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038. 出会い2

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



 今日の昼食はいつもの店とは別の店でとるらしい。まったくアランの食に対する知識欲には敵わない。私はアランの作る食事が一番美味しいと常々思っているが、アランはそうでもないらしい。


 冒険者ギルドの近くの食事処に入った。なんと外に置いてあるテーブルで食べるとのことだ。街中で通りを眺めながら食事するなんて、なんと面白い食事方法だろう。


 出てきた食事はたしかに美味しい。王都にいた頃と較べてもこんな美味しい料理はなかなか無かった。大盛りを頼んだが量はいつもの店よりも少ないのが残念なところだ。


「美味かったな、正直ここまで美味いとは思わなかった」


 アランもこのシチューを気に入ったようだ。しかし、やはりアランの作る食事には劣ると思う。


「確かに美味しかった。でも私はアランの料理…」


 喋り始めたところでアランの後ろから女が一人近づいてくるのが見えた。とても美しい女だ。


 あの服装は!? 以前アランが着ていた礼服にそっくりの意匠だ! どういう事!?


 女はアランのすぐ後ろに立つと何事かを喋り始めた。この言葉は!? アランに会った日にアランが話していた言語に雰囲気が似ている。まさか!?


 アランが振り向くと女は敬礼のような仕草をした。こんな敬礼は見たことがない。


「しょ、所属は?」


 アランが慌てたように女に尋ねる。その後に女は私が分かる言葉で話し始めた。しかし意味がよく分からない。


 赤い艦隊? すぴか方面軍? 第二百三十八艦隊? 艦隊がそんな多いはずはない。かの海洋大国 デグリート王国でさえ艦隊は二つと聞く。何かの符号だろう。イーリス・コンラート? 兵隊、情報、小隊など部分的にしか分からない。


 この女は何を言っているのだろう?


「イーリスは健在なのか?」


「勿論です。ずっと閣下を探しておりました」


 イーリスとは何? 閣下とは? まさかアランのこと?


「あの、アラン?」


「ああ、すまなかった。彼女は俺の部下だった者だ」


 部下っていうとアランは軍人!? あぁ、これくらいの事は訊いておけばよかった。


 そのあと宿に戻り話をすることになった。アランもセリーナとやらも無言で宿まで歩く。宿に着くとアランはセリーナと二人で話したいと言い出した。一緒に話を聞きたかったが是非もない。


 エルナと一緒に部屋で待つことにした。


「エルナ、さっきあの女が喋っていたことは理解できた?」


「いえ、解りませんでした。何かの艦隊の事を言っていたのは解りましたけど」


「やはりそうか、私も同じだ」


 ああ、アラン達は何を話しているのだろう。物凄く気になる。


 しばらくしてドアがノックされた。アランがあの女と一緒に入ってくる。


 あの女を紹介しに来たようだ。やはり女はアランと同じ国の者だった。


 お互い名乗りあったが、セリーナという女は少し感じが悪い。アランはこれから行動を共にしろという。


 得体の知れない者を仲間にするわけにはいかない。もっとよく知らないと仲間には出来ない。


「アラン、セリーナは何者なの?」


 本人を目の前にしてこういった質問は凄く失礼だとは思うが、確認しておかなければ気が済まない。


「俺が船に乗ってこの大陸に来たことは話しただろ? その船は沈んだんだが、彼女はその船の乗組員だったんだよ」


「それだけなの? アラン」


「ん? それだけだけど?」


「本当に?」


「そこのクレリアとやら。さっきから閣下に対して慣れ慣れしいぞ。それだけではなく閣下の言葉を疑うなど言語道断だ」


 このような言葉をかけられたのは初めてだ! 驚きで腹も立たない。


 やはり閣下というのはアランのことらしい。アランは貴族ではない。とすると軍の高官? スターヴェークでは閣下と呼ばれるのは将軍だけだ。アランが将軍!?


