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061. クラン始動1

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



 昨夜野営した場所に戻ってくるのに五時間以上かかり、到着したのは一七時過ぎだった。もう暗くなり始めていたので、夕食は手持ちの食料で済ませることになった。しかし皆の表情は明るく、あちこちで笑い声が上っている。


 盗賊達は、ダルシム隊長の指示で五十メートル程離れた所に集められ、鎖を杭で固定されており、五人の見張りによって監視されていた。盗賊達は全員、少なからず怪我をしているし、さすがに逃げられるとは思っていないのか意気消沈し座り込んでいた。


 クレリアは、皆に囲まれて楽しそうに食事をとっている。皆は今日の事を話しているのか、盛んにクレリアに話しかけていた。俺達シャイニングスターのメンバーは、そんな彼らに場所を譲るため少し離れた所で食事をとっていた。


「そういえば、エルナ。皆がクレリアの事を姫殿下とか姫様とか呼んでいるけど統一はされていないのかな?」


「ああ、姫殿下と呼んでいるのは近衛の者達で、姫様と呼んでいるのは辺境伯軍の者達ですね」


「それにはどんな訳が?」


「辺境伯軍の者達は、クレリア様を王女ではなくルドヴィークの姫として扱っているのですよ。

 辺境伯様に忠誠を誓った彼らにとっては、王女であるクレリア様より、ルドヴィーク家の血を引くクレリア様の方が上位にあたるのです。

 しかし、クレリア様はスターヴァイン王家の姫。本来ならこの様な事は許されないのですが、クレリア様が許可されているので姫様と呼んでいるんです」


「… なんとも複雑な話だな」


「クレリア様は、辺境伯様にルドヴィーク家の再興を誓われたそうです。いつの日にか必ず分家としてルドヴィーク家を再興すると。

 だからある意味、自分はルドヴィーク家の姫でもあるのだとおっしゃっていました。

 クレリア様から分家の話は聞いていないのですか?」


「いや、聞いてないな」


「そうですか…。では、いずれクレリア様より御話があると思います」


 いま聞いたから別に改めて聞かなくてもいいけどな。



 明日は夜明けに起床、可能な限り早く出発することにして就寝した。


 翌朝、予定通り出発し街道を進んだ。総勢百四十名だ。傍から見たら異様な集団に見えるだろう。街道で、他の集団とすれ違う時には説明の使者を出したほうがいいだろう。


 午後になり商人と思われる二十名程の集団と出会ったが、使者を出していたためか騒ぎになるような事はなかった。勿論、すれ違う際には十分におかしな目で見られたが…。


 ガンツに近づくにつれて、すれ違う事も多くなってきたが、ガンツにこれ程近くなれば盗賊とは思われないようで、意外なほど問題はなかった。


 そして十四時過ぎにはガンツへ到着した。


「おい、止まれ! って、シャイニングスターか。その後ろに引き連れている鎖に繋がれた者達は何なんだ?」


「捕縛した盗賊三十五人です。商業ギルドの指名依頼ですね」


「商業ギルドの…。まさか三十五人をあんた達だけで?」


「いえ、その後ろにいる冒険者達に手伝ってもらいました。彼らは新しく作るクランのメンバーなんですよ」


「この後ろに並んでいる冒険者全員か!? やけにまとまってくるとは思ったが…。全部で何人だ?」


「全員で百人です。よければ盗賊共を引き渡したいんですが…」


「ちょ、ちょっと人を呼んでくる! 待っててくれ」


 二人の守備兵のうち、一人が詰所まで走っていった。程なく十人程の兵がやってきた。


「ほう、これは……。あんた達がシャイニングスターか?」


 守備兵の隊長のような人が声を掛けてきた。


