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060. 盗賊討伐

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



 アランの言葉に耳を疑った。私の知り合い? こんな所に?

 ひょっとして近衛の皆が!? そうに違いない! アランの言うことに今まで間違いは無かったのだから。慌てて近づいてくる人馬に手を振り始めた。


 私が手を振っているのに気づき、馬の歩みを止めた。警戒しているようだ。確かに怪しく見えるかもしれない。後続の集団を待ってゆっくりと近づいてくる。距離が五十メートルを切った時に逆に馬を駆けさせ、物凄い速さでこちらに向かってきた。あれはダルシムだ!


「姫殿下! 姫殿下ではございませんか! 何故このような所に!」


 ダルシムは馬から飛び降りると私の前に跪いた。


「久しいな! ダルシム」


 近衛の者を前にすると、この口調になるのが自分でも不思議だ。


「おぉ! 姫殿下、お久しゅうございます!」


 ダルシムが引き連れていた集団もこの空き地に到着した。


「姫殿下だ!」

「おお! 姫様!」

「姫様!」


 あぁ! 近衛の皆だ。しかし、見覚えのない者も混じっているようだ。


「久しいな! 皆の者! 壮健そうで何よりだ」


「姫殿下、何故このような場所に? まさか我らの迎えに?」


 アランをチラリと見る。アランはきっと近衛の皆がここを通る事を知っていたに違いない。教えてくれればいいのに!


「いや、そういう訳ではなく冒険者としての依頼の途中だ」


「おぉ! なんという偶然! 正に僥倖です。実はガンツに到着した後、直ぐに姫殿下をお見つけする事が出来るか心配だったのです」


 確かにそうだ。何か策を講じるべきだった。


「確かにな。皆が到着するのはまだ先だと思い、私も何の策も講じていたかった。危うくすれ違いになるところだった」


「後続へ馬を飛ばせ! 集合を急がせろ!」


 ダルシムは馬の近くにいた見知らぬ男にそう叫ぶと、男はひらりと馬に跨がり街道を駆けていった。後続がいるのか。


「後続がいるのか? 確かに少ない人数だとは思ったが」


「はい、あまり大人数でまとまって移動すると目立ちますので」


 そこでダルシムはニヤリと笑った。何かあるのだろうか?


「アラン様、御無沙汰しております。他の皆様も」


「久しぶりですね、ダルシム隊長」


 セリーナ、シャロン、エルナも口々に挨拶をする。

 そうしているうちに、次々と集団が到着し始めた。皆、全速で駆けてきたようだ。


「姫殿下!」

「クレリア様!」


 次々と声をあげる皆の者に挨拶を返した。私はもう王族でもなんでもないのに慕ってくれる皆の様子に胸がいっぱいになる。


 皆、私の前に跪いていく。最後と思われる集団が到着して同様に皆に加わった。おかしい。どう見ても五十八名以上の者がいる。皆が静まり返った。


「ダルシム、この人数は?」


「辺境伯軍の中から精鋭中の精鋭四十二名が我らに加わりました。何れも我ら近衛にも劣らぬ実力の者達です。総勢百名になります」


 そういう事か。道理で見覚えのない者達がいるはずだ。しかし叔父上の軍からか…。ふと、ダルシムの隣にいた男に目がいった。


「そなたは確か、叔父上の軍の、確か… ヴァルターだったな」


 ダルシムの側にいた見覚えのある男に声を掛けた。


「まさか姫様に名前を覚えて頂けていたとは! 天にも登る気持ちです! 確かに以前、二度ほど御意を得ました。ここにいる辺境伯軍のまとめ役をしております」


「そうか。ヴァルター、宜しく頼む」


 ああ! これほどの人数の人達が私のために来てくれるとは!


