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021. 冒険者ギルド1

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。



[夜明けです。起きてください]


 よし、朝だ。別にこんなに早く起きる特別な用があるわけじゃない。昨日の宴会中にヨーナスさんに風呂がいつでも入れると聞いて無性に朝風呂に入りたくなっただけだ。


 なんでも風呂釜を魔改造して薪ではなく魔石で風呂の水を温めているので簡単な操作で風呂が沸かせるらしい。


 素晴らしい発想だ。俺も家を建てることがあったら是非、真似したい。同室のベックとトールは、まだ寝ているので放っておこう。


 早速、風呂に行ってみる。誰もいないな、よし。皆で入る風呂もいいが貸し切り状態のほうが贅沢な感じがしていいな。


 ゆっくりと風呂を堪能してから部屋に戻るとベックとトールは丁度起きたところのようだ。


「えーっ! アランさん風呂行ってたんですか? ずるい! 声掛けてくださいよ!」


 トールも頷いている。


「ぐーすか寝てるほうが悪い。お前達は朝から査定だろ。準備しておけよ」


「ちぇっ、そんなのまだ先ですよ。九時からって言われているんです」


「あ、そうだ。じゃあ、金勘定しようぜ」


 三人の荷物は既に部屋に運び込まれている。当然採取バッグも運び込まれていた。これにはベックとトールも乗り気だ。


 金をぶちまけて三人で金を数える。何故か金貨が取り合いだ。


 全部で銅貨九十二枚、大銅貨七十五枚、銀貨四十一枚、大銀貨二十五枚、金貨十九枚 があった。


「ひえー! こんな大金見たの初めてです!」とトール。


「結構、金貨が多かったな。全部で二十一万九千九百四十二ギニーだな」


「えーと、お前達の取り分が…」


「アランさん! 俺たち考えたんですけど、その金は受け取れません」とベック。


「…なんでだよ?」


「だってその金はアランさんが盗賊のアジトに乗り込んで稼いできた金じゃないですか」とベック。


「俺たち、何にもしてないのに受け取る理由がありません」とトール。


「だってお前たちも一緒に命を張って頑張ったじゃないか」


命を失うリスクはみんな同じだった。


「確かにそうかも知れませんが、倒したのもアランさん、アジトに乗り込んだのもアランさん、俺たちなんて盗賊見張って金巻き上げて縛っただけです。同じわけありません。それにアランさんたちはこれからも旅を続けるんでしょう? いくらだって金は必要なはずですよ」


「…そうか、分かった。お前たちの気持ちは嬉しい、ありがとう。この金はありがたく受け取る。でも最初の話の通り報奨金の分け前は受け取れよな。そこは譲れないぞ」


「…わかりました。こちらこそ有難うございます」


「えーと褒賞金は、っと そういえば生きている元気な盗賊って何に使うんだ?」


「捕まった盗賊の使い道ってことですか? ***ですよ。鎖につないで死ぬまで鉱山で働かされるらしいですよ」


 言語アップデートする。奴隷ってことか。帝国の倫理委員会に見つかったら大変なことになるぞ。まあいいか。


「あいつらは十分働けそうだよな。すると盗賊一人、大銀貨五枚だ。十五人で七万五千ギニー、一人当りの分け前は一万八千七百五十ギニーだな」


「「一万八千七百五十ギニー!」」


「おいおい、まだ朝早いんだからそんな大声だすなよ」


「「すいません」」


「えーと、金貨が一枚と大銀貨が八枚、銀貨が七枚、大銅貨が五枚…大金じゃないですか!」 とトール。


 いきなりドアが開けられクレリアが入ってきた。昨日のドレスっぽいワンピースを着ている。


「お前たちは何を朝から騒いでいるんだ」


「だって師匠。アランさんが分けてくれるっていう褒賞奨金の分け前が一人、一万八千七百五十ギニーもあるんですよ?」


「なるほど、そうか」


「そうかって…」


「そんなことよりアラン、今日は何をするつもり?」


「そうだな。冒険者ギルドに行って登録をしてこようかと思っているんだ。身分証の代わりはこれからも必要だろうからな」


「では私もそうする。その後でもいいから、アランの装備と服を買いにいこう。旅の間、ずっと気になってたの」


「服はともかく装備ってリアが着ているみたいな鎧ってことか? 俺はああいうのはあまり好きじゃないな。動きづらいんじゃないか?」


 宙兵隊のパワードスーツなら喜んで着るんだけどなぁ。


「金属鎧が嫌なら革製の物もあるわ。革製のものは動きやすいって聞いたことがある」


「そうか、確かに興味はあるな。一度見てみるか」


「冒険者ギルドに行くなら防具を買ってから行ったほうがいいかもしれないですよ。俺とトールで去年、登録しようとして行ったんですけど剣も防具もないって判ったら門前払いでしたから。まぁその前に銀貨五枚っていうのも払えなかったんですけどね」とベック。


