましょう」
なんだろう? 確かに最近、商業ギルドにはよく行っていたが、冒険者ギルドには行っていなかった。まぁ、用もないのに行くほど暇じゃないからな。
夕食時、皆が料理を取り終えた頃に声を掛けた。
「みんな! 聞いてくれ! 皆の協力のお陰で、ガンツの近くにいた盗賊は一掃できたはずだ。これで盗賊狩りは一旦終了しようと思う。一日、二日で今後の方針を考えるから、明日から二日間は休日にしよう!」
「「おおっ!」」
今までは、盗賊狩りから帰ってきた次の日は、休養日としていたが、結局鍛錬に励んでいたり、クランの仕事をしていたりと完全に休みの日は無かったはずだ。一区切りついた所で少しぐらい休んでもいいだろう。
近くに座っていたダルシム隊長に声を掛けた。
「ダルシム隊長、できれば明日と明後日は鍛錬は休みにしないか?」
「アラン様がそうおっしゃるのであれば、もちろんそうしましょう。確かに休ませるということも、兵にとっては必要な事ですからな」
兵じゃなくて一応冒険者なんだけどな。
遠征から戻ったばかりということもあり、今日は早めに休むことにした。
自室で一人になり、クランが始動してからの一ヶ月を振り返ってみた。捕らえた盗賊達は全部で十一集団、人数で言えば二百十五人にも及んだ。
報奨金と依頼料だけで百二十九万ギニー。戦利品で概算で百万ギニー。懸賞金のかかった賞金首が三人で三十一万ギニー。総額で稼いだギニーは概算で二百六十万ギニーにはなるだろう。
既に三百万ギニーをロベルトに送金している。五千人で割ったら微々たる額にしかならないが、少しは皆の役に立つだろう。
ガンツから五泊で行ける距離にいた盗賊達は全て捕らえた。勿論、盗賊が利用していたアジトは、ドローンが全て破壊もしくは埋めたし、この辺り一帯の利用出来そうな洞窟やちょっとした穴も全て使用できなくした。
盗賊達には、罠を張っている間、暮らす拠点が必要だ。拠点を持たずに魔物の多いこの地域で、ずっと野営して暮らすのは、優秀な冒険者達でも、なかなか厳しいだろう。
その拠点に出来そうな所を全て破壊した今、盗賊達がまた直ぐに商売を始めるのは難しいはずだ。
仮に、この仮定が間違っていた場合でも、ドローンに定期的に調査させるようにしているので、見つけ次第、捕らえに行けばいいだけだ。夜、山中で野営している集団はよく目立つから直ぐにも発見できるだろう。
明日、商業ギルドに行って、今回の遠征の報告がてら、盗賊狩りを一旦休止することを伝えてこよう。冒険者ギルドにも行かなきゃな。
朝食の時にパーティーの皆に今日の予定を訊かれたので、ギルドに行くことを伝えると、付き合ってくれるとのことだった。せっかくの休日なのだからゆっくりとすればいいのに。
朝食後に早速、商業ギルドに向かった。今までの経験則から午前中は、カリナさんがいる確率が高い。上手くいけば会えるかもしれない。
商業ギルドに入り、いつもの窓口に向って歩いていると、受付職員は俺の姿を見ただけでギルドの奥に行ってしまった。話が早くて助かるな。
直ぐにカリナさんが出てきた。
「おはようございます。アラン様」
「久しぶりです、カリナさん。まずは盗賊捕縛の報告です。昨日、二十五人捕縛し引き渡しておきました」
「分かりました。確認しておきます」
「それと報告があるんですけど、これで暫らくは盗賊狩りを一旦やめようと思っているんです。私の掴んだ情報では、現時点ではこの辺りの盗賊は全て捕縛しました」
「なるほど…。確かにあの人数を捕らえてきたのですから、そう言われても納得してしまいます。アラン様の情報網はとても優秀ですから、恐らくそうなのでしょう。では、依頼は取り下げたほうがよろしいですか?」
「いえ、また盗賊が出たという情報が入ったら捕縛しに行きたいので、可能であればそのままにして頂けると有り難いですね」
「勿論、ギルドとしても、そうして頂けると助かります」
「そういえば蒸留器の方はいかがですか?」
「まだ少し時間が掛かりそうですね。もう一息らしいんですが」
「そうですか…。では、あと少しの楽しみにしておきましょう」
酒造りのほうは十分な説明もしたし、完璧な説明書も付けた。あとは任せてあるので基本的にはノータッチだが、上手く動いたら一目だけでも見ておきたかった。