「皆の者! 遠路はるばる大義であった。皆と会えてこれほど嬉しい事はない」


「勿体無い御言葉にございます。姫殿下」


「皆も聞いているとは思うが、私達は今、冒険者として頂点を目指している。どうか、これから皆の力を私に貸して欲しい」


「「御意!」」

「「ははっ」」


「姫殿下、先程依頼の途中とおっしゃいましたがどのような依頼なのでしょう?」


「盗賊の討伐だ」


 皆がざわついた。


「なんと! そのような危険な依頼を、この五人だけでなされる御積りだったのですか?」


「問題ない。我ら五人だけで充分だ」


「あぁ! ここで姫殿下と会えたのは正に僥倖でした。そのような依頼、姫殿下の手を煩わすまでもありません。我らで盗賊共を討ち取って御覧に入れましょう」


「クレリア、とりあえずここで話を決めることもないだろう? この先に野営にいい場所があるんだ。そこに移動して話をしたらどうだろう?」


 皆にアランを紹介するのをすっかり忘れていた!


「皆の者! 紹介が遅れたが、私のパーティー、シャイニングスターのリーダーを務めるアランだ」


「シャイニングスターのリーダー、アランだ。皆には、これから作るクランのメンバーという形で参加してもらう事になると思う。宜しく頼む」


「「はっ」」

「「宜しくお願いします! アラン様」」


 良かった。皆、アランの事は、既に聞いていたようだ。


「では、アランの言う通り野営場所に移動しよう。皆には街道を戻ってもらう事になってしまうが、準備を頼む」


「「はっ」」


「班ごとに準備急げ!」


 皆の準備が整い私達の馬車を先頭に街道を進む。三時間程でアランの言っていた野営場所に到着した。馬車で降りる事が出来る広い河原で、ここであれば百名以上が野営しても問題ないだろう。


「野営準備! 見張りを立てろ!」


「ダルシム、見張りを立てる必要はない」


 皆の動きが止まった。


「姫殿下、何故でございますか?」


「アランや、そこにいるセリーナやシャロンは探知魔法の使い手だ。三人の探知を逃れられる魔物はいない」


「探知魔法……、その様な魔法が!?」


「クレリア」


 アランがハンドサインで魔物の発見を知らせてきた。グレイハウンド、三頭、距離、方向。最近ではサインを改良して魔物の種類も組み込むようにしている。


「証拠を見せよう。あちらの方向、グレイハウンド、三頭、恐らく三十秒後だ」


 皆が、私の指さした方向へ注目する。皆が注目する中、三十数秒後にグレイハウンド三頭が姿を現した。距離は六十メートル程だ。


「「「おおっ!」」」


 さすがのグレイハウンドもこの人数に、こちらを窺い足を止めている。


「私が仕留める」


 準備していたフレイムアロー三発を放った。アランを真似て以前よりはスピードを上げてあるものだ。

 三本の炎の矢は飛翔していき、避けようとしたグレイハウンドを追いかけ、その胴体に突き立った。


「「おおっ!」」

「「凄いっ!」」


「お見事です! 姫殿下!」


「誰か魔石を採ってきてくれないだろうか」


「「私が!」」


 数名が駆け出していった。


「御見逸れしました。アラン様、姫殿下」


「アラン達は常に警戒しているのだ。見張りは立てなくてよかろう。それよりも皆と一緒に話がしたい。野営の準備が終わったらゆっくりと話をしよう」


「分りました。野営準備! 急げ!」


 皆が慌ただしく動き始めた。私も馬車からタースとシラーを外すのを手伝う。


「シャロン、セリーナ、悪いんだけど何か夕食に獲物を狩ってきてくれないか? そこの川は浅瀬ばかりで魚はいそうもない」とアラン。


「了解です」

「分りました」


「アラン、私も狩りにいこう」


「クレリアはいいさ。皆、クレリアと話をしたがっているんだ。今日はゆっくりとしていてくれ」


 今日のところはその言葉に甘えよう。シャロン、セリーナは、らいふるを背負いタースとシラーに乗って狩りに出掛けていった。


「姫殿下、宜しいのですか? あのような、かよわき娘二人だけで狩りなど」


「ふっ、シャロンとセリーナは、かよわくはないぞ。恐らく体術であれば、ここにいる誰よりも強い。何せ体術では、あのアランよりも強いのだから」


「アラン様より!? 信じられません…」


「いつか稽古をつけてもらうといい」


 アランがかわやを土魔法で作り始めた。途端に周囲に人垣ができた。


「姫殿下、これは!?」


かわやを作っているのだ。なかなか見事なものだろう」


「見事ですね! 土塁や簡単な壁のようなものを作っているのは見たことがありますが、ここまで精巧なものは見たことがありません」


 アランはものの二十分程度で男用三つと女用一つを作ってみせた。皆に使い方を説明している。今日は小屋は作らないようだ。恐らく私達の分は作れても皆の分も作れないからだろう。アランらしいことだ。