「なんでだろうな? 防具なんかなくても仕事はできるだろうに」


「なんでも実力を見るとかいって試合みたいなものがあるみたいですよ」


「試験があるってことか?」


「多分、そうだと思います」


「なるほどな。防具は購入したほうが良さそうだな。後で良さそうな店を訊いてみよう」


「それとアラン、帰ってから大事な話がある」


 クレリアは真剣な表情だ。


 やっとかよ! 正直、もう俺のほうから訊こうかと思っていたところだ。


「わかった。帰ってきてからな」


 部屋のドアがノックされた。


「ヨーナスです。朝食の準備ができました」


 案内された部屋は昨日宴会をやった部屋と同じだった。俺たちしかいない。やっぱり朝から騒ぎ過ぎたんだよな、きっと。


 食事は昨日と同じくいろんな種類があり、ボリュームもあってクレリアたちも大満足だ。


 食べ終わり一息ついていると、ヨーナスさんがお茶を持ってきてくれたので訊いてみる。


「ヨーナスさん、どこかお勧めの防具を売っている店ってありますかね?」


「そうですね… 手前味噌になってしまいますが、やはりウチの系列の店がお勧めですね」


 おお、防具店も経営しているのか、タルスさんの店なら安心だな。


「買いたいのですが、教えてもらえませんか?」


「少しお待ちいただければ、紹介状を書きましょう」


「ありがとうございます。お願いします」


 お茶を飲んでいる間に書いてきてくれた。仕事が速い。


「カトル防具店という名前です。店主にこれを渡してください。案内にはこのウィリーを付けましょう」


 カトルの店なのか。ウィリーは昨日、門で会った少年だった。


「ありがとうございます。店は何時からやっているのですか?」


「もう開いている頃ですよ。冒険者は朝が早いですからね」


「では、これから行ってきます」


「それからアランさん。昨日の甘味の件、よろしくお願いしますね。奥様とタラ様がとても楽しみにしているので」


 あぁ、忘れてた! 本当に余計なこと言ったよな。


「勿論です。午前中には戻ると思いますので」



 クレリアが鎧に着替えるのを待って屋敷を出る。今日もいい天気だな。


 店は屋敷から十五分ほど歩いた所にあった。周りの店よりも小さいが清潔感のある店構えだ。既に開店している。


「ウィリー、もう帰っていいぞ。仕事あるだろ?」


「いえ、アランさんたちを案内するのが仕事ですから」


「そうか、悪いな」


 店に入るとズラリと鎧が並んでいる。どちらかと金属製が多いようだ。整理整頓されていて気持ちがいい。


「いらっしゃい」


 奥のカウンターらしき所に中年の男がいるので行ってみる。


「防具を買いたいんだが、ああそうだ、これを見てくれ」


 紹介状を渡す。店員は素早く目を通した。


「大旦那様の恩人とあっちゃ気合いれなきゃな。それでどんな防具が欲しいんだ?」


「それが具体的には決まってないんだよ。とにかく動きが遮られるのは困るな。だから金属製の鎧はちょっとパスって感じかな」


「そうだな、確かに金属製の鎧は重いし構造上どうしても動きは制限されるところがある。となると革鎧ってことになるな、あっちにあるのが一般的なやつだな」


 幾つかの革鎧が展示してある一角に行ってみる。


「結構いろんな種類があるんだな」


 値札がついていて三千ギニーから三万ギニー以上と幅広い。


 同じようなデザインの鎧なのに金額にかなりの幅があるな。


「これは何が違うんだ?」


「それは勿論、素材だな。安いのはオークの革だし、高いのはワイバーンの革を使っているんだ」


「やっぱり高い方がお勧めなんだろ?」


「そりゃそうだ、モノが全然違う。オーク素材の物はただ革を固く仕上げて鎧の形にしているだけだ。しかし例えばこのワイバーン素材の最高級品はある意味、魔道具だよ」


 一番奥に展示されている黒い鎧のほうに近づく。


「魔道具?」 興味深い。


「そうだ、これは一般的にはあまり知られていないが、ワイバーンとかドラゴンっていうのは魔力を使って空を飛んでいるらしい。詳しい話は俺もよく判らないんだが、要するにワイバーンは魔力を利用して生きているってことだな。最近判ったことだがワイバーンは打撃を受けた時に魔力で皮を固くして防御しているっていうことが判ったんだよ」


