033. カツサンドと基礎魔道具作製講習
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朝風呂に入って支度を済ませると一階に向かう。今日から魔道具作製講習だ。それにしても朝八時からって早くないか?
支部長は治療院のバイトに影響を出したくないようだ。
食堂ではバースがテーブルを拭いているところだった。朝、掃除するのは日課のようだ。
「よう、アラン。朝飯か?」
「おはよう、バース。リア達はまだ来てないから、とりあえず俺一人分で頼む」
「トンカツが結構余っているんだが、朝飯はトンカツでいいか? あれからレシピを見ながらまた練習したんだよ」
「うーん、朝からトンカツか。悪くは無いけどな。そうだ! パンはあるか?」
「パン粉にする為に今朝も焼いてあるが?」
わざわざパン粉にするためにパンを焼いているのか。バースの揚げ物に対する気持ちは本物だな。
「それ、使ってもいいのか? マヨネーズもあるよな?」
一昨日、大量に作ったマヨネーズがまだ冷蔵の魔道具に入っているのは昨晩確認している。
「勿論、パンは無くなったらまた焼けばいいだけだしな。マヨネーズって一昨日作ったソースか? それも有るぞ」
「じゃあ、朝飯は俺に作らせてくれないか?」
「勿論いいぜ! 俺の分も作ってくれ」
早速厨房にいって、キャベツ、カラシ、パン、トンカツを用意する。
キャベツは千切り、ロース肉のトンカツを大き目に切り分け、パンを上下二つにきり、片方にカラシを薄く塗っていく。
マヨネーズは、両方のパンにタップリだ。キャベツの千切りをパンの上に多めに載せ、トンカツも載せてパンで挟めば、マヨネーズカツサンドの出来上がりだ。
「これはカツサンドって料理だよ。俺の国じゃ、夕食じゃなくて朝とか昼とかに食べる料理だな。トンカツが冷めていても美味いんだよ」
バースと一緒に食べてみる。
「うん、美味いな。マヨネーズとの相性も抜群だ」
「ホントに美味いな! こんな食べ方もあるとはな」
食堂に戻って食べていると、クレリア達が降りてきた。
「アラン、それはなに!? ずるい、一人で勝手に!」
勝手にってなんだよ。
「朝、遅いのが悪い。バースが作ってくれるよ」
早速、バースが作ってくれたようだ。宿の女の子が山盛りのカツサンドを運んできた。
「トンカツの料理! …… これは美味しい!」
クレリア達は夢中で食べ始めた。
食べ終わって、お茶を飲んで一息つく。
「そういえば、クレリア達は今日は何をするつもりだ?」
「午前中は神殿にいってみようと思う。久しく行ってなかったし、ルミナス様には御礼を言いたい事も沢山ある」
神殿か。俺も行ってみたかったな。クレリア達がどういう神を奉じているのか興味がある。
「午後はアランも暇でしょう? 魔法を教えて欲しいのだけど?」
「そうだな。やっと時間が出来た事だし、俺も魔法は是非練習したいところだよ。しかし、町中でやる訳にもいかないし、人目があるところは不味いだろう…。 そうだ、バースに訊いてみよう」
バースを呼び出してもらった。
「済まないな、仕事中に。 ここら辺で魔法を練習出来るようなところって知らないか?」
「アランは魔法が使えるってのか!?」
「まあな、こう見えて魔術ギルドのBランクなんだぜ」
「Bランク! 凄いじゃないか! … 魔法の練習なら、街を出て北に三十分くらい歩くと岩場があるんだ。魔物もめったに出ないし、草木も生えてない所だから、殆ど行く奴はいない。魔法が使える奴らは、そこで練習してるって聞いたことがあるな」
「そうなのか、ありがとう。 よし、午後はそこに行ってみるか。おっと、もう出掛ける時間だ。じゃあ、また後で」
やばい、初日から遅刻する訳にはいかない。明日からはアラームを掛けておこう。
早足で歩いて八時ちょうどに魔術ギルドに着くことが出来た。
早速入ってみるが、やはりリリー以外に人はいない。客もギルド会員も見たことが無いが、大丈夫なのか魔術ギルド。
「おはよう。リリー」
「お早うございます、アランさん。支部長がお待ちですよ、奥の部屋にどうぞ」
ノックして部屋に入ると机がいくつか置かれている部屋で、一番奥の大きな机に支部長が座っていた。本を読んでいたようだ。