「そうです。シャイニングスター、リーダーのアランといいます」


「で、三十五人の盗賊を捕らえてきて、後ろの冒険者百人は新しく作るお前のクランのメンバーだと?」


「そうです」


「そうか、俺の名はギード。こいつらのまとめ役だ。宜しく頼む」


「こちらこそ宜しくお願いします」


「この盗賊達につけている鎖は貸しておいてもらいたい。明日、宿に届けさせよう」


「分かりました。では、以前、[大嵐]が使っていたホームまでお願いできますか?」


「ほう、あそこに入るのか…。了解した。おい! 連れてけ!」


 守備兵に指示して連れていかせた。


「隊長! こいつの顔を見てください!」


 守備兵がギード隊長を呼ぶので俺もついていった。


「ほう、確かに見たような顔だな。おい! 手配書を持ってこい!」


 守備兵の一人が詰所に駆け込み、紙を纏めた束を持ってきた。ギード隊長は紙を何枚かめくり、件の盗賊と見比べるとニヤリとした。


「お前、黒狼のクンツだな?」


 盗賊は下を向いて何も言わない。


「まぁいい。たっぷりと絞ってやる。連れてけ!」


 ぞろぞろと三十五人の盗賊は連れていかれた。


「アランといったな? 朗報だぞ。あいつは賞金首だ。間違いなく他の奴らも黒狼のメンバーだろう。お手柄だな」


「なるほど。名のある盗賊団というわけですか。ちなみに懸賞金は?」


「奴ぐらいの盗賊になると相当な人数に恨まれているからな。今の懸賞額の総額は調べてみないとはっきりしないな」


 そういうシステムか。盗賊狩りには、こんな魅力もあったんだな。考えてみれば最初に捕らえた盗賊にも懸賞金が掛かっていたっけ。


「さすがに人数が多いから取り調べには五日は欲しいところだな」


「了解です。ではその頃に伺いましょう」


「宜しく頼む」


 みんなへの守備兵の確認が始まり長く掛かりそうだったので、先に確認を終えた俺は先に用事を済ませることにした。


「ちょっと商業ギルドに行ってくるよ。皆の案内を頼む」


 メンバーに案内を頼むと商業ギルドへと向かった。


 この依頼の達成の方法は、守備兵に盗賊の討伐の証拠を引き渡し、その旨を商業ギルドに伝えるとギルドから守備兵に確認が入り、申告に間違いなければ報酬が支払われるという流れだった。


 商業ギルドに着き、教わっていた窓口に向かった。


「御要件をどうぞ」


「シャイニングスターの、」


「アラン様ですね? いま丁度、カリナ様がみえています。少しお待ち下さい」


 受付職員はギルドの奥へと消えていき、すぐにカリナさんがやってきた。


「こんにちは、アラン様」


「わざわざ出てきてもらってすいません。実は一回目の指名依頼を達成したので報告にきたんです」


「そうなんですね! アラン様が依頼に出掛けると聞いていたので心配していたんです」


「それは有難うございます。無事、全員怪我もなく戻りました。今、守備兵に捕らえた盗賊を引き渡してきたところです」


「承知しました。後で確認に行かせます。ちなみに何名ぐらい捕らえたのですか?」


「三十五名です」


「…… 三十五名ですか …それは大変でしたね」


「いえ、丁度クランを作る予定だったメンバーと街道でばったりと会いましてね。彼らに手伝ってもらったので、それほどでもなかったですね」


「あぁ! ガンツに集まるといっていた方々ですね。それは幸運でしたね。でも、五十八名の方が揃っていらしたんですか?」


「ええ。しかし、人数のほうが結構増えてまして百名になりました」


「…… 百名ですか … それは結構増えましたね」


「余裕をみてホームの準備をしておいて良かったですよ。そうだ! 結構な量の盗賊達の所持品を手に入れまして、売りたいと思っているんですが、どなたか紹介して頂けませんか?」