 アランは馬車から取っ手のついた大きな鉄の板を取り出してきた。長手一メートル以上、短手八十センチ程の板で初めて見るものだ。


「アラン、それは?」


「鍛冶工房の親方に作ってもらったのさ。これで肉を焼くんだ」


 アランは手隙の者に鉄の板を載せるためのかまどを作る指示と、薪を集める指示を出し始めた。薪となる木なら河原中に転がっているので苦労はしないだろう。


 しばらくしてセリーナとシャロンが帰ってきた。タースとシラーは、それぞれロープで繋がれた五十キロはありそうなビックボアを一頭づつ引きずり、セリーナとシャロンは手にブラックバードを一羽ずつ持っていた。やはり二人は大したものだ。


「凄い! こんな短時間にあれだけの獲物を? おい! お二人から獲物を受け取り、直ちに解体にかかれ!」


「「おう!」」


 手の空いていた二十名以上の者が獲物に群がり瞬く間に解体されていった。アランが肉の切り方を指示している。


 《かまど》に火が着けられ肉を焼く準備が整った。全員が《かまど》に注目している。やはり皆は道中、ロクな物を食べていなかったのだろう。皆には苦労をかけた。


「クレリア、ちょっと早いけど夕食にしよう」


「皆の者! 積もる話もあるが、まずは夕食にしよう!」


「「はっ!」」


 アランに選任された二人の肉焼き係が、鉄製のヘラのようなもので肉を焼いていく。味付けはシンプルに塩と胡椒のみのようだ。火力が強いのか、あっという間に肉が焼けていく。なるほど、あの鉄板であれば大量の肉を焼くのには最適だろう。焼かれた肉は大皿に載せられ、載せられたそばから皆が自分の食器に取っていく。


「姫殿下、こちらをどうぞ」


 折りたたみ式の椅子に座っていた私とエルナにダルシムが焼かれた肉を持ってきてくれた。薄く切られたビックボアの肉とブラックバードの肉だ。


 シンプルな味付けだけど美味しい。いつもの食事よりも美味しいぐらいだ。いや、皆に囲まれたこの雰囲気がそうさせているのだろう。


「ダルシムも頂きなさい。とても美味しいお肉よ」


「は、それでは失礼します」


 ダルシムも肉の争奪戦に加わっていった。一時間程で皆も満足したようだ。薄暗くなってきたので、明かりの魔道具が置かれ、焚き火が何箇所かに焚かれた。


 皆は私を囲むように地面に座った。


「まずは報告を聞きたい。野に散ったという仲間達の状況はどうか?」


「はっ、概ね問題はありません。一人として脱落した者は報告されておりませんし順調かと」


 答えたのは辺境伯軍のまとめ役であるヴァルターだった。


「そうか。しかし気になっていたのはその家族達だ。稼ぎ頭たる者を失った家も多いだろう。そちらの暮らしぶりはどうなっている?」


「ロベルト様は姫様が送ってくださった資金のうち、出来る限りを家族達に廻して下さいました」


「はっきり申せ、足りているのか、いないのか」


「…… 十分ではございません」


「… やはりそうか。では我らがこれから頑張ればいいだけだ。私達は既に少なくとも百万ギニー以上は送金できる状態にある。ガンツに戻り次第、取り急ぎ送金することにしよう。アラン、何か問題はある?」


「ないな」


「姫殿下、この短期間でもう百万ギニーもの大金を手に入れたとおっしゃるのですか?」


「主にアランが稼いだものだ」


「いや、それは違うな。俺達パーティーで稼いだものだ」


「… そうね。他に何か報告は?」


「スターヴェイク国内では税が上がり民の不満が高まっているようです」


「あぁ、それは私も聞いた。我らが一刻も早く国を取り返す理由が増えてしまったな。他に何か?」


「… 特に無いかと」


「では、ガンツにいた私達の報告をしよう。とはいえ、ガンツに到着してから私達はさほど冒険者としての活動はしていないのだ。クランのホームの確保やその準備、魔法の鍛錬などをしていた」