「その性質を利用して作ったのがこの鎧だ。この胸の所に魔石が付いているだろ? この魔石の魔力を鎧全体に流しているんだ」


「今、この腕の部分は結構柔らかい状態だろ?」


触ってみると確かに柔らかい。


「でもこうやって打撃を加えると」


 と言いながら、近くにあった木刀で腕の部分を叩く。コンという硬い音が聞こえた。


 これは凄い! 瞬間的に革を固くしているのか! 触ってみるともう柔らかくなっていた。


「どれくらいの時間、固くなっているんだ?」


「大体一秒か二秒くらいだな」


「凄いな、どれくらいの強度があるんだ?」


「木刀で殴っても全く問題ないし、矢で射られても先端くらいしか刺さらない。槍も大して刺さらないな。グレイハウンドに噛まれても問題ないな。要するにワイバーンに通じない攻撃は問題ないってことだな」


 ワイバーンという魔獣は見たことがないが、話からすると上位の魔獣らしい。


「完璧に思えるな」


「いや、そうでもない。コイツは斬撃に弱いんだよ。さすがに他の革鎧よりは強度はあるが、金属鎧に比べるとかなり落ちる。斬撃以外にもバリスタなんかの攻撃は当然無理だ。要はワイバーンに効果がある攻撃はダメージを受けるということだな」


「なるほどな、他に欠点は?」


「魔力を使うので魔石を消費するってとこだ。こういう待機状態だと殆ど魔力は使わないが、攻撃を喰らう度に魔力は消費され、消費される魔力の量は攻撃の強さに比例する。例えば、付けているのはグレイハウンドの魔石だが、このレベルの魔石だとこの木刀で本気で百回も殴れば魔力は無くなるな」


「結構な消費量だな」


 木刀で百回殴られて使えなくなる鎧か。


「そうなんだよ、そこさえ改善できればもっと売れそうなんだけどな」


「魔石の交換はすぐにできるのか?」


「それは大丈夫だ。この魔石を横にずらせば直ぐに取れる。はめるのも同じだな。やろうと思えば戦闘中に変えられなくもない」


「魔力の残量とかは分かるのか?」


「それは魔石の色を見て判断するしかないな」


「魔石は魔力が無くなると透明になるのよ」


 クレリアが教えてくれた。


「幾らだ?」


 値札には三万五千ギニーとある。


「うーん、ギリギリの特別価格で二割引きの二万八千ギニーだな」


「よし、買った」


 金には余裕があるし、装備をケチっても良いこと無さそうだしな。


「すぐ着ていきたいんだけどできるか?」


「おいおい、このレベルの鎧だとサイズとか色々と調整しなきゃダメだ。最低でも二日は掛かるぞ」


「そういうもんか、参ったな」


 冒険者ギルド行けないじゃん。


「なにかあるのか?」


「冒険者ギルドに行って登録しようと思ってたんだよ」


「お前! まだ冒険者じゃないってのか!?」


「ああ、でも腕のほうは、そこそこ有るつもりだから心配するな」


「まぁそうだよな。びっくりさせるなよ。そうか、ランク評価試験のための鎧だな?」


「ランク評価試験?」


「知らないのか? お前のように腕の有るやつを一番下のランクから始めさせても無駄だろうって考えで、実力を見てスタートするランクを決めようって感じだな。まあ、最高評価でもCランクからだけどな」