「では、また何かあれば来ます」
「あぁ、アラン様。少し待ってください」
カリナさんはそう言うと、受付から出てきた。
「みなさーん! こちらがシャイニングスターの方々です!」
ギルド内に大声で呼びかけた。途端にギルド内にいた商人達が一斉に注目した。
「何だって!? シャイニングスター!?」
商人達が驚きながらも一斉に近寄ってきた。
「おお! あなた方がシャイニングスターの皆さんですか! やっと会えました!」
「こんなに若いとは! 大したもんだ!」
「有難うございます! あなた達にはなんと御礼を言っていいか…」
商人達に一斉に礼や称賛の言葉を言われた。カリナさんに説明を求めるように視線を向ける。
「シャイニングスターの方がいらしたら、是非紹介してくれって言われてたんです」
なるほど…。サイラスさんが商人は盗賊を憎んでいるって言ってたな。その礼ということか。
それからしばらくの間、商人達に礼を言われ続け、やっとのことでギルドを後にした。次は冒険者ギルドだ。
「人の役に立つというのは気分がいいものですね!」
シャロンはとても嬉しそうだ。いや、他の皆も嬉しそうだ。
「そうだな、それでいて金になるんだから言うことなしだ。他にもこういう依頼があればいいんだけどな」
冒険者ギルドに着き、受付に声を掛けた。
「シャイニングスターのアランといいますが、顔を出すように言われたんですが…」
「あぁ! 聞いています。メンバーの方と一緒にこちらに来てください」
そのまま、いつもの会議室まで案内された。暫らくしてギルド長のケヴィンさんと男性職員がやってきた。
「随分と遅かったな。まぁ、なんとか間に合ったが…」
「すみません、盗賊狩りの遠征に出ていたもので」
間に合ったとはどういう意味だろうか?
「では、まず一つ目の用件だ。シャイニングスターのパーティー全員、Aランクに昇格だ」
「えぇ!? もう?」
予想外だった。こんなにも早く昇格するとは思ってもみなかった。みんなも同じく驚いているようだ。
「まぁ、そうだな。確かに少し早いが、ギルドの評価方法に照らすともう昇格だ。なにせあれだけの高評価の指名依頼をこなして、あれだけの盗賊達を捕らえてきたんだ。納得しない奴はいないだろう」
そういうものなのか…。商業ギルドは確かに高評価をつけてくれていたけど。
「クランのメンバーはどうなんでしょう?」
皆も頑張ったんだから評価して欲しい。
「あぁ、あれはシャイニングスターのパーティーに対する指名依頼だったからな。クランメンバーはそれを手伝っただけ、という扱いだ。評価はされないな」
そういう扱いか…。なんだか皆の評価を搾取しているような気分だ。しかし、皆がガンツに来た目的は、俺達のランクを押し上げるためなのだから、これでいいのかもしれない。
ランクというのは、その冒険者の強さみたいな感じで考えていたが、こんな評価方法であれば別に強くなくても誰でもAランクになれそうだ。
いや、人を使うという事を含めて、総合力としての力と考えれば、ある意味では強さと言えるのだろうか?
まぁ、そもそも評価の数と高さでランクが決まるのであれば、強さはあまり関係がないのかもしれないな。
「ギルド証を渡してくれ。更新しよう」
全員のギルド証を回収すると男性職員は更新しに席を外した。
「次の件だ。今、樹海の奥で何か異変が起きているのではないか、という意見がある。これがスタンピードの徴候ではないかと専門家達は危惧しているんだ。これに対応するためにクラン会議が開かれる。あぁ、クラン会議というのは、有力なクランのリーダーが集まって行う会議の事だ。それが明日の午後、十三時から、ここで行われるので出てもらいたい」
スタンピードというのは確か、多種多様な魔物が一斉に暴走する現象だったな。なるほど、それは一大事だ。
「出席は私だけですか?」
「そうだ。出席を許されるのはクランのリーダーだけだ」
「分かりました。勿論、出席させてもらいます」
さっき言っていた、なんとか間に合ったというのは会議の事だったのか。あぁ! 有力クランで思い出したが、クラン[疾風]のカールに拠点を移したら連絡するって言った事をすっかり忘れていた!
