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039. 作戦計画

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



 丁度夜明けに目が覚めた。昨日は早く寝たので十分睡眠はとれている。大容量のアップデートをおこなった後に感じる目が回るようなめまいを感じた。


 今まで分からなかった事が、分かるようになっている。この惑星の大陸分布図、大陸は幾つかあるが、人間が住んでいるのは、今いるこの大陸だけらしい。他の大陸には動物や魔物しか発見できていない。


 この惑星、いや世界か、これを人々はアレスと呼んでいた。大陸の名前はセリース。


 この大陸の地図を仮想ウィンドウに表示すると国別に色を塗られたカラフルな地図が表示された。白地の部分が多い。これはどこの国にも属していないか、情報不足でまだ分かっていない地域だった。割合は色がついた部分が四割、白地が六割だ。全部で五十四ヶ国の国が存在していた。


 こんな情報はどうでもいい。


(イーリス)


[お早うございます。艦長]


(おはよう。幾つか確認したいことがある。まずはこの惑星の位置だ。なぜ、これほど当初の航路から外れている? いや、外れているなんてもんじゃない、全く別の宙域じゃないか)


[判りません。今回のように強制的にワープアウトした場合の出現位置に関するデータがありません]


[推測では?]


[超空間航行中の艦の位置は確率論的にしか判らないことは艦長も御存知だと思いますが、通常の手順を踏まずにワープアウトしたため、確率が収束しないまま実体化処理が行われたためと推測します]


 何を言っているのか、さっぱりだ。


(簡単に言うと?)


[運が悪かったと言えると思います]


 急に分かりやすくなった。確かに俺は昔からついてないからな。十分に納得出来る理由だ。


(次に、この宙域に対する帝国の調査予定の時期だ。何故このような事が判る?)


[私は調査宙域を決定するアルゴリズムを知っています。このアルゴリズムは過去五百年間変更されていません。今後変更される可能性もありますが、変わらないと仮定した場合の予測時期になります]


(千年後か、救援は絶望的だな)


[この数値はあくまで確率論的なものに過ぎません。それよりも早まる可能性もあります]


(では、俺が生きている間に救援がくる確率は?)


[限りなくゼロに近い確率です]


(そうか… だろうな)


 帝国のバグスの母星を探すための調査方法は、調査対象の宙域にいくつもの艦隊を派遣し、集中的にマッピングしていくというものだ。これは当然の手法で、一つの星系でも見逃せば調査する意味が無くなるからだ。


 当然、一度に調査できる宙域は広大な宇宙に対して極小の部分で、調査には膨大な時間が掛かる。


 しかし、元の航路からこれほど外れていなければ最悪でも百年後ぐらいには、イーリスは僚艦に発見されていただろう。


(では、本題だ。例の確率は信頼出来るものなのか?)


[最新の調査結果と出現パターンを元に計算したものです。そういった意味では信頼出来ると言えます。しかし、確率はあくまでも確率です。私にはそれ以上の事は言えません]


 確かにそうだ。 くそっ! どうすればいいんだ!


(俺はどうすればいい?)


[艦長に出来ることは何もありません]


 そうだな、俺に出来ることは何もない…



 イーリスがアップデートの内容として選んだ情報の中には様々な興味深いものがあったが、 ある一連の報告を除いて他の情報はどうでもよくなった。


 一つ目は、この惑星の位置が本来の航路から大きく外れた位置にあるため、帝国軍がイーリス、いや、この惑星を発見するのは推測で約千二百年後であるということ。


 勿論、これは確定の予測ではない。例えば帝国軍がイーリスの予想より大幅な増強をおこなった場合、この期間は大幅に短縮されるだろう。その逆もまた然りだ。


 そして、二つ目の報告はイーリスの予測では、帝国軍がこの惑星を見つけるまでの千二百年間の間に、この星系にバグスが現れる確率は、八十八パーセントということだった。


 つまり、この惑星はかなりの確率でバグスに襲われる事になる。それがいつになるかは判らない。



(例えば、五百年間でどれほど艦を強化できる?)


[BG-I型巡洋艦で構成された通常編成十六隻の艦隊であれば、二個艦隊を同時に相手できるぐらいには強化出来るでしょう。ただし、BG-X型戦列艦が一隻でも含まれた艦隊であれば勝てる確率は皆無です]


 そうだな。BG-X型戦列艦の火力の前には動けないイーリスが勝てるはずがない。機関セクションが無事であれば簡単に捻り潰せる相手なのにな。


 それにバグスの攻撃が二個艦隊で済むわけがない。バグスは仲間の艦隊が未帰還の場合には、その艦隊が向かった星系に執拗に繰り返し攻撃を仕掛けてくる。リアクターのないイーリスは、いずれエネルギーが枯渇して敗れるだろう。


(FTL通信をおこなうだけの設備を構築するのはどうだ?)