「お早うございます。支部長」
「おはよう、アランさん」
「アランでいいですよ。支部長は俺の師匠ですからね」
「うふふ、師匠っていい響きね。では、アラン。早速講習を始めましょう。講習は二階でおこないます」
二階はワンフロアの大きな部屋で、材木や様々な資材が置かれていて、作業場か、小さい工場のように見えた。部屋の中央に大きなテーブルが置かれている。どうやらこのテーブルで講義を行うようだ。
「アランは魔道具についてどれだけ知っていますか?」
「特には何も。魔石を動力源に道具単体で魔法を発動させるってぐらいですかね」
「まぁそうでしょうね。実際に魔道具を見たことは?」
「火の魔道具と冷蔵の魔道具は使ったことがあります」
「であれば、実際に動作している所は見せなくても大丈夫ね。では魔道具の中身がどうなっているか見せましょう」
支部長は部屋の隅から火の魔道具と思われる魔道具を重そうにテーブルまで持ってきた。
「これは火の魔道具です」
「知っています。これと全く同じものを使ったことがあります」
「あら、この街で?」
「そうです。豊穣という宿ですね」
「なるほど。使い心地はどうでした?」
「良かったですね。火の調節がしやすいです」
「あれは私が作った物です」
「そうなんですね。じゃあ、冷蔵の魔道具も?」
「そうです。なかなかいい出来だったでしょう?」
「そうですね。全体的によく冷えてました」
「では、早速魔道具の中身を見ていきます」
火の魔道具のケースを開けた。なんとケースは木製のようだ。表面が黒く塗られていたようで気づかなかった。
さすがに火が出る所の周りは金属製のようだが、殆どの部分は木製だった。
「これは木だったんですね。表面に何か塗っているんですか?」
「そうですね。耐火性の塗料です。ちなみにその塗料の作り方は魔術ギルドの極秘事項です」
「なるほど、分かりました」
「魔道具の仕組みは大きく分けると、このように、魔石、魔導線、魔法陣、魔法出力石の四つに分けることが出来ます」
そう言いながら、一つ一つ指差していく。魔道具には魔石が嵌まっていて、魔石に紐のようなものが触れるような仕組みになっている。これが魔導線だ。
魔石から出た魔導線は火を調節するレバーの軸に繋がっていて、その魔導線に接触している円弧の板の部分からまた魔導線が出て魔法陣に繋がっている。
魔法陣は、丸い形をしていて、文字のような模様のようなものがグチャグチャと書かれている紙で、魔法出力石というのは火が出る所の真下にある円錐形の透明な石のような物だ。
魔法陣の円の中心から魔導線が伸びて魔法陣と魔法出力石がつながっている。
構造的には実にシンプルで、魔道具の中身はスカスカだ。この構造で何故、火が出るのかが全く想像出来ない。
「この部分は何なんですか?」
調節のレバーを指差して訊いてみる。
「それも大きい分類では魔導線の一部になりますね。後で詳しく説明します」
「まずは魔石です。魔石は知っていますね。魔石と魔導線は常に接触するようにします。魔導線は普通の丈夫な紐に特殊な液を浸したものが固まったものです。触ってみてください」
触ってみるとカチカチに固まっていた。
「特殊な液というのはどういうものですか?」
「魔導液というもので、詳細な成分はギルドの極秘事項ですが主成分は魔力が空になった魔石を砕いて粉にしたものです」
「魔導液はギルドで買うことが出来るのですか?」
「勿論です。あの大きさの陶器で大銀貨一枚で売っていますよ。あぁ、ギルド会員は銀貨八枚です」
一リットルくらいの容量の陶器だった。ただのパーツを作るための薬品が銀貨八枚とは随分と高い。
特許のかわりということだろう。誰かが何処かで魔道具を作ったとしても必ずギルドで売っているこの薬品を使わなくてはならない。つまり魔道具を作れば自動的に魔術ギルドに金が入る仕組みだ。
これが客がいなくてもギルドが潰れないカラクリかもしれないな。
「火力を調節するレバーの事は後で説明します。
魔法陣が魔道具の心臓部です。この魔法陣に魔法の種類や、魔法の強さ、魔法出力石からの魔法の発動距離などが書かれています」
「書かれているのは、文字ですか? 模様ですか?」