「もし、よければ商業ギルドで買取りましょうか? 相場での買取になってしまいますが」


「出来ればお願いしたいです。勿論、相場で結構です」


「では、査定員を連れて伺いましょう。明日の十時ではいかがですか?」


「問題ありません。ちなみに馬車二台分ぐらいはありますね」


「分かりました。では明日伺います」



 用事を済ませてホームに着くと皆はまだ馬の世話などをしており、まだ建物には入っていなかった。


「アラン様! 予想以上に立派な拠点で一同感動していたところです」


「これほどの大きさの建物はガンツでも珍しいそうだよ」


「そうでしょうな。このような施設が月に七万ギニーとは驚きです」


「あぁ、そうだ、ダルシム隊長。部屋の割り振りを頼めるかな?」


「勿論です。姫殿下は最上階とのことなので、警備を考えて直ちに決定します。戦利品はどうしましょうか?」


「明日、商業ギルドの者が査定にくる手筈なんだ。一階の鍵の掛かる部屋に運んでくれ。金などの貴重品は四階の執務室に運んでくれると助かるな」


「了解しました」


 執務室には鍵も掛かるし、これだけの人数が暮らす建物の最上階から盗み出すのは難しいだろう。

 建物に入ると従業員のまとめ役のサリーさんがいたので声を掛けた。


「サリーさん。急にこんな人数を連れてきてしまって申し訳ない。夕食は簡単なものでいいのでお願いできますか?」


「いえ、いいんですよ。今、食材の買い出しに行かせましたから。なんとか定刻にお出しできると思います」


「では、宜しく。あぁ、買ってあったワインの樽も食事と一緒に出してください」


 さて、混まないうちに風呂に入ってしまおう。



 夕食はビュッフェスタイルにしてもらえるように予めお願いしておいた。これだけの人数に給仕するのは不可能だ。皆、思い思いに料理を選んでいて楽しそうだ。


 俺達はパーティーの皆で集まって食事をとっていて、近くにはダルシム隊長とヴァルターも座っていた。


「ダルシム隊長、食後に皆の簡単な紹介をしてもらえると助かるな。出来るだけ早く皆の名前を覚えたい」


「承知しました」


 勿論、一回紹介してもらえればナノムが覚えてくれるので忘れることはない。

 全員の食事が終わり、給仕の人の片付けが終わると俺達だけになれるよう人払いをした。勿論、魔力センサーで部屋の近くで聞き耳を立てている者がいないのは確認している。


 ダルシム隊長の指示で一人ずつ所属と名前を名乗っていく。やはり近衛の人達は殆どが家名を持つ貴族出身で、対して辺境伯軍の人達は全てが平民だった。辺境伯軍の中にも貴族出身はいたに違いないが、恐らく実力優先で選ばれたんだろう。


 当然、俺やシャロン、セリーナ、エルナも改めて自己紹介していた。


 最後にクレリアが立ち上がった。


「皆が殿下や姫と親しみを込めて呼んでくれるのは正直嬉しい。しかし、今の私は王族でも姫でもない、ただの冒険者、リアだ。今後はリアと呼んでもらいたい」


「「はっ!」」


「ダルシム隊長、主だったメンバーを集めて執務室に来てくれ。少し打ち合わせをしたい」


「承知しました」



 パーティーメンバーとダルシム隊長とヴァルターに選ばれた六人の者に執務室に集まってもらい打ち合わせを始めた。


「明日の午後、冒険者ギルドに行ってクランの登録をしたいと思っているんだ。登録の手続きを調べたんだが、クランのリーダーとパーティーの全員が揃って申請をしなければいけないらしい。恐らく勝手に登録したり、されたりするのを防ぐためだろう。だから午前中のうちに十人一組で、パーティーの登録をギルドで済ませておいて欲しいんだ」


「分かりました。つまり十人編成の十個の小隊を作るということですね?」


「そうだ。出来るだけ各小隊の戦力が均一になるようにしてもらいたい。あぁ、適当なパーティー名を決めなければいけないだろうな」


「それなら、もう考えてあります。サテライトというのはいかがでしょう?」


 ダルシム隊長はニヤリとしながらそう言った。サテライトというのは、確か守護星という意味だったな。なるほど、光り輝く星を守護する星か。


「なかなかいいパーティー名じゃないか。でも十班もあるのにどうするんだ?」


「それはサテライト一班、二班という感じで考えていましたが、どうでしょう?」


「みんなに任せるよ。では、今後の方針だ。これからも盗賊討伐の依頼をこなしていきたいと考えている。その際、討伐する盗賊の数によって、組む班の数を変えて対応したいと考えているんだ。例えば十五人の盗賊に対しては三班三十人で、二十人の盗賊に対しては四班四十人で、という感じだ」


 数は力だ。俺達のクランの強みは個々のメンバーの強さ、そして数だ。これを活かさない手はない。相手の倍以上の人数がいれば、危険性もかなり下がるはずだ。


「しかし、それは盗賊の数があらかじめ判っていないと……。なるほど、そういうことですね! それは素晴らしい案だと思います!」


 周りを見渡すが皆、賛成のようだ。


「よし、特に問題はなさそうだな。では、個々のメンバーの能力を把握しているダルシム隊長とヴァルターを中心に各パーティーのリーダー、編成などを考えてくれ」


「承知しました。宜しければ、これから食堂に全員を集め検討したいと思いますが?」


「そうしてくれ。俺も出来れば付き合いたいが、これから急いでやらなければならないことがあるんだ」


「分かりました。後はお任せください」


 パーティーのみんなも興味があるようで一緒についていった。



 俺が急いでやらなければならない事とは、セリーナとシャロンの魔法の習得についてだ。二人は未だに治癒魔法ヒールが使えない。どうしてもイメージが上手くできないらしい。


 二人には俺が以前、ナノムに作ってもらったホロ動画を送ってあるが、あれを何回見て試してもヒールを習得することは出来なかったとのことだ。


 俺の場合は、ナノムが作ったホロ動画からヒントを得て、光の精霊達をイメージしてヒールを習得したが、このイメージは伝えるのが恥ずかしくて彼女達には伝えていなかった。


 しかし、今、考えている構想では彼女達の治癒魔法の習得は必須事項だ。もう恥ずかしいとか言ってられる状況じゃない。


(ナノム、治癒魔法ヒールのイメージホロ動画を作ろうと思う)


