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メモリー  作者: まっつー
記憶と日常の始まり
1/8

(無題)

「……はぁ……はぁ……はぁ」


 12月25日……夜の公園にセイジの姿があった。彼は、待ち人はまだかまだかと凍える寒さの中、震えていた。周囲を見渡しても、誰も居ない。殆どの人物がクリスマスの定番とも言える、商店街のイルミネーションを見に行ってしまったからだ。本当ならばセイジも、こんなに待たずに二人で見に行く予定だったのだ。


「寒い……厚着してきたのになぁ……」


 寒いというのもそのはず、セイジは3時間も前からこの公園で待ちぼうけているのだから。それでも、セイジは待ち続ける。相手を信じずにこのまま帰るなんて事は、彼には出来ないのだ。


「大丈夫……もうちょっとで……来る……から……」


 自分で自分に言い聞かせていた。それから約3時間……あと数分でクリスマスが終わり、何でもない1日が始まろうとしていた。既にセイジの全身は凍えており、真冬の中、力なくベンチに座っていた。


「……まるで……アニメの主人公……みたい……だな」


 すっかり、意気消沈して項垂れていた。更に体温は低くなっていく。さらけ出している肌が痛いのは当たり前……それ以上に、セイジは心を痛めているのだ。


「こんなんじゃ……自信なくなるのも分かる……」


 セイジはゲームやアニメ……主にエンターテインメントを嗜み、それなりに詳しくなった。その中には恋愛絡みのものだってある。一度振られた少年が、トラウマを克服し、また新しい恋愛をする……というものをセイジは今、思い出していた。


「……あんな強さ……僕なんかにはないよ」


 次第にセイジの目は虚ろになり、公園の時計を見る。既に12時を過ぎており、新しい1日が始まっていた。ため息をつき、公園から立ち去る。


「……何がいけなかったかなんて……中学の僕には分からないや」


 すっかり涙ぐみ、鼻を啜っていた。手もかじかみ、体の震えは止まらない。セイジの家は、公園から5km程の位置にある。それ程遠くはない場所だが、充分に凍えたセイジにとってはとても遠い距離に思えた。だからだろう、セイジは周りのことに注意散漫になっていたのだ。


「……え?」


 プーッ!! と大きなクラクションを鳴らす音が何度も何度も響いていた。それに気づいた頃には、もうセイジの目の前に車が迫っていた。

 ――――まずい……!!

 そう思った時にはもう遅い。キキィィッ!! というブレーキ音と共に車が突っ込んで来る。セイジは全身が今まで感じたことのない強烈な衝撃と共に、吹き飛ばされる。意識は朦朧とし、体が熱を持ち、燃えるように熱いのだけを感じていた。


「ぅ……ぅっ…………ぅ……」


 目がかすむ……。それでも朧気に見えた景色をしっかりと目に入れようとする。そこには、先程僕を轢いたであろう車が、この場を離れていくのをしっかりと見つけた。

 ――――このまま死ぬのだろうか。僕はこのまま……好きな人にすら振られて……死ぬのだろうか……。リベンジは許されないのか……。

 徐々に消えゆく意識の中、セイジは誰かの足元が見えた気がした。それを見たセイジはゆっくりと目を瞑り、眠るように気を失った。

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