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055. 晩餐会1

誤字、脱字、御指摘、感想などもらえると嬉しいです。



 風呂に入ってさっぱりした後に、仕方なく帝国軍の制服を着た。久しぶりに袖を通す制服は変な感じするな。前はこれが普通だったというのに。


 あと少しで約束の時間だ。迎えの馬車が来たらすぐ出れるようにと食堂で待ち合わせているので食堂に向かった。


「おや、まぁ! アランさん、その格好は!?」


 宿の女将のキラさんに物凄く驚かれた。


「このあと商業ギルドのサイラスさんという方のところに、お伺いするんでこんな格好をしているんですよ。サイラスさんは御存知ですか?」


「この街でサイラス様を知らない人間はいませんよ。しかし、まぁ立派な格好で、まるで貴族様みたいですよ」


「なけなしの一張羅ですよ。御茶をもらってもいいですか?」


「はい、少しお待ちください」


 キラさんに夕食は要らない旨を伝え、御茶を飲んで待っているとクレリア達が一階に降りてきた。


「リア! その格好は!?」


 クレリアの予想もしていなかった姿に驚愕した。


 クレリアの格好は、地球流行の一端で帝国で流行しているもので、たしかコスプレとかゴスロリとかいうファッションだったはずだ。帝国には今まで無かったファッションで流行はしていたが、まさかイーリスの乗組員で私物として持っていた者がいたとは。


「驚いた? 凄く格調の高いドレスでしょう? シャロンとセリーナが着ないというので貰ったのよ」


 シャロンとセリーナは、申し訳なさそうな微妙な顔をしている。恐らく彼女達の趣味ではなくイーリスの薦めるままの物を持ってきたのだろう。


 黒と白の大量のフリルで作られた服は、とても豪華でクレリアにとても似合っているが、どう見てもドレスには見えず、仮装しているように見えた。しかし、この惑星のファッションに詳しいクレリアがドレスと言い切っているのだから、この星ではドレスで通用するものなんだろう。


 シャロンとセリーナは、帝国デザインのフォーマルドレスのワンピースで、帝国では結婚式とかでは良く見かけるものだ。ビジネスで着るものではなく、祝い事などの少し華やかな場で着られているものだ。二人共同じデザインで、シャロンが深みのあるワインレッド、セリーナが濃いネイビーブルーだ。同じデザインにしているのは双子という設定を意識したコンセプトだと思う。まだ若い二人が着ると大人ぶって背伸びをしているようでとても可愛らしい。


 エルナも、帝国デザインのワンピースで、フォーマルドレスではないが、フォーマル寄りのデザインだと思う。ダークグリーンで、これまたエルナに似合っていたが、腰には細い革ベルトをしていて、電磁ブレードナイフを吊っていた。さすがに剣は置いてきたのだろうが、帝国デザインの女性服でコンバットナイフを吊るしていると物凄い違和感がある。


 皆、ドレスアップしているのだし、何か一言ぐらい言っておかなくてはいけないな。


「みんな、凄く良く似合っているよ。とても綺麗だ」


「そ、そうか。まぁ、エルナもシャロンとセリーナも異国風な意匠で悪くない」


「アランさん、お客様ですよ」とキラさん。後ろには、よそ行きの服を着たカリナさんが見えた。


「皆様、お迎えに…」


 そう言ったまま、こちらを見て固まっている。やっぱり帝国デザインのものは不味かったか?


「失礼しました。お迎えにまいりました。準備が宜しければ馬車にどうぞ」とカリナさん。


「有り難うございます。では、皆、行こうか」


 迎えの馬車は、さすが富豪と呼ばれる家の馬車だと思わせる立派なものだった。俺達の馬車よりも数段上だ。さっそく乗り込んで出発した。カリナさんは馬車の中でも俺達の服装をまじまじと見ている。


 五分程で、まさに大豪邸と呼ぶに相応しい大きな屋敷の前で馬車は止まった。


「皆様、どうぞこちらへ」


 カリナさんに案内されて、屋敷の中に入っていき、応接間のようなところに案内された。


「私は晩餐の支度を確認してまいります。御茶を入れさせますので、しばらくお待ち下さい」


 カリナさんは部屋を出ていって、入れ違いに執事のような人が来て御茶を入れ始めた。


「ほう、なかなかに格式ある部屋だな」


 ドレスを着て貴族モードになっているらしいクレリアは、エルナと一緒に部屋の調度品を見て廻っている。俺達、帝国組はソファーに座って大人しく御茶を頂いた。




「アリスタ様、アラン様御一行を応接室に御案内いたしました」


「御苦労様。晩餐の準備も滞りなく進んで…。 カリナ、何があったのです?」


「… アラン様御一行の服装についてなのですが」


「あぁ、カリナ、よいのですよ。晩餐会にしたとはいえ、あくまで冒険者の方々をお招きしたのです。晩餐会に相応しい服装をしていなくても無礼講として、こちらは何事もないように振る舞いましょう」