「ほぼ模様ですが、文字から派生した模様もあるので完全に模様とは言えません。注意して見てもらいたいのが魔法陣の模様が、円の外側から円の中心に向かって円を描くように書かれていますが、これが一本の糸のように全て繋がって書かれているところです」
「たしかにそうですね。これには意味があるのですか?」
「勿論あります。つまり魔石から魔法出力石までは全て魔力を通す素材で一本の糸のように繋がっているのです。これを魔導路といいます」
つまり電気回路のようになっているということか。
「魔力を通す素材というのは魔石のことですか?」
「そうですね。魔石から魔法出力石までは全て魔石が主成分の素材で出来ています」
「この魔法出力石というのはどのような素材から作られているんですか?」
「これも魔力が空になった魔石から作られています。これもギルド会員価格で銀貨八枚です」
ボッタクリのような気もするが、たしかにこの形に削るのは苦労するだろうな。
「魔法出力石はこの形でないと不味いのですか?」
「形は円錐でなくても問題ありませんが、魔法の指向性のために尖った形をしている必要があります」
「この紙に書いてあるインクの主成分も魔石なのですか?」
「そうです。魔石の粉末に色を付けているだけです」
「どうやって魔道具は動作をし始めるのですか?」
「良い質問ですね。これは一般には知られていませんが、魔力はより大きな魔力があるほうに引かれるような性質を持っています」
それは知っていたな。
「一般的に魔導線は魔力が全く含まれていない素材で作ります。そして魔法陣は円の外側は魔力が少ないもの、そして円の内側に向かうにつれて、段々と魔力が多く含まれているインクで書いていくのが正しい魔法陣の書き方です」
「正しく魔法陣を書くとどうなるのですか?」
「魔力が流れやすくなり、より強力な魔法を発動することが出来ます」
「やはり、魔道具が動作し始めるタイミングが解りません」
「それはそうでしょう、まだ言っていませんからね。順を追って話していきましょう。
まず、このレバーを倒した状態では魔道具は発動していません。
ただし、魔石と魔法陣は繋がっているので、魔石の中の魔力は魔法陣に含まれている魔力に引き寄せられる力を受けていますが、魔石のほうが強い魔力があるので魔力は流れません。
レバーを動かすと発火の魔法が発動され、この時に初めて魔力が流れ始めます」
「発火の魔法で消費される魔力よりも魔石の魔力の方が強い魔力ではないのですか?」
「勿論そうです。しかし魔力が魔力を引き寄せる力よりも、魔石から魔法の発動により魔力を吸い出す力のほうが、圧倒的に強いために魔力は流れ始めます」
「何故、そうなるんですか?」
「その理由については解っていません。しかし人が魔法を発動する仕組みと同じような現象と考えられています」
「なるほど」
支部長がレバーを動かした。発火の魔法が発動されて、魔道具の底に取り付けられている魔法出力石の十センチくらい上に炎が現れる。
「レバーが動かされて発火の魔法が実行されて魔石から魔力が吸い出され始めました」
「先程、魔法陣に魔法の強さを描くと言いましたが、何故火の強さが固定ではなく変るのですか?」
「魔法陣に描かれている魔法の強さは当然ながら固定です。この魔道具の火の強さは魔導線によって変えています。
つまり、魔石から出た魔導線は、レバーの中ほどに固定されています。そしてその魔導線はこの円弧の板に接触しています。
この円弧の板の表面には魔力の違う魔導液を塗ってあるのですよ。
今、最小の火加減ですが、魔石からきている魔導線が接触している、この板のこの部分には魔法陣に描かれているインクよりも強い魔力を含んだ魔導液が塗ってあります。
つまり、段々と魔力が強くなっていく正しい魔導路ではなく、魔力が含まれていない魔導線からいきなり魔力の強い魔導線につながり、その後それよりも魔力の含まれない魔法陣へとつながる、正しくない魔導路となっています。
こういった魔導路では魔力はあまり流れません。そのため魔法陣に描かれている火加減よりも小さい火が発火しているのです」
「なるほど」
解ったような解ってないような。
(理解出来たか?)
