054. グレイハウンド狩り
誤字、脱字、御指摘、感想などもらえると嬉しいです。
--- 一日前 ---
「只今、戻りました。サイラス様」
「カリナか、あの冒険者達は、宿に落ち着いたか?」
「はい、アラン様一行は[春風]に宿を取りました」
「ほう、なかなか裕福な冒険者達だな」
「はい、風呂付きというのが、どうしても外せない条件のようで」
「そうか、綺麗好きというのは良い資質だ。俺は中年になってから気づいたがな。すぐにアリスタが風呂から上がる。そうしたら報告を聞こう」
「分りました」
「お父様、お待たせしました」
「ナタリーも一緒か。では報告を聞こうか」
カリナはザンザノから盗賊のアジトに攫われるまでの一連の話を簡潔に語った。
「なるほどな。もう分かっているだろうからこれ以上は言わぬ。高いツケを払ったな」
「はい、私もナタリーも生涯忘れることはないでしょう。アジトに攫われてから一時間程たった頃、突然アジトにいた盗賊達が全員、叫び声をあげ、転げ回り始めました。アラン様、エルナさんの魔法を同時に受けたようでした」
「何? 盗賊は七人いたのだろう? どんな魔法でそんな事に?」
「分かりません。恐らく火魔法だと思います。盗賊達は全員右肩に焼け焦げた痕がありました」
「火魔法で? 七人同時に? … なるほど、右肩をやるのは戦闘能力を奪うためだろう。それからは?」
「エルナさんに洞窟から連れ出されて、皆様に介抱されました。程なくしてアラン様が洞窟から戻られ、治癒魔法を私とナタリーに掛けて下さいました」
「なに!? あの男は治癒魔法が使えるのか?」
「はい、しかも尋常ではない行使速度でした。二人共、十秒ほどで体全体を回復する魔法を掛けられました」
「にわかには信じられんな。アリスタ、どうなのだ?」
「その話に間違いありません」
「…そうか、まぁ話を進めよう」
「盗賊をどうするかという話になり、アリスタ様がアラン様より、私達のために買い上げるという話になりました」
「そうか…。では、名誉は回復出来たのだな?」
「はい、存分に。アラン様のおかげです。その後、街道に戻りアラン様が冒険者の遺体を埋葬するために土魔法で、見たこともない大きな穴を作り出しました」
「土魔法!? そんなことが出来るのか?」
「はい、これも間違いありません。アラン様は冒険者の遺品を回収すると冒険者達を懇ろに埋葬なされました」
「ふむ、死者に対する敬意を知っている者は、いまどき珍しいな。なかなか出来た奴だ」
「その直後、グレイハウンドの群れに襲われまして、アラン様のパーティーが撃退しました」
「ほう、何頭ぐらいいたのだ?」
「十頭です」
「なに! 大丈夫だったのか!?」
「はい、アラン様が手を下すまでもなくパーティーメンバーだけで撃退しました。あのパーティーメンバーは全員魔術師クラスです」
「… 信じられん… どの娘もただの美しい小娘にしか見えなかったぞ!? あれらが全員、魔術師クラスだというのか?」
「間違いありません。その後、野営場所に移動し、土魔法で宿泊所を作って頂きました」
「…… 土魔法で宿泊所とは?」
「土魔法で小屋を作って頂いたのです。それもかなり強固なものでした」
「小屋!? そんな事が出来るのか?」
「私もこの目で見なければ、信じられなかったでしょうが事実です。そして……、あの御食事を頂きました」
「あの御食事?」
「あぁ、カリナ、やめて! 思い出すと胸が締めつけられるようだわ」
「何が起きたのだ!」
「アラン様の手料理が振る舞われたのです。あぁ、あれほどの美味しいものが、この世にあったなんて」
「… そんなに美味かったのか?」
「はい、お父様。あんな美味しいものは初めて食べました」
「なんだか、お前達は化かされているのではないかと思い始めているんだが…」