「いえ、違うのです。皆様は」


「なるほど言いたい事は分りました。私達やお父様が格調のある服装をしているので、皆さんが、自分達の格好を、恥と思うのではないかということですね? 当然の事だわ。何故気づかなかったのかしら! どうしましょう! お父様はともかく私は着替えたほうが」


「いえ! 違うのです! アラン様御一行は、王侯貴族もかくやという装いをしておられます。あれだけの衣装を用意するのにどれだけの財が必要になるのか想像も出来ないほどです。特にアラン様とリア様は、神々しいほどの出で立ちにございます」


「え?」


「異国風の意匠で風変わりではありますが、あれほどの衣装は、サイラス様でも、おいそれと用意できないものかと」


「……… お父様はまだ接客中ですか…。仕方ありません。いずれにせよ、いつまでもお待たせする訳にはいかないわ。晩餐室にお通しして」


「はい」




 しばらくして、執事のような人に案内されて、食事を頂くと思われる部屋に通された。大きな長方形のテーブルのある部屋で、テーブルには三十人ぐらいが席につけそうだ。壁際に給仕係と思われる男女がずらりと並んでいる。


 すぐにアリスタさん、カリナさん、ナタリーさんが部屋に入ってきた。


 アリスタさんは俺達の格好を見て目を見開いて一瞬固まる。やっぱり、この服装は不味かったんじゃないだろうか。


「本日はお招きくださり、ありがとうございます」


 一応、リーダーとして俺が挨拶するべきだろう。


「いえ、ようこそおいでくださいました。急なお招きにもかかわらず、お付き合い頂き感謝しています。実は父に、先程、急な来客がありまして、ただ今、接客中なのです。お招きしておきながらの、この不手際、申し訳ありません」


「全然構いませんよ。予期せぬ事は誰にでもありますからね」


「いつまで掛かるか分かりませんから、始めてしまいましょう」


 給仕係の人達に椅子を引かれて席についたところで、サイラスさんが部屋に入ってきた。やはり俺達の格好を見てギョッとしている。


「おいおい、お前ら、凄い格好をしているな」


 何も言ってくれないより、こうやってハッキリ言ってもらったほうが気分的にはいいな。サイラスさんは随分とストレートな人のようだ。


「晩餐会と聞いて、なけなしの一張羅を着てまいりました」


「…… そうか、遅れてすまないな。急な客が来たものでな」


「お父様、何か問題でも?」


「いや、ジェネラル・オークが久しぶりに討伐されてな。ケヴィンの奴が、商業ギルドで買わないかと来たのだ。かなりふっかけてきやがった」


 おぉ! それは多分、俺達が持って帰ってきたものだな。ケヴィンさん、やるじゃないか。高く買ってくれれば、その分、俺達への報酬も上がるかもしれない。


「まぁ! 良かったではないですか。たしか王族関係の方より御注文頂いていたはずでは?」とアリスタ。


「ケヴィンの奴はそれを知っていて、ふっかけてきてるんだよ。忌々しい。現物を見たが、確かに見事な首だった。 … アラン、随分と楽しそうだが、なにか面白い事でもあるのか?」