「貴様! 誰に向かって口をきいているつもりだ!」とエルナ。


「クレリアは何者なの?」


 私の真似をしているようだ。よく似ていると思う。


「くっ、クレリア様はスターヴェーク王国の王女であらせられる!」


「ふん、一国の王女など閣下に比べれば、」


 アランが慌てて二人を止めた。


 エルナが私の元の身分を明かしたが、セリーナはその事を気にも止めていないようだ。


 いまのセリーナの言葉が気になる。「一国の王女など閣下に比べれば」アランが止めてしまったのでその先は聞けなかったが、セリーナは一国の王女よりアランのほうが、高位であると考えていることは間違いない。


 どういうこと? 普通の国では、将軍より王女のほうが、はるかに高位だ。仮にアランが王族だとしても同格だろう。まさか、アランは王!? いや、王に対して閣下の敬称はおかしいし、王が軍人になるわけがない。ああ、分からないことだらけだ。


 もう一度仕切り直して自己紹介から始めるらしい。


 紹介のあとアランは衝撃の事実を告げた。セリーナには姉妹がいてこの後、合流するという。


 改めてセリーナを見てみる。やはりとても美しい娘だ。歳は私と同じぐらいだろう。その姉妹も美しい娘なのだろうか? 何か得体のしれない焦燥感にかられた。


 やはりアランは軍人だった。驚くべきことにセリーナの着ている礼服は制服らしい。あのような荘厳な仕立てで制服? 信じられない。


 アランとセリーナは、セリーナがとった宿に荷物を取りにいってしまった。ああ、考えることが多すぎる。


 ◇◇◇◇◇


 セリーナがとった宿は、冒険者ギルドの近くらしい。今、取りにいく必要も無かったが、何だか険悪な雰囲気になってしまったので、少し時間をあけてお互い頭を冷したほうがいいと思う。俺がついていく必要も無いが、大荷物だったら手伝う必要もあるだろう。部下に対する気遣いも上官の務めだ。そういえば女性の部下を持ったのは初めてだな。


「セリーナ、さっきの態度はいただけないな」


「申し訳ありません。アランに対する態度に、ついカッとなってしまいました」


「クレリアの態度は別に変な態度だったとは思わないぞ。セリーナも俺に対してあんな感じで接してくれると嬉しいけどな」


「そうなのですか!? … いえ、やはりそんな訳にはいきません」


「敬語も使わなくていい。万が一、原隊に復帰したらそうもいかないかもしれないが、この星にいる間だけでも敬語は止めたらどうだ?」


「… 考えておきます」


「そういえば、金はどうしたんだ?」


「ドローンが実際の通貨の仕様を分析していたので、それを元に艦の工作室で作製したものらしいです」


「つまり偽造通貨ということか!? まぁ、成分が同じなら問題ないか」


 噂に聞く白金貨の仕様が分かれば、艦で偽造できるかもしれない。いつか白金貨を見る機会がやってくればいいな。


「制服じゃない服も持っているだろ? 宿に着いたらそれに着替えてくれ」


「……… 了解しました」


「ん? 何か問題があるのか?」


「あの… 服が全然可愛くないんです」


 着替えることに躊躇した理由にずっこけた。こういうところは、まだ年頃の女の子ということか。


「制服は目立ち過ぎる。着替えるしかないな」


「わかりました」


 宿に着き、セリーナが結構な荷物を持って出てきた。聞くとほとんどが水と非常用固形食らしい。


「アラン、これをどうぞ」


 セリーナが通信機を差し出してきた。通信機は、縦二十センチ、横が五センチぐらいの大きさで、一見すると金属の板のように見える。


「これは、アランに渡すために持ってきた予備です」


「おお、これは嬉しいな、ありがとう。その服も似合っているじゃないか」


「そうですか!? ありがとう御座います」


 とてもいい笑顔になった。

 セリーナは自分一人で持つと言い張ったが、手分けして荷物を持って宿へと帰る。なかなか重い荷物だ。何が入っているんだ?


