052. 城塞都市ガンツ
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アラームで目が覚めた。仮想ウィンドウで状況を確認する。くそ! オークか。まだ暗いじゃないか、豚のくせにどうなってるんだ!
放って置く訳にもいかないので、明かりの魔道具とライフルを片手に小屋を出た。まだ、距離は二百メートル以上離れているが、こちらに向かってくる。全部で十五頭だ。ん? 数え方は頭なのか? まぁ、いいか。
野営地の近くに死体があるのも気持ち悪いので迎えに行くか。野営地から百メートルのところに明かりの魔道具を置いて迎え撃つ。オーク達は、こちらを見つけたようで全員がこちらに向かって走り始めていた。
しかし、オークの動きは速くはない。人間と同じか、それより遅いぐらいだ。
夜の明け始めで、まだ暗いがナノムに強化された目にはハッキリと視認できており、既にロックオン済だ。残り二十メートルぐらいの距離を切った時、超高速バージョンのフレイムアローを一斉に放ち、十五頭の全てが崩れ落ちた。
魔石を採るのは面倒だな。朝になったら皆に手伝って貰おう。急ぐ意味もない。
あぁ、中途半端な時間だな。もう薄っすらと明るくなってきた。しょうがないから朝食でも作るか。
昨日炊いた米が残っている。密閉出来る容器に入れてあるので、問題ないはずだ。軽く蒸せば美味しく頂けるだろう。それにサーモンの塩焼きも余っている。ここはサーモン塩焼きを具にしたオニギリを作ろう。あとは、カツオ出汁のキノコのお吸い物でも作るか。どうせやることも無いしな。
夜が明けて少し経つとみんなが起きてきた。
「お早うございます、アラン」
「あぁ、おはよう、セリーナ」
「これは…、米を丸めているんですか?」
「丸めるっていうか、握っているって言うんだよ。オニギリって言うれっきとした料理なんだぞ。よし、完成だ」
大き目のオニギリが全部で二十個出来た。みんな起きてきたようなので早速、朝食にしよう。
「アラン、これは米を固めてあるの?」
「まぁ、そうだな。握って中にサーモンの塩焼きを入れたものだよ。オニギリっていう料理だ。朝だから簡単なものにさせてもらった。これも手で持って食べる料理だよ。じゃ、早速頂こう」
実際に手にとって食べてみせる。うん、密閉容器に入れてあっただけに、そんなに固くはなっていないし温め直してある。塩加減も丁度いい。美味いな。
「オニギリ、美味しいわ! 素朴な感じで良いわね」
「このスープ! めちゃくちゃ美味しいです!」
シャロンのその一言で、みんなお吸い物に手を付け始める。
「これは!? なんて繊細な味なのかしら!」とアリスタ。
「あぁ、美味しいですね」とナタリー。
「スープは、おかわりもあるんで欲しい人は言ってくれ」
俺以外の全員がお吸い物のおかわりをした。
「ふぅ、朝から食べ過ぎました」
「なるほど… これは食べ過ぎますね」とカリナ。
「食後に悪いんだけど、夜の間にオークが来たんだ。数が多いんで魔石採るのを手伝ってくれないかな」
「「了解です」」
「よければ、私達も手伝いましょう。せめてそれくらいはお手伝いさせてください」とカリナ。
「そうですか、ではお願いします」
「どこですか? アラン」
「あぁ、あっちだよ。行こう」
「これは!? いったい? … これは全てアラン様が?」
「そうですね」 言いながらオークの死体に剣を突き刺す。オークぐらいデカいとナイフでは刃渡りが短く力不足だ。
うーん、グロいな。魔石を採る魔道具とかないのかな。あったとしても、どんな魔法陣を使うのか想像も出来ないけど。
手伝ってもらったおかげで十分足らずで、全ての魔石を取り出すことが出来た。あとは片付けをして出発だ。
「この小屋はこのままにしておくのですか?」とカリナ。
「そうですね、壊してもいいんですけど、次に訪れる旅人の役に立つかもしれませんからね」