 ヤバイ! 報酬の事を考えてニヤけていたらしい。下手に言い訳するより、ここは正直に言ってしまうか。


「いえ、そのジェネラル・オークは、多分俺達が狩ってきたものだと思いますので、価格が上がることは単純に嬉しいなと思いまして」


「なんだと!? お前達がジェネラル・オークを討伐したというのか?」


「はい。あぁ、でもサイラスさんが見たという首が、俺達が狩ってきたものかどうかは分かりません。しかし昨日、オークの首をギルドに引き渡したのは事実ですね」


「ジェネラル・オークがそんなにいくつも討伐されてたまるか。間違いなくお前達のものだろうな。しかし… 討伐はお前達だけで?」


「そうです。この五人です。なかなかデカい奴で、三メートル二十センチ以上はありましたよ」


「なっ!? そんなにデカかったのか!?」


「ええ、えらく醜悪な顔をしたやつでした。あぁ、ご覧になったのですよね」


「しかし、よく狩れたな。普通ジェネラル・オークは単体では動かず、集落からあまり出ないもんだ」


「そうですね、集落にいました」


「ん? 集落にいて、どうやって狩ったんだ? 他のオークはいなかったのか?」


「え? 居ましたよ?」


「襲ってきただろう?」


「襲ってきましたね」


「…… つまり、何十体というオークを倒しながら、ジェネラル・オークを倒したと言っているのか?」


「そうですね。どちらかというとオークを狩りに行ったらジェネラル・オークが居て、ついでに狩ったという感じでしょうか」


「ついで…… ちなみにオークは何体いたんだ?」


「七十四匹でした」


「おいおい! 騎士団で相手する数だぞ!」


「俺達は、オークとは相性が良いんですよ。全員魔法が使えますからね。コソコソと隠れながら、魔法で一体づつ倒していくんです。いつバレて大騒ぎになるか分からないので、結構ドキドキしますよ」


「そりゃ、確かにドキドキもんだろうな! いやはや、大した度胸だぜ! そんな馬鹿なことをやる奴らがいるとは思わなかったな」


「お父様、お話が弾んでいるところ申し訳ありませんが、そろそろ晩餐を始めたいのですが…」


「ああ、そうだったな。早速、始めよう。アラン、お前、気に入ったぜ! とっておきの酒を出してやる。遠慮せずにジャンジャン飲めよ」


「それは有り難うございます。では遠慮なく頂きましょう」


「はぁー…、やっぱりこうなってしまったわ」



 晩餐に出された料理は、コース料理のようで前菜から始まり、次々と見事な料理が出されていった。初めての本格的な食事でテーブルマナーが気になったが、クレリア達を見る限り帝国のものと大差なかったので安心した。まぁ、ナイフとフォークで食べるのにそんなに違いは出ないだろうな。


 サイラスさんのいうとっておきの酒というのは、通常のワインよりもアルコール度数の高いワインの事だった。恐らくアルコール度数は20度前後はあるだろう。


 多分、通常のワインに、ワインを蒸留したアルコール分を混ぜて作ったものだろうな。発酵させただけのワインではここまでアルコール度数は高くならないはずだ。空きっ腹に久しぶりに強い酒を飲んで、まだ序盤というのに結構良い感じになってしまった。


「しかし、これは美味い酒ですね。この国にきてこんな酒を飲んだのは初めてですよ」


 実際にはそれほど美味い訳では無かったが、とっておきの酒と言っていたのでリップサービスだ。


「そりゃそうだ、そこらの酒場にあるわけねぇよ。はるかゲイツ王国から取り寄せたものだからな。値段だって目が飛び出るぐらい高いんだぜ」


「そうだったんですね。すいません、遠慮せずに結構飲んじゃいました」


「いいんだよ、俺が飲めっていったんだから。それに俺もたまには飲まなきゃやってられねぇしな。しかし、お前も結構イケる口だな」


「普段は、そんなに飲まないんですが酒は好きですよ。ところで、この国では、こういう、えーと、酔う成分を高めた酒は作って無いんですか?」


「酔う成分を高めた酒?」


「あぁ、この酒みたいにワインに酔う成分を混ぜて作った酒ですよ」


「……… アラン、お前、この酒どうやって作ったか知ってんのか?」


「この酒がどうやって作ってるかは、知りませんけど、こういう酒の大体の作り方は分りますよ」


 ガタンッと音がしてサイラスさんが立ち上がった。アリスタさん達も驚愕の表情だ。


「え? どうしたんですか?」


「アラン、さっき言ったゲイツ王国はな、この酒の作り方を門外不出にしてるんだ。噂じゃ酒職人を監禁するみたいにして作ってるらしい。そんな酒の作り方をお前は知ってるってのか?」


「知ってますね。詳しくは言えませんが、俺の故郷の国じゃ当たり前に作ってましたよ」


 作っていたのは、もっと本格的な蒸留酒だけどな。


「なんだと!? 俺が知る限りじゃ、この酒を作ってるのはゲイツ王国だけなんだがな……… アラン、お前、試しに酒を作ってみないか?」


「… 面白そうです。試してみてもいいですね。でも、本業は冒険者なので、それを疎かにしない範囲でよければって感じですが」


「そうか! よし、費用は全部、俺が出してやる。仮に作り方を確立した暁には、そうだな、五十万ギニーをやろう」


 五十万ギニーは大金だ。しかし、製法が知られていないのであれば成功したら、それどころじゃ無い儲けが出るはずだ。五十万どころか何百万も出しても、直ぐに回収出来るはずだろう。