「アラン、先程クレリアからナノムを検知しました」


「ああ、そうだな。俺が移植したものだ。腕と足がもがれた状態で死にそうだったからな」


 セリーナにクレリアとの出会いから今までをざっと話して聞かせた。


「クレリアのナノムは破棄しないのですか?」


「別に問題ないだろう? インターフェイスの作成を指示しなければ普通の人間と大差ないからな。民間人にナノムを使用させる事は禁止されているから、多分ずっとこのままだ」


 話しているうちに宿に着いた。


「セリーナ、シャロンと二人部屋でいいか?」


「はい、問題ありません」


「サラちゃん、二人部屋って空いてる?」


「空いてますよ。えーと、アランさんのお友達ですか?」


「友達っていうか仲間だな」


「そうなんですね。では、鍵はこちらです。部屋はリアさん達の隣の部屋になります。それと宿代はいりません」


「いや、この部屋の分は払うよ」


「いえ、受け取れません。お父さんに怒られちゃいます」


「…… ちょっとバースを呼んできてもらっていいか?」



「おう、アラン。仲間が増えたんだな」


「そうなんだよ。増えた分の部屋代は払うからな」


「いや、それは受け取れねぇな」


「なんでだよ! 受け取れよ」


「いいか、アラン。お前さんはこの宿の恩人だ。お前とお前の仲間からは一生、金は受け取らねぇ」


「恩人って、俺は大した事はしてないよ」


「お前も知っているだろうけど、この宿にこんなに客が泊まったことなんて開店当初以来だ。これは全部お前のおかげだよ」


「それはこの宿が良い宿だからだよ。それに俺達だけで三部屋分もタダじゃ流石にやっていけないだろ?」


「いいか、アラン。ウチは客が一人泊まっているだけで、なんとかやっていけるんだ。二人目からは利益になる。


 今のこの状況はどうだ? 正直俺は、いま儲かりすぎて笑いが止まらねぇぐらいなんだよ。

 それに料理が美味いからか酒も飛ぶように売れる。


 しかもな、泊まった客が何人も次の予約を入れていくようになったんだよ。


 こんな事は、この宿始まって以来なかった事だ。つまり客達はつぎに来た時は一杯かもしれないって考えてるってことだ。


 これは全部お前のおかげだ。だから遠慮なく泊まってくれよ」


「俺はバースの料理の腕のおかげだと思うがな。まぁ、儲かっているなら、ここはバースの気持ちに甘えることにする。ありがとう」


「おう、遠慮するな」


 鍵を受け取って、セリーナと二階に上がろうとした時、誰かが宿に駆け込んできた。えっ?セリーナ?


 俺とバースとサラちゃんは二階に上がろうとしたセリーナと宿に入ってきたセリーナを見比べて見ている。全く同じ人物に見える。って、これがシャロンか。随分と早く着いたんだな。


「こりゃすげーな、双子か?」


「そうなんだよ! よく似てるだろ。こっちがセリーナで、こっちがシャロンだ。宜しくな。 シャロン、息が切れてるみたいだから、とりあえず部屋にいこう」


 シャロンが、何か挨拶を始める前に手を引いて部屋に向かう。セリーナ達の部屋はここだな。中に入るとクレリア達の部屋と全く同じだった。


「閣下、シャロン・コンラート准尉です。このような格好で申し訳ありません」


 息を切らしながら、シャロンが敬礼をしている。よっぽど急いできたんだろうな。シャロンはセリーナと色違いの全く同じデザインの服を着ていた。服も艦で作ったのか。


「アラン・コリントだ。宜しくな、シャロン」


 俺も答礼した。

 俺達はとりあえず椅子に座って、今日の出来事、クレリア達の事などを、シャロンに話して聞かせた。


「すると私達は、そのクレリアさん達と一緒に冒険者のパーティーを組むという事ですね?」


「そうだな。しばらくはそういうことになるだろう。今話した通り、クレリア達の仲間の事が片付けば、また方向性が変わる可能性もあるけどな。ということで出来ればクレリア達と仲良くしてくれると助かる」