「姫殿下、クランのホームというと拠点の事ですね? 我らのために有り難うございます。して、そのホームには何名ぐらいの者が住む事が出来るのですか?」


「全部の部屋を使えば、確か百二十名は住むことが可能のはず」


 今、考えればアランは百名の者が住むことを想定していたように感じる。考え過ぎだろうか。


「… では、我らの全てがそのホームに住む事が出来るのですか?」


「そうなる」


「それは素晴らしいですね! 私は安宿に分散して暮らすことになるかと考えていました。しかし、そのような大きな施設、借りるのに莫大な費用が掛かるのではないですか?」


「それはアランが商業ギルドのギルド長に交渉して格安で借りることが出来たのだ」


「さすがアラン様ですね」


「それだけではないぞ、アランは商業ギルドの支援と継続的な指名依頼を勝ち取ったのだ。今回の盗賊討伐は、その初めての指名依頼ということになる」


「おお! しかし、パーティーの五人だけで盗賊の討伐というのは、やはり無謀だと考えますが?」


「そう考えるのは分かるが、三十人程度の盗賊は私達のパーティーにとっては、大した問題にならないのだ」


「三十人! 三十人とおっしゃったのですか?」


 皆がざわついている。


「これはアランが事前に掴んだ情報だ。私達は明日、三十人の盗賊を討伐するつもりだ」


「ああ、クレリア、すまない。実際には三十五人だ」


「そうか、では三十五人だ」


 皆のざわつきが大きくなった。


「ノリアン卿、君はどう考える?」


 ダルシムはエルナに矛先を変えたようだ。ダルシムの言っている事も分かる。普通に考えれば完全に無謀だ。しかし、私達のパーティー、シャイニングスターならば、そしてアランがいれば、なんとかなる。


「私も問題ないと考えます。ただし、アランがいればの話ですが」


「あぁ、それは私も同感だ。アランがいないという前提ならば、この依頼はいささか無謀かもしれない」


「クレリア、無謀かどうか明日、見てもらえばいい。皆にも手伝ってもらって俺達の戦い方を見てもらおう」


「勿論、御手伝い致します。いえ、出来れば私達だけに御任せ頂きたいところですが…」


「いや、これはシャイニングスターへの依頼なのだ。そういう訳にはいかない」


「クレリア、ダルシム隊長。明日の朝に作戦を立てよう」


「分りました。アラン様」


 そのあとは、私達がオークの集落を襲いジェネラル・オークを倒した時の話や、ビッグブルーサーペントを狩った話、Bランクに昇格した事を皆に話し、場は大いに盛り上がった。


「ところで、姫殿下。先程から気になっていたのですが、皆様が左肩に付けている物はなんでしょう?」


「あぁ、これはシャイニングスターの記章だ。光り輝く星の意匠になっている。なかなか良いだろう?」


「はい! 素晴らしい出来です! 出来れば私達も同じ物を作りたいと思いますが御許し戴けますか?」


「勿論だとも。これをクランの記章としよう」


 アランは席を外して馬車のほうに向かっていった。もしかして記章は多めに作ったのだろうか? しかし多めに作ったと言ってもさすがに人数分は無いだろう。やがて麻袋を持って帰ってきた。