[FTL通信設備は、いくつかのセクションを解体・資源化すれば構築可能ですが、当然ながらリアクターがなければ動作しません]


(リアクターを構築する事は出来ないのか?)


[不可能です。構築しようにも資源がありません。仮に資源があったとしても、リアクター建設には大規模なドックが必要になるでしょう。とてもメンテナンスボットでは構築出来ません]


 やはり、どうにもならないか。ああ、なんてことだ。


 イーリスに乗艦する前、スター級重巡洋艦テオⅡの宙兵隊にいた頃、バグスに襲われた植民星に救援にいったことがある。救援は間に合わず、住人の七割がバグスに殺された。その星系にいたバグスを殲滅した後、俺達宙兵隊は復興支援のために惑星に上陸したが、そこは本物の地獄だった。

 あぁ、あの惨劇がこの惑星で繰り返されるのか…


 無言の時間が続く。沈黙は十分ほど続いた。



(この惑星の人類の科学レベルを上げたらどうだ?)


[到底間に合いません。仮に中間値の六百年後にリアクターを完成させるにしても、六百年間で軌道上にリアクターを建設出来るほどの科学レベルに到達出来るとは思えません]


(何故だ?)


[教育、人的資源、資源開発など様々な問題があります。例えばこの惑星の人類をどうやって教育するのですか?]


 確かにそうだ。初歩の初歩の科学から教えていかなければならないだろう。しかも、魔法の発達したこの世界で人々が進んで科学を学ぼうとするとは思えない。


 無理やりに強制してでも学ばせる? どうやって?




(イーリス、俺はこの惑星を接収することに決めた! 接収し、この惑星の人類に強制的にでも科学を学んでもらう)


[…… 了解しました]


 あれ?


(反対はしないのか?)


[反対する理由がありません。艦長にはそれをおこなうだけの権限があります]


(そんな馬鹿な! 人類惑星を強制的に接収しようとしているんだぞ!? 軍規違反にはならないのか?)


[この惑星は人類銀河帝国に編入されているわけではありません。軍規違反には当りません]


(しかし… ただの艦長にそんな権限があるとは思えない)


[コリント艦長はただの艦長ではありません。この宙域の最高司令官です。総督不在の宙域では、最高司令官は宙域のアデル政府の名代です。つまり、この宙域では艦長の意志は、帝国の意志です]


(そんな馬鹿な!)


 そんな馬鹿な事があってたまるか! 誰だ、こんな仕組みを作ったのは! ……


 しかし、都合がいいと言えばいい。このまま何もせずに諦めるなんて事は、俺には出来ない。足掻くだけ足掻いてやる!


[ちなみに、この惑星は帝国の領土ではありませんから、接収という言葉より侵略、又は占領という言葉が相応しいでしょう]


(侵略はちょっとイメージが悪いな。占領か、いいだろう。イーリス! 俺達は、この… あぁ、今のは無し。もう一度やらせてくれ)


 こんな格好良いセリフは、なかなか言う機会がないからな。ちゃんと言っておきたい。


(イーリス、俺達、帝国軍は人類銀河帝国の名において、この惑星アレスを占領し帝国の領土とする!)


[了解しました]


 イーリスのノリが悪いな。ちょっとは付き合ってくれてもいいだろうに。


[未だかつて占領によって人類惑星を帝国に編入した者はいません。これを成し遂げれば歴史に名が残りますよ。艦長]


(帝国史上最悪の犯罪者としてだろう? まぁいい。 イーリス、俺は簡単に諦めるつもりはないぞ。

 必ず、この星の人類を救ってみせる。絶対だ!

 もちろん占領といっても、むやみに武力を使うつもりはない。意味が無いからな。

 とりあえず占領の足がかりとなる拠点を確保する必要がある。そこは、この惑星アレスの首都となるだろう。

 立地、資源などを考慮して候補地を選んでくれ)


[それであれば、候補地はここが最良でしょう]


 大陸地図が表示され、かなり広い白地の部分の中心に赤い点がついた。ふむ、ここからそれほど離れているわけではないな。


(何故、ここなんだ?)


[まず、ドローンによるスペクトル分析では、鉱物資源の量が大陸の他の領域に比べて桁違いに多い事です。


 それに拠点を作るための木材、石材などが豊富にあります。


 さらに化石燃料、魔物などのエネルギー資源が、この大陸で一番と言っていいほどに豊富です。これ以上の候補地はないでしょう]


(魔物はエネルギー資源か。ん? 待て、ここはひょっとして「魔の大樹海」という所か?)