「なるほど、確かに」
野営地を出発して、午前中にはゴブリン十五匹、グレイハウンド五頭を狩った。やはり魔物の出現率は増え続けているようだ。
昼食は、チャーハンで簡単に済ませた。
今日の十六時ぐらいには城塞都市ガンツに到着出来る予定だ。ガンツは、ゴタニアよりもかなり大きい都市で推定では六万人以上の人口を抱えているらしい。非常に楽しみだ。
幾つかの街道と合流し、馬車や徒歩の冒険者とすれ違う事も多くなってきた。お互いすれ違う時は、緊張が伴う。相手が盗賊の可能性があるからだ。
しかし、俺達の馬車の御者台にいるエルナを相手が確認すると手を挙げたり挨拶をしてくる。まさか、こんな美人が盗賊をするとは思わないに違いない。
「アラン、見えてきました。あれがガンツでは?」
強化された視覚でズームしてみる。
「おぉ! そうだな。間違いない。やはり城塞都市というだけあって物々しいな」
かなりの標高のある山と山の間に∨字型に作られた谷、その谷の中央に立ち塞がるような形で、都市が作られていた。城塞都市の向こう側は魔の大樹海。なるほど、魔の大樹海からの魔物の侵入を防ぐために作られた都市なのだろう。
しかし、谷全体を都市で完全にカバー出来ているわけではなく、都市の左右どちら側も、山の急斜面、断崖へと繋がる、ある程度広い土地が広がっている。あれでは魔物は、都市を避けて領域のこちら側へも、ある程度自由にくることも可能だ。
魔の大樹海との接触を完全に絶とうとしてなのか、都市から断崖へと続く防護壁を作ろうとしている形跡も見て取れる。建築中か、過去に試みられた名残なのだろう。生き物が登ることが出来ないような断崖までには、かなりの距離があり、断崖へと繋がる急斜面上に防護壁を建設するのは現実的ではないようにも思えた。
ガンツへと近づくにつれ、魔の大樹海を取り囲む山脈も迫ってくるように思えた。魔の大樹海を取り囲む山脈は、平均標高五千メートル級のものなので、当然のことながら以前から見えていて見慣れたものだが、ここまで近づくと更にその大きさが感じられた。
いよいよ、ガンツまで数分というところまで来た。ガンツを取り囲む城壁に設けられた城門の前には、入るための手続きを待つ幾つかの集団が列を作っている。あの列に並ぶべきなのだろうな。
列の最後尾につけて二十分程度の待ち時間で城門に到着した。守備隊と思われる兵が近づいて来たので、俺は馬車を降りた。
「商人か? 何名だ?」
「いえ、冒険者です。Cランクのパーティー、シャイニングスターのメンバー五人と乗客が三人、計八人です」
俺のギルド証を見せながら言った。
「ほう、Cランクか。問題ないと思うが一応、検めさせて貰うぞ」
「どうぞ」
クレリア達も馬車から降りてきた。ギルド証を見せるためだろう。守備兵が一人一人検めていく。守備兵がアリスタの商業ギルド証を見た瞬間、目が見開かれ本人を慌てて見た。
「アリスタ様!? 間違いない! どうしてこの馬車に!?」
この状況、タルスさんの時と同じだな。
「私の馬車が盗賊に襲われたのです。この方々に助けられ乗せてきてもらったのです」
「なんということだ! アリスタ様一行は、昨日、遅くても昨日の夕方には到着されるはずだったとのことで、サイラス様が大変御心配されてまして、こちらに何度も問い合わせがありました。いよいよ何かあったに違いないということで、商業ギルドの辺りでは、大変な騒ぎになっています。サイラス様は今頃、捜索隊を組織しているはずです」
「お父様が!? 大変だわ! 急いでお止めしなければ。通ってもよろしいですか?」
「もちろんです。さぁ! お通りください」
「アランさん! 商業ギルドまでお願いします!」
「了解です。案内をお願いしますね」