「ダルシム隊長、記章は多めに作ってあったんだ。これを皆に配ってくれないか?」


「おお! それは素晴らしい! ちなみにこの袋には何個ぐらい入っているのですか?」


「人数分はあるはずだ。余ったら返してくれ」


「了解しました。おい! 三列に並べ!」


 たちまち、ダルシムの前に列ができ、ダルシムが一人づつ配っていった。皆、とても嬉しそうだ。中には服に穴を開けて、左肩に付けている者もいる。


「アラン、何故百個もの記章を?」


「クランのメンバーが増えた時に困るじゃないか。俺は先見の明のある、出来る男なのさ」


 怪しい。アランは本当にこの人数が加わる事が分かっていたような気がしてきた。余分に作ったのはまだ分かるが、今日持ってくる必要は全くないはずだ。


 明日は夜明けと共に起きる事にして早めに休む事にした。ダルシムが見張りを立てようとしていたので止めた。


「アラン達の探知魔法は寝ている間も有効だ。魔物が近づけば目が覚めるので、見張りの必要はない」


「そんな! …… いえ、分りました。ではそのように」


 それでもダルシムは私達を囲むように、皆に寝るように指示している。信じられないのも無理はないか。


 翌朝、昨夜の夕食の残りで朝食を済ませると早速隊長格の者を近くに集め作戦会議を始める事にした。とは言ってもそれ以外の全員も周りを取り囲んでいる。


 アランはホームで見た大きな地図よりも小さい地図を取り出しテーブルに広げた。


「まずは、この地図を見て欲しい。俺が掴んだ情報によれば盗賊は、この地点で罠を張っている事が多い。実際に罠を張っているのは二十七、八人だ。残りの七、八人は、ここにあるアジトを守っている事が多いようだ」


「場所が分かっているのであれば、我らに御任せいただければ、」


「いや、盗賊達は見張りを立てている。大人数で向かえば隠れてしまうだけだろう。勿論、場所が分かっているのだから、大人数で大きく囲って詰めていけば当然勝てるが、そうすると俺達が盗賊になってしまいかねない。奴らには一度襲ってもらったほうが、いろいろと手っ取り早い」


「しかし…」


「ダルシム、クランのリーダーはアランだ」


「はっ! 失礼しました。アラン様」


「俺達の馬車を使う。荷物を下ろし、代わりに人を詰め込めば十四人以上は乗れるだろう。馬車に乗る者は、弓か魔法を使えて防御力の高い者が好ましい。魔法が使える者は何人ぐらいだ?」


「七十五人おります。人員の選抜は御任せ頂けるでしょうか?」


「任せる。馬車の他にも二十名で構成された班を二班、作ってくれ。こちらも弓か魔法を使えて山中を歩き慣れた余り音を立てない者が好ましい」


「了解しました」


「作戦は単純で、作った二班は襲撃場所を大きく迂回し盗賊達の背後につく。その迂回班が位置についたら馬車を進める。盗賊の襲撃が始まったら合図を出すので迂回班は攻撃を開始する。それだけだ」


「合図とはどのように?」


 アランは空を指差し見上げた。全員が空を見上げる。アランの側からファイヤーボールが打ち出され、三十メートルほど飛翔し、バンッと大きな音を立てて破裂した。


「「おお!」」


「これを合図としよう」


「今のは!? いえ、何でもありません」


「迂回班は、探知魔法が使えるシャロン、セリーナが指揮をとれ」


「「了解しました」」


「馬車班、迂回班にも加わらない者達は、街道の後方で待機し合図と共に現場に全速で駆けつける。作戦は以上だ、何か質問は?」


 アランが見渡すが質問はないようだ。単純な作戦なので疑問はないか。


 ダルシムとヴァルターによる人員の選抜が進められる中、荷物の移動や撤収の準備が進められた。

 荷物を下ろした馬車にどれだけの人員が乗れるかを実際に試している。


「アラン様、班の選抜が完了しました」


 選抜された者達が班ごとに整列している。皆、気合充分だ。アランは選抜された班を見ていき吟味しているようだ。


「いいだろう。出発しよう!」


 馬車にはシャイニングスター三名の他に十二名が乗り込む事になった。

 いよいよ、出発だ!