「あぁ、そうだったらどんなに良かったことか…」
「…… まぁ、いいだろう。それで?」
「見張りはしなくて良いとのことだったので休ませて頂きました。しかし、翌朝、信じがたいものを見ました」
「何を見た!?」
「アラン様が、夜の間にオークがきたので撃退し、その魔石の回収を手伝ってくれというので、お手伝いしにいったのですが、十五体ものオークの死体があったのです」
「十五体だと!? …… 恐らくパーティー全体でなんとか始末したのだろう?」
「いえ、パーティーメンバーはオークの死体の場所さえ知りませんでした」
「つまり、あのアランという冒険者が一人でオークを十五匹も倒したと言っているのか?」
「はい、しかもオークは全て眉間の同じ場所を寸分違わず撃ち抜かれていました。パーティーメンバーはそれを見て驚くこともなく当然のように魔石を取り始めました」
「うーむ、確かにそれは信じがたい話だな」
「その後、野営地を出発し途中ではゴブリン十五匹、グレイハウンド五頭を討伐しております」
「で、ガンツに至る、か。ふむ、ただの冒険者ではないということだな」
「お父様、パーティーメンバーのリアさんとエルナさんは貴族です。姿勢や仕草で判ります。特にリアさんは上級貴族の一員なのは間違いないと思います」
「なんだと!? 貴族!? それも上級貴族だと!? 信じられん。 …… しかし、貴族の教育係に教育を受け、完璧だと言われたお前がいうならば、間違いないか…。しかし、貴族か… 貴族の娘がCランクの冒険者で、魔術師クラスだというのか?」
「お父様、私、実はアランさん達に報酬は期待していい、なんて言ってしまったのです」
「まぁ、お前達の命を救ったんだ。報酬は弾むのは当然だから問題ない。どうするかな。金か、モノか。そうだ、質のいい魔法剣が入荷していたな。あいつら、みんな剣を下げていたから魔法剣をくれてやろうか」
「サイラス様、シャイニングスターの皆さんは皆、魔法剣を持っています」
「なに!? 全員、魔剣持ちだと!? 信じられん」
「間違いありません。オークの魔石を採る際に、全員、剣を光らせていましたから。特にリアさんの剣は、恐らくミスリル、国宝級といってもいいような逸品に見えました」
「ううむ、なんて金持ちの冒険者だ」
「そうですね、馬車も出来合いのものではなく特別に誂えたものでしたし、馬も軍馬のような馬を使っていました。火の魔道具や、見たこともない温風の出る魔道具も三つも持っていましたね」
「あぁ、あの温風の出る魔道具は素晴らしかったわ。どのようにして手に入れたのかしら」とアリスタ。
「これは困ったな。金にも困っていないようだし、モノも何をやればいいのか分からん。これは一度、飯にでも誘って、本人達に直接望むものを聞くのが一番だな」
「… お父様、御食事に誘うのは良いと思いますが、どのようにお誘いするおつもりですか?」
「えっ? 普通に飯と酒を用意して飲み食いすればいいだろ?」
「それはいけません! 身分は判りませんが、仮にも貴族と思われる方を二人も御招待するのです。それでは我家の常識、品格が疑われます。そうですね、内輪だけの晩餐会というのはどうでしょう? カリナ、どう思いますか?」
「大変宜しいかと」
「そう。では早速準備に取り掛かりましょう。お父様、よろしいですね?」
「…… うむ、任せる」
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ギルド長ケヴィンは、ギルドを去っていくシャイニングスターのメンバーの後ろ姿を見送っていた。
「おい、シャイニングスターに関する情報を至急集めろ。初登録の年月日、今までの依頼の履歴など全てだ。まったく、あんな実力者がなんで無名でCランクなんてやってるんだ? あと、ジェネラル・オークの取引記録も忘れるなよ」
