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028. 指名依頼と風魔法

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



[夜明けです。起きてください]


 よし朝だ。なんか夜明けと共に起きるのが習慣になってしまったな。勿論、早起きする理由は朝風呂だ。


 朝風呂を十分に堪能してから、部屋でダラダラと過ごす。最高の時間だな。


「アラン、朝食にしよう」


 ノックがあり、クレリアが朝食に誘いに来た。


 食堂に行くと、丁度昨日見かけた俺たち以外の泊り客の商人たちがチェックアウトする所のようだ。泊り客は俺たちだけになるのだろうか?


 朝食はコースは選べないようだ。焼き立てのパン、バター、ジャム、サラダ、卵焼き、目玉焼き、肉野菜炒めだった。

 まぁ、豪華な朝食といっていいだろう。ライスがないのが残念なところだ。


 クレリアはお約束のようにおかわりしている。


「あの、今のところ今日の泊り客はお客様たちだけなので、夕食に何かリクエストがあれば聞いてこいって父さんが……」


「へぇー、オヤジさんが料理を作っているのか。そういえば、米ってこの店で出すことはできる?」


「勿論できます。お父さんはお米が好きで、本当は米を出したいんですけど、まだパンのほうが人気があるからパンを出しているんです」


「そうなのか。俺は米のほうが断然好きだけどな。リアたちはパンと米はどっちがいい?」


「昨日食べた米は美味しかった。私は米で全然構わない」


「私もどちらでも構いません」


「じゃあ、俺たちにはパンじゃなくて米を出してくれると嬉しいな」


「わかりました」


 朝食を食べて一息つくともう出発の時間だ。集合は冒険者ギルドの前に九時だが早めに行こう。


 二十分くらい前にギルドにいくと、もうヨーナスさんが十人くらいの男たちと待っていた。さすができる商人は違うな。


「お早うございます、ヨーナスさん」


「お早うございます、アランさん。今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ、お願いします」


 早速、馬車三台で出発した。大体、馬車で三時間くらいの距離だったと思う。アジトの場所はナノムがマッピングしているので迷うことはない。


 街を出て街道をアジトに向かって進む。俺たちは案内役なので先頭の馬車の荷台に乗っていた。ヨーナスさんが御者を務めている。

 警戒はナノム任せだし、特にやることもないので暇だ。


「エルナ、早速だが風魔法を木の枝にでも向けて使ってみてくれないか?」


「…… わかりました。これはエアバレットという魔法です。簡単に言うと空気の塊を飛ばして当てる魔法ですね」


 エルナは十五秒くらい目を閉じて集中すると木の上の方の枝に向けて腕を挙げる。


「エアバレット!」


 空気の塊なので、ファイヤーボールのように見えるわけではなかった。いきなり木の天辺の枝にザンッと音がして葉が舞い落ちる。


「おおっ! これは凄い、これが風魔法か」


 ファイヤーボールのように見えないし、音もしないので対象に避けられる心配もない。その代わり威力も大したことはないようだが、人に対して使うのであれば十分に使える。いきなり相手を押し倒すことができれば物凄いアドバンテージになるだろう。


 ナノムに記録させていた魔力の流れを映像でプレイバックして確認する。やはりファイヤーボールと魔力の流れは一緒だ。


 あとはイメージか。空気の塊っていうと台風のように渦巻いているイメージかな。高速で回転する風でギュッと押し固めているようなイメージだ。この塊を風で押し進めて目標に当てる。


「こんな感じかな」


 既に魔素はナノムによって装填済だ。仮想ウィンドウ上の照準を木の天辺に合わせて魔法を発動する。


 エアバレット発射!