まぁ、[疾風]は大手だと言っていたから、きっと明日は来るだろう。会った時に謝ろう。
用件は以上らしい。ケヴィンさんと捕らえた盗賊達に関することを色々と聞かれているうちに、ギルド証の更新が終わったようだ。Aランクのギルド証を受け取り、冒険者ギルドを後にした。
「アラン! 私達、Aランクになったのね!」
「あぁ、意外と早かったな。これもクランの皆のお陰だな」
「本当にそうね! 今日の夜にでも皆に報告しないと!」
クレリアは、やけにテンションが高く嬉しそうだった。まぁ、目標に一歩近づいたと言えなくもないから無理もないな。勿論、他のみんなも同様に嬉しそうだ。
クレリア達は、テンションそのままに、せっかく繁華街にきたのだから買い物に行きましょうと言われたが、長い買い物につきあわされるのはごめんなので、俺は一人でホームに帰ることにした。
あぁ、そういえば俺も買う物があった。しかし、買い物はすぐ済むし、せっかくの休日だ。たまには昼寝も悪くない。
いつものように夕食の席で皆が落ち着いた頃に、パーティーメンバーが揃ってAランクに昇格した事を告げると、今までにない盛り上がりをみせた。やはり皆も夢が一歩近づいたと考えているんだろう。
もちろん、昼間に自腹で購入しておいたエールやワインの樽を振る舞って、夕食の場は自然と宴会になった。クレリアやシャロン達も相変わらずテンションが高いし、明日も休日だ。たまには、みんなで大いに騒ぐとしよう。
昨夜は久しぶりに飲み過ぎた。勿論、ナノムのお陰で二日酔いにはならないが、こんなに飲んだのは久しぶりだ。次々とエールを注がれるので飲まない訳にはいかなかった。ゆっくりと長風呂に入ってから、クラン会議に出掛けた。さて、どんな話合いになるのか。
冒険者ギルドに着き、受付に顔を出すと直ぐに会議室に通された。まだ、約束の十分前だ。まぁ、新参者として少し早めに来るのは、当たり前のマナーだろう。
会議室に入るが、まだ二人しか来ていないようだ。そこに見知った顔があった。[疾風]のカールだ。やはり大手だと言っていた通り会議に呼ばれたようだ。
「おぉ! カール、久しぶりだな!」
カールは、ぽかんとした顔をしている。もう忘れてしまったのだろうか?
「おい! 俺だよ、俺! アランだよ!」
「別に忘れたわけじゃねぇよ! そうか、やっぱりあの噂は本当だったのか…。シャイニングスターってクランが新しくできて盗賊狩りをしているって、あれはお前のクランなんだろ?」
「あぁ、そうだな。クランを作るって言ってあったじゃないか」
「だって、お前、シャイニングスターって何十人もいるクランらしいじゃないか! 昨日、ガンツに戻ってきて噂を聞いたんだが、まさか若いお前が、そんなクランを立ち上げるとは信じられなくてな。まさかと思って[春風]に行ったら、もうとっくに宿を出たっていうしな」
「ああっ、悪かった! ドタバタしてて、拠点を移った事を知らせるのを忘れちゃったんだよ。本当に悪かった!」
「まぁ、いいさ、そんな事は。そうか…。本当に大した奴だな、お前は」
「俺はそうでもないさ。凄いのは仲間達だよ」
これだけのクランを立ち上げられたのはクレリアがいたからだ。クレリアがいなかったら、百人なんて人数は、とてもではないが集められなかっただろう。
「まぁ、そうだな。でも、その仲間も、お前がリーダーだからついてきたんだろう。やっぱり大した奴だよ。お前は」
カールと話をしている間に続々と人が部屋に入ってきた。全部で七人だ。時間になったようで最後に、ギルド長のケヴィンさんが入ってきた。
「時間になったので会議を始めよう。まずは知らない者もいるだろうから紹介しよう。あそこに座っているのが、新参のクラン、シャイニングスターのリーダー、アランだ」
「よろしく」
「あの盗賊狩りの!?」
「こんな若造が!?」