カリナに御者台に乗ってもらい、カリナの案内で商業ギルドまで行くことになった。城塞内に入ると人でごった返したようになっていて、俺の御者としての腕前が大いに試されることになった。行き交う人の半分近くは、冒険者のような格好をしている。幸い道幅も広く人々は馬車を避けるのに慣れているようだったので問題は無かった。
「あの大きな建物が商業ギルドです。あぁ、あそこの、人が集まっているところですね」とカリナ。
大きな建物の前に冒険者と思われる三、四十人の人達が集まり、台の上に乗った、ゴツい冒険者の話に注目しているようだ。
近づいていくと、その冒険者の話が聞こえてくる。
「……たら、すぐに馬を飛ばせ! 有力な情報を届けたパーティーには勿論、報奨を出す。具体的には情報にもよるが、通常の依頼の十倍以上は出すと思ってもらっていい。 いいか! 重要なのはスピードだ。…」
これが城門で言っていた捜索隊なのだろう。集まった冒険者達に捜索の方針を伝えているようだ。壇上に立つ冒険者はまとめ役といったところかな。
アリスタは馬車から飛び降りると捜索隊に近づいていった。
「お父様っ!」
アリスタは壇上のゴツい冒険者に向かって叫んだ。
ええっ!? あれが、アリスタのお父様? この国で一番の富豪の? とてもではないが、そんな風には見えないな。どうみてもベテランのゴツい冒険者だ。
壇上の男はアリスタを見て固まった。
「アリスタ! ああ! 無事だったか!」
壇上から飛び降りるとアリスタを抱き締めた。やっぱり父親らしい。
「お父様、心配掛けてごめんなさい」
「いいさ、お前さえ無事なら、何だっていい」
壇上に、これまたベテランの冒険者に見える別の男が登り、集まった冒険者達に話かけた。
「見ての通り、お嬢様は無事見つかった。悪いがこの話は無くなった。もちろん手間を掛けさせた礼は後で届けさせる。みんな解散してくれ」
礼が貰えると聞いて特に不満もないらしく、冒険者達は素直に解散していった。
「アリスタ、何があったんだ? こいつらは?」
「途中で盗賊に襲われてしまったのです。この方達は私達を盗賊から救い出して頂いた冒険者の方達です」
「何だと!? 盗賊に? 二十人も護衛をつけていて盗賊に襲われたのか?」
「それが、サンザノを出発する当日に護衛する予定だった一つのパーティーが全員食中毒で倒れてしまったのです。出発を断念する予定だったのですが、残りのパーティーが問題無いと言い張り、私達もそれに同意してしまったのです」とカリナ。
「何だと!? カリナ、お前が付いていながら何て事だ! 分かっているのか? お前はアリスタを危険に晒したんだぞ」
「申し開きもありません。この罰はいかようにも」とカリナ。
「お父様、カリナを責めないでください。私も早く帰りたくてそれに同意したのですから」とアリスタ。
「それで、その同行した冒険者は?」
「全員、死にました」
「ちっ、そこをこの冒険者達に助けられたと?」
「いえ、盗賊のアジトに連れて行かれていたところを助けて頂きました」
「何だとっ!? 盗賊に攫われたのか! アリスタ! 無事なのか?」
「私は大丈夫でした。身代金目的で縛られていただけですから」
その言葉の意味を汲み取ったのか、カリナとナタリーを見るが二人は目を伏せていた。
「……… そうか。娘が世話になったようだ。俺はサイラスという」
「Cランクパーティー、シャイニングスターのアランといいます。助けるのは当然の事ですので、お気になさらずに」
「いや、盗賊のアジトまで乗り込んで助けるなんて、当然以上の行為だ。お前達は、間違いなく娘の命の恩人だ。ありがとう、感謝する」
「えーと、どういたしまして」
「お父様、私、アランさんに謝礼をするとお約束してしまったのです」
「当然だな。だが、これほどの恩に対してこんな立ち話で決める話じゃない。日を改めて話をしよう。それでいいか? アラン」とサイラス。