 ゴーッという音と共に空気の塊が飛んでいく。空気の塊は目には見えないため、予め魔力表示モードで見ていた。

 

 バンッという音がして木に着弾すると空気の塊が木を巻き込んで一気に弾けた。結構太い枝が折れているし、葉は飛び散って木の天辺は丸裸になってしまった。でも初回にしてはまあまあだろう。


「ええっ!? なんですか今のは?」


 エルナが驚いている。


「まぁ初めてだからこんなもんだろ?」


 エアバレットの長所である音がしないという点で今の魔法は失格だな。今のは空気の塊が少し大きすぎたのかもしれない。回転数も少し抑えよう。


 別の木に照準を合わせて発射する。


 今度は無音で飛んでいき、バンッという音と共に木に着弾した。大量の葉が舞い落ちる。前回より威力は落ちるが予想以上の出来だ。


 何回か連続して発射してみて満足できる魔法に仕上げることができた。射程は二十メートルくらいしかないが対人魔法としては十分だ。ちなみに使った魔力はファイヤーボールと同じくらいだ。


 周りを見渡すとクレリアもエルナもヨーナスさんもポカンとした顔をしていた。


「そんな馬鹿な…… こんなことあり得ない…… 集中も発声も無しに… リア様、どうなっているのですか?」


「こういう男なのだ、アランは。 私もずっと驚かされてばかりいる」


 やはりエルナも魔導書通りの魔法しか使えないようだ。クレリアの魔法も良くなってきているし、エルナも練習すれば上手くなるだろう。


「風魔法って他にもあるのか?」


「…… 勿論、あります。次の魔法はウインド・カッターといいます。空気で作った刃を飛ばして切り裂きます」


 おおっ、なんか凄そうだぞ。既にエルナは目を瞑り集中に入っている。大体、二十秒くらい経っただろうか。


「ウインドカッター!」


 エルナの構えた腕の先に光り輝く板状の物が現れ、シューッと音を立てて木に向かって飛んでいく。そのまま木に当たって木の天辺の先端を切り落としてしまった。


「おおっ! 凄い!」


 しかし、これはどういうイメージなんだ? なんで風で光る板ができるんだろう。全然イメージが湧かない。


 ファイヤーボールやフレイムアローは魔力を燃やして発現するという漠然としたイメージができた。これだって科学的に考えると無茶苦茶な話だができたものはしようがない。


 しかし、ウインドカッターは全然イメージできなかった。風が高速で動いて物を切るとでもいうのだろうか?


「なぁ、エルナ。これはどういうイメージで魔法を使っているんだ?」


「イメージですか? 特に変わったイメージはしていません。魔導書の工程通りにやっているだけです」


 そういえば、そうだった。イメージする替わりに魔導書の工程をこなしているんだったな。


 困った。風で物が切れるイメージ… やはり風が物凄い勢いで吹いて物を切るイメージだな。高速で回転する回転ノコギリみたいな物か。この場合、金属の刃ではなく風の刃だ。


 しかし、発射する時に自分の体の近くでそんな回転刃が回っていたら危なくてしょうがない。目標に当たったら刃が発現するようにしたらどうだろう? 目標に当たると爆発的に広がる回転刃だ。上手くいくかもしれない。


 最初のイメージはエアバレットと同じだ。高速で回転する円盤状の空気弾、目標に当たると爆発的に広がる回転刃。よくイメージをして目標を定める。


 ウインドカッター発射!


 ゴーッという音と共に空気弾が目標に向かって飛んでいく。木に当たるとバーンッ! という大きな音と共に弾けた。


 うーん、木は切れていないな。エアバレットの爆発バージョンみたいな感じになってしまった。


 周りを見渡すと皆、唖然とした表情をしている。かなりうるさかったからな。


「ゴメンゴメン、失敗してしまった」


 どうやら爆発的に広がるというイメージが強すぎたようだ。大事なのは一気に大きくなる極薄の回転刃のイメージだ。


 集中してイメージを固める。


 ウインドカッター発射!


 また、ゴーッという音と共に目に見えない空気弾が目標に向かって飛んでいく。木に当たると一気に光る回転刃が現れ、木をあっけなく切断した。


 よし、成功だ!