------



 野営場所を出発して四時間が経った。盗賊の襲撃は予想以上に大掛かりになってしまった。勿論、盗賊を捕らえるだけならば、シャイニングスター五人だけで問題はないだろう。しかし、あえて皆と一緒に戦ってもらう事にした。


 このクランの人達は、恐らくこれからの国造りの中核となっていく人達だ。出来るだけ経験を積み、俺達との連携を学び成長する事、いや逆だ。俺達がこの人達から学び成長する事が必要になる。とはいえ、そのために皆の命を懸けさせる訳にはいかない。俺が必ず守ってみせる。


 そろそろ頃合いか。馬車を止め御者台から降りる。後続も当然止まった。


「迂回班は、班を構成し直ちに出発してくれ」


「「了解」」


 セリーナやシャロンは、迂回班の人達が乗った馬車に便乗し、コミュニケーションを取っていたようだ。

 直ちに班が構成され、街道の左右の山中に入っていった。勿論、山中の様子はドローンの映像によって事前に確認している。さほど苦労なく位置につく事が出来るだろう。


 一時間ほどしてシャロン、セリーナから位置についたとの連絡が入った。


「よし、そろそろいいだろう。出発するぞ」


 馬車を進ませ、あと五百メートルのところまできた。ドローンに上空から撮らせた映像を仮想ウインドウ上に表示する。盗賊達は街道の左側に十四人、右側に十四人いるようだ。一部雑談をしているのも確認できた。当然、まだ気づいてはいないようだ。


 セリーナとシャロンは盗賊達の後方七十メートル程の位置に隠れていた。恐らく寸前に盗賊達に忍びよるつもりだろう。


 四百メートルまで近づいた時に、木に登っていた盗賊の見張りに気づかれたようだ。慌てて準備をしている。


 五十メートルまで近づいた。セリーナとシャロンは盗賊達の後方三十メートルにまで近づいている。


「あと五十、右上の木の上に一人、弓を持っている。その先三十に弓持ちが左右に五人ずつだ」


 当然、エルナは何か聞こえた素振りは見せなかった。恐らく最初は弓で俺達を狙ってくるだろう。弓を射てくる前にかたをつけよう。


 見張りの下を通り過ぎ、盗賊達が弓を構え始めたが、まだ引き始めてはいない。エルナのいる右側の弓持ちは構えてもいなかった。恐らくエルナが女だと気づき捕らえるつもりだろう。


 空に向けて合図を放った。バンッという合図と共に、ロックオンしていた左側と右側の弓持ち五人ずつに続けざまにライトアローを放った。次は木の上の見張りだ。見張りがライトアローを喰らいながらも放った矢をライフルで撃ち落とす。


 合図と共に馬車の中から雄叫びを挙げながら馬車班の皆が飛び出し、盗賊達に向かっていった。


 御者台の上に立ち、ライフルを構え警戒するが、次々と盗賊達が隠れていたあたりから叫び声が聞こえてくる。セリーナとシャロンの迂回班だろう。


 馬車班と戦おうと街道に出てきた盗賊達を、エルナがエアバレットで次々と吹き飛ばしていく。暫く叫び声と怒号が飛び交うが、それも収まり大方片付いたようだ。


 盗賊達が次々と街道に蹴り出されてきた。


「誰か怪我をした者はいるか!?」


 声を掛けるが怪我人はいないようだ。


「アラン様、一瞬でかたがつきましたね。活躍する暇もありませんでした」


 ダルシム隊長は残念そうに言うが怪我人がいない事で、ほっとしているようだ。


「アラン、私もそうだ。馬車を出るのが遅れて一人も倒していない」


 クレリアも同じく不満そうだ。


「よし、盗賊共を武装解除して一箇所に集めてくれ。あぁ、盗賊共の武器と持ち物、金品を回収するのを忘れるな!」


 シャロンとセリーナ達も街道に出てきたので、状況を聞くと問題なしとのことだった。迂回班は活躍できたようで、高揚した気分が伝わってくる。


「シャロン殿の指揮は素晴らしかった。絶妙の頃合いで賊にせまり合図がなる直前には、賊のすぐ近くに移動できていた」


「なんの! セリーナ殿のほうが素晴らしかったに違いない。なにせ我らは手を伸ばせば届くぐらいまで迫っていたのだからな」


 どうやら二人共、皆を上手く誘導出来たようだ。賊は馬車に夢中で背後をろくに気にしなかったに違いない。


 その頃には街道で待機していた別働隊も到着した。


 盗賊達は囲まれている人数に呆然としている。盗賊達を出来るだけ殺さないように言ってあったためか、盗賊達に歩けないような重傷者はいないようだ。別働隊が拘束具を使い、次々と盗賊達を拘束していった。