[了解]


(光の妖精達が傷を直していく、というコンセプトだ。まずは妖精達の容姿だな。サンプルを表示してくれ。… ああ、違うな。そんなスリムな妖精じゃない。もっと丸っこくて、いや、それじゃ太ってるだけだ。あぁ、いいだろう)


 俺のイメージ通りの丸っこくて愛らしい姿だ。金髪で透明な羽根が生えていて白いワンピースを着ている。


(最初は妖精の国にいてみんなで楽しく遊んでいるシーンだ。よし、いい感じだ。そこで魔法が発動されるとみんな一斉にハッとした顔になって、魔法の薬の入った壺を倉庫に取りにいくんだ。壺の色は茶色だな。中には黄色い魔法の薬が入っている。それを小脇にかかえて次々と光と共に飛び立っていく…。そこまで再生してくれ)


 遊んでいるシーンからハッとして妖精達が倉庫に急行して壺を渡す係から壺を受け取って次々と光と共に飛び立っていく。なかなか良い感じだ。


(次はお前の作った動画と同じように傷口に浸透して細胞までいく感じで。おい! 妖精達の表情がさっきのままだぞ。ここは使命感に燃えている感じを出してくれ。あぁ、そんなバラバラに飛ぶんじゃなくて、えーと、フォーメーションBで)


 妖精達の顔つきがぐっと良くなった。妖精達がフォーメーションBで飛んでいき傷口に浸透していく。やがて傷口の底の細胞まで辿り着いた。


(よし、それじゃ二人がかりで細胞を引っ張って寄せて、三人目が寄せた細胞の隙間に魔法薬を塗っていくシーンだ。一番重要なシーンだぞ。ここでの表情は一生懸命さを出してくれ。… あぁ、魔法薬はもっとタップリ塗ってくれ。出し惜しみは無しだ)


 妖精達の懸命に細胞を引っ張って寄せているところにタップリの魔法薬が塗られていく。あぁ、それでいい。


(妖精達は光と共にどんどんと数を増やしていくんだ。お前の動画と同じように…。最初はこんなものかな。じゃ最初から。今度は効果音とBGMをつけていこう)


 三十分後、ついに動画は完成した。最初から見てみる。……… 妖精達の指揮をとり大活躍した妖精の隊長がサムズアップして颯爽と去っていくシーンで動画は終わった。


 俺にこんな隠れた才能があったとはな。まさかこれほどの動画、いや作品を作り上げる事ができるとは思わなかった。

 俺のヒールのイメージそのままだ。いや、それ以上だ。この作品なら二人もきっとヒールを習得できるに違いない。


(これをイメージしてヒールを練習してみてくれ、というコメントを付けて、このホロ動画を二人に送信してくれ)


[完了]



------



 アランからのメッセージに気づき、食堂での会議を抜け出して部屋に戻っていた。


「セリーナ、ホロ動画… 見た?」


「もちろん」


「… 冗談なのかな?」


「…… そうは思わないけど。いえ、きっとこれは真剣な話だと思う。私達があれだけ練習しても出来なかったんだから、きっといろいろと考えて作ってくれたに違いないわ。とにかく、私はこのイメージで練習してみる」


「もちろん、私だって」


 三十分後、いくらこの動画をイメージしても、私とセリーナはヒールを発動することが出来なかった。


「本当にアランはこんなイメージでやっているのかな?」


「勿論そうよ! …… ただ、いろいろと雑念が入って上手く集中出来ないの」


 セリーナは私と同じ状況らしい。いくらなんでもこの動画は……。



(ナノム、私を軽い催眠状態にすることはできる?)


[可能です]


(やって)


 少し意識が朦朧としてきた。この状態で動画のイメージを頭の中で繰り返す。イメージが固まった時、私は自然と呟いていた。


「ヒール」


 あぁ、手のひらから光が溢れている。やった! できた!


「セリーナ! これを見て!」


「シャロン! どうやったの!? お願いだから教えて!」


 やり方を教えるとセリーナもすぐにヒールを発動する事ができた。


「セリーナ、アランにこの事を報告しに行きましょう!」


「当然でしょ!」




更新、遅くなりました。

今回の話、後半ふざけ過ぎでしょうか?

なんだか真面目な文章ばかりで息苦しくなってしまいましたw

感想、お待ちしております!


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[良い点]  このヒールの話は秀逸です。コミカライズの方もよくできていたと思います。
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