49話
昨日は特別依頼の後に湯屋に行ってご飯を食べたから、いつもより寝るのが遅くなったけど、いつもの時間に起きて鍛錬をする。
朝日が昇る頃には、洸ちゃんも中庭に出て来て走り込みを始めている。
鎚や剣、槍などの鍛錬が終わる頃になり、洸ちゃんが近付いて来たが、洸ちゃん以外にも集まる人達が居た。
「「「「「おはようございます、ティティナさん。」」」」」
「え、あ、はい。おはようございます。」
昨日の特別依頼を受けた子達で、洸ちゃんとパーティーを組んだ子達と、アガサ率いるパーティーとシーラ率いるパーティー、そして、双子の魔術師のサリーとマリー。
洸ちゃんを入れて、合計23人だ。
「先を越された!おはようございます、ティティナさん。」
「「「「「おはようございます!」」」」」
「…お、おはようございます。」
さらに、魔術師のロナルドがリーダーのパーティーも現れたので、30人なった。
流石にこの人数が宿屋の中庭に集合してるのはマズイ。
宿屋に迷惑を掛けるだけじゃなく、他の宿泊客にも迷惑が。
「…ギルドの訓練場に移動しましょう。
洸ちゃん、悪いけどリリちゃんかリリちゃんのお母さんにお願いして、朝食のサンドウィッチ系をお弁当にしてもらって来ていい?」
「あ、うん。わかった。」
洸ちゃんが軽やかに走り去っていくのを見送り、他の子達に向き直る。
「えっと、皆は何か質問が有ってここに来たのかな?」
「いえ、昨日コースケがティティナさんから朝に鍛錬を受けていると聞いて、是非俺たちもと思いまして。」
や、やっぱり、ほとんどパーティー単位で来てるからそうだろうと思ったよ。
ただ朝の自主鍛錬でこんな人数見てられないのに。
質問あるならいつでも来ていいって言ったのは、私だけども、これはちょっと…。
でもこれで断ったら、洸ちゃんだけ特別扱いしてる事になって、後々問題になるよね。
はぁ、仕方ない。
「さっきも言ったけど、ここではこの人数を見ることは出来ません。
パパッとギルドの訓練場に移動しましょう。」
若干投げやりな感じで言ってしまったが、仕方ないよね。
この場で出来ないのを皆分かってくれたのか、ゾロゾロと移動が始まる。
全員の姿が中庭から消えたので、不安そうにこちらを伺っていたリリちゃんや、鍛錬をしようと中庭に出て来ていた他の宿泊客に向き直る。
「早朝からご迷惑をお掛けしました。申し訳有りません。」
「いや、まぁ、頑張れよ。」
「気にするな。」
などと声を掛けてもらえたので、一礼をして私もその場を後にする。
ギルドに到着後、既に仕事を始めていたターニャに詰め寄られた。
「ティナ、さっき特別依頼を受けてる子達の半数以上が揃って訓練場の方に向かって行ったけど。」
「あー、うん。
泊まってる宿屋にあの人数が押し寄せて、鍛錬して欲しいって。
洸ちゃんの鍛錬を面倒見てるの聞いたみたいでね。」
苦笑いで返答すれば、大きく溜息をつかれた。
「ほんっと、面倒見がいいって言うか、真面目って言うか、お人好しよね。
鍛錬見て欲しいなんて、断ればいいじゃない。」
「そうは言っても、昨日の今日で洸ちゃんを特別扱いするのは問題あるでしょ。」
「コースケ君はティナの保護対策で、その他の子は特別依頼の受講者よ。線引きは大切じゃないかしら?」
「そうなのかなぁ?
でもそれが原因で、洸ちゃんが辛い目にあったらと思うとね。」
「…ねぇ、ティナ。今晩家へ呑みに来ない?
コースケ君の事はディックに任せて、女同士の話をしましょ。」
「あ、うん。わかった。」
突然どうしたのかと訝しみながら頷く。
私が頷くのを確認すると、ターニャは手をヒラヒラと振りながら仕事に戻って行ったので、私は訓練場へと向かった。
訓練場へ入り、念の為確認をする。
「全員が鍛錬を見て欲しいでいいのかな?
違う人は先に言ってね。」
すると、双子の魔術師のサリーとマリーが手を挙げたので、話を促す。
「どうやったらあんなに素早くて無駄なく魔法が発動するんですか?」
「どうしてあんなに動きながらスムーズに魔法が使えるんですか?」
「それは努力あるのみです。」
場が静寂に包まれる。
「と言えば簡単だけど、鍛錬の方法が知りたいんだよね?」
サリーとマリー、あと魔法が使えるメンバーがコクコクと首を縦に振って頷いている。
「まず、サリーが聞いた‘素早くて無駄なく魔法が発動する’かだけど、魔力を常に意識して体内で循環させる事。
魔力を意識する事によって、詠唱した時に無駄な魔力を使わないで済むようになる。
そして、マリーが聞いた‘あんなに動きながらスムーズに魔法が使える’かは、どんなに動いても息切れしない体力を付け、尚且つ、詠唱文を完璧に覚え、何度も口ずさんでつっかえずに言えるようにする事です。」
「魔力を意識して循環?」
「体力を付ける…。」
疑問顔のサリーと少し放心しているマリー。私何か変な事いったかな?
すると、魔術師のロナルドが質問をしてきた。
「魔力を意識と言うが、魔法は詠唱すれば使えるんだ。
今まで意識した事が無いから魔力を意識と言われてもどうすればいいか分からん。」
そう言えばこの世界、ステータスの魔法の欄に使える魔法が入っているかいないかで、魔法を使えるかどうかを認識してるんだった。
そして、何かしらの魔法が使えるようであれば、その属性の生活魔法の呪文を詠唱して、発動するまでひたすら詠唱してるだけだったわ。
だから、魔術師でも魔力を感じ取る事が出来ないんだった。すっかり忘れてたわ。
それに、魔力感知とかのスキルも聞いた事が無いし。
「うーん、魔力を感知…意識する方法は希望者1人ずつ教えるしかないかな。
洸ちゃん、魔力感知は出来る様になってる?」
静かに合流していた洸ちゃんに確認をする。
いや、もし全員希望したら私1人だと大変だし。洸ちゃんを含まないで、今この場に10人は魔法使える人間がいるんだから。
「え?あ、大体は感知出来るようになったかな。まだスムーズに循環まではいかないけど。」
「よし!洸ちゃんの魔力循環の訓練にもなるから手伝ってね。
で、希望者は?」
洸ちゃんは奇声を発してるけど、気にしない。
そして、希望者はやっぱり全員だった。
「じゃあ、女の子は私が担当するから、男の子は洸ちゃんがお願いね。」
口をパクパクしてる洸ちゃんに、ウィンクしながらお願いをする。
「あ、でもその前に全員で走り込みしようか。」
30人が綺麗にずっこけた。君たち、日本のお笑い芸人か。
お読み頂きありがとうございます。