一時間後、ギルド長の執務室のドアがノックされた。
「シャイニングスターの記録を持ってきました」
「おぉ、早かったな。どれどれ…… まだ登録して二ヶ月も経っていないだと!? 依頼も指名依頼の一回だけ? …… なるほど、全員が評価試験でいきなりCランクか。当然、Cランク以上の実力はあるということだな。……… ではシャイニングスターのメンバーは全員、Bランクに昇格だ」
「よろしいのですか?」
「あぁ、オークの集落を全滅させるほどの実力のパーティーだ。何の問題もない。昇格することに意欲的な感じもあったし、ここで少しでも恩を売っておきたい」
「分かりました。手続きしておきます」
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今日も夜明けと共に起きて、いつもどおりの朝だ。ディー・ワンによって更新された魔物分布図を確認する。
ふむ、オークの集落らしきものはあるが、距離が遠く二十キロ以上ある。これは今日は厳しいかな。
食堂に降りていくと珍しく皆が揃っていた。
「おはよう、みんな今日は早いな」
「今日は晩餐に招待されているでしょう? 早く帰ってきたいから早めに行動しなきゃ」とクレリア。
「けっこう気合い入っているんだな」
「何を言っているの、アラン。女は支度に時間が掛かるのよ。遅くても昼過ぎには戻ってこなきゃ」
「そんなものか。じゃ、なおさら遠出は出来ないな。近場だとゴブリンの集落っぽいのか、グレイハウンドの群れって感じかな」
「ゴブリンはちょっと…」
ゴブリンの魔石の買取価格は三十ギニー、討伐報奨金は十ギニーだ。好んで狩る獲物じゃない。
「俺も嫌だな。じゃ、グレイハウンド狩りで決定だ。南東の方角へ十キロぐらいだな。今日も馬を借りていこうか」
朝食後、時間が勿体無いのでギルドには寄らずに、貸馬屋で昨日と同じ馬を借りてガンツから出発した。
途中、ゴブリンが十匹ほど現れたが馬上から魔法で倒し、魔石は回収せずにそのまま進んだ。ゴブリンの魔石十個でもグレイハウンドの魔石一個と等価だ。だったら時間を優先したほうがいい。
そろそろだな。少し開けた場所があったので馬を止めた。
「まずは、ここで戦おう。近くにいた群れはもう気づいたようだ。既にこちらに向かっているぞ。タースとシラーは兎も角、借りた馬は、グレイハウンドを見て暴れるかもしれないから、馬から降りて戦うぞ」
「「了解」」
ハンドサインでグレイハウンドの情報を伝える。この状況ではハンドサインを使う必要もないのだが、慣れていたほうがいいだろう。まずは二十二頭だ。
向かってくる方向から距離をとり、なるべく広く攻撃出来る空間を確保する。馬を繋ぎ、それを囲み守るように陣取った。俺は皆のサポートに徹するとするか。
まずは五頭が飛び出してきた。距離は三十メートル。現れた瞬間に一頭を超高速フレイムアローで仕留めた。残りはクレリアが二頭、セリーナ、シャロンが一頭づつ仕留めた。
次は十頭だ。これも俺が五頭を先に仕留め、近かったシャロンが二頭、クレリア、セリーナ、エルナが一頭づつ仕留めた。
最後は七頭だ。シャロン、クレリア、セリーナが二頭づつ、エルナが一頭を仕留めた。
足並みを揃えて一度に二十二頭が出てきたら、かなり脅威度は増すのにな。やはり、グレイハウンドは頭が良くない。
「ふぅ、やはりオークよりグレイハウンドのほうがスピードがあって緊張しますね」
「確かに。それに私のウインドカッターは急には曲がらないのでグレイハウンドには不向きですね」
エルナは、仕留めたのが少ないのを気にしているようだ。
「エルナも火魔法を覚えればいいのに」
「えっ? … 私に出来るでしょうか?」
「出来るでしょう? アランなんてすぐに覚えてしまうのだから」
「アランみたいな非常識な存在と一緒にされても…」
酷い言われようだ。