 あとは射程と威力だな。ちなみに使用した魔力はフレイムアローと同じくらいだ。


 少しずつ距離を変えてウインドカッターを放つ。有効距離は大体三十メートルくらいかな。


 試しに太い木の真ん中を狙って放つと、これまたあっけなく切断した。大木が音を立てて倒れていく。ああ、街道のこちら側に倒れてこなくて良かった。


「凄い……」


 振り向くとリアとエルナが驚愕の表情をしていた。


「エルナ、ありがとう。いい魔法を教えてもらった」


「… 私は全然教えていませんし、今の魔法もウインドカッターではないし、別のもっと凄い魔法ですよ。見たことも聞いたこともありませんが」


「本物のウインドカッターはちょっと真似できなかったんだよ。他にも風魔法ってあるのか?」


「私の家には、エアバレットとウインドカッターの魔導書しか無かったので他には知りません」


「そうなのか。まぁ、魔術ギルドにいけば他にもあるかもしれないな」


 少しすると見覚えのある景色が見えてきた。盗賊が俺たちを襲った場所だ。


 前回アジトに行った時は歩きだったので、馬車で行ける方法を探すのに時間が掛かったが、なんとかアジトまで馬車で乗りつけることができた。


 馬車をリアとエルナに任せてアジトの中を確認する。荷物は特に荒らされていないようだ。


 ヨーナスさんに問題なしと伝えると従業員たちが荷物を運び始めた。


 荷物の半分くらいを馬車に積み終わった頃、探知魔法に反応があった。距離七百メートル、数は十頭、こちらに向かってくる。動きからするとグレイハウンドのようだ。まだこちらには気づいていないな。


「リア、エルナ、グレイハウンドが近づいてきている。こちらに気づくかも知れない」


「距離と数は?」


「六百五十メートル、数は十頭だ」


「なんでそのようなことが分かるのですか?」とエルナ。


「探知魔法を使ったんだ」


「探知魔法… そのようなものがあるのですね」


「不味いな、気付かれた。ニオイでも残っていたのかもしれないな。ヨーナスさん! グレイハウンドです。アジトの中に避難してください」


「さすがに三人で十頭は相手にはできません。我々も避難してアジトの入り口を塞ぐ方法を考えましょう!」 とエルナ。


「いや、そこまでしなくてもいいだろう。俺だけでも相手はできるし」


「いや、アラン、三頭は私に譲ってくれ」


 クレリアのフレイムアローなら確かに三頭は相手できるな。ライフルもあるし問題ないだろう。


「よし、じゃあ三頭な。あとは俺が相手する。エルナはリアの護衛だ」


「そんな! リア様に三頭は無理です!」


「まあ見ててくれ、エルナ。私の魔法はかなり上達したのだ」


「…… わかりました。リア様には近づけさせません」


 距離はあと二百メートルくらいだ。ちょうどいい、ベックたちに貰った投げナイフも試してみたかったところだ。


「アランさん! 大丈夫なのですか!?」


 ヨーナスさんがアジトの入り口から叫んでいる。


「全く問題ありません! そちらで見物していてください!」


「あと百メートル。リアが魔法を使ったら俺もそれに合わせる。あと一頭はナイフで倒すから慌てないように」


 グレイハウンドが姿を現した。少し様子を窺うような仕草をした後、有利と見たのか一斉に襲いかかってきた。


 リアは既に腕を挙げて構えている。グレイハウンドの先頭が三十メートルを切ったところで、フレイムアローの三本の炎の矢が発現した。


 炎の矢は先頭を走っていた三頭に向かって飛ぶ。矢を見てグレイハウンドも回避行動をとっていたが、炎の矢は軌道を変えてグレイハウンドに突き立った。

 三本の矢をコントロールするとはクレリアも順調に上達している。


 俺のほうは既に魔素も装填済で、残り七頭にロックオン済みだ。五頭はフレイムアロー、一頭はウインドカッター、残り一頭は投げナイフで仕留めることにしよう。


 まずは、フレイムアロー発射!


 五本の炎の矢が発現し、後ろにいた五頭の額に突き立った。これは冒険者ギルドで試した超高速バージョンだ。やはりスピードが速いと避ける暇もないな。


 次は、ウインドカッター発射!


