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022. 冒険者ギルド2

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



「ウィリー、冒険者ギルドまでどれくらい歩くんだ?」


「直ぐそこです。あの大きな建物です」


 ウィリーの指差した建物は大きな三階建ての建物だ。周りの建物の五倍くらいの敷地面積はありそうだ。


 入り口付近には結構な人数の冒険者がいる。なにかを待っているみたいだ。待ち合わせをしているのかもしれないな。


 早速、中に入ってみる。


「あそこが受付です」


 確かに受付のようなものが二箇所あり、一つの受付では職員と冒険者がカウンター越しに何か話している。空いている方の窓口に行ってみる。


 受付には若い女性の職員が座っていた。


「すみません、冒険者の登録をしたいのですが、こちらでいいでしょうか?」


「はい、登録するのはお二人ですか?」


「そうです、彼女と二人です」


「では、こちらの用紙に記入をお願いします」


 しまったな。俺はまだ数字とか自分とクレリアの名前くらいしか書けないし読めない。


「アランの分は私が書く」 とクレリア。


「そうか、頼む」


 クレリアが二人分の用紙にサラサラと記入していく。偽名で書いているが問題ないのだろうか? まぁ、IDのないこの世界では本当かどうか判るはずもないな。問題ないだろう。


 俺も文字くらい覚えなきゃな。本を何冊か目の前で誰かに読んでもらえればナノムが覚えてくれるはずだ。本はどこで売っているのだろう。


 クレリアは書き終わって受付職員に渡している。


 職員は用紙に目を通している。そしてびっくりした顔をした後、俺とクレリアのことをジロジロと見始めた。


「あの、ここは間違いないですか?」


 職員が用紙の項目を指差してクレリアに訊いている。


「間違いない」


 なにか書類に不備があったのだろうか?


「分かりました。それではギルドへと登録手数料としてお一人銀貨五枚が必要になります」


 俺は二人分の大銀貨一枚を職員に渡した。


「確かに。それではお二人にはこの後、ランク評価試験を受けていただきます。ランク評価試験はお二人の冒険者としての能力を評価するためのものです。試験の内容によってお二人のランクが決められます。ランクについて説明が必要ですか?」


 俺とクレリアは頷く。


「冒険者ギルドには様々な依頼が来ます。護衛や、魔獣の討伐、素材の入手など多種多様です。ギルドでは依頼の内容を審査し、その難易度によって依頼にランクを付けています。これらの依頼を効率よく達成するために冒険者の方々にもランクをお付けし、冒険者ランクに応じた依頼を受けていただくようにしています。依頼は冒険者ランクの一つ上の依頼ランクまで受けることができます。ランクは依頼ランクも冒険者ランクも、下の方から F、E、D、C、B、A、Sの七段階に分かれています。つまり一番下のランクのFランクの冒険者の方はEランクまでの依頼しか受けることができないようになっています。ここまではよろしいでしょうか?」


 凄いな、一気に言ってのけた。今まで何百回も言ってきているのだろう。


「問題ありません」


 クレリアも頷いている。


「では次に依頼についてです。通常の依頼はあちらの壁に貼り出されています」


 職員が指差すほうを見ると壁一面に依頼のようなものが貼り出され大勢の冒険者が熱心に内容を確認している。


「あちらの依頼の中から希望する依頼をこちらに伝えていただき、問題なければ依頼を受けることができます。依頼は早い者順です。依頼を受けたら指定の期日までに達成していただきます。依頼を期日までに達成できない場合にはペナルティーがあります。ペナルティーの内容については、こちらで審査し決定します」


「通常の依頼とは別に指名依頼というものがあります。これは依頼人が冒険者を指名した依頼です。受けるか受けないかは冒険者の自由です。次に強制依頼というものもあります。これは災害時などにギルドにより依頼されるものです。これは基本的に断ることはできません。断ることは重大なギルド規約違反となり重いペナルティーが科せられます」


「また冒険者には二ヶ月に一度は依頼を受けていただきます。これに違反した場合、冒険者ランクが一つ下がります。Fランク冒険者が違反した場合には除名処分になります。 ここまではよろしいでしょうか?」