まぁ、そういう反応だろうな。俺は若く見られるらしく二十歳ぐらいに見えるらしい。まぁ、それもナノムのせいなんだが。
「では、さっそく始めよう。最近、樹海の奥で異変が見られるらしい。その異変というのは時折、微かに地鳴りのような音が聞こえたり、夜に稲光のようなものが見えたりするらしい。誰か心当たりの者はいるだろうか?」
「あぁ、確かにウチの若い奴らが、なんか変な音を聞いたって言っていたな」
見知らぬ中年の男が言った。そうか、俺はイーリスからそんな報告は受けていないけどな。
「こんな事は今まで無かった事だ。ギルドの専門家は、これがスタンピードの前兆ではないかと疑っている」
「スタンピード…」
会議室に沈黙が訪れる。やはりこれは結構、深刻な問題のようだ。
「さらに、これは未確認だが遠くにドラゴンを見たという報告もある」
「「ドラゴン!?」」
また、会議室が先程よりも長く沈黙に包まれた。
ドラゴンか…。イーリスの報告で樹海の奥に何匹か生息しているというのを聞いた。ドラゴンが飛んでいる姿を捉えた動画も見たが、確かに他の魔物とは一線を画する、格の違う魔物だった。まさに空飛ぶ恐竜といったところか。
「まぁ、ドラゴンに対応するのは難しいだろう。しかし、スタンピードに対する備えは、ある程度できなくもない。そこで出来るだけ魔物を間引いておく処置をとろうと考えている」
途端に会議室が騒がしくなった。
「ウチのクランは、いま護衛依頼で出払っていて人が少ないんだ! 出来るだけやりやすい地区を頼む!」
「そんなのは何処も一緒だ! それは言い訳にならないぞ」
「ウチは前に担当した場所にするぞ」
皆、口々に主張し始めた。皆は何を主張しているんだろう?
「なぁ、カール。みんな何を言ってるんだ?」
「あぁ、担当の地区を決めて、そこを責任を持って重点的に狩るようにするんだよ。みんなバラバラに狩ると、場所によって魔物の数に偏りが出るからな。まぁ、こんな処置は気休めにしかならないと思うけどな」
「なるほどなぁ。そういうもんか…。これは強制依頼なのか?」
「強制じゃないさ、まだな。しかも、依頼料が別途貰えるわけじゃない。クランにとっちゃ損な依頼だぜ」
なるほど。別料金を貰えるわけじゃなく、担当地区を決めてそこの魔物を狩らなきゃいけないのか。つまり報酬は、通常の魔石と討伐報奨金のみ。これは確かに損な依頼だ。
わざわざ出向いても空振りという事もあるだろうし、ゴブリンしかいなかった、なんて事もあるだろう。
その代りに、ノルマなどもないだろうし狩らなくても分からないんじゃないだろうか? いや、そこは冒険者としての、クランとしての矜持があるということか。
狙うとすれば、魔物が少ない地域か、逆に金になる魔物が多くいる地域か。なるほど、皆が騒いでいる理由が分かった。
このあと、大きな紙に樹海の絵を書き、実際にどのクランが何処を担当するかというのを決めていった。クランの規模や実力も関係してくるので、なかなか決まらず会議は紛糾した。
俺は別に希望する場所もなかったので見ているだけだ。
「では、ここからここら辺までは、シャイニングスター。どうだ?」
「分かりました」
「なっ!? いくらなんでも広すぎだろう! アラン、安請け合いするな」
「いや、実力から言えば、なんとか出来ると考えている。シャイニングスターの人数は百人以上、しかも全員がCランク以上だ」
「なんだと!?」
「百人…」
「Cランク…」
「大丈夫だ、カール。何とかやってみるさ」
そのあとも色々とあったが、何とか全てのクランの担当地区が決まった。
「では、この担当で頼む。勿論、この処置がスタンピードにどれだけ有効かというのは疑問が残るところではあるが、いざ起こってからでは遅い。是非、協力してもらいたい。もし、スタンピードが本当に起こるのであれば、間引きをおこなっても、減らずに次から次へと魔物が増え続けるはずだ。そうなるかどうかを確認出来るまで間引きを続けると考えて欲しい。何か質問は?」