 ゴーッという音と共に空気弾が飛んでいくが目には見えないため、グレイハウンドも回避行動を取らない。そのまま後ろにいたグレイハウンドに当り、光の回転刃を発現して真っ二つにした。


 すかさず最後のグレイハウンドに向けてナイフを投擲する。距離は十メートルも無かったため、あっけなくグレイハウンドの額に突き立った。

 うん、投げやすいし良いナイフだ。きっとバランスがいいんだろうな。


「よし、上手くいったな」


 アジトからは歓声が上がっている。


「なにもかもが凄い…… リア様は本当に魔法が上達なさいましたね! 驚きました!」


「そうだろう? アランに教えてもらったのだ。エルナもアランに教わればきっと上達する」


「そうでしょうか!? アラン殿、お願いします! 私にも教えてください」


「教えるのは全然構わないけど、アラン殿はやめてくれよ。もう仲間なんだからアランって呼んでくれ」


「…… わかりました … アラン」


 何故か頬を赤くして恥ずかしそうにしている。この世界では男女では呼び捨てにしない習慣なのだろうか。


「凄い魔法でしたね! 驚きました! あっという間にグレイハウンドを十頭も仕留めるとは」


 ヨーナスさんがアジトから出てきていた。


「まぁ、一応俺達は冒険者ですからね。もう付近に危険はありません。作業を再開してもいいですよ」


 従業員が作業を再開し、リアとエルナは念のためその警護。俺はグレイハウンドから魔石を回収することにした。


 電磁ブレードナイフでザックリと解体して魔石を回収していく。ウインドカッターで真っ二つにしたやつは血と肉が飛び散って物凄くグロかった。なるべく生き物には使用しないようにしよう。


 荷物が積み終わり、アジトを後にした。行きと同じく先頭の馬車だ。


 おっと、この反応は? 探知魔法に反応がある。今までの経験からするとこの反応は、黒鳥、ブラックバードだ。ちょうど馬車のいく方向で木に止まっているようだ。このまま逃げなかったら仕留めることにしよう。少しして目視できる位置にきた。


「リア、百メートル先にブラックバードがいる」


「私にやらせて!」


「いいよ。このまま逃げなかったらな。この方向、あの高い木に止まっている。でも、このまま馬車で近づいていったら多分逃げると思うぞ」


 さすがに仕事中だし、馬車を止めて狩りをするわけにはいかない。


「やってみる」


 フレイムアローの射程は大体五十メートルくらいだ。逃げるかどうかは運次第だな。


 馬車が近づいていくがブラックバードはまだ気づいていない。クレリアは既に腕を構えている。


 ああ、気付かれた。その瞬間、クレリアがフレイムアローを放つ。まだ七十メートルはある、残念だが届かないな。


 と思ったが、予想に反してフレイムアローは飛び続け、既に飛び立っていたブラックバードに向かって飛んでいき、命中した。


 驚いたな! 恐らく通常より魔力を込めて長く飛び続けるようにイメージしたのだろう。盲点だったな。こんな簡単なことに気付かないなんて。俺はまだまだ頭が固いようだ。


 後ろの馬車から歓声が上がる。クレリアが荷台に立って構えていたので注目していたようだ。


 申し訳ないがヨーナスさんに馬車を止めてもらってブラックバードを回収してきた。血抜きは馬車で走りながらでもできるだろう。


「これ、宿で料理してもらったらどうだ? ブラックバードは美味いからな」


 夕食のリクエストを聞いてきたぐらいだから、きっと料理もしてくれるだろう。


「それはいいな、そうしよう! でも私はアランに料理してもらったほうがいいな。厨房を借りられないだろうか?」


「うーん、どうだろうな。プロの料理人の厨房だからな。難しいんじゃないか?」


 そう言われると段々料理がしたくなってきた。昨日買った調味料も使ってみたい。


「ダメ元で頼んでみようか」


「そうしよう!」


 その後は特に問題もなく無事街に着くことができた。冒険者ギルドの前で依頼書にサインを貰ってヨーナスさんたちとは別れる。


「アランさん、今日はありがとうございました。助かりました」


「いえ、仕事ですからね。こちらこそ、こんな割のいい仕事をありがとうございました」


「それでは。何か情報が入ったら『豊穣』まで連絡しますね」


「よろしくお願いします」


 ついでだから、依頼書をギルドに提出して換金してしまおう。いつもの受付職員がいたのでそちらの窓口にいく。


「依頼を達成したのでお願いします」 依頼書を提出する。


「わかりました。おおっ、さすがアランさんたちですね。評価が『S』になっていますよ」


「評価なんてあるんですか?」


「そうです。依頼主が満足しているかの確認をしているんです。普通はBとかCなんですよ。この評価と依頼金額の合計は、冒険者のランクアップの目安になります。なにか依頼主に喜ばれることをしたんですか?」