「なるほど、そういう意味の試験か」


「中古の革鎧であれば貸し出せるぞ。修理に時間が掛かる時とかに貸し出している鎧だ。まぁあまり良いやつじゃないけどな」


「それでいいよ、幾らだ」


「貸し出すのはサービスしてやるよ」


「そうか、悪いな。じゃあ金だな」


 一応金は全部持ってきている。採取バッグから金貨二枚と大銀貨八枚を取り出して渡した。


「おお、金持ちだな。毎度あり。そういえば名乗ってなかったな。俺はザルクだ」


「俺はアラン、こっちはリアだ」


「さっきから気になっていたんだが、その嬢ちゃんが着ているのはミスリルの鎧のように見えて仕方がないんだが、違うよな?」


「この鎧はミスリルでできているわ」


「なにっ!?」


 慌ててクレリアの周りを回って鎧をチェックし始めた。クレリアはキョトンとしている。


「ああ、済まなかった。つい良い防具を見ると我を忘れちまうんだよ。確かにミスリル製だ。それを作った奴は凄い腕をもった奴だな」


「しかし… ちょっとこっち来てくれ」


 俺の腕を掴んで隅の方へ連れていく。


「おい、あの嬢ちゃんは**なのか?」


 またその単語か。流石にもう大体の意味は推測できている。


「そうかもな。俺もよく判らないんだよ」


「そうか、訳ありだな。しかしあの格好でうろつくと不味いぞ。見る奴が見れば直ぐにミスリル製だってことは判る。護衛のお供がたくさんいれば問題はないだろうが、一人で歩かせたらすぐに襲われちまうぞ」


「そんなに貴重な鎧なのか?」


「当たり前だろう! そうだな、俺の店で売るなら四十万ギニーはくだらないな」


「そんなにするのか!?」


「しかもあのデザインだ。騎士も冒険者も金属鎧を使うがデザインが全然違う。あの嬢ちゃんのは正統派の騎士のデザインだ。見る奴がみれば、**のお嬢様っていうのはバレバレだ」


 店に置いてある金属鎧と見比べてみる。


「俺には同じにしか見えないけどな」


「全然違うだろうが!」


「リア、ちょっとこっち来てくれ」


 クレリアを店の金属鎧の横に立たせてみるが、やはりよく判らない。


「同じだろ? これ」


「全然っ違う!」


 ザルクは相当熱くなってる。


「ほら、ここのラインとか、こっちにはこれが無いだろ? あとここだな、ここが決定的に違う。ここもだ。ああ、ここらへんも違う…」


 確かに言われれば違っているのは判るが微々たる違いにしか思えない。


「なぁ、この鎧をミスリルに見えなくすることってできるか?」


「ん? ああ、そりゃな、色をくすませれば見分けるのは難しくなるだろうな」


「デザインを冒険者っぽくできるか?」


「そりゃできるが、この鎧は芸術品って言ってもいいぐらいだぞ。そんな勿体無いことやるべきじゃない」


「別にいいよな? リア」


「構わない」


「材質をミスリルに見えなくすること。デザインを冒険者仕様にすること。これは徹底的にやってくれ。どれくらいの費用と日数が掛かる?」


「あぁ勿体無い… そうだな、三日間で五千ギニーだな」


 意外と安いな。採取バッグから大銀貨五枚を取り出して渡した。


「じゃあ冒険者ギルドの帰りにリアの鎧を置いていく。俺の鎧も三日後でいいや」


「分かった。お前さんの寸法を測るからこっちに来てくれ」


 その後、色々と寸法を取るのと貸してもらった鎧を着るのに結局一時間くらい掛かった。


「冒険者ギルドってもう開いてるよな?」


「あそこは夜明け前からやってるよ」


 俺とクレリアとウィリーは冒険者ギルドに向かった。




通貨の価値ですが、下記ぐらいの価値と考えて貰えると嬉しいです。


銅貨  百円

大銅貨  千円

銀貨  一万円

大銀貨  十万円

金貨  百万円

大金貨  一千万円

白金貨  一億円

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― 新着の感想 ―
>シルドラさん ベック達が辞退するのはある意味大金を持ちすぎても 狙われるのが分かってるからでしょうね。 村に持ち帰っても村が狙われるのでは割が合わないわけで。
[気になる点] 白金貨が1億円と書かれていますが、ミスリルの防具を作るには、コイン1枚の金属量どころではないですよね? そのミスリル鎧が四十万ギニーとはどういう事でしょう ミスリルと白金貨は別の素材…
[良い点] 盗賊討伐に関する賞金や、助けた商人タルスさんから貰った物などお金に関する話が出てきて、物語にリアルな感じが混ざり良いと思いました。 [気になる点] ベックたち良いやつすぎます。約2000万…
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