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勇者の鍛冶師  作者: 芝 恵実
第1章
38/49

38話

鍛練は朝2の鐘(8時)まで続いた。もちろん、合間合間に休憩は挟んだよ。

剣から始めて、槍やナイフ、終いには大槌を使って避ける鍛練をした結果、終了を告げると同時に倒れ込んだ洸ちゃんが動かなくなってしまった。

今日は、アークとの水かけの漫才すら起こす気力が無いらしい。あれ?ちょっとやり過ぎたかな?

ちなみに、この時間は宿の宿泊客はほぼ出払っている。冒険者は朝早くからギルドに行っていい依頼を見つけないといけないからね。もしくはダンジョンに早く潜って、いい素材やお宝を得る為にね。残って居る人も、今は食堂でご飯を食べてるから宿屋の人も食堂で忙しいし。

だから、アークが魔法を発動しても見ている人はいないので、無問題。


さて、私も早く朝ごはんが食べたい。でも、洸ちゃんが動かないからどうしようか。やっぱり背負って一度部屋に連れて行かないとだよね。


「洸ちゃん、起きてる?動ける?」

「むーりーだー。ティナ、自分の言動と行動が合ってないよ。

‘あんまり無理したら駄目だからね。冒険者は体が基本なんだから。’って言った舌の根も乾かない内にこの仕打ちは無いよ…。」

「ごめんなさい。つい。」


あ~、やっぱり私の悪癖が出ちゃったよ。本当どうしよう。たぶんこれからもこの悪癖は顔を出すよ。

もしかして、今日からの特別依頼でもやっちゃうかも。そっちも拙い。

頭を抱えこんでいると、


「俺の為を思ってやってくれた事なのにゴメン。」

「違うよ。私、つい夢中になるとやり過ぎちゃう悪癖が合って。鍛冶師の見習いも私の所為で辞めた子は2人いるんだよね。

分かってても止められなくて、私こそ、無理させ過ぎてゴメン。」

「ティナって俺が思ってるよりもおっちょこちょいなんだな。もっと完璧に何でもこなせる、それこそ物語の主人公みたいな人かと思った。」

「えっと、それはどういう評価?」

「普通の人間らしいって事。何だかそっちの方が安心する。」

「安心?」

「そう。優しくて、面倒見がよくて、強くて、綺麗で。スーパーマン…いや、女性だからスーパーウーマンみたいで、弱くて何の役にも立ちそうにない捨てられて殺され掛けた俺が一緒に居て良いのかって思ってたからさ。

だから、普通の人間らしさがあって、安心する。」

「馬鹿だなぁ、洸ちゃんは。私は今も前世()もちょっとやり過ぎる、普通の人間だよ。

まぁ、やり過ぎたから、今の強さがあるんだけどね。」


私は、洸ちゃんの事を見ている様でちゃんとは見ていなかったんだな。

優しくて、面倒見がいいか。私の善意が洸ちゃんを少なからず苦しめていたのかな。それはもう善意じゃなくてエゴだろう。若しくは偽善。

少しでも悪癖を改善しないとね。あと、押しつけがましいエゴも。

それにしても、綺麗か。嬉しいな。二へラっと笑いそうになる顔を引き締めて、洸ちゃんに手を差し出す。


「部屋に戻って着替えたら、朝ごはんを食べてギルドに行こう。」

「そうだな。手ありがとう。

俺が先に朝ごはん食べてるから、その間に着替えちゃって。その後俺が着替えるから。」

「いいの?私より洸ちゃんの方が汗かいてるでしょ?」

「ティナって綺麗好きだから、汗かいたままの恰好で居るの嫌だろ?

俺はまだ我慢できるし、腹減って死にそうだし。だから、さ。」


洸ちゃんてこんなに気遣える人だったっけ?ちょっとときめいちゃったよ。きっとさっき綺麗って言われたのも影響してるけど。


「ありがとう。今日は一緒にギルドに行こうね。」

「あぁ。」


中庭で一旦分かれて、それぞれ食堂と部屋へと向かう。

汗をしっかりと拭き、着替えが終わったので食堂に向かう途中で、洸ちゃんが部屋へ着替えに向かって来た様で出くわした。


「あんまり早食いすると、消化に悪いよ。」

「麦粥にしたら、腹が減り過ぎてて一気に食べちゃったんだよな。

着替え終わったら食堂に行くからさ、ティナはゆっくり食べてていいから。」


分かったと頷いて、再び分かれて食堂へ向かう。

もうすぐ食堂だと思った所で、独特の匂いが…。この独特の匂いは…まさか、北の方の民族料理の魚の塩漬け?