「問題ありません」


 クレリアも頷いている。


「ではランク評価試験の準備をしてきますので、あちらの壁にあるギルド規約を読んでいてください。重要な規約はお話ししましたが、その他の細かい規約があちらに書いてあります」


「わかりました」


 クレリアと一緒に規約のある壁に向かった。壁一面にビッシリと文字が書いてある。なんとか読める文字の大きさだ。これはいい、クレリアに読んでもらおう。


「クレリア、小さな声でいいからこの規約を声に出して読んでくれないか?」


「なんのために?」


「文字を覚えようと思ってさ、頼むよ」


「そんなので覚えられるの!?」


「覚えられる。早口で読んでくれていいよ」


「わかった」 クレリアは読み始めてくれた。




 受付職員アミィは代わりの者に受付を代わってもらうと職員室へと向かった。


 職員室には、まだ朝早いこともあって五人の男性職員がいた。


「みなさーん、久しぶりの大型新人さんたちが来ましたよー! って言っても自称ですけどね」


「またかよ、アミィ。そういう勘違い野郎に限ってえらく弱いんだよなー」


「いえ、一人はとびきり可愛い女の子ですよ」


「なに? それは珍しいな。じゃあ俺はその女の子を担当しよう」


「女の子って言ってもまるで騎士様みたいな立派な鎧を着てますけどね」とアミィ。


「それでどんな大型新人なんだ?」 別の職員が訊く。


「えーと、女の子のほうが 剣術が十段階中の七、なんと! 火魔法が十段階中の八です」


「いやー、いくら自己申告といったって盛りすぎだろ、それは」


「いやいや、もう一人の男の人はもっと凄い人なんですよ! なんと剣術が十段階中の十、火魔法も十なんです!」


「あはは! 凄いなそれは! そこまでの勘違い野郎は何年ぶりだ?」


「二人共、魔法が使えるってのか? 試験をやるってちゃんと伝えたんだろうな?」


「失礼な! ちゃんと伝えましたよ!」とアミィ。


「じゃあ、曲がりなりにも魔法は使えそうだな。その半分でも事実だったら本当に大型新人なんだけどな。そうはいかないだろうな」


「字が読めなかったんじゃないのか?」


「いえ、女の子のほうが代表で書いたんですけど、凄く達筆な字ですし物凄く速く書いてました。あれで字が読めないわけないです」


「よし、話のネタに全員で見に行くか」


「俺が女の子を担当するぞ!」




 クレリアがもうすぐ規約を読み終わるかという時に職員が戻ってきた。


「お待たせしました。ランク評価試験の準備ができました。こちらにどうぞ」


「ふぅ、疲れた」 とクレリア。


「悪かったな、助かったよ」


 アップデートして規約を見るとちゃんと読むことができた。よし、あとはもっと本を増やすだけだな。


「ああ、ウィリー、悪いけど待っててくれるか?」


「わかりました」


 案内されたのはギルドの隣にある、これまた大きな建物で 縦三十メートル,横二十メートル、高さ十メートルの広い部屋だった。部屋というより運動場だろうか。部屋の奥には的のようなものがたくさん並べられている。


 そこに五人の職員と思われる男たちがいた。


「俺たちはお前たちの評価試験を行う試験官だ。 えー、お前たちの得意技能は剣術だな。剣術の評価では俺たちを相手に木刀で模擬戦をしてもらう。いいか、これは勝ち負けではない。別に負けたからと言って評価が下がることはない。試験への対応を見て評価するので持っている全てを出すように」


「まずは、リア! 前に出てこい!」


「がんばれよ、リア」


「わかった」


 リアが対戦相手と思われる試験官から木刀を渡されている。相手は三十代くらいの男だ。適当な距離を取って始めるようだ。


「用意…始め!」


 両者、木刀を構えたまま動かない。リアは隙を窺っているようだ。


 試験官が誘うように一歩踏み込んだりフェイントをかけたりしているが、リアはピクリとも動かない。


 試験官は余裕なのかジリジリとリアに近づいていく。そして近づいた距離で誘うつもりなのか木刀を大きく振りかぶった。


 ああ! その距離でリアにそんなもの見せたらと思った瞬間、リアが突っ込んでいった。


 試験官は振り下ろすしかない。だが、当然リアはそれを予想していて素早く横に避け、連撃が始まる。


 試験官は大ぶりをして体勢を崩したうえに、止むことのない連撃を受けどんどん体勢を悪くしていく。ついには小手に木刀を喰らい持っていた木刀を落としてしまった。


 木刀を首に突きつけて連撃は止まった。


「そっ、そこまで!」


 リアは旅の間にベックとトールに剣を教えていたが、付きっきりだったわけではない。ベックとトールに剣の素振りをさせている間などの空いた時間に、教えてくれと乞われて俺と剣の鍛錬をしていたのだ。


