4話
「何で俺が異世界人だって分かったんだ!?」
「あぁ、私の契約している精霊が教えてくれたからだよ。」
「そう言えばさっきも精霊って…ほんとにそんなのが居るのか?」
「君の右隣りを見てごらんよ。
あー、でも人族だと精霊を見れる人って珍しいからな。見えるかな?」
「右…。っうわ!小さっ!?
これが精霊…?」
「そう、その子は水の中位の精霊だよ。
君を助けようとして、無理をしたみたいで今は眠ってる。
ちなみに私の契約している精霊はあそこにいるよ。男の子の方が火の精霊でレイム。女の子の方が土の精霊でランだよ。」
「…どうやったら精霊と契約出来るんだ?」
「契約してどうするつもり?」
「勿論、俺をここに無理やり召喚で誘拐してきた癖に、殺そうとした連中に復讐をするんだ。」
「やめた方が良いよ。君のMPの数値じゃ大した事が出来ずに殺されるだけだし、その子も消滅する可能性がある。
自分が消滅しかかってまで君を助けようとしていた精霊を、君の我儘で消滅させても平気なの?」
「それは…。と言うか何で俺のMPが分かるんだよ!?」
「鑑定のスキルを使ったからね。洸祐くん?」
洸祐くんはさらに目を見開いて驚き固まってる。大丈夫かな?
鑑定で名前とかスキルとかLvは分かったけど、何があってこんな状態になっているか確認しないとな。
中途半端に助けるのはお互いの為にも良くないし、何より私は彼の事を思い出したし…。
顔を見た瞬間に思い出したから頭が割れるかと思うぐらいに痛かったけど、洸ちゃん気絶してる時だったから良かったよ。じゃなきゃ隠し通せる自信が無かったし。
なんでこんな所で再会するんだろう。前世の私の幼馴染で片思いの相手だった羽田洸祐に。
それに、今までなんで忘れてたんだろう。もしかして、異世界に渡ったことによって、世界間での辻褄合わせが行われたのかな…。
何にしても何があったのか教えてもらわないと。
「驚いて思考停止してる所悪いんだけど、何があったのか教えてもらっても良い?」
「えっ!?…あ、え…?
何があったかと言うと……………………。」
大分混乱していた様で分かりにくかったけど要約すると、学校が終わった後に教室でゲーム仲間の友人とゲームをして遊んでいた所、突然足元が光り輝いて目を瞑り、光が弱まった所で目を開けると、鎧を着た人々やローブを着た人々、そしてその中心に豪奢なドレスに身を包んだ金髪碧眼の美女が居た。
何が起こったのかと友人と顔を見合わせていた所、その美女に‘魔王が復活した為に世界が滅ぶ危機にあり、この世界の人間では太刀打ちが出来ない。そこで心苦しいが異世界から勇者様を召喚させてもらった’と言う事らしい。
それで勇者が二人も居てその美女達は喜んでいたが、ステータスを確認する道具を使った所、勇者は友人のみと発覚した。
そして、勇者でない彼は邪魔者扱いされ、尚且つ帰還させる方法が無いから、迷惑を掛けないでこの世界で好きに生きろと掌を返されたと。
彼は無一文と無知識で知らない世界に放り出されては堪ったものではないと、慰謝料とこの世界の最低限の知識を身に着ける間だけ世話をして欲しいと頼んだところ、美女が怒り狂い、兵士数名に命じてこの森に廃棄処分をされたところだったらしい。
「確認なんだけど、その友人は助けてくれなかったの?」
「あいつは、自分が勇者だってことに酔って、俺のお荷物扱いに加担してたよ。」
苦虫を噛み潰す様な顔で吐き捨てる。
そりゃそうだろう。そんな奴は友人じゃない。もしくは魅了のスキルで魅了されて操られていたかだ。
まぁ、それを洸ちゃんが知った所で、だから何だと感じだろうけど。こっちは殺されかけてるんだから。
たぶんその友人って木野敬人だよね?洸ちゃんのゲーム仲間の。あれはどっちも可能性があるけど…。
「悪い事は言わないから、この世界で貴族や王族には極力逆らない方が良いよ。
この世界は身分が全ての世界だから。…特に人族はその傾向が強いし。
命が助かった事を感謝して、その美女には今後一切かかわらない方が良い。
その美女は十中八九、この国の第2王女のプライティア様で、傲慢で我儘そして残虐な人として市民の間では有名だから。
確かこの国の王位継承権第5位だったけど、兄王子を2人暗殺して継承権を第3位にしたって噂が立ってるし、勇者召喚を反対した貴族は惨殺したっていうからね。」
「所詮噂だろ…。」
「火のない所に煙は立たないって言うでしょ。それに、プライティア様は憚ることなくその事について喜々としてお茶会とかで語ってるらしいから、事実だと思うよ。」
「…何でそんな奴が裁かれないで、権力を振りかざしてるんだよ。」
「彼女の報復が怖いのと、国王が彼女の見方だから誰も逆らえない。異議を唱えれば即死刑だから、誰もどうする事も出来ないんだよ。
今までにどれだけ善良な貴族が処刑された事か。」
「何だよそれ…。」
「取り敢えずは復讐を辞める気になった?」
「……………。」
洸ちゃんは悔しそうに唇をかみしめている。そりゃ、自分を殺そうとした相手に報復出来ないどころか、公正にさばくことも出来ない。
やるせないよね…。
「取り敢えず、ポーション飲んで一度休んだ方が良いよ。
それから、これからの事を考えよう。
そう言えばまだ自己紹介してなかったね。
私はティナ。王都一の鍛冶屋で働く鍛冶師だよ。」
「…俺は、知ってると思うけど羽田洸祐。異世界の地球から巻き込まれて召喚させられた高校1年生だ。
高校ってのは、俺ぐらいの年齢の奴が通う学問を習う所な。
俺のステータスを勝手に見たんだから、ティナのステータスも教えてくれよ。
あとこの世界のステータスの平均とかも…。」
最後の方は尻すぼみになってしまっている。そして、やけ酒の様にポーションを飲んでいる。
ポーションを2本とも飲み切ると、顔色が大分良いね。後はしっかり休めれば大丈夫だね。
それにしても、やけ酒みたいな感じって…。まぁ、普通はステータスを簡単に見せる人はいないだろうと思ってるからなんだろうけど。
ここは信頼関係をきちんと築くべきだよね。ここで洸ちゃんに再会できたのもきっと何かの縁かもしれないしね。
「いいよ。この世界の常識も教えてあげるし、私のステータスも見せてあげる。《ステータスオープン》。」
私がそう言うと、また驚愕している。
異世界は驚く事が多いよね。私も最初は自分の常識が非常識だって知って戸惑いまくってたからね。
名前 :ティナ 18歳
Lv :58
種族 :ドワーフ
職業 :鍛冶師 Lv36
HP :9700/9700
MP :8300/8300
魔法 :火魔法・土魔法・精霊魔法
スキル:精製・鍛錬・採掘・鑑定・採取・気配察知・槌術・柔術・剣術・熱耐性・槍術・盾術・ナイフ術
契約者:レイム・ラン
「どう?これ見て安心した?
私こう見えても、結構強いから安心していいよ。」
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