「ダルシム隊長、盗賊のアジトにいってみよう。ここから東に四キロほど行ったところだ。ここには二十名ほど盗賊達の見張りに残せばいいだろう。大勢で行く必要もないが、何か持ち出せるものがあるかもしれないからな」


「了解しました」


 ダルシム隊長は次々と命令を叫び、連れて行く者達と置いていく者達を決定した。活躍した迂回班の一班を残すようだ。


 山の中に入りアジトを目指した。一時間程度で盗賊達のアジトである洞窟の近くまできた。ドローンのマルチセンサーによる観察では、洞窟内の人間は全員男で自由に歩き回っており、盗賊でない人が囚われている可能性もない。手早く片付けてしまおう。


「あそこが盗賊のアジトだ。見張りが二人立っているな」


「… 確かにそのように見えますね。どうしますか?」


「相手はたった七人だ。このまま近づいていこう」


 見張りは俺達に気付くと中に駆け込んでいった。洞窟は行き止まりだ。盗賊達にもう逃げ場はない。

 そのまま無造作に近づき、全員で洞窟内に入っていく。もちろんマルチセンサーで盗賊達の居場所は分かっていて洞窟の最奥に集まっていた。


 一番奥に続く曲がり角で手を挙げて止まり、盗賊達に声を掛けた。


「おい! こっちは八十人だ。大人しく降伏しろ!」


「うるせぇ! ちょっとでも近づいてみろ! 弓矢で串刺しだぞ!」


 時間の無駄だな。さっきのエルナの真似をして洞窟全体をカバー出来るような大きさのエアバレットを洞窟の奥に向けて放った。これは狙いをつけなくていいので楽でいいな。


 ギャッ! という声と、もうもうと土埃が舞った。ああ、埃の事は考えてなかった。やがて土埃が収まり奥に進むと盗賊達は気絶しているか、呆然としている状態だった。それを見た皆は次々と盗賊達に飛びかかり、盗賊達は拘束されていった。


「金品を回収するのを忘れるな」


 洞窟の最奥には、いろいろな木箱が積み上げられていた。さて、何があることやら。


「ダルシム隊長、物を確認して運ぶものを選別してくれ」


「了解です」


 皆が次々と木箱を開けていく。


「隊長! 鍵付きの箱を発見しました!」


 ダルシム隊長と見に行くと確かに鍵付きの大きな箱だ。電磁ブレードナイフを抜くと金具を次々と切っていった。


「凄いっ!」


 中身はやはりギニーだ。いや、ギニーの他にも宝石の類やネックレス、ブレスレットなども少数ながら入っている。金貨も多く見えるし、これは当たりだな。

 これぞ盗賊狩りの醍醐味だ。


「これは凄い収穫ですね!」


「ああ、ここまで来た甲斐があったな。選別した物を手分けして運ぼう」


「了解です」


 ダルシム隊長は一つずつ木箱の中身を確認して指示していく。俺には価値がよく判らない物もあるから助かるな。


 結局、置いていった物は全体の一割も無かった。八十人で手分けして運び、再び街道に戻るのに、また一時間程掛かった。しかし、皆の顔は明るく足取りも軽い。やはり収穫があると違うな。


 回収した物を馬車に積み、盗賊を鎖で繋ぎ、再び出発する準備が完了した。


「よし! 昨日の野営場所まで移動しよう!」


「「おう!」」


 馬車を走らせて、かなりの距離を稼いた。ここまで離れれば大丈夫だろう。



(ディー・ワン、盗賊が使用していた洞窟を二度と使用できないように破壊しろ)


[了解しました]



「アラン、今…、何か聞こえませんでしたか?」


「いや、別に? 何も聞こえなかったけどな」


 エルナはとても耳がいいようだ。覚えておこう。



今日はまた!総合 日刊一位をとることが出来ました。


ブックマークと評価を入れてくださった方、有り難うございます!

ブックマーク件数は一万件を超えて怖くなってきましたw


なるべく更新を頑張っていきたいと考えております。

これからも宜しくお願いします!


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