[はい]
じゃあ、問題はない。後でアップデートしてもらおう。
「レバーを動かすとレバーに固定されている魔導線と円弧の板との接触面が移動して、より魔力を含まれない魔導液で塗られた部分へと接触面が移動して、正しい魔導路へと近づいていくので魔力が流れやすくなり、火の勢いが強くなっていきます」
なるほど、何となく解った気がする。つまり円弧に塗布されている魔導液の魔力の濃さを利用して、電子部品の可変抵抗器のような役割をさせているのだろう。
「なるほど、解りました」
「あら、この説明で解るなんてアランは優秀ね」
「支部長の説明が良いんですよ。 やっぱり、魔道具の機能は全て魔法陣で決まるという事ですね」
「その通りです。勿論、魔法陣の周りの魔導路も重要ですが、魔法陣がなければ始まりません。 ということで、魔法陣の内容を勉強していきましょう」
「まずはこれを渡しておきます。魔法陣の模様の意味が書かれている魔導書です。これは講習料に含まれていますのでアランのものになります」
「魔導書というのは、魔法を会得するものだけでは無かったのですね。この本に魔道具で使う全ての模様が載っているのですか?」
「いえ、それに載っているのは基本的な模様だけです。しかし、基本的な模様といっても、例えばこの火の魔道具の魔法陣に必要な全ての模様が載っています」
「応用編の魔導書もあるという事ですね。それはどうやって手に入れるのですか?」
「応用魔道具作製講習を受ければ、応用編の魔導書が手に入りますよ」
なかなか良く考えてるな。上手く金を搾り取る方法がわかっているようだ。
「では、魔法陣の中身を見ていきましょう。
魔法陣の最初の部分には魔法の種類を表す模様を描きます。
その次が魔法の強さを表す模様、つまり魔力量の指定ですね。
次が魔法出力石からどれくらいの距離で魔法が発動するかの距離を描きます。
魔法が発動される方向は魔法出力石の先端の向きで指定します」
「分かり易いですね」
「では実際に魔法陣を書いてみましょう。
勉強のためにこの火の魔道具の魔法陣と全く同じものを描いてもらいます。
いきなり紙に魔導液を使って描くのは無理なので下書きしてから書きます」
ナノムがサポートしてくれるから、いきなり本番でも問題ないんだけどな。
支部長はコンパスやら定規などを持って来て、実際に紙に下書きし始めた。先の尖った木炭のようなもので下書きしている。
「大体、こんな感じで下書きしていきます。ちょっとやってみてください」
支部長がやっていたように書き始めた。ナノムがサポートしてくれるから楽勝だ。
「素晴らしいです! 初めてでここまで書ける人は初めてみました。今書いたところまでが、火の魔法を指定している部分ですね。この本のここに載っています」
なるほど、確かに同じだ。続けて説明を受けながら魔法陣を書いていく。一時間くらいで書くことが出来た。
「本当に素晴らしいです。恐らく寸分違わず書けているでしょう。普通は円の内側にいくに従って模様の間隔がズレてきたりして失敗するものです」
「間隔がズレると不味いのですか?」
「勿論です。流れる魔力が干渉して上手く発動しなかったり、出力が落ちたりします。間隔は近すぎでも離れすぎても駄目です」
「間隔はどうやって決まるのですか?」
「書く模様の大きさによって決まります。模様を大きく書く場合には間隔も広く、小さく書く場合には間隔も狭くしなければなりません。模様の大きさに比例して間隔を調整します」
「その比率は?」
「模様の高さの八割の間隔が最適と云われています」
書いた下書きを仮想ウインドウ上のスケールで測ってみると、確かにその比率になっていた。
「次は、下書きした紙に魔導インクを塗っていきましょう。
