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勇者の鍛冶師  作者: 芝 恵実
第1章
47/49

47話

開始の合図はあったけど、彼らに動く気配がない。


「模擬戦は始まってるのよ。動かないのなら、こっちから行くよ!」


言い終わると同時に、彼らに向かって走り出す。

すると彼らは緊張を更に高まらせたが、瞬時にリーダー格の槍士の青年が指示を出す。


「レムは弓で足止めを。カトレアは魔法で威嚇だ。

レックスとアレスは遊撃に出ろ。」


その指示を聞いたレムと呼ばれた弓士の少女は、私の進行方向の地面に的を絞り弓を引き締める。

そして、カトレアと呼ばれた魔術師の少女は初級魔法の詠唱を始めた。


えっと、私の事舐めてるのかな?

弓は手前に向かって放とうとしてるし、魔法は殺傷能力がほぼ無い《ウィンドボール》だし。

遊撃に出てきた剣士の少年達は一直線に向かって来るし。


「舐めるな!《安らかなる大地よ、今一度怒れ、グランドシェイク》」

「「「「「「「うわーーーーーー!」」」」」」」


舐めてる様なので、彼らの足元を低級魔法の《グランドシェイク》で思いっきり揺らしてバランスを崩させる。

弓士のレムと魔術師のカトレア、走り始めてた剣士のレックスとアレスは転んでいる。

そして、少年・少女の4人は転んだまま茫然としているけど、戦闘中に茫然としてたら死ぬよ。

普通だったら追撃をするけど、流石に可哀想かと一瞬悩む。が、やっぱり彼らの甘さを捨てさせる為に追い打ちを掛けよう。

命は大事だからね。


追撃の為にスピードを上げると、リーダー役の槍士、確か資料で読んだ名前はアガサが声を荒げる。


「ユアンはアレスの防御だ!アンリはレムとカトレアのフォロー、俺はレックスの方に行く。

アレス、レックス、レム、カトレアはすぐに立て!」

「「おう!」」

「「「「は、はい!」」」」


ふむ。中々いいリーダーだね。彼ならこれからも努力し続ければAランクにも手が届くかもしれないね。

けどまだまだ甘いかな。そんなに大声で叫んでたら、内容がこっちまで丸聞こえだよ。

苦笑いをしつつ、新たに詠唱を唱える。


《安定たる大地よ、我を突き上げろ、グランドアップ》


一歩先の地面に向けて《グランドアップ》の魔法を放つ。

走った勢いのまま、魔法の影響で盛り上がり始めた地面を踏みしめ、上空に駆け上がる様に飛び出す。

眼下では、アレスに辿り着き前面に盾を構えたユアンと、レックスに辿り着き槍で臨戦態勢になったアガサが驚愕の表情をし、アレスとレックスは立ち上がった後に


「「えぇ〜〜〜」」


と天を仰いでいた。

いやね、態々守りを硬くした部分から突破してしなくてもいいと思うんだ。守りが薄い方から撃破すれば良いわけだし。

着地し更にスピードを上げて、アンリとレムとカトレアに肉薄する。

まずナイフを構えたユアンに対し、剣の切っ先でナイフを弾き飛ばし、胴が空いたので剣の柄頭で鳩尾に一発入れて跪かせる。

そして直ぐに、レムとカトレアには首の皮一枚切った所で剣を止めた。流石に女の子を痛めつけるのは忍びないし、何より粗相をしてしまっているので、これ以上は可哀想だからね。


「はい、貴女達はこれで死亡扱いね。」


そう言い置いて背後を振り返る。4人で固まりながら足並みを揃えてこちらに近づいてきている。


《地中に眠りし小さな石よ、彼の者達へと舞い集え、ストーンバレット》


《ストーンバレット》で小石を彼らはに向かって放つ。

タンク役であるユアンが盾を構え、その後ろに残りの3人が隠れる。

その隙にユアンに迫り、ラウンドシールド型の盾を下から蹴り上げ、空いた脇腹を剣の柄頭で殴打する。

更に追撃をしようとしたが、アガサからの鋭い突きが放たれたので、バックステップで避ける。

アガサがユアンより前に出て、アレスがユアンの介抱にまわり、レックスがアガサの斜め後ろに剣を構えフォローに入る。

うん、即席のパーティーにしては中々のチームワークだ。

まぁ、2つのパーティーが合併したようなものだから上手くいってるのかもしれないけど。


そろそろ、Cランクに上がれる予定のアガサなだけあって、隙なく構えている。

まぁ、隙なく構えているだけで、攻撃方法はまだまだあるから問題ないけど。


剣を上段に構え、柄を持つ手を更に引き締め力を込める。

手だけで無く、腕全体や身体全体に力を漲らせ、一気に剣を振り下ろす。

バックステップで避けた分距離が開き剣の刃は彼らに届かないが、身体全体に力を漲らせた際に、魔力を剣に馴染ませていたので、剣を振り下ろす勢いで、魔力を斬撃に代え飛ばす。

まさか斬撃が飛んでくるとは思っていなかったのか、彼らは呆気なく斬撃に吹き飛ばされ、全員戦闘不能になった。

数秒待っても起き上がる気配がない。


「っくそーーー!」


4人の様子を注意深く見ていたら、跪かせただけだったアンリがタックルを仕掛けてきたので、柄頭を今度は頭に落とす。

しばらく待っても、死亡扱いをした女の子2人以外は誰も立ち上がらない。

そのせいか、開始の合図をした後、何となく審判ぽい位置に居たアレクさんが慌てて吹き飛ばされた4人の方に行く。


「ティティナさん、彼ら4人共に気絶してます。

次の模擬戦はもう少し手加減をお願いします。」

「あ〜、すみません。やり過ぎでしたか?」

「えぇ、まあ。」


…手加減したつもりだったけど、まだダメだったか。

朝の反省が1つも活かされてないなぁ。


手加減って難しいなぁ。次はどれくらい手加減した方がいいかなぁ。などを考えながら、気絶した男たち5人を移動させる。

全員を移動させ終わったから、次のパーティーと模擬戦を始めたいけど、この子達をどうやって起こそうかな。

やっぱり、気付け薬を使う?

でも、気付け薬は1本しかないし、この後もやり過ぎたら必要になるだろうから、どうしようかな。


「あ、あの、ティティナさん。

私達の実力を見てもらうのに、パーティー同士で模擬戦をして、その様子を見てもらうのはダメなんでしょうか?」


気付け薬を使うか悩んでいると、次に模擬戦を行う予定のパーティーの女剣士ーー確か名前はシーラだったなーーから提案を受けた。

あー、やっぱりやり過ぎたから引かれたかな。次にああなるのは自分たちだから、避けられるなら避けたいよね。でも。


「ゴメンね、そらは出来ない相談かな。

実際に剣を持って対峙しないと見えてこないモノがあるからね。」

「そ、そうですか。そうですよね。

では、次は私達のパーティーになるので、胸をお借り致します。」

「じゃあ、中央で対峙しようか。」


テクテクと再度中央よりやや左側に移動する。

あっ、さっきのパーティーの子達に結局気付け薬を飲ませなかったな。

シーラが率いるパーティーも中央よりやや右側に立ち、準備が出来たようなので、また模擬戦を始めようか。


視線で開始の合図をアレクさんに送る。


「それでは、始め!」

お読み頂きありがとうございます。

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