なるほど、スタンピードとは、そういうものなのか…。いい機会なので、イーリスが疑問に思っていた事を訊いてみることにした。
「先程、ドラゴンの話が出ましたが、ここら辺でドラゴンによる被害が出た事はあるんですか?」
「あぁ、最後に被害が出たのは六十年ぐらい前だな。冒険者が襲われ、確か五十人以上の死者が出たはずだ。幸いにもドラゴンは人間には余り興味がないようだ。今回、目撃情報もあったが、ドラゴンについては、それほど心配はしていない」
「なるほど、分かりました」
「何か異常や問題が起きたら直ぐにギルドに知らせてもらいたい。では、これで会議を終わる」
長かった会議が終わった。大した事を決めたわけじゃないのに二時間以上はかかった。
「カール、このあと暇か?」
「特に予定はないな」
「じゃあ、ちょっと一杯やろうぜ。俺が奢るからさ」
「そりゃいい! 俺が奢りを断るわけないさ」
ギルドの横にある酒場で飲む事にした。店員にエールとつまみを適当に頼む。
「なぁ、カール。今回みたいな事ってよくあるのか?」
「めったに無いな。しかし、たまに魔物が増えて冒険者に被害が続出する時があるんだ。そういう時は、クランが協力して魔物を間引くんだよ。たしか二年前にもあったな」
「なるほどなぁ。そういえば、カールはドラゴンって見たことあるのか?」
「若い時に一度だけ、遠くの方に見たな。あれは絶対にワイバーンじゃなかった。まぁ運が良かったよ」
「俺はまだ見たことないんだよ。火を吹くって本当なんだろうか?」
「あぁ、本当らしいぜ。火っていうか、火炎って感じらしい。ファイヤーボールみたいな奴を飛ばすこともあるらしいな」
「ほう、それは凄いな。一度見てみたいもんだよ」
「そんな話より、クランの話だよ! すげぇじゃないか! 百人以上で全員Cランクだと?」
「あぁ、いろいろと縁があってガンツで一旗上げてやろうって感じで集まったんだよ」
「詳しく聞かせろよ」
適当に誤魔化しながらクランの事を話して聞かせた。他にも盗賊の事や色々な情報交換をして、とても有意義な午後になった。
夕方近くになり、飲みはお開きとなり、また飲む約束をしてカールとは別れた。
いい感じにほろ酔いになってしまったので、ホームに戻り夕食まで一休みすることにした。
自分の部屋のベッドに横になり、今日の会議の事を考えていた。スタンピードか…。もし本当に起こるんであれば、大変な事になる。イーリスなら、何か知っているかもしれないな。
(イーリス)
[はい、艦長]
(樹海の奥で、何か異常な事態が起こっているという話を聞いたんだが、何か判るか?)
[いえ、特に異常な事態というのは観測されていません。…… 強いて言えば、私がやっている作業でしょうか?]
(……… つまり、拠点を作っている音や光がここまで届いていると?)
[いえ、そちらまで届くとは思えません。しかし絶対にないとも言いきれませんね]
そういえば、拠点づくりに関しては全くチェックしていなかったな。まだまだ先だと思っていたからだが、もう既に何ヶ月か経つのだから、少しは進んでいるだろう。
(現状の拠点の状況を見せてくれないか?)
[分かりました。こんな感じです]
いきなり、建築現場上空から撮影したと思われるホロ動画が始まった。
(これはっ!?)
更新、遅くなりました!
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現時点で、ハイファンタジーの月間一位、総合で二位になってました。
日刊ランキングは下がってきているので、タイミングが良かっただけですが、二度とないと思いますのでキャプチャーして保存しておきましたw
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