「よし、魔石を回収して次に向かうぞ。討伐部位は右の足? というか右の手のひら部分だな」
皆に二枚づつの麻袋を渡して、魔石と足の回収をしてもらい十分ぐらいで全てを回収した。
「次はここから東に十五分ぐらいのところだ」
次の群れは十七頭。これも同様にして問題なく倒して魔石と討伐部位を回収した。
「お、次の群れは、わざわざ帰り道の方角に移動してくれたようだな。では、出発しよう」
三十分程で群れの近くまで来ることが出来たが、魔力センサーの反応がおかしい。一つの反応を群れが取り囲むように移動している。グレイハウンドが何かを襲っているのかもしれない。
百メートルまで近づいてもグレイハウンドは、こちらに気づいた様子もなく何かを取り囲んでいた。
「なにか反応がおかしいんだ。ここに馬を繋いで近づいてみよう」
皆で、注意深く近づいていくと、二十頭ぐらいのグレイハウンドが大きな青い蛇を取り囲んでいた。蛇の長さは恐らく十メートル近くあるだろう。蛇が頭をもたげている高さは二メートル近く、色は輝くような鮮やかな青だ。
囲んでいるグレイハウンドのうち、戦いに参加しているのは五頭もいない。後ろに回り込み蛇のしっぽに噛み付こうとしているが、蛇も負けじと噛み付こうとしている。まさに一進一退という感じでいい勝負だ。残りのグレイハウンドは遠巻きに戦いを見ているだけだった。
あの蛇は魔物全集に載っているブルーサーペントだろう。確か、かなりレアな魔物で革と肉が高価買取だったはずだ。
グレイハウンドが蛇に気を取られているうちにやってしまおう。
ハンドサインでグレイハウンドを標的に指示する。指でカウントダウンし一斉攻撃だ。
俺の超高速フレイムアローでまずは十頭、シャロン、セリーナ、クレリアが三頭づつ。エルナが二頭を片付けた。
ブルーサーペントは状況が分からず、戸惑っていたところを、革に傷をつけないように加減したフレイムアローで両目を撃ち抜いて仕留めた。恐らくは致命傷だろうに、まだグネグネと動いている。
「しかし、デカい蛇だな。ブルーサーペントだろ? これ」
「私も実物は見たことはないですけど、聞いてた話だともっと小さいはずなんですけど…」とエルナ。
「魔物全集によると革と肉が高く売れるらしいけど、持って帰れるかな? これ。胴体があんまり太くないから馬なら行けそうな気がするけど」
「そうですね。左右に二頭の馬で二メートル間隔ぐらいに交互にロープを張って左右からひっぱりながら運ぶ感じでしょうか」
「そんな感じでやってみようか。とりあえず、グレイハウンドの魔石の回収だな。ブルーサーペントは、まだ動いてるから近づかないように」
グレイハウンドの魔石と討伐部位を回収し終わる頃には、ブルーサーペントはすっかり息絶えていた。
先程、エルナが言っていたような感じで左右から二頭の馬で引っ張りながら運ぶようにしてみると、いけそうなので行けるところまでいってみることにした。ちなみにロープは鞍に縛り付けているので、持つ必要はなく、大変なのは馬だけだ。
四人の運搬係は不自由になるので、俺がフリーになり警護役を務めることにする。
「とりあえず、出発しよう」
途中、ゴブリン十匹に出会っただけで、なんとかガンツに到着した。丁度、十二時ぐらいだ。大体予定通りだな。
「おい! お前ら、なんだ!? これは?」
ギルド証を見せながら守備兵に説明する。皆は馬上からギルド証を提示している。
「ブルーサーペントです。勿論、死んでいますよ」
「これが!? うーむ…。よし、通ってよし」
街中に入るとたちまち注目を浴びることになった。ただでさえ青くキラキラ光っているのに十メートル近い蛇だ。注目しないほうがおかしい。俺だって見かけたら注目するだろう。
ギルドの駐車スペースに馬を止める頃には人だかりになっていた。昨日と同じく見張りのジルに大銅貨五枚を渡す。
