44話
あんの『鋼の剣』が。
魔物を視界に入れた途端、何の魔物か確認もしないで走り出すなんて。
どれだけ自分達の剣技に自信があんのよ。斬撃でも飛ばせるっての?
「あれはBランクモンスターの『ウィンドファルコン』よ。
王隣の森の上位モンスターだから注意して。
遠距離から風魔法を飛ばして、相手を甚振って動きを鈍くしてから嘴や爪トドメを刺しにくるから、魔法士はシールド系を展開して。『ウィンドファルコン』の魔法攻撃の隙をついて、遠距離からの攻撃を。
私は勝手に先行した『鋼の剣』のフォローに行くから、戻るまで持ちこたえて。」
駆け出した『鋼の剣』の後を、指示を出し終えると直ぐに追いかける。
まずい、『ウィンドファルコン』の2体が完全に『鋼の剣』を標的にして攻撃態勢に入ってる。
一旦立ち止まり、右手を地面に左手を2体の魔物に向け息を吸い込む。
《頑強なる3枚の盾よ、彼の者達を守れ、ロックシールド》
《裁きを与える2本の槍よ、悪しき者を貫け、ファイアランス》
剣士以外を見下している『鋼の剣』を助ける為に、態と大声で魔法を唱えて助けに入る。
見下してた職種に助けられる程屈辱はないでしょ。これで少しでも意識が変わってくれれば良いんだけど。
《ロックシールド》の魔法で、『鋼の剣』に向かって放たれた『ウィンドファルコン』の鎌鼬の様な魔法は防がれ、《ファイアランス》の魔法で1体は錐揉みしながら墜落し、もう1体も片羽を《ファイアランス》で貫かれた為、空中でかなり上下左右に揺れている。
「なっ、俺たちの邪魔すんな!」
「だけどケインズ、あの人の魔法が無かったら俺たち…。」
「馬鹿かカルロス。この平原に出る魔物の魔法で俺たちがどうにかなるとでも思ってるのかよ!?」
「盾に残った傷を見てみろ。《ロックシールド》が無かったらこの傷が俺たちの体に刻まれてたんだぞ。
それにあの魔物、この平原に出る様なランクじゃ無い。」
「そんな事は…。」
「貴方達、まだ戦闘中よ。いい加減にしなさい。」
「なっ、お前には関係ないだーー」
バッカスと呼ばれてた少年が、ケインズの頭殴り気絶させた。
「すみません。俺たち何も分かって無かった。」
「だから戦闘中だと言ってるでしょ。」
まったく、戦闘中になんて事をしてくれてるのよ。
まだ魔物を完全に殺せていない上に、攻撃が通っていないのも3体もいるってのに。
わざわざ気絶させて、守る範囲を広げるなんて。
チラッと、私が言った陣形を組んでいる子達の方を見る。
流石と言うべきか想定外と言うべきか、やっぱりEランクとDランクの魔法士達だね。大した防御力のないシールド系ばかりだわ。
このままだと大怪我を負う子が必ず出る。
格上相手に集団で戦えるいい機会だと思ったけど、まだまだ荷が重いか。
ここは一気に終わらせないとね。
魔鎚を構え、錐揉みしながら墜落した『ウィンドファルコン』の側に近づく。
微かにこちらに向けての殺気が放たれたので容赦なく頭を潰す。
それと同時に片羽を貫かれている『ウィンドファルコン』に魔法を発動させる。
《悪しき者を捕らえ逃さぬ焔の檻よ、彼の者を捕らえろ、スパークプリズン》
焔の檻に閉じ込められた魔物を横目に、残り3体の方へ駆け出す。
「まっ、待って!」
カルロスと呼ばれていた少年が手を伸ばしながら声を掛けてきた。
「先にあっちを処理するから待ちなさい!」
『ウィンドファルコン』の初撃で、腰を抜かしているから置いていかれたくないのは分からなくもないけど、勝手な行動をして、他の多くを危険に晒しているのだから我慢しろってのよ。
それに、あの魔物の今の状態を見れば大丈夫だってわかりそうなものだけどね。
何せ、体の位置を一定に維持できないが為に、《スパークプリズン》にぶつかり続けてダメージを多大に受けてるんだし。
残りの3体の魔物に対して攻撃しやすい位置に着き、魔鎚を振りかぶりながら魔法を発動させる。
《我が得物を介し顕現し鉄槌を下せ、ダイヤモンドソード》
キラキラと太陽の光を反射しながら、ダイヤ製の剣が何本も魔鎚の軌道を辿り、3体の『ウィンドファルコン』に突き刺さる。
3体とも錐揉みしながら墜落し、魔石だけを残して消滅した。
ちょっと威力あり過ぎたかな。流石、特級の土魔法だね。お蔭で私のMPがかなり寂しい事になっちなったけど。
《スパークプリズン》に捉えていた『ウィンドファルコン』は黒焦げになり、さらに首が焼き切れて墜落していた。
《スパークプリズン》はまだ効果時間内だったけど消えてたから、レイムが解除してくれていたみたいだね。
「えーっと、このままここにいるとまた魔物が襲撃してくる可能性があるので、移動しましょう。
怪我人は直ぐに手当を。」
ガヤガヤと治癒魔法をかけて貰う交渉や回復薬を求める声、傷に効く薬草がその辺に生えてないか探し求める姿を見ながら、MP回復薬を飲み、『ウィンドファルコン』の魔石と最初に倒した1体分の素材を拾い集める。
それを終え、『鋼の剣』の元へ向かった。
「貴方達、今後どうするつもり?」
「………。」
気絶させられているケインズを除き、残りのバッカスとカルロスが無言で見つめ合っている。
「貴方達のリーダーは、そこで気絶させられたケインズでいいのかしら?」
「はい。」
「そう。魔物がここに到着する前に話していた事は覚えてるよね?」
「…あの!都合が良すぎるかも知らないけど、今後も特別依頼を受けさせてくれ、じゃなくて、下さい。」
「ケインズは勿論、貴方達も含めて、剣士以外を見下す事を改められるの?」
「そ、れは…。」
それきり2人は黙ってしまった。自分達が剣士至上主義を改める気が無いのか、ケインズを諌める事に自信がないのか。
まぁ、どっちにしても
「今のままで貴方達をもう一度受け入れる事は出来ないわ。」
「な、なんで…。」
「貴方達は他の受注者と問題を起こして、今後、この受注中に組んで貰うパーティーで円滑な関係が築ける気がしないからね。」
「謝れば…。」
「確かに謝れば一時的には円滑な関係になれるかもしれない。けど、命の危機に瀕した際にはどうかしら?」
「うっ、それは。」
「一度失った信頼は、そう簡単に復活はしないのよ。
今後の貴方達次第だけど、1ヶ月だけの特別依頼中に戻らないと私は思うよ。
それに、私が貴方達に‘貴方達は次回からの特別依頼の受注は取消しさせてもらうわ。’と言った事にたいして、ケインズが大勢の前で‘剣士じゃない奴の特別依頼なんてこっちから願い下げだ。’と言ってしまってるしね。」
そこまで言うと、バッカスとカルロスは項垂れて沈黙してしまった。
今後彼らがどうなるかは、彼らの行動次第になる。
「今日に関しては、最後までいていいよ。
ケインズが気絶したままだと街まで戻るのも苦労するだろうからね。」
「「…ありがとう。」」
さて、治療も粗方終わったみたいだから、移動しようかな。
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