4P:理解出来ない言葉
「……」
「……」
僕が無理やりついていくと言って十分余り。
……ユウコの隣にいる僕は物凄く気まずくなっていた。
いつものユウコならば、話を振ってくるのだけれど、風邪の治りかけという事もあるだろう、全く話し掛けてきてくれない。
いや、分かるよ。
たまには僕から話を振らなきゃいけないくらいは。
でも、どんな話題を振っていいのかとか分からないし……特にこれと言って話すこともないんだよなぁ。
「……セイジってさ」
今まで沈黙していたユウコが、目線を変えずに呟いてくる。
僕はそれに、「ん?」と返事をする。
「時々、お節介だよね」
「……そうかな?」
自分ではそう思ってないんだけど。
「学校ではあんまり人助けとかしてないけど?」
「うん、だから……時々」
そうなると……そうかも。
今もいらないお節介焼いてるし……。
でも、これは本当にユウコが心配だからやってる事だ。
普段ならしない……と思う。
「……私なんか、心配しなくていいのに」
「へっ?」
ユウコの発言に驚いて、彼女の顔を見てしまう。
表情は曇っていて、辛そうに見える。
「ケホッ……なんで心配してくれるの?」
「なんでって……幼なじみだし、仲もそれなりにいい……と思いたいし……」
幼なじみは本当だから断言できたけれど、仲がいいかはユウコ次第なので、自信を無くして自分の希望になってしまった。
「だから、心配するんだ。たぶん、きっと……」
これがコウイチでもしていたハズだ。
最も、僕が助けられてばかりだけど。
「そっか……えへへ」
曇っていたユウコの顔が晴れて、僕の見慣れた、太陽のように輝く笑顔になってた。
そんな笑顔を見てると、つい自分まで笑みが零れるのだから不思議でしょうがない。
さっきまでの気まずい空気は消え去って、そのまま買い物に行った僕達だった。
……まぁ、案の定ユウコは風邪を再発させて、帰り道になるとフラフラした足取りになっていた。
「ゲホッ……」
「言わんこっちゃない……」
僕が買い物袋も持って、ユウコに肩を貸すという事態になってしまった。
ユウコの腕を自分の首にまわしているって形で移動してる。
行き交う人がジロジロ見てるけど知ったこっちゃない。
「うつっちゃうよ……風邪……セイジは帰って……いいから……」
ユウコは僕に対して馬鹿な事言ってくる。
ユウコがこんな状態で帰れるわけ無いでしょうが。
「これで帰ったら、最低じゃん。最後まで付き合うよ」
風邪がうつったらうつったで、休めるからいいけど。
てか、そっちの方がいいかもしれない。
成績がヤバくなりそうだけど。
「なんで……これじゃ……昔と同じだよ……」
「……昔?」
……昔ってなんだろう。
同じって……こんな状況になった事はない。
こんな風にユウコを助けてあげた事なんて全く……。
普段は逆に助けられてるし……。
「……」
僕がユウコの方を見ると、軽く鼻を啜っていて、目を閉じていた。
そして、ほろっと涙が一滴、流れ出る。
「えっ!? ユウコ、どうしたの!? 辛いの!? ちょっと休む!?」
「何でもない……から……心配しないで……」
いやいや、泣いてる相手を心配しないでって……無理だから!
「心配するよ! だって、ユウコ、泣いてるもん!」
「いいからッ!」
僕が反論すると、ユウコが大声を出して僕を静止させた。
……なんでそこまでして、心配しちゃいけないんだろう。
「放っておいて……私なんか……」
「……」
いつも元気で、僕を勇気づけてくれていたユウコはそこにはいなかった。
今にも壊れそうで、自信を無くしている、一人の少女がそこにはいた。
でも、紛れもないユウコなんだ。
こんな一面もあるんだ……と、僕は思って一言だけ言う。
「家まで送ったらね」
……その後、彼女は沈黙していた。
ユウコ……どうしたんだろう。
それに、昔と同じって何なんだろう。
もしかしたら、その昔ってヤツと関係があるのかな。
僕は頭の中で考えを巡らした。
答えが出るにはまだまだ時間が必要で、ユウコの家の前に着いても、全く何も思い浮かばなかった。
「……セイジ」
ユウコは、僕からすぐに離れて、買い物袋を引ったくる。
……ユウコらしくない、行動に僕は戸惑いつつも、何? と言う。
「もう、私には構わないで」
「……えっ?」
……僕には到底理解出来ないような言葉が、ユウコから放たれていた。