 本来なら酒が作れるようになり、販売を始めたら、その売上の何割かを貰うような感じにするべきだろうが、そんな事に関わっている暇はない。


「二百万ギニーでどうでしょう」


「なに!? いくらなんでもとりすぎだ! 七十五万」


「この酒よりも美味い酒の作り方を知ってるんですけどね。百五十万ギニー」


 多分、イーリスに任せれば、これ以上の酒も作れるはずだ。


「なに!? これよりも美味い酒が作れるってか… よし、分かった! 百五十万ギニーだ」


「あとは、鍛冶屋とかの協力も必要なので紹介してください」


「… いいだろう。それにしても酒を作るのに鍛冶屋が必要なのか? いや、いい。商業ギルドお抱えの腕のいい鍛冶屋がいる。今度紹介しよう」


「よろしくお願いします」


 サイラスさんとは宴会のノリで話しているが、晩餐会は粛々と続いていた。続いて出された料理は、肉料理だった。


「これは!?」とサイラス。


「料理長が、本日市場で仕入れたものです。とても珍しい魔物のお肉で、確かブルーサーペントというらしいですよ」とアリスタ。


「確かにブルーサーペントの肉のようだが、それにしては肉がデカいな」


「それでしたら、これは多分、ビッグブルーサーペントですね」


「なに!? 上位種だと?」


「恐らく自分達が今日の午前中に狩ってきたものだと思います。すごい偶然ですね。まさか、ここで食べられるとは思ってもいませんでした」


「午前中に、か。狩ろうと思って狩れる魔物じゃないんだけどな」


「そうですね、見つけたのは本当に偶然ですね。グレイハウンドに絡まれていたのを見つけて、ついでに狩った感じです。これも結構デカかったですよ。十メートル近くはありました」


「なに!? 革はどうしたんだ?」


「さぁ? ギルドに任せてますから」


「そりゃそうだな。しょうがねぇ、明日見に行ってくるか」


「やはり貴重なんですか?」


「ああ、そうだな。それだけデカいのはめったにみつからねぇ。バッグにすればそりゃいい値で売れるんだよ」


「なるほど」


 早速、ビッグブルーサーペントのステーキを頂いてみた。味付はシンプルに塩、胡椒、ハーブだけのようだ。クセはなく蛇の肉のくせに脂がのっていてジューシーで、口の中でとろけるようだ。食材が上等な場合、あまり複雑な味付は必要ない。この味付けが一番かもしれないな。ここの料理人は、なかなか優秀なようだ。


「これは美味いですね!」


 パーティーの皆も十分に堪能しているようだ。


「あぁ、美味いな。俺も食ったのは五年ぶりぐらいだが、やっぱり上位種だからか、この肉のほうが美味く感じるな。今日は他には何を狩ったんだ?」


「他にはグレイハウンドだけです」


「そうか、何頭ぐらい?」


「えーと、六十頭です」


「六十! … それを午前中だけでか?」


「そうですね」


「本当に大したもんだ。それでCランクっていうのは信じられんな」


「あぁ、今日、全員Bランクにしてもらいました」


「… まぁ、当然だな。ケヴィンの奴もちゃんと仕事をしてるってことか」


 肉料理も終わり、最後はデザートのようだ。粉砂糖をまぶした柔らかくしっとりとしたクッキーのようなもので、クッキーの上には、ドライフルーツを酒に漬けたようなものが載っていて、とても美味しい。御茶も出されたが、サイラスさんと俺はまだ酒を飲んでいた。


 コース料理もこれで終わりのようだ。


「実に素晴らしい料理の数々で、久しぶりに堪能しました」


 パーティーの皆も口々に美味しかったと感想を述べた。


「アランさんのような食通に満足して頂けるか心配だったんですけど、喜んで頂けたようでとても嬉しいです」とアリスタ。


「満足しましたとも! 一品一品が丁寧に、繊細に作られており、料理人のセンスが窺える料理でした」


「有り難うございます。料理人に伝えておきますわ」



「さて、飯も食い終わったし、ようやく本題だ。先日も話したがアリスタ達を助けてくれた礼の話だ」


 いよいよ本題か。勿論、今日がただの晩餐会ではなく、この話になるのは分かっていた。さて、どんな話になることやら。




晩餐会は長くなってしまったので、二つに分けました。

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