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メモリー  作者: まっつー
記憶と日常の始まり
3/8

二年B組 浅倉 清二

 ユウコと共に登校したセイジは、遅刻する心配もなく赤山高校へと辿り着き、昇降口前へと足を踏み入れる。すると、多くの人だかりが昇降口前に出来ていて、中に入ることさえままならない。


「うわっ……人が多いな……」

「やっぱり、皆クラス分けが気になるんだろうね」


 セイジの呟きにユウコが続ける。昇降口の前に貼り出されたクラス分けの紙は集団が見るには小さすぎ、少しずつ流れに乗って見るしかないのだ。セイジとユウコは流れに乗り、昇降口へと向かう。


「同じクラスだといいね」

「うーん……確かに一年の頃は違ったからなぁ」

「うん、だから今年は一緒だといいね」

「うん。そうだね」


 ユウコはニッコリとセイジに微笑みかけ、セイジはそれに頷く。いつも通りの他愛ない話をしていると、セイジたちは昇降口の真ん前へと辿り着いた。ユウコとセイジはクラス分けの紙をしっかりと見続け、自分の名前を真剣に探す。


「あっ……ユウコは2-Aだってさ」

「ホントだ。セイジとはまた別のクラスかー……」

「そんな事もあるって。僕は2-Bか」


 二人はまた別のクラスになってしまい、ユウコが残念がるも、セイジはそれを流して自分の教室を覚えていた。流されたのがショックだったのか、ユウコはジッとセイジを睨む。それに気づかずに、セイジはじっくりとクラス分けの紙を見ていた。


「ヤマダは同じクラスなんだ。助かったぁー……孤立しそうだったから危なかった」

「孤立しても、私が休み時間に行ってあげるよ」

「い、いや……それは遠慮しておくよ……」


 一年の頃も、ユウコはちょくちょく休み時間にセイジに会っていた。その度にセイジは周りの目線によって気まずい思いをしていたのだが、ユウコはそれに気づいていない。

 ――――ユウコは男子から人気がありすぎるんだよ……! ユウコと話した後なんか、クラスの男子が寄ってきて「付き合ってるのか?」とか「紹介しろよ」とか言われるんだから!


「えー、なんで?」

「それじゃあ、先行ってるから!」


 セイジは面と向かって自分の思った事は口に出せなかったので、ユウコから逃げるようにして教室へと向かった。


「あ、もう!」


 セイジの後ろからはユウコの怒ったような声が響いていた。


 ……


 2-Bの教室に着いたセイジは、ふぅ……とため息を吐いて自分の席へと座った。黒板に自分の席が描いてあるので、それに合わせて座ったのだ。


「朝から……疲れた」

「随分と疲れてるな」


 セイジが呟いた後、すぐに予期せぬ返答が帰ってきて慌てて振り返る。そこには、少し焼けた肌をしてキラッと光る眼鏡が特徴のセイジの親友……山田やまだ 幸一こういちが佇んでいた。野球部の副キャプテンであり、成績優秀の学年内の秀才。まさに文武両道の持ち主だ。


「コウイチか……早いな、来るの」

「いつもの事だろう。セイジこそ、今日は早いんじゃないか?」

「学校始まるって時に遅刻って……目立つからなぁ」

「始まってから遅刻も充分に目立つと思うがな」

「わ、分かってるよ……」


 セイジはコウイチの言葉に苦笑するようにして、応えていた。一年の頃もセイジは遅刻はしょっちゅうしていたので、強く言い返せないのだ。


「それより、春休みの宿題は終わらせたのか?」

「終わらせたよ。超特急でね」


 セイジの応えに満足したのか、コウイチはニヤっと笑い、頷くと「ならいいんだ」と言う。冬休みの宿題をコウイチが手伝ったので、そんな事を聞いたのだとセイジは理解し、今回は大丈夫だったのだ。


「コウイチこそ、終わらせたの?」

「俺は昨日終わらした。習慣にしてたしな」

「よく毎日やる気になったよな……」


 感心したようにセイジは言い、コウイチはさも当然のように振る舞う。


「積み重ねが力になるからな。そこらへんはゲームと同じだろ?」

「……現実は文字と数字に支配されてるわけないよ。全然違う」


 等と話していると、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。

 それを聴くや否やコウイチは「またな」と言い、自分の席に座っていった。

 これからまた、代わり映えのしない、いつもの通りの日常が始まる。

 何も変わらない、何も変えられない。

 そう思っていた日常が……。

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