「勿論です。では後日に。どのように連絡すればいいですか?」
「宿は決まっていないんだろう? カリナを付けるので、宿が決まるまで案内に使え。後日、宿に連絡する」
「了解です」
サイラスさんとアリスタさん、ナタリーさんは、何処からともなくまわされた馬車に乗っていった。
「さて、アラン様。御案内致します。どうしましょうか?」
「まずは、冒険者ギルドに寄りたいですね。冒険者の遺品をどうにかしたいので」
「了解です。では行きましょう」
カリナの案内で冒険者ギルドへ向かった。幸いすぐ近くにあったのでカリナの案内で、駐車スペースのような所に馬車を停めた。カリナは近寄ってきた男に何枚かの大銅貨を渡す。男には仲間がいるようだ。
「有難うごぜえます。カリナ様」
どうやらカリナは、この街では中々顔を知られているようだ。男と男の仲間が馬車を囲むように馬車を背に立った。
「馬車の見張りですよ。不届き者が多いので」
俺が不思議そうな顔をしていたのを見てそう答えた。なるほど、確かに必要かもしれないな。
冒険者の遺品をみんなで手分けして持ち、ギルド内に向かう。先程の商業ギルドも大きな建物だったが、この冒険者ギルドはさらに大きく、ゴタニアの街のギルドと比べると四倍以上の大きさはあった。
「こちらの窓口です」
案内されてついていくと複数ある通常とは違う窓口で止まった。
「どのような御要件でしょう?」とギルド職員。
「まずは報告を。商業ギルドで雇ったガンツからサンザノまでの往復の護衛依頼の件、こちらの依頼票の件ですが、往路は問題ありませんでしたが、帰りの出発の朝にパーティーの一つ、[鉄の掟]の皆さんが全員食中毒になったため、こちらから契約を解除しました。さらに復路で盗賊の襲撃に遭い、もう一つのパーティー、[緑の風]の皆さんは全滅しました。その証人はこちらのCランクパーティー、シャイニングスターの皆さんです」
「ギルド証の提示をお願いします」とギルド職員。
俺に向かって言われたので、自分のギルド証を提示した。ギルド職員はギルド証を確認しメモを取っている。
「今、カリナ様が言われた事は事実ですか?」
「[緑の風]については事実ですが、サンザノには居なかったので[鉄の掟]については知りません」
「なるほど。カリナ様、[鉄の掟]の件、大変申し訳ありませんでした。この件は、事実が確認出来次第、パーティーには然るべき処罰が課せられます」とギルド職員。
「分かりました。それとこちらのシャイニングスターの皆さんが、[緑の風]の遺品を回収したので引き取って欲しいそうです」
「分かりました。こちらに提出をお願いします」
俺達は持ってきた十人分の遺品、十袋の麻袋をギルドのカウンターに乗せていく。剣などは袋に入りきらずに飛び出したままだ。
「あの…、ギルド証だけでは無いのですか?」
「ギルド証の他に遺品、遺産となりそうなものを適当に選び入れてきました」
「そうですか…。ちなみに遺体の発見者は、遺体の所持品を自分の物にする権利があるのですよ?」
「知っていますよ。でも遺品は遺族に渡した方がいいでしょう?」
「… 確かにそうですね。分かりました。これらはギルドが責任を持ってお預かりします。可能であれば遺族にも届けましょう。ギルド証を回収してきた冒険者には少額ですが報奨金が支払われます。確認が取れましたら、窓口に来た時に通知されると思います」
「分かりました。ではこれで」
ふぅ、やっと余計な荷物が片付いた。ギルドを後にして馬車に戻った。
「次はどうしましょうか?」とカリナ。
「宿を取りたいですね。風呂付きで出来れば食事の美味い所を」
「風呂付きですか…。馬車もあるので、結構割高になってしまいますが…」とカリナ。
「相場はどれくらいでしょう?」
「そうですね。一人一泊七百五十ギニーから、でしょうね」
うーん、高いな。しかし、ゴタニアで風呂付き宿が五百ギニーだったのだから、より危険とされているこの街なら当然かもしれないな。