先程も話した通り、円の外側は魔力の少ない魔導インク、円の内側に行くに従って段々と魔力の濃い魔導インクで描いていきます。
大体、魔法陣の模様の全長の四分の一くらいで使う魔導インクを切り替えていきます。
まずはこの紐を使って模様の全長を測りましょう」
紐を使って魔法陣に沿って這わせて魔法陣の全長を測る。その後、紐を四分割に折ってその紐を魔法陣にまた這わせてインクを切り替える箇所に印を付けていく。
この作業もナノムが測ってくれるから必要ないんだけどな。
「では、この魔導インクAで、円の外側から下書きを塗っていきます」
「この四種類の魔導インクもギルドで売っているんですか?」
「勿論です。ギルド会員価格で、Aは銀貨十枚、Bは十二枚、Cは十四枚、Dは十六枚ですよ」
魔道具が高い理由が分かってきた。
下書きした絵柄にインクを塗っていく。これはただの塗り絵なので直ぐに完成した。
「では、実際にこの魔法陣が動作するか試してみましょう」
火の魔道具をバラして、魔法陣を交換してまた組み立てる。構造が簡単なだけに直ぐに交換出来た。
レバーを動かして魔道具を動かしてみると、なんの異常もなく火が着いた。
「素晴らしいですね。本当はこの作業は講習三日目か四日目でやるはずなんです。初日でここまで出来る人は初めてですよ」
「教え方が良いからですよ」
「明日からは、魔法陣の模様について詳しく勉強していきましょう。まだ少し時間が余っています。何か質問はありますか?」
「では。以前から気になっていたんですが、魔力とはなんでしょうか?」
「いきなり難しい質問ですね。結論を先に言ってしまうとその答えを持っている者は、魔術ギルドにはいません。
神学的にはアランも知っている通り、女神ルミナス様が魔石を持つものと戦うために人間に与えた力という事になっています。
しかし、近年では一部の魔物も魔法を使っている事が分かってきています。
では、何故ルミナス様は、魔物にも魔法の力を与えたのか?
その答えは神官達も、魔術ギルドの研究者たちも分かってはいません。
結局のところ、我々はただ魔力の使い方を知っているに過ぎませんからね」
「そうですか、残念ですね。 ギルドに入れば何か分かると思ったのですが」
「勿論、ギルドの中にも色々な説はあります。しかし、私からみると想像ばかりで、どれも説得力に欠ける説ばかりでした」
「なるほど、それを聞けただけでも収穫です。では、最初に魔導書を書いた人については何かわかりますか?」
「それについても諸説ありますが、詳しい事はわかりません。私的には、ルミナス様が自ら書き下ろし魔物の侵攻で苦しんでいた国の王子に手渡した という説が気に入っています。なんか素敵でしょう?」
魔導書についても何も分からずか。確かにこんな複雑な魔法陣の模様の書き方を発見するなんて人間業じゃないよな。
「そうですね。私もそれが一番ありそうに思えます」
「最後に。何故魔法陣に模様を描くと魔法が発動するのですか?」
「それについても分かっていません。ギルドの研修者達は日々、色々な模様を書いて、それについての理論や魔導書に無い魔法が発動するかの研究をしていますが、未だに何かを発見した例はありません」
「そうですか、分かりました」
「では、時間です。他に質問が無ければ今日の講習は終わりです」
「復習したいので各種魔導液と魔法出力石を買いたいんですけど、リリーに言えばいいですか?」
支部長の顔が途端に笑顔になった。よっぽど売上が少ないんだろうな。
「そうですね!直ぐに用意させます」
受付で六千八百ギニーを支払い品物を受け取る。支部長は魔導線に使う薬品の簡単な説明をしてくれた。
魔導線につかう紐はタルスさんの店で買って帰ろう。
こうして基礎魔道具作製講習の初日を終えた。




