48話
大変お待たせ致しました。
「あ〜、やっぱりこうなってますよね。」
訓練場の扉が開いて、数人の職員がポーションや傷薬用の軟膏などを抱えて入ってきた。
「ギルマス、お疲れ様です。
やっぱりと言うことは、こうなる事が予想できていたと言う事ですか?」
「まあね。ティティナ嬢は私の奥さんと同類だから。」
「ウーテさんと…。では仕方ありませんね。」
「ギルマスもアレクさんも、私に対する評価が酷い気がします。」
「「いやいや、周りをちゃんと見て下さい。」」
ギルマスとアレクさんの2人に同時に突っ込まれる。
確かに、特別依頼を受注した子達が死屍累々といった感じで、気絶してたり、軽度の切り傷や打撲をしてるけど。
2つ目のパーティー以降も、手加減が足りなかった様で、結果は1つ目のパーティーと同じ様な状態を作り上げてしまった。
それにしたって、生意気な冒険者を弾丸ダンジョンツアーに強制参加させるウーテさんよりかはマシだと思うんだよね。一応、命の危険が無いギルドの訓練場な訳だし。
「ティティナ嬢、彼らを回復させても?」
「はい、お願いします。
彼らの回復させる為の費用はいくらになりますか?
特別依頼が終了してからお支払いします。」
「今回は特別に無償で回復させてあげるよ。」
「…ギルマス、何か企んでますか?」
「何だと思う?」
「あまり考えたくはありませんね。」
「まぁ冗談はさて置き、今回の回復を無償で行う理由は、久しぶりの特別依頼が受注された事と、ギルドにとってもプラスになると考えたからです。
ギルド員の質を高める為にも、今後この様な事を行った際に掛かる費用を知っておきたいですからね。」
成る程。納得できる様なできない様な。
難しく考えない方がいいのかな?まぁ、ギルマスが私貶める意味が無いから、何か考えがあっても大事になる事はないから、まぁいっか。
「わかりました。費用の件ありがとうございます。」
そして、声を小さくして本題を聞く。
すでにアレクさんは他のギルド員と一緒に特別依頼の受注者の回復に回っている。
「ギルマスがその為だけに態々来たわけではありませんよね。」
「ええ。商業ギルドのギルドマスターから連絡がありまして。王宮で何かしらの動きがあった様ですので、身辺に注意する様にと。」
「そう、ですか。」
「気落するなとは言いませんが、気丈にしていて下さい。また、何か情報が入ればすぐに教える。」
「ありがとうございます。」
王宮で何かしらの動き。父さん達に何かあったのかな。無事なら良いんだけど。
不安にかられて涙が零れそうになる。それを耐える為に、目をぎゅっと瞑り、やり過ごす。
どの位そうしていたのだろうか。心配そうに私の名を呼ぶ声が聞こえる。
「ティナ、どうしたんだ?
さっきまでの勢いが感じられないけど。」
「洸ちゃん…。」
一度深呼吸をして、気持ちを入れ替える。
「ふっ、さっきまでの勢いでいいの?
まだまだ、特別依頼の時間はあるんだよ。」
ニヤッと笑って無理矢理話をはぐらかす。
洸ちゃんは眉間に皺を寄せて何かを言おうとしたけど、周りがそれを許さなかった。
「おい、コースケ!
何余計な事を言ってるんだ。また、死屍累々になるだろうが。」
「いやいや、何言ってるんだイヴァン。あの感じがいいだろう。」
「変態なのかダックス。…いや、お前は最初から変態だったな。」
「変態とは何だ、変態とは。俺は少し変人なだけだ。」
「変態と変人で何が違うんだ。」
「それよりも痛いから離してくれ、イヴァン」
洸ちゃんが組んだパーティーのリーダーであるイヴァンが、洸ちゃんの頭をアイアンクローし、イヴァンと一緒に来た魔術師なのに肉弾戦を挑む変た…変人のダックスが騒いだのだ。
と言うか、ダックスって自分で自分の事がおかしいって気が付いていたんだ。
まぁそんなことはおいて置いて、洸ちゃんがほかの冒険者と馴染めているようで安心した。
これならもう少し様子を見た後で、数日別行動をしても問題なさそうかな。
まだ騒いでいる3人に生暖かい目線を送る。
何か感じ取ったのか3人は騒ぐのをやめた様だ。
「えっと…ティナ?」
「仲良くなった冒険者ができてよかったね。
さて、ほかの子達も回復したみたいだから早速続きを始めようかな。」
にっこり笑顔で全体に聞こえる声で言うと、悲鳴にならない悲鳴が木霊する。
大丈夫、今度こそ手加減を間違えないから。
「さっきと同じ様にしてもあまり意味がないから、各パーティーのリーダーはまず集まって。
それ以外はしばらく自主練でもしててね。」
それぞれのパーティーのリーダーを集めて、それぞれのパーティーにあった戦略などの話をし、その後、各パーティーで話し合いの時間を作り、そして再度模擬戦をする。また終わればギルド職員が回復してリーダーを集め…を何度か繰り返す。
何度も繰り返している内に、連携などもよく出来る様になってきている。
さて、この特別依頼も残すところ後四半刻だ。
全員の荷物チェックでもそろそろしようかな。
「さて、そろそろ終わりの時間になります。が、これから全員の手荷物をチェックします。
では、荷物を出して下さい。」
一気に困惑の空気が流れるが、それぞれが荷物を出し始める。
うん、素直でよろしい。
「何故突然荷物を出させられたのか疑問に思うことでしょう。
さて、本来の今日の解散予定の場所と時刻を覚えていますか?」
私が質問すると、2つ目のパーティーのリーダーであるシーラが答える。
「もちろんです。夜2の鐘に西の街門の所です。」
「その通りです。では、街の街門が夜1の鐘までに閉まってしまう事は知っていますよね?」
そう言うと、騒めき出す。
なるほど。誰もその事に気が付いていなかったと。まぁ、EとDランクの冒険者だから仕方ないの、か?
「今後、ランクが上がれば街の外での活動も増え、また、日帰りでは厳しい依頼も増えることでしょう。
しかし慣れない内は門まで辿り着く時間を見誤り、門が閉まってから辿り着く事や、途中での事故でその日に街まで辿り着かない事もあると思います。
その際、自身を助けてくれるのは、仲間と自身のみです。だからこそ、街の外に出るときは荷物も重要になってきます。
たとえ日帰りでの依頼でも、きちんとした事前準備が大切です。だから、この場で今日用意した荷物のチェックをします。
不足があるようならその場で教えるので、次回の特別依頼までに用意をして下さい。」
1人ずつチェックをして行き、足りないものをその場で教える。
まぁ、これがあれば絶対安心・安全と言う訳ではないけど。
全員の荷物をチェックしたけど、最低限必要なものを揃えられていた人は誰もいなかった。
「今、教えた物は最低限あった方が良いものですが、持つ持たないも自己判断です。
自身で必要がないと思えば、持たなくても良いでしょう。
それと、最後に一言言いたいことがあります。」
一度言葉を区切り、全員の顔を見る。
「武器・防具はきちんと手入れをしなさい。
手入れをするお金をケチっていると、そのうち取り返しの付かないことになるからね。」
そう、武器の手入れを全然している様子がない子が何人かいたのだ。攻撃する時にどれだけ気を使った事か。
鍛冶師として、武器・防具が雑に扱われていると我慢出来ないのだよ。
「それじゃあ今日は解散で。また3日後に。」
ふぅ、さっさと湯屋に行ってお風呂に入って、ご飯を食べて寝よ。
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