 俺が知っている剣術は連撃とコンボだけだ。ひたすら速く打ち込むことだけだ。


 これは仕方がない。俺の学校ではそういう戦い方が流行っていたのだ。こういう戦い方をしなければ友達との会話に入れなかった。


 仕方なくクレリアには連撃を教えた。俺がワザと隙を見せ、そこにクレリアが突っ込んできて、ひたすら連撃を加えるという練習を延々とやった。お陰で俺も防御がかなり上手くなったと思う。


 あの試験官の動きは、俺もクレリア相手によくやった動きだ。あれを見てクレリアが動かないわけがない。あの試験官は少しクレリアを舐めすぎていたのかもしれないな。


「よし、よくやった! 次は魔法の技能をみる」


 先程から仕切っている試験官が宣言した。


 部屋の奥にある的の所まで移動する。的から十五メートルくらい離れた位置から魔法を撃つようだ。


「あそこにある五つの的を狙って魔法を放ってもらう。得意技能は火魔法だったな。自分の一番得意な火魔法で構わない。評価ポイントは五つの的を撃ち終わるまでの時間と、それぞれの的の中心からの距離だ。時間は始めと言ってから計測する」


「始め!」


 クレリアは両腕を上げると腕の先の空間に、すぐに三本の炎の矢が現れ、三つの的にそれぞれ飛んでいき、それぞれ的の中心に突き立った。


 開始の合図よりも前に発動の準備をしていたようだ。これは違反にならないのだろうか?


 最初の魔法を放ってから八秒くらい経った頃、二本の炎の矢が現れ、残り二つの的に飛んでいく。それぞれ中心に当たっていた。


 五本同時には撃てなかったみたいだな。


 終わりの掛け声がない。クレリアが試験官を振り返ると慌てて「そこまで!」と言った。


「凄い!」

「なんだあれは!」

「そんなバカな!?」


 試験官には評判がいいようだ。


 たしかにクレリアは最初の頃に比べて見違えるように魔法が上手くなった。魔法はイメージが全てと判ってからは、馬車での移動中は荷物の上に寝転がり、暇さえあれば空に向かって魔法を放っていた。その成果が出たのだろう。


 試験官が集まり何やら相談している。やはり先程の違反を審査しているのだろう。


「よし、リアの魔法評価は終わりだ。よくやった。 続けてアラン! お前の魔法評価もやってしまおう」


 フライングは問題ないと見做されたようだ。そうかアリなのか。


 クレリアと同じように的の前に立った。


 「始め!」


 言い終わるか終わらないぐらいに、五本の炎の矢が俺の前の空間に現れ、的に向かって飛んでいく。普通のフレイムアローよりも数段速いスピードをイメージしたからか、目にも留まらぬスピードで矢が的に的中した。魔法が発動してから的に届くまで二秒かかっていない。


 どうだ! これはどう見ても最速だろう。


 あれ? そこまで! の声が掛からない? 少し矢が現れるのが早すぎたか?


 試験官を見ると固まっていた。


「あの?」


「あぁ、そこまで」


 ちゃんと測っていなかったが大丈夫だろうか。



「よし、次はアランの剣術の評価をおこなう!」


 また試験官が集まり何やら協議している。誰が俺の相手をするのかで揉めているようだ。


 やっと相手が決まったようで一人の試験官が進み出てきた。


「用意…始め!」


 試験官は動かない。最初は様子を見ようと思いこちらも動かないでいた。


 まだ動かない。埒が明かないので一歩前に出てみた。相手は一歩下がる。もう一歩前に出てみる。相手は一歩下がった。まさかビビっているわけじゃないよな?


