41話
ランの技名を聞いて、私は直ぐにペンダントにしている大槌に手を触れ、ペンダントを大槌に代える。
《サンドウェーブ》は広範囲魔法で、ランの実力からすると私達を簡単に飲み込む砂の大波だ。
数m先から、ドドドドドドドドドーーーーーーと言う音と共に砂の大波が押し寄せて来ている。
私は列の中心辺りに移動し、砂の大波が押し寄せてくる方へ数歩踏み出し、背後に特別依頼受注者達を背後にする。
背後からは悲鳴とこんな所で死にたくない等の叫び声が聞こえる。
「全員、私の後ろに固まりなさい!!!」
腰を抜かして動けない連中を、洸ちゃんと質問をしてくれた少年2人と少女が必死に引っ張って私の後ろに連れて行っている。
その行動を見た年長者…と言っても17・8歳の子達が慌てて残りの腰を抜かしている連中を引っ張っていっている。
私はその行動を横目に、大槌に土属性の魔力を大量に流し込む。
こっちの準備が丁度整った所で、砂の大波は目前に迫っていた。
「うおらあぁぁーーーーー」
気合を入れた掛け声と共に、大槌を《サンドウェーブ》の一部に打ち込む。
打ち込むと同時に、大槌に流した魔力を《サンドウェーブ》全体に行き渡らせ、《サンドウェーブ》を爆発させ、霧散させた。
ふぅー、いい仕事した。じゃなくて、ランちゃんもやり過ぎだよ。
そんな事を思ってると後ろから色々聞こえてくる。
「エ…、今のって《サンドウェーブ》だよね?土属性の上位魔法の。」
「俺の見間違えじゃないよな?あれって物理でどうにかなるもんだったか?」
「この教官って頭おかしいのか?」
「変人の域に達してないか?」
「見た目的に俺達とたいして歳変わらないよな?」
「ティティナさんって確か13歳でAランクになったっていう変…偉人だから、今が普通なのか?」
「「「「「取り敢えず、あの人に逆らうのは良くないな!」」」」」
ちょっと待て!何故に今ので私が変人扱いされないといけないの!
「やっぱり私の目に狂いはなかった。ティティナ様について行かないと!」
「教官スゲー。あの人の教えに従えば俺も魔法を物理でどうにか出来る様になるのかな。」
「剣止めて、大槌を武器にしようかな。」
「ティティナ教官の話を一言一句逃さない様にしないと。」
関心して、見習おうとするのはとってもいいと思うけど、ちょっと重たい発言してる人いるよね!?
目標にするのは良いけど、ついて来られるのも、一言一句逃さない様にするのも何となく怖いな。
「ティナって転生チートじゃね?努力でどうこう出来るレベルではないと思うな。」
洸ちゃん、ボソッと何か呟いたけど、何て言ったの?
ちょっとこの状況じゃ何だか不安になるんだけど…。私やり過ぎた?
イヤイヤ、やり過ぎでは決して無い。だって、生死を掛けた時にやり過ぎなんて言葉は出てこないはずだし。
あそこまでやらないと、全員を無傷で守る事は出来なかったからね。
『ランもレイムもちょっとやり過ぎだったと思うよ。』
『だってねー。』
『そうだよね。あいつらティナを馬鹿にしたもん。』
何時、馬鹿にされたのだろう?