「わかりました。任せてください」とシャロン。


「あの、アラン。さっき話して頂いた魔法の事なんですけど、本当に使えるのですか?」とセリーナ。


「使えるよ。こんな感じだ」


 テーブルに伏せて置いてあったコップを上に向けて置くとウォーターを発動した。コップの上の十センチ上くらいの空間から水が現れてコップの中に注がれていく。一杯まで注がれたところで止めた。


「「おおっ!」」


「シャロン、喉が乾いているだろ? 飲んでいいぞ」


 シャロンは恐る恐るコップを手に取ると一口飲んだ。


「冷たくて美味しいです!」


 今ではただの水ではなくて冷たい水を出せるようになっていた。


[イーリスより通信です]


 なんだろうと思い、受信すると仮想ウィンドウにイーリスの顔が表示される。


[私もARモードで会話に参加させてください]


 恐らくセリーナかシャロンがイーリスのモニターを許可していて、イーリスはこの会話を聞いていたに違いない。


(いいよ、許可する)


 途端にシャロンの後ろにイーリスが等身大の姿で現れた。勿論、これはナノムが視神経に干渉して見えているように感じさせているだけで、実際にイーリスが部屋の中に現れたわけではない。三人並んでみると母娘のようだ。


「すごいですね! 艦長。これが魔法ですか」


 このイーリスの声も映像と同じで実際にイーリスが喋ったわけではなく、聴覚に干渉しているだけだ。


「さすがに酒場の中じゃ誰も魔法は使わなかったみたいだな」


「そうなんです。魔法の事は早くから知っていましたが見るのは初めてです。他にも何か出来るのですか?」


 テーブルの一メートル上の空間にファイヤーを使用して火の玉を出現させる。火の玉はそのまま、空間に留まらせた。


「「「おおっ!」」」


「私達も魔法が使えるようになりますか!?」


「どうだろう。多分出来ると思うけどな。ああ、ナノムはエリダー星系の第二サルサで開発されたセンサーが必要って言っていたな」


「艦長! 早くデータを送ってください」


 いや、さすがにイーリスは魔法は使えないぞ。


「分かった、いま三人にデータを送る」


(魔法に関する全てのデータを送ってくれ)


[了解]


「では!」


 イーリスは消えてしまった。


「今はアップデートしないでくれよ。シャロン、クレリア達に挨拶に行ってこようか」


「わかりました」


 三人でクレリア達の部屋に行ってノックした。先程と同じくエルナに招き入れられた。


 クレリアとエルナはセリーナとシャロンを見て驚愕の顔になった。


「シャロンが来たんだ。見ての通り、セリーナとシャロンは双子なんだよ。シャロン、彼女がクレリアで、こちらがエルナだ」


「初めまして、シャロン・コンラートといいます。これから宜しくお願いします」


 セリーナと違ってとっても良い自己紹介だ。クレリア達もこれには驚いたようだ。


「こちらこそ宜しく頼む。クレリア・スターヴァインだ」


「エルナ・ノリアンです。よろしく」


「勝手なことして悪いけど、セリーナとシャロンにはクレリア達の事を話してしまった。彼女達は俺の部下だ。信頼出来る」


「勿論、アランがそう思ったのなら全然構わない。それにしても凄い。こんなに似ている双子は初めて見る」


「よく言われます。クレリアさん、エルナさん。私達、この大陸の事、よく知らないので色々と教えてくださいね」


 シャロンはセリーナと違って随分と社交的なようだ。なんで性格に違いが生じたんだろう?