[その通りです]


(樹海の中は魔物で満ちていて、魔物がどんどんと人類の暮らす領域へと溢れ出ているという所なんだろう? 大丈夫なのか?)


[問題ありません]


(よし、では拠点の整備は全て任せる。好きなようにやってくれ。俺の想像では、恐らく今後二十年間ぐらいは、この拠点が帝国領となるだろう。人を集め街を作るだけでも結構な時間が掛かるだろうからな)


[そのように悠長にやっていては、とても間に合いませんよ、艦長。少なくとも五年後には一万人規模の都市を作るぐらいでないと到底間に合いません]


(そうか、五年で都市か。なかなか厳しいな)


 やはり、どこかの国を占領したほうがいいのだろうか? いや、虐殺を防ぐために虐殺をしていては本末転倒だ。全く手を汚さずに済むとは思ってはいないが、極力避けたい。


 軌道上にリアクターを建設することは、この惑星の人類を総動員するほどの大事業になるだろう。ただでさえ少ないこの星の人類を減らすことは避けなければならない。


 しかし、イーリスが魔の大樹海を開拓して街を作ったとして、誰がそこに住みたがるだろうか。俺だったら、得体のしれない人物に、秘密の良い場所があるから住まないか? なんて誘われても、今の生活を捨ててまで絶対に移住はしないだろうな。


 では、どこかの国の一部としてスタートするのはどうだろう? そう、例えば貴族としてスタートして、新しい開拓地が出来たよ! 税を優遇するから住まない? なんて募集すれば、その国の他の地域からの移住が期待できるだろう。人を集めるには都合がよさそうだ。


 いずれにしろ、少し時間を掛けて考えるべきだろうな。


(人を集める方法は考えてみる。少し時間をくれ)


[了解しました]


(ちなみに、現時点で五百年後に軌道上にリアクターを、建設出来る可能性はどれくらいだ? 勿論ザックリとした感じでいい)


[そうですね、二パーセントぐらいでしょうか]


(おお! さっきは不可能と言っていた割には、なかなかいい数字じゃないか)


[まさか、艦長がこの星を占領すると言い出すとは思っていませんでしたからね。若干、確率は上がりました]


 そうか、少しは良い方向に向かっているのかもしれないな。



 朝食の時間になったので、イーリスとの通信を切り食堂に向かった。食堂には既にクレリア達とセリーナ達がいて、お茶を飲みながら何か話をしている。仲良くなってくれたようで嬉しいな。


「おはよう。何を話していたんだ?」


「おはようございます、アラン。クレリアさん達にこの大陸の事について教えてもらっていたんです」


「ほう、どんなことを?」


「この大陸の貴族についてですね。私達は全然知らなかったので助かります」


 おお! それは俺も聞きたい。後でシャロン達に聞き逃したことを教えてもらおう。


「それは俺も興味があるな。是非、聞かせてくれ」


「その前に、アラン。私も訊きたいことがある」


「なんだ?」


「アランはひょっとして、王族なの?」


「なんだよ、いきなり。俺が王族の訳ないだろう? どこからそんな発想が出てきたんだ?」


「いや、違うならいい。変な事を訊いてすまなかった」


 クレリアは、なんかホッとしたような感じだ。なんだろうか?


 そこに朝食が運ばれてきた。今日の朝食は、ハンバーガーのようだ。大皿に山盛りになっている。恐らく昨日のハンバーグのミンチ肉の残りを有効活用しているんだろう。


 ハンバーガー用に焼いたバンズには、チーズ、レタスのような野菜、厚めのパテ、トマトの薄切りが挟んであり、ソースは、ケチャップとマヨネーズで作ったオーロラソースだ。 うーん、これは美味い! 朝から少し重いが美味いものは美味い。


「うわー、これも美味しいです!」


 シャロンとセリーナは夢中でハンバーガーを食べている。勿論、クレリアもだ。


 大皿に盛ってあったハンバーガーはあっという間に無くなってしまった。



 クレリア達の貴族の話はどうやら貴族の位についての話だったようだ。丁度貴族の話だったので知りたかった事を訊いてみた。


「平民が貴族になることってあるのか?」


「そうですね、めったにありません。スターヴェイク王国では、たしか十年くらい前にSランクの冒険者のパーティーがワイバーン三頭を討伐して、パーティーのリーダーに士爵の爵位を与えられた事があったと思います」とエルナ。