 なるほど、顧客満足度調査ということか。いろいろと工夫しているんだな。


「特には何も。まぁグレイハウンドが出てきたので駆除はしましたけどね」


「駆除って… 何頭ぐらいいたんですか?」


「十頭です」


「ええっ!? 十頭も? シャイニング・スターの皆さんは三人ですよね? 依頼主の方も戦ったんですか?」


「いえ、俺たちだけですね」


「つまり三人だけで十頭のグレイハウンドを撃退したと?」


「そうですね、全部駆除しました」


「…… なるほど、評価が『S』の理由がわかりました。こちらが報酬の五千ギニーです。グレイハウンドの魔石を売る場合は、あちらの窓口にいってください」


 そういえば、魔石は売ることができたんだった。集めている理由をすっかり忘れていた。


「ちなみにグレイハウンドの魔石って幾らなんですか?」


「えーと、グレイハウンドは一つ四百ギニーですね。これは魔石本来の相場三百五十ギニーに、討伐の報酬として五十ギニーが加算されていますので、他所で売るよりギルドに売却したほうが得ですよ」


「そうですか、ありがとうございました」


 結構いい値段だな。普通の宿に四日は泊まれる金額だ。


「なぁ、この魔石って売らないで取っておいていいか? ほら、俺の革鎧って魔石を使うからできるだけとっておきたいんだよな」


 それに試したいこともある。


「勿論、構わない。アランの好きにしてくれ」


「エルナは?」


「勿論、私も ア、アランの好きにしてもらって構いません」


「まだ三時くらいだし、宿に寄ってから魔術ギルドに行ってみないか?」


「そうしよう!」


 宿に戻るといつもの女の子がいたので、厨房の件を訊いてみる。


「変なお願いなんだけど、食材を持ち込みで厨房を借りて俺が料理することってできないかな?」


「うーん、どうでしょう? ちょっとお父さんに訊いてきます」


 しばらくして奥から厳つい中年のおっさんがやってきた。この人が昨日食べた洒落た料理を作ったのか?


「お前さんかい? 料理をしたいっていうのは?」


「そうなんだ、俺は料理が趣味でね。丁度、仕事のついでで美味そうなブラックバードが捕れたんで、料理がしたくなってね」


 バッグの中からブラックバードを取り出した。


「お、デカいブラックバードだな。確かに美味そうだ。まぁ、今日はお前さんたちしか客はいないっていうし、俺が横で見てていいっていうなら貸してやってもいい」


「そうか、それは嬉しいな。調味料とかはできるだけ自分のを使うようにするから。それで幾らするんだ?」


「別に金はいらねぇよ。食材も持ち込みだしな。それでいつから始めるんだ?」


「ちょっとこの後、用事があって出なきゃいけないんだ。多分、夕方前には戻ってこられると思う。それからだな」


「だったら、それは俺が下ごしらえしておいてやる。適当な部位に分けて切ればいいんだろ?」


「それは助かるな。遠慮なくお願いするよ。じゃあ、また後で」


 ブラックバードを渡して宿をあとにした。


「随分と口の悪い男だ」


 クレリアがオヤジの態度に珍しく怒っていた。確かに高級宿の客に対する態度じゃないかもしれない。裏方の料理人が合っているな。


「そうか? 俺は少し口が悪いくらいのほうが気を使わなくていいな」


「いや、アランが気にしないのなら別にいい」


 魔術ギルドはどういうところなんだろうか? 非常に楽しみだ。俺達は魔術ギルドに向かって歩き始めた。




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