 もう一歩前に出てみる。また、相手は一歩下がった。なんか面倒くさくなってきた。突進系の基本コンボの一つを試してみるか。相手に突進して三連撃を加える技だが、突進する割にはあまり隙が出来にくい技だ。その代わりに決定力にも欠ける所もある。


 先程と同じように一歩を踏み出すと見せかけてコンボを発動した。


 相手に突っ込んでいき、勢いを利用して構えている木刀を思い切り斬り上げる。二撃目は… とそこで気づいたが、一撃目で相手の木刀を弾き飛ばしていた。仕方がないので木刀を相手の首に添える。


「そこまで!」



「えー、これで評価試験を終える。審査結果は後ほど伝える。ギルド受付の近くで待っていてくれ」


 意外とあっさり終わったな。クレリアと一緒にギルドに戻る。


「試験ってあれで良かったんだよな?」


「他にやりようが無いんじゃないかしら」


「だよな」



 試験官たちは職員室に全員で戻った。


「おい、あいつら何だよ! 何者だよ」


「てか、お前ビビリすぎだよ! 何だよ、あの最後の試合は!?」


「いや、ケニーは確かにビビっていたが、あの踏み込みと剣の振りは本物だぞ」


「それよりも魔法だよ! 凄いなんてレベルじゃないぞ、あれ」


「俺の知り合いに魔術ギルドでもトップレベルにいる奴がいるが、そいつのフレイムアローより数十倍凄いぞ」


「結局、あの自己申告は正しかったってことか」


「いや、少なくとも魔法についてはそれ以上の実力だろう。正直、あいつら以上の人間がいるとは思えないくらいだ」


「確かに。それでどうするんだ。ランク評価の方は」


「元Bランクの俺たちがコテンパンにやられたんだ。認めないわけにはいかないだろう」


「じゃあ全員一致でいいな? あいつらはCランクだ」


「「異議なし」」



 クレリアとギルドで待って二十分くらい経った頃、先程の受付職員がやってきた。


「アランさんとリアさんはCランク冒険者として認められました。ギルド証を発行するので受付までお願いします」


「こちらがギルド証になります。肌身離さず持ち歩いてください。ギルド証を紛失するとペナルティーとして再発行に大銀貨一枚が科せられますので十分に注意してください」


 横一五センチ、縦十センチくらいの銅製のプレートを渡された。冒険者ギルドのマークと登録番号と名前、日付、Cランクと刻印されている。


「以上で登録は終了ですが、なにか質問はありますか?」


「Cランクってことは七ヶ月くらいは仕事を受けなくても問題ないってことですよね?」


「ええっ!? まぁ確かにそうですがランクがどんどん下がってしまいますよ?」


「ランクとかってあんまり気にしないので大丈夫です」


「気にしないって… しかしアランさんたちほどの実力者には、是非依頼を受けていただきたいとギルドとしては期待しています」


「わかりました。ありがとうございました」


「ええーっ? …」



「行こうか、リア、ウィリー」


 冒険者ギルドを出るところで女の冒険者とすれ違い様に目が合った。なかなか鋭い目をしている。その女冒険者がクレリアに視線を移した瞬間、驚愕の表情になった。


「ひっ、クレリア様!」


 クレリアは暫くポカンとした顔をしていたが、その顔もまた驚愕の表情に変わる。


「エルナではないか! どうしてこんなところに!」


「クレリア様、よくぞ御無事で!」


「…リア、どうでもいいが、物凄く目立っているぞ」


 なにか盛り上がっているので、気付かせるために肩を叩いた。


 周りにいる冒険者たちが、こちらを見て何事かと注目している。


「貴様! 何者だ!? 気安く触れるな!」


 女冒険者が俺に向かって言い、剣に手をかけている。


「エルナ! よい。場所を変えよう」


「とりあえずカトル防具店に行こうか」


 この鎧返さなきゃならないし、クレリアの鎧も渡さなきゃいけないしな。


 このエルナという女が何者かというのは今の会話から大体想像がついた。


 とてもじゃないが「それじゃまた」なんて関係ではないだろうし、クレリアとは積もる話もあるだろう。多分、俺に聞かせたくないこともあるに違いない。二人にはどこかでゆっくり話し合ってもらったほうがいいと思う。