「有難うごぜえます。アラン様」
ブルーサーペントからロープを外し試しに五人で持ってみるとクレリアはヨロヨロしている。駄目だこりゃ。
「ジル、二人程、手を貸してくれないか?」
言いながら片手で銀貨を弾く。ジルが慣れた手つきで銀貨を空中でパシッと受け取った。
「へい」
ジルが目配せすると男二人が持ち手に加わった。クレリアは尻尾が地面につかないように持っているだけだった。
昨日と同じ査定する受付にいくと、昨日と同じ係員がいた。
「おい… いったいこれは!? ちょっ、ちょっと人を呼んでくるから待っててくれ!」
またギルド奥に走っていってしまった。
「とりあえず、台の上に載せよう」
幸い台は大きく横に長いので折り曲げてなんとか載りきった。
「助かったよ。もう戻っていいぞ」
男二人は頷き、ギルドから出ていった。
しばらくして、五人ぐらいの男達が走ってきた。ギルド長、ケヴィンもいる。
「これは!? ブルーサーペントじゃなくて、上位種のビッグブルーサーペントだな。しかし、革に傷一つないとは…」
「革を傷つけないほうがいいと思って魔石も取らないでおきました」
「ああ、それで正解だ。これなら剥製にしてもいいな。いずれにせよ、解体するのは職人に任せたほうがいい」
「ところで、上位種というのは?」
「種族としては同じだが、なんらかのきっかけでより上位の存在に進化したような魔物だ。こんなデカいのを最後に見たのは十年以上は前になるぞ」とケヴィン。
「幾らぐらいになるんですか?」
「うーむ、ブルーサーペント自体、非常に珍しい魔物だからな。当然、肉と魔石は競売に掛けられて明日には金額が出るが、革のほうは少し時間が掛かるな。これほどのものとなればオークション扱いになるかもしれん」
「なるほど。それで結構です。別に急いてはいませんから。では、こちらの査定をお願いいたします」
肩掛けのバッグから、グレイハウンドの魔石と討伐部位の入った袋を台の上に載せた。
「グレイハウンドの魔石と部位です」
俺がそう言うと、ケヴィンは、ほっとしたような顔になった。ケヴィンが係員に目配せすると係員が袋を開ける。
係員は驚いた顔になると無言でケヴィンに袋の中身を見せた。
「これは …… これは幾つぐらいあるんだ?」
「六十個のはずです」
「これも君達だけで?」
「そうです」
「…… 確かに。六十頭分、あります」
別の係員が、鍵付きの箱を開けると硬貨を取り出した。
「魔石の価格が三百ギニー、討伐報奨金が五十ギニー、それが六十頭分で 二万一千ギニーになります」
「確かに。では、私達はこれで」
「ちょっと待ってくれ。君達に伝えたいことがある。冒険者ギルドは君達シャイニングスターの功績と実力を評価し、メンバー全員をBランクに昇格することにした」
「ええ!? 本当ですか?」
みんな笑顔で喜んでいる。クレリアは今にも飛び上がりそうだ。しかし予想以上に早かったな。
「本当だとも。ギルド証を更新するから貸してくれないか」
「分かりました」
みんなも慌ててポケットからギルド証をひっぱり出して係員に渡している。俺が渡した際に、係員がチラリと裏を見て固まった。
「Aランク…」
「なに!?」
ケヴィンが係員からギルド証を奪い取った。
「… アラン、君は魔術ギルドのAランクだったのか」
「ええ、そうですね。… なんか不味かったですか?」
「… いや、別になにも悪いことはないよ。少し驚いただけだ。じゃあ、更新が終わったら係員が持ってくるから、ギルド内に居てくれ」
「了解です」
ケヴィンと余分なギルド員はギルドの奥に去っていった。
「アラン! 私達、今日からBランクよ!」とクレリア。
「あぁ、良かったな。しかし、俺の予想以上に早かったな」
「まぁ、自慢ではなく、実力からすれば当然と言えるかもしれません」とエルナ。