「もちろん、私達でわかる事であれば何でも教えよう」


「下に行ってお茶でも飲まないか? なんか喉が渇いたしな」


 食堂に行ってお茶を飲むことになった。少しでも親交を深めたほうがいいだろう。

 この宿のお茶は地球の緑茶のようなお茶だ。俺の提案でお茶にはクッキーが付いてくるようになった。


「これ、美味しい! 私、お昼食べてないから余計にそう感じるのかもしれないけど」とシャロン。


「それはアランがこの宿の料理人に教えたレシピで作ったものだから、間違いなく美味しいと思う」


「ええ!? か… アランが? 料理が出来るのですか?」


「料理は俺の趣味だからな。なかなか評判いいんだぞ」


「評判がいいどころか、私はアランが作った料理がこの世で一番美味しいと思う。アラン、シャロンは昼を食べていないそうだ。早めの夕食にしたほうがよいのではないか?」


 クレリアも努めて親睦を深めようとしてくれているようだ。有り難いな。


「そうだな。みんなが良ければ食事にしようか。ちょっと訊いてくるよ」


 厨房にいるバースにダメ元で訊いてみるとすぐに用意できるとのことで、夕食の時間には早かったが頼んだ。


 しばらくして料理が運ばれてきた。お、今日はチーズハンバーグか。これは美味そうだ。


「「これが料理…」」


 セリーナとシャロンは料理を目の前にしてなにか緊張しているように見える。まさか、固形食以外を食べるのは初めてなのか? そういえば、セリーナは非常用固形食を大量に持ち歩いていたな。


「「美味しい!」」


 二人同時に食べ始めてハモって感想を述べた。


「なにこれ、凄く美味しい!」


 セリーナとシャロンは夢中でハンバーグを食べている。クレリアもそれを見て何故か嬉しそうだ。


「おかわりは自由だからな。好きなだけ食べてくれ」


 セリーナとシャロンとクレリアはおかわりをしながら結構な料理を食べた。


「ふぅー、もう食べられません。お腹一杯です」


「こんなに美味しいものがこの世の中にあるなんて信じられません」


「これはアランの国のレシピなんでしょう? 二人は食べたことがないの?」


「二人は食べたことがなかったかもな。最近、注目を集めたばかりの地方の料理なんだよ」


「ああ、これは地球の料理ですね? 私達は今日、初めて食べました」


 セリーナとシャロンは旅の疲れもあるだろうと、今日は早めに休む事にした。


 風呂に入ってドライヤーで髪を乾かして一息ついた頃、シャロンから通信がきた。少し聞きたいことがあるという。何事かと思いながら二人の部屋に行った。



「すいません、アラン。全く急ぐ話では無いんですが、シャロンとちょっと言い争いになってしまって…」


「アラン、私達はこれから何をすればいいんでしょうか?」


「それは、セリーナとシャロンがという意味か? それとも俺達、帝国軍って意味か?」


「帝国軍という意味です」


「…… そうだな。さっきまでは帝国軍の生き残りは俺一人だと思っていた。特に目的も無かったんでクレリア達の手助けみたいな事をしていたんだ。正直、今後の事はまだ何も考えて無かった。このあとイーリスから艦の状況とか、この星の事を聞くことになっている。それを聞いてから今後の事を決めたい。帝国軍を続けるのか、それとも辞めるのかを」


「辞めるという選択肢もあるのですか?」


「もちろんだ。帝国軍だ、なんて言っていても、俺達は何の任務も果たせないだろう? 艦に戻る事さえ出来ない。こんな状況で帝国軍ごっこをしていても意味はない。さすがに俺は責任者だから辞められないけど、セリーナとシャロンは、この惑星に帰化する事も出来ると思うぞ。せっかくこの世に生を受けたんだ。二人には幸せになる権利がある」


「…… シャロンはともかく、私はアランについていきます」


「もちろん、私もアランについていきます」


「そんなに急いで決めることはないよ。明日には結論が出せると思う。少し時間をくれ」


「わかりました。お呼び立てして申し訳ありませんでした」


 部屋に戻って彼女たちの心情を考えてみた。彼女達も不安なんだろう。クローンとして生を受けて育てられ、何の任務も無い状態じゃ何のためにっていう気持ちになるのは当然の事だ。まだ精神状態も安定しない年頃だろう。二人には本当に申し訳ないことをした。


(イーリス)


[はい、艦長]


(アップデートしてくれ)


 俺は意識を失った。




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