 カトル防具店はすぐ近くなので無言で四人で歩く。


 店に入りカウンターまで行くとザルクが声を掛けてきた。


「よう、早かったな。試験はどうだった?」


「ああ、Cランクになった」


「そりゃ凄い! さすがだな」


「まあな、この鎧脱ぐの手伝ってもらっていいか? まだよく判らないんだよ」


「リアも、そっちのエルナ? に手伝ってもらって脱いだらどうだ?」


「わかった」


「なぁ、ザルク、俺の鎧もこんな風に着たり脱いだりが面倒なのか?」


「いや、こんな鎧とあの鎧を一緒にしないでくれ、あっちは最高級の革鎧だからな。もっとちゃんとしているよ。一人で簡単に着れるし、脱ぐのも簡単だ」


「そうかそれを聞いて安心したよ」


「リア、この後どうする? 俺はタルスさんの屋敷に戻るけど、リアは彼女と話があるんだろ? どっか寄っていくなら金を渡しておくよ」


「私も一緒に戻る」


「そうか? まぁ、ちょっと部屋を借りればいいか」


 そういえば、俺は甘味も作らなきゃいけないし、さすがにタルスさんの家にもう一泊はできないから宿もどこか確保しなきゃいけない。結構忙しい一日になりそうだな。


「ザルク、じゃあ鎧のことは頼むよ。三日後に取りにくる」


「分かった。任せておけ」


 タルスさんの屋敷に向かって歩く。クレリアとエルナは、俺とウィリーから少し遅れて歩き、なにやらヒソヒソと話している。勿論、聴覚を強化すれば聞こえるだろうが、そんな野暮なことはしたくない。


 タルスさんの屋敷に着いた。


「ウィリー、悪いんだけどヨーナスさんの手が空いていたら呼んできてもらえないか?」


「わかりました」


 ヨーナスさんはすぐに来てくれた。


「すいません、お呼び立てして。実はリアが冒険者ギルドで知り合いにばったり会いまして、積もる話もあるようなので、もし問題なければ彼女をリアが借りている部屋に入れてもいいでしょうか?」


「勿論です。お客様のお客様は私共のお客様です。今、御茶を用意させます」


「すいません、お手間かけます」


「じゃあ、リアとエルナは部屋で話でもしてこいよ」


「わかった。アラン… ありがとう」


「いいさ」


「アランさん、冒険者ギルドに行ったということは登録をなさりに?」


「ああ、そういえば伝えてなかったですね。そうです。今、リアと登録をしてきたところです」


「ちなみにランクは何になったのでしょう?」


「二人共、Cランクと言われました」


「ほぅ! いきなりCランクとは素晴らしいですね。さすがです」


「いえ、大したことはありません。それよりもいいお店を紹介頂いてありがとうございました。おかげで最高の品を格安で手に入れることができました」


「いえ、こちらこそお買上げいただきありがとうございます。…つきましてはアランさんに御相談があるのですが?」


「なんでしょう?」


「アランさんが旦那様に御返却いただいた商隊の荷の件なのですが、回収したくとも盗賊のアジトの場所は旦那様とアランさん以外は正確な場所を知らないとのことで困っていたのです。もし可能であればアランさんに指名依頼という形で回収のお手伝いをしていただけないかと考えているのですがいかがでしょうか?」


「ああ、そういえばそうですね。勿論、お引き受けします。しかし結構な量の荷物があったので回収の手段が…」


「いえ、回収はこちらの手の者がおこないますので、アランさんには場所の案内と護衛をお引き受けいただけたらと考えております」


「なるほど、それであれば何の問題もありません。お引き受けします」


「では依頼のほうは、こちらで明日にはギルドの方に出しておきますのでよろしくお願いします」


「了解しました。それで例の甘味の件なんですけど、もし問題なければ今から取り掛かろうと思うんですけどどうでしょうか?」


「勿論、問題ありませんとも。厨房に御案内します」


 ああ、どんな食材があるのか凄く気になる。


 甘味を作らせようというのだから砂糖の類はあるだろうけど、砂糖と小麦粉しか無かったらどうしよう。それじゃできるものは、たかが知れている。料理が趣味と言った手前、変な物は作れない。ああ、本当に余計なこと、言ったなぁ。




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