「その話は私も覚えているわ。あれはワイバーンに襲われた村を救った事に対する報奨だったはず」


 なんと! 冒険者が貴族になれるのか。魔物を駆除しただけとは。


「ふーん、魔物を駆除するだけでいいのか?」


「討伐するだけではなれないと思います。やはり貴族に任じられるような冒険者は、有名で、国民に人気があるような冒険者ですね」


「そうね。国はそういった冒険者に爵位を与えることで国の威信を示すという意味合いもあるわ」


 なるほど、単に魔物を駆除するだけでは駄目なようだ。有名で人気か、難しいな。なかなか上手くいかないようだ。



 朝食後は、クレリア達はいつも通り中庭で剣の鍛錬をするようだ。俺はいつもなら魔道具作りをしたりしていたが、今日はやる事がある。


「セリーナ、シャロン。制服に着替えて部屋で待っていてくれないか? 少し話がある」


 二人は真剣な顔になると了解しましたと返事をした。昨夜の話の続きだと思っているんだろう。ある意味続きだ。


 部屋に戻って久しぶりに制服を身につけた。


(イーリス、来てくれ)


 来てくれの意味を察して、部屋に制服姿のイーリスが等身大で姿を現す。もちろん、実物ではなくナノムが視神経に干渉して作っている幻影だ。


「二人は例の件は知っているのか?」


「いえ、教えていません」


「そうか、これから二人に説明する。ついて来てくれ」


 部屋を出てシャロン達の部屋のドアをノックする。


「どうぞ」


 部屋の中に入ると俺の制服姿に気がついて慌てて立ち上がり、気をつけの姿勢をとった。イーリスは俺の副官を演じるつもりのようだ。


「休め、楽にしてくれ」


 するとセリーナが荷物を漁ってなにかを持ってきた。


「申し訳ありません、閣下。これをお渡しするのを忘れていました」


 見ると准将の階級章だった。准将の階級章は一本の彗星のマークだ。これは格好良いな! さっそく付け替えよう。


「ありがとう、コンラート准尉」


 宙兵隊中尉の階級章を艦隊准将の階級章に付け替える。


 何かこの部屋じゃ気分が出ないな。


(イーリス、この部屋を宙兵隊のブリーフィングルームっぽくしてくれないか?)


 途端に部屋の内装の見た目が一新した。部屋の大きさはそのままに内装がハイテクっぽく変わっている。俺の後ろの壁は大きなスクリーンになっており、テーブルはコンソールになっていた。ああ、この雰囲気は懐かしいな。


 二人は物珍しいのかキョロキョロしている。


「わざわざ制服を着てもらったのは他でもない。昨夜話したように我々帝国軍の方針を定めたからだ。昨夜、私はイーリスから我々を取り巻く環境の様々な情報を受け取った。その中には、ある重要な報告が含まれていた」


 二人に例の報告の事を話す。


 この惑星を帝国が発見するのは推測で約千二百年後であるということ。


 その千二百年間の間に、この星系にバグスが現れる確率は八十八パーセントもあること。


「つまり、この星の人類は未曾有の危機にさらされているということだ。

 この星の人類は帝国臣民ではない。しかし、今までに発見された数々の人類惑星は全て帝国に編入されており、この惑星アレスも、もっと前に帝国に発見されていれば、間違いなく編入されていたことだろう。

 つまり、私はこのアレスの人類は、準帝国臣民と言ってもいいと考えている。

 そのことから、私はこのアレスの人類を救うべく行動する事に決めた。

 しかし、イーリスは大破し、我々は殆どの装備を失った。我々にできる事は多くはない。

 イーリスと協議した結果、この星の人類を救うためには、我々がこの星の人類の科学レベルを上げ、この星の人類自らの手で、軌道上にリアクターを建造する以外の手段はないとの意見の一致をみた。

 では、どのようにしてこの星の人類の科学レベルを上げるか。説得し教育していく時間はない。

 この緊急事態に際し、私はある決断をした。

 我々帝国軍は人類銀河帝国の名において、この惑星アレスを占領し、帝国の領土とする」


「「おおっ!」」


 二人共いいリアクションだ。イーリスはこの二人を見習って欲しいものだ。


「帝国の領土とすることで、この星の人類は帝国臣民となり、我々は入隊時に誓った真の義務を負うことになる」


 あれ? 俺は誓ったけど、セリーナ達は省いちゃったかな?