昔、ウーテさんに北のお土産でもらった事があるけど、私あれは凄い苦手なんだよね。

さっき話した時に洸ちゃんからはこの匂いがしなかったから、麦粥の材料に使われている訳じゃ無い筈。だったら、今日の朝ごはんは麦粥にしよう。


食堂に入ると、先程よりも匂いが強くなる。絶対にあれは食べたくない。あれを食べるぐらいなら、狩りに行って、狩った獲物を食べる方が断然良いよ。

その決意を胸にリリちゃんに朝ごはんを注文する。


「リリちゃん、おはよう。今日は麦粥でお願いね。」

「おはようございます、ティナさん。麦粥ですね。畏まりました。」

「リリちゃん、つかぬ事を聞くけど、今日のサンドウィッチはセリチソーリを使ってる?」

「そうなんです。家の宿屋の名物サンドウィッチなんですよ。匂いが駄目な人も多いんですが、癖になる人も多くて1~2か月に1度の頻度で提供させて頂いているんですよ。」

「そっか。ちなみに、今日の夕ご飯にもセリチソーリを使ったりする?」

「はい。その予定です。」

「…そっか。今日はギルドでの依頼で遅くなるから夕ご飯はパスさせてもらうね。」

「畏まりました。コースケさんの分もキャンセルで宜しいでしょうか?」

「それは、洸ちゃんに聞かないと分からないかな。」

「そうですよね。後でお会いできた時にでも聞いてみます。お料理の準備が整い次第お持ちしますので、席に座ってお待ちください。」


リリちゃんが一礼をして厨房の方へ向かって行く。

好きじゃない匂いに耐えながら麦粥を待つ。精神が鍛えられそうだね。こんな不意打ちの鍛え方は嫌だけど。

洸ちゃんに早食いは消化に悪いとか言っておきながら、絶対に早食いになってしまう。

どうでもいい事を考えていると、麦粥が到着した。


「お待たせしました、麦粥です。」

「ありがとう。」


食前の祈りを捧げて、素早く食べ出す。

セリチソーリの匂いから逃れる為に、次々に麦粥を口に運ぶ。うん、麦粥も美味しいね。ただ、セリチソーリの匂いさえしなければもっと美味しいのに。

あっと言う間に麦粥を食べ終わってしまったけど、食べたりない。

北門の方に行って屋台の食べ物でも食べようかな。でもそこまで行くのもなぁ。ギルドに行くのに、態々そこを通り過ぎて屋台の為だけに北門まで行かないといけない訳だし。

う~ん…。そう言えば、洸ちゃん遅いな。

匂いを耐えるのにそろそろ限界だから部屋まで迎えに行こう。


階段を上り、部屋の戸をノックする。

‘はーい’と言う返事と共に扉が開いた。だから、誰だかちゃんと確認をしようよ。


「ティナ?今日は朝ごはん早く食べ終わったんだな。」

「…今日の食堂の匂いがね。あの匂いの食べ物…あー、セリチソーリって言うんだけど、あれが苦手で。」

「あの匂いの食べ物食べた事があるんだ。俺のあの匂いは無理だ。」

「ちなみに今日の夕ご飯もセリチソーリを使った料理だって。」

「ぅえ!?俺食べれる気がしない。」

「私は夕ご飯はキャンセルしてきたよ。」

「俺もキャンセルするよ。」

「じゃあ、キャンセルしたらギルドに向かおうか。」


‘そうだなー’と洸ちゃんが相槌を打ちながら、剣などの装備を身につけたので部屋を出て鍵を閉める。

一階に着くと掃除道具を持ったリリちゃんが居たので、鍵を預けて洸ちゃんの分の夕ご飯のキャンセルもして宿屋を出た。


さてさて、ギルドに向かいますか。

ギルドの前に屋台が出てたらいいなー。


お読み頂きありがとうございます。

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