あっ、あれか。西門を出発する前に警戒する様に言った時に小声で言ってたことか。レイムとランにとって、あれは私を馬鹿にする発言に聞こえた訳か。
私的には、お馬鹿な発言をする連中だなぁ。もっと思慮深くならないと長生きできないなぁ。としか思ってなかったんだけどね。
『そっか。ありがとう。
でも、彼らは世間知らずで弱い子達だから、今回は大目に見てあげてね。たぶん、今回の事で私を馬鹿にする様な発言はしなくなると思うから。』
『ティナがそう言うならー。』
『次があった時は、もっと強烈なのにするからね安心してね。』
精霊は、自分と契約している相手を大切にするから、その相手を害する物には容赦ないんだよね。
レイムとランの事は棚上げして、さっさと移動を再開しよう。
「言いたい事は色々あると思うけど、移動を再開します。
あと、さっきの《サンドウェーブ》を破壊した方法は魔力を使ってるので物理のみでの対処は無理です。
それと、武器は自分に合ったものをちゃんと使いましょう。じゃないと怪我の元です。」
「「「「「は、はい。」」」」」
移動を再開すると、無駄な話声は一切聞こえなくなり、周りを警戒しているピリピリとした空気が伝わってくる。
これじゃあ、過剰に警戒し過ぎだけど…まぁ、その内慣れて程よくなるでしょ。
再出発からは、魔物にも妖精の悪戯にも会う事なく、まぁ妖精の悪戯は滅多に会う事は無いけど、順調に進み、再出発から四半刻が過ぎて、予定していた地点に到着した。
私は全体に止まるように合図を出す。
「さて、模擬戦を始める前に休憩時の様子を見せてもらいます。
この中で、出発前に昼食を取らなかった人は手を挙げて下さい。」
手を挙げたのは全体の大体1/3で主に10代前半の子達だ。
「では、食べてない人はこの休憩中に食べて下さい。休憩時間は四半刻です。」
全員頷き、思い思いに座って休憩をしだし、警戒も緩んでいる。
まさか、休憩1つとってもここまでまともに出来ないとは。
ここは普通に草原地帯で、草も、膝下だけどそれなりに生えている。その草をそのままにして座り込むとは…。それに虫が寄って来て後で大変な事にもなりかねないのに。
頭を抱えていると、洸ちゃんを始めとする数人が寄って来た。
一同が一斉に洸ちゃんを見た事で、洸ちゃんが代表して話す事になった様だ。
「ティナ、ここの草って薬草とかだったりする?採取してギルドで納品でき物とか。」
「それはどう言った意図での確認?」
「あー、このままで座ると視界が悪くなるだろ?だから、自分が休憩する場所を含む少しの距離の草を踏みつぶそうと思ったけど、換金出来る物は採取した方が良いだろ。」
「ふふっ。ちゃんと考えてるね。」
私は一度当たりを見渡して、採取すべき薬草類があるかを確認する。ここに自生してるのは1種類だけだね。
「ここにある白い花で葉の形が針のようになっている草は、【スノーニードル】と言って、この草は低級の塗るタイプの傷薬を作る材料の1つになるから摘んでおくと損はないよ。」
「ギルドに納品するのにどれくらいの単位が必要?あと根っこから採取する必要はある?」
「納品単位は8束ごとで、薬を作るのに必要なのは花弁と茎だね。だから、根っこは残して採取してあげて。そうすれば、1ヵ月後にまた採取できるようになるから。
ちなみに葉の部分は炒めると美味しいよ。」
「「「「「ありがとう(ございます)。」」」」」
話を聞き終えると、一同は休憩するポイントへ戻り、ナイフを取り出し採取を始める。そしてある程度採取が終わると、草を踏みつぶしてから座って休憩を取り始めた。
ある者は紙とペンを取り出して不安定な中メモをする者、採取した【スノーニードル】をあらゆる方向から眺めている者、またある者は、目を瞑りブツブツと小声で私が言った事を復唱している者など様々な反応をしていた。
これを休憩と言っていいかは微妙だ。目を瞑ったら周りの警戒が出来ないと思うし。
その中で目を引いたのは、洸ちゃんと例の少年2人と少女だ。
4人組のパーティーを組んでるような感じになって、1人の少年が立ったまま周囲を警戒をし、洸ちゃんが火の熾しながら、やり方をレクチャーしている。
レクチャーが終わると、洸ちゃんが見張りを交代していた。
何で態々火を?それぞれが水袋から水を飲んでて、お茶を沸かす訳でもないし。
少し様子を見ていると、煙に乗ってある匂いが届いた。
成程!いい考えだね。
お読み頂きありがとうございます。