「この分なら、意外と早くAランクになれるかもしれませんね」とシャロン。
「やっぱり、ジェネラル・オークを譲ったのが良かったのでしょうか?」とセリーナ。
「どうだろうな。そんな簡単な話じゃないとは思うけど…。とりあえず一歩前進だな」
「そうね! 本当は祝杯でも挙げたいところだけど、今日が晩餐会なのが残念ね」とクレリア。
「丁度いいじゃないか。きっと御馳走が沢山出るぞ。大いに飲み食いしてこようぜ」
「アラン、晩餐会なのよ。宴会のような訳にはいかないわ」とクレリア。
「そうなのか? 同じようなものだろう?」
「はぁー…。エルナ、一度アランにちゃんと教えなくてはならないわね」とクレリア。
「そうですね。リア様」
ギルド内で三十分ぐらい待っていると、係員がきて更新されたギルド証を渡してくれた。これで晴れてBランク冒険者だ。
「アラン、もう時間があまりないわ。お昼は昨日食べた屋台で済ませましょう?」とクレリア。
「そうか? まぁ、皆がいいならそれでいいけど」
今は十三時くらいだ。ちゃんとした昼食をとると夕食に差し支えるかもしれない。確かに御馳走が出ると分かっているのだから、お腹をすかせていったほうがいいだろうな。
ギルドを出て、馬の見張りのジルの元に向かった。
「度々、待たせて悪いな。ジル」
と言いながら銀貨を弾く。ジルはまた銀貨を器用に受け取った。片目でよく受け取れるものだ。
「いえ、有難うごぜえます。アラン様」
昨日行った屋台にいって串焼きを頼む。
「おやっさん、五本頼む」
「にいさん、毎度! 五十ギニーだぜ!」
やっぱりこの串焼きは美味い。味付けもそうだが、肉の旨味が半端ない。カエルがこんなにも美味いなんてな。
貸馬屋に馬を返し、宿に戻った。これからクレリア達はセリーナ達の部屋に集まって一緒に晩餐会の準備をするらしい。準備が必要とは女の子は大変だな。俺は女でなくて良かった。
「アランはあの服を着るの?」とクレリア。
「あの服って?」
「あの黒い服よ。銀糸と金糸と使った。制服?」
「え? 制服なんて着ていかないよ? この服でいいだろ?」
「アラン! 何を言っているの? 晩餐会なのよ? そんな服でいいわけないじゃない」
「そうですよ、アラン。相手は、ただの平民とはいえ仮にもこの国で一番の富豪と言われている方です。失礼というか、無礼ととられても仕方ないことですよ」とエルナ。
「ええ!? いや、そんな事はないだろう? あの冒険者っぽいオヤジだぞ? 多分、ただの宴会、良くて品のいい食事会みたいな感じだと思うけど?」
「そんなことはないわ、カリナさんは晩餐会と言ったもの。
カリナさんや、アリスタさんとは馬車の中で色々とお喋りしたけど、言葉を正しく使う方々だったわ。
カリナさんが晩餐会と言ったのだから間違いなく晩餐会のはずよ。
ただ …、直前の前日に、それも先触れも招待状も無く招待される晩餐会というのは、私も初めてだけれども…」
「リア様、平民にそこまで期待するのは酷というものです。それくらいの事は目を瞑るのが貴族の嗜みというものですよ」
「…… クレリア達はどうするんだ? よそ行きの服なんて持っていないだろ?」
「セリーナとシャロンに貰った服を着ていくわ。あれは変わった意匠だけど凄く良いものよ。こんな機会じゃないと着ることがないから、ちょうどいいわ」
帝国の服を着ていくつもりか…。どんなデザインか知らないけど大丈夫なのか?
「うーん…、分かった。じゃあ、制服を着ていくことにするよ」
とりあえず、風呂に入って俺も晩餐会の準備をするか。
通貨の価値ですが、下記ぐらいの価値と考えて貰えると嬉しいです。
銅貨 一ギニー 百円
大銅貨 十ギニー 千円
銀貨 百ギニー 一万円
大銀貨 千ギニー 十万円
金貨 一万ギニー 百万円
大金貨 十万ギニー 一千万円
白金貨 百万ギニー 一億円