 チラリとイーリスを見る。


[二人共、誓いました]


 良かった。


「もちろん、占領の目的はこの惑星の人類の科学レベルの向上だ。我々はまず拠点を確保し、体制を整える。

 統治体制や、教育の体制が整い次第、順次帝国領の外へと覇権を拡げていくことになる。

 長く厳しい戦いとなるだろう。前代未聞の超長期作戦となる。

 恐らく我々の世代では占領は完遂しないだろう。我々は次代の帝国軍の精鋭達に作戦を引き継いでいくことになる。

 君達には精鋭達の模範となるような礎を築いて貰いたいと考えている。

 どうだろう? 私と一緒に戦ってくれないだろうか?」


「勿論です! 私は閣下と一緒に戦います!」とセリーナ。


「私も閣下と一緒に戦います! こんなにやり甲斐のある作戦はありません!」とシャロン。


「そうか、二人共ありがとう。本当に感謝する。よし、作戦の方針は決まっているが、詳細は白紙状態だ。しかし、何か不明な点があれば答えていきたい。何か質問はあるか?」


「リアクターの完成時期はいつぐらいを想定しているのですか?」とセリーナ。


「私とイーリスは、とりあえずの完成時期として五百年後に設定した。これは何か根拠のある数値ではなく、暫定の目標としたものだ。詳細が固まり、進捗によって変化することもあるだろう。ただ、今この瞬間にもバグスがこの星系に現れる可能性もなくはない。出来るだけ前倒ししていきたいと考えている」


「帝国軍の増員はあるのですか?」とシャロン。


「勿論、増員は考えている。しかし、何よりも信頼出来る者でなくてはならない。この星の人類にとっては我々は侵略者だ。じっくりと吟味して信頼できる者だけを帝国軍に迎えいれたい」


「例えばクレリア達ですか?」とセリーナ。


「クレリア達は確かに信頼はできるだろう。しかし彼女達にも事情があるし、個人的には巻き込みたくはないと考えている」


 二人共何故かホッとしているように感じた。二人共、俺と同じ気持ちなんだろう。


「次世代の帝国軍の精鋭達とはどのような人達ですか?」


「拠点が完成したら士官養成所のような所を作ろうと考えている。

 その中でも信頼出来る者にナノムを与え、帝国軍の中核にしたいと考えている。

 個人的には、仮に私の息子や娘が出来たら帝国軍に徴用するつもりだ。

 彼らには親に勝手に人生を決められて気の毒だが、この作戦にはそんな事を言っていられないものが懸かっている。

 これは、勿論強制は出来ないが、セリーナとシャロンにも出来たら同じことをお願いしたい。

 俺と君達の息子や娘は、きっと帝国軍を引っ張っていく人材になるに違いない」


「私達と閣下の息子、娘…」 とセリーナ。


 何故か彼女たちは顔を真赤にしてうつむいてしまった。ああ、年頃の女の子に子供の話は早過ぎたな。まだ彼氏もいないのに。失言だった。


 他に質問はないのかな? チラリとイーリスを見るとニヤニヤと笑っているように見えた。驚いて見直すと真面目な顔をしていた。そうだよな。イーリスはめったに笑わないし見間違いだろう。


「質問は以上かな? …… よし、真面目な話はこれで終わりだ。そうだ! 大事なことを言い忘れていた。一応、任期は五年とする。五年毎に意志を確認するから続けるかどうかを決めてくれ」


「やめることも出来るのですか?」


「勿論だよ、入隊の時に契約しだだろう? あれは当然有効だ。ああ、止めたくなったら半年前ぐらいに言ってもらえると助かるな。そうだ、当然給与も出る。えー、月給制で、特殊な状況を考慮して、とりあえず帝国軍の等級表の十倍相当の金額のギニーを支給にしよう。当然ボーナスも出すぞ」


「「おおっ!」」


「まぁ、危険手当みたいなもんだな」


「あの、閣下。先程と随分と喋り方が違いますが…」とセリーナ。


「ああ、さっきはちゃんとお願いしたくて真剣にやってみたのさ。君達の今後の人生を左右するような事だから、こういう時ぐらいは真面目にしなきゃと思ってね。今の俺は仲間のアランなんだから、閣下は止めてくれ」


「… そうですか」


「二人共、これからもよろしくな」


「「わかりました! アラン」」




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[良い点] アランにただ生きていくではない目標が生まれて、しかも、楽勝モードではないと、なかなか心躍る展開です。 [一言] 子孫に任務を引き継いでいくのだが、いい方が……。この言い方で、勘違いしない侵…
[一言] SF古典「キャプテン・フューチャー」の科学レベルより上だから、アランにはカーティス・ニュートンを越えて欲しいですね♪石斧・石槍・石シャベル→溶鉱炉→高炉→恒星間エンジン→恒星間宇宙船 w 「…
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