げん ご。
ロ
逆さになっていてもわからないような澄み渡る空は青々として、夏。そこには言語があふれている。陽射しが地平を荒野に変えてしまえないのは、言語の層が膜になって阻害しているからときみはいった。空の言語は塵芥と同じに、路上にふりつもる。
足元、白々とかがやく砂利が一面にひろがる。かがやきは言語に由来する。夏。
言語に満たされた空と言語のつもった砂利の境界線に立つ。心をさらうような風のうごめきが言語をはこび、言語が頬をなぞり、一度歩けば靴底から言語が染み込み、体内に蓄積していく。喉元までそれは満ちていき、やがて口から。
他人の言語がこぼれ落ちる。Tシャツを汚す。夏。
歩き出す。目的もなく、言語だけが飽和し、
擦り減らした靴底が誇らしい、
言語をより原色のまま吸い上げる。びちゃびちゃのTシャツ、夏。
「聞いた話によると、どうも今は秋らしいぜ」
あるとき靴下をすり抜けた言語はそんな連なりをしていた、驚いて、すっころんだ。尻もちをつくと思いきや、言語が避けたせいで、背中から落ちていく。砂利が裂けていく。モーゼもかくや。
落ちていく。
叫びを上げて、
悲鳴を上げて、
喉元の言語を使い切るまで、足先に溜まった真新しい言語を吐き出すまで、叫ぶ
やがてどこかに落下して、ぽかん。
言葉がなく、
なく、
しょげ散らかして、真っ黒の地面を蹴っ飛ばすとほこり。
くしゃみをして、あぁ
「ちくしょうめ」
ックンロール!!