「その程度であればなんとかなるでしょう。多少前後してもいいので良さそうな宿を知りませんか?」
「分かりました。評判のいい宿を紹介しましょう」
冒険者ギルドから馬車で五分ぐらいの所で馬車を止めた。
「冒険者ギルドからは少し離れていますが、その分、部屋や風呂、食事がいいのでお薦めですよ」
「それはいいですね。では、こちらに決めましょう」
宿の中庭に馬車を停め、世話係の少年に馬を任せると早速、宿の中に入った。宿の名前は[春風]だった。
「いらっしゃい。あら、カリナさんじゃない!」
いかにも宿の女将といった感じの中年の女性が、カリナさんに話しかけた。カリナさんは顔が広いな。
「久しぶりですね、キラさん。今日はお客を連れてきました。商業ギルドの紹介です」
「商業ギルドの!? まぁ! ありがとう、カリナさん!」
「アラン様、紹介しましょう。この宿の女将のキラさんです」
「キラと申します。宜しくお願いします。アラン様」
「アランと申します。よろしく。ところで、カリナさんもキラさんもアラン様はやめてください。俺は、様を付けられるような人間ではありませんよ」
「いえ、少なくとも私はアラン様に助けられた瞬間に、一生、この人には敬称を付けてお呼びしようと心に決めました。これはいくらアラン様のお言いつけでも変えられません」とカリナ。
決心は固そうだ、これは変えてもらうのは無理か。
「では、せめてキラさんは止めてください」
「分りました。お客様がそうおっしゃるのであれば、アランさん。ウチの宿は、朝晩の食事が付いて、通常は一人部屋一泊八百ギニー、二人部屋で千百ギニーですが、商業ギルドの紹介ということであれば、一人部屋は七百ギニー、二人部屋は千ギニーに。馬車と馬は無料で預かりましょう」
「なるほど。長期割引とかはありますか?」
「一週間前払いで一割、二週で二割、三週で三割、四週間以上は四割です。ただし、一度お支払い頂いたら返金はできません」
「なるほど。前と同じで二人部屋でいいのかな?」
パーティーメンバーに確認してみると皆、問題ないとの返事だった。とりあえず二週間でいいか。
「では、一人部屋一つと二人部屋二つ。とりあえず、二週でお願いします」
二週間で三万二百四十ギニーだ。やはり、結構な金額だ。明日から真面目に働かないとな。
「それでは、えーと…… 三万二百四十ギニーになります」
財布代わりの革袋から丁度の金額を出して支払った。
「はい、確かに。ようこそ、[春風]に。」
「それでは、私はこれで失礼します。また、後日、御連絡にきます」
「案内、有難うございました。カリナさん」
皆が口々に挨拶をすると、カリナさんは去っていった。
「よし、馬車から荷物を運んでとりあえず風呂にでも入るか」
「「はい!」」
宿の風呂はバースの宿と較べても遜色なく広くて快適だった。他の宿泊客は見かけたのは一人だけで多くはないようだ。まだ、みんな風呂からあがっていないようなので、御茶でも飲んでまっているか。
部屋は二階で一階は食堂だ。食堂に行き御茶を頼んだ。宿泊客は無料らしい。キラさんが熱々の御茶を運んできてくれた。
「そういえば、商業ギルドの紹介って何か意味があるんですか?」
「ええ、ありますよ。商業ギルドにとって大事なお客様だから便宜を図ってもらえば、借りにしますよっていう意味があるんです。つまり、ウチは商業ギルドに貸しを作れるって事ですね。何かあった時にそれなりに商業ギルドを頼れるので、ウチとしては凄く有り難い事ですね。噂では商業ギルドでは貸し借りの帳簿をつけているそうですよ」
「なるほど。そんな意味があるんですね」
「ウチは場所があまり良くないし、従業員は娘二人、息子二人の家族でやってて、今一、ぱっとしない宿なので、カリナさんの配慮は助かります」
「そんな事はないでしょう。カリナさんは他よりもいい宿だって言ってましたよ」
キラさんと雑談していると、みんなが食堂に降りてきた。丁度、夕食にもいい時間なので、人数分の食事を頼んだ。バースの宿と同じく、食事のおかわり自由、アルコールは有料らしい。
運ばれてきた食事は、ビッグボアのステーキに、チキンと野菜具沢山のスープ、色々な野菜を細かくカットしたサラダ、それにフカフカのパンだ。俺は旅の間は自粛していたワインを頼んだ。
ステーキは胡椒とガーリックが効いていて焼き加減もいい。スープも肉と野菜からいい出汁が出てて美味い。サラダの甘酸っぱいドレッシングも変わっていて美味いな。これは当たりの宿を選んだようだ。
みんなも満足気に食事を満喫している。
「そういえば、皆には盗賊を襲った時の金額を報告してなかったよな。総額で十一万五千八百二十五ギニーだった。これとは別に盗賊を売った金が 五千ギニーが十二人で、別途六万ギニーが支払われるはずだから、総額で十七万五千八百二十五ギニーだな」
「「おぉ!」」
やはり、盗賊は美味しい獲物だ。
「さて、どんな感じで分けようかな。俺達はロベルト達にお金を送らないといけないだろ? かといって全部送る訳にもいかない。どうしたものかな?」
「最低限のお金だけ残して送ればいいのでは?」とクレリア。
「商業ギルド経由で送金する時は、一回、五万ギニーの手数料が掛かるんだよ。だからあんまり頻繁に送金するわけにもいかない。そうだな、効率を考えると最低でも百万ギニーぐらいは貯めてから送金したいところだな」
「なるほど、確かにそうですね」とエルナ。
「お給料制にしたらどうですか? アランは私達に高額のお給料をくれるといいましたが、私達、そんなにお金は必要ありません。ほとんどはパーティーのお金で賄えるんですから」とシャロン。セリーナも頷いている。
「オキュウリョウ制とは?」とエルナ。
「毎月、決まった金額を給金として貰うことですよ」
「あぁ、給金制のことね。いいのではないですか?」
「私もいいと思う」
「皆が問題ないならそうしようと思うけど、いいかな」
皆が頷く。
「では、そうしよう。給金は… そうだな。月に一万ギニーにしようか」
「月に一万ギニーも!?」とエルナ。
「それぐらいはないと張り合いがないだろ? そうしようぜ。では、キリが良いので今月分を支給しよう」
使い勝手がいいように、大銀貨で九枚と銀貨で十枚づつ。一人ひとりに渡していった。当然、俺の前にも銀貨を積み上げた。これで盗賊から巻き上げた金で膨らんでいた革袋が軽くなってスッキリだ。
「アランも、私達と同じ給金なのですか?」とセリーナ。
「勿論だよ。俺も殆どパーティーの金で賄えるから、個人で何か買うこともそんなに無いからな。ちなみに今、ここにある金は、七十九万八千三百六十五ギニーで盗賊売却分が六万ギニーが加わる予定だ」
「あと少しで送金出来ますね」とシャロン。
「そうだな。でも手元にも少し残したいから百二十万ギニーぐらいまでは貯めたいな」
「そうですね」とエルナ。
「問題なければ、明日から早速依頼を受けて仕事しようと思っているんだけど、どうかな?」
「問題ないわ。旅の疲れもないし、私達はお金を稼がなくてはいけないのだから」とクレリア。
他のみんなも明日から仕事を始める事に何の問題もないというので、明日からいよいよ冒険者開始だ。明日は朝早めにギルドに行ってみる事にして寝ることにした。
(ディー・ワン、ガンツにいる間は、直掩は不要だ。周辺の魔物の分布を調べておいてくれ)
[了解しました]
通貨の価値ですが、下記ぐらいの価値と考えて貰えると嬉しいです。
銅貨 一ギニー 百円
大銅貨 十ギニー 千円
銀貨 百ギニー 一万円
大銀貨 千ギニー 十万円
金貨 一万ギニー 百万円
大金貨 十万ギニー 一千万円
白金貨 